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そこはかとなく

そこはかとない記録
2024
03,28
近くの灯台にずっと刀剣乱舞のキャラとコラボしたカレーが売ってると思い込んでいて、ひょんな事から改めて調べてみたら刀剣乱舞関係無かった…

灯台擬人化だった(゚Д゚)

灯台擬人化って何(・ゝ・)
正直、刀剣乱舞もわかってないですが(笑)



そんな近所の灯台がこちら↑

しかも声優揃えて本格的な展開をしている。日本財団関わってるならお金は持ってそう(笑:勝手なイメージ)音声作品多いから声優ファン向けなのかな?灯台ファンは別にキャラクターとか求めないですしねぇ。

声優の名前わからん自分でも置鮎さんとグリーンリバーライト氏はわかる!
シュラ声優さんもいた(・ゝ・)三重県の灯台(笑)近いから行きやすそう。
青二プロが担当してるようなのでキャラ名でならわかる人多いですね。まだ擬人化されてるのは半分くらいであと40人くらいは追加される模様(笑)伊良湖岬もまだっぽい。

何コレ状態ですが、灯台は好きなので地味に追ってみようと思います(笑)
昔、潮岬に行った時はとんでもない暴風雨で灯台どころではなかった…(゚∀゚`)あそこは再訪したい。
潮岬灯台の声優は瞬だったけど、まさかネビュラストームから選ばれたとか関係無いよな…。

ここ数十年で擬人化とか偉人・神話のキャラ化がめちゃ増えましたね。もう飽和状態と言うか。
刀剣乱舞も知らないなりに、五月雨ってキャラがいる事は知っている(笑)艦隊これくしょんも。
ゲームやる余裕が無いので手を出す事は無いだろうけど、そういうキャラは贔屓目で見てしまいますねー。

ーーー
話変わってあれから異母兄弟について考えてみました(・ゝ・)
アフロディーテも加えて。

ξ゚、ゝ゚・ξ へー、シュラが兄さんになるのか
ξ゚、ゝ゚・ξ よろしく☆兄さん♡

(゚Д゚)…
(゚Д゚)ケッ!オレサマ絶対に呼ばねー。シュラはシュラだ。クソシュラ!

兄さん♡ξ゚、ゝ゚・ξつ(・ゞ・)…ヤメロ

(゚Д゚)…ケッ!

(゚Д゚)…
(゚Д゚)…
(゚Д゚`)…

ニッ…ニィサン…(゚Д゚`)ボソッ…   Σ(・ゞ・)

早速兄弟ごっこを始めるアフロディーテを見て、キモ、と思っていたデスマスク。でも何かだんだん2人の関係が本当に兄弟みたいに見えてきて、無意識に嫉妬し始める。2人の前では兄弟ぶらず今まで通り突っ張り続けたデスマスクだが、うらやましさのあまりシュラを「兄」と呼ぶ練習を始めてしまう(流されやすい蟹)
兄さん、兄貴、兄、兄ちゃん…どれも恥ずかし過ぎると一人で悶える夜…。

ξ゚、ゝ゚・ξ      (゚Д゚)シュラはお前だけの兄じゃねぇ!

知ってるけど…ξ゚、ゝ゚・ξ      (゚Д゚)

ξ゚、ゝ゚・ξ    どうした(・ゝ・)    Σ(゚Д゚)

オレのシュラ兄さんを独り占めするな!だって♡
ξ゚、ゝ゚・ξ    (・ゝ・)    Σ(゚Д゚)

逃がさんぞ(・ゝ・)つ<`Д´;))ピィー!

やっぱオチがね…全く思いつかないのだ…。
モダモダが続きすぎて山羊蟹に辿り着けん…。

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2024
03,24
とある、頬が赤らむ描き方が見たことある表現多くて流行かと思っていたら、アレ多分そもそもペンで描いてるのではなくカケアミペン?か何か使ってるから別人でも同じ照れ頬になってんだなと今更気付く(笑)そうか…もう頬の斜線すら描く時代じゃないのか(笑)あの雰囲気をアナログで出そうとするとトーンになるから手間とお金かかるけど、デジタルなら手間じゃないもんなぁ。ぼちぼち商業作品とか見てますが、自分アナログ描きから全然アップデートできん(゚∀゚`)
で、この絵で試してみれば良かったと今思う(笑)またの機会にでも(∩゚∀゚)



一応オメガバ落書きですが首がよく見えないので、ただの痴漢に(笑)とにかくシュラと体の関係持ちたいΩ蟹(オメガニ)。お手伝いを申し出ては断られる(゚∀゚`)
デスマスクは体も同じくらい大きいし、手も同じくらい大きいし、何より口がデカい(と私は思っている)ただ喉までデカいかはわからん(笑)
お尻に手をつけるよりは圧倒的に負担が軽いだろうと思うけど、一つ許したら際限無くなりそうなので性的な事はお断りしているβシュラ。今は行為に進むことよりも、デスマスクが擦り寄って来ることの方が内心興奮する時期、みたいな。
(゚Д゚)「オマエもオレの事好きなくせにぃぃいい!」
と自信満々なデスマスクは見てるだけで可愛い(・ゝ・)

それとは関係無い話ですが、復活後設定でシュラが長生きする中で自分の髪がどんどん白髪に変わっていく…というのは何となく、デスマスクと一つになっていくのを感じて最後の救いみたいだなとは思います。
自分設定のデスマスクは復活後でも早めに亡くなり、シュラもそんなに長生きではなくアフロディーテが全てを折り畳んで終わるイメージでいるのですが(おそらく描く事はない)、シュラの髪が総白髪になるまで生きて終わる方が山羊蟹の復活設定の終わり方としては一番綺麗かなとは思う。
多分シュラは禿げない(笑)髪の毛、太くて硬そうだから(・ゝ・)白くなるタイプだと思う。
そう思うと、山羊蟹というのはそこまで完成されたカップリングなのか…と感心しかない(笑:全て妄想)

あと、星矢ならではのネタで多くの人が一度は頭を過ぎるであろうネタ…「シュラとデスマスクが実は異母兄弟だった」
スペイン出身でもスペイン人とは限らない…
イタリア出身でもイタリア人とは限らない…
ただ、この2人に関しては正直ガチ兄弟だったとしても恋愛感情に関して「だから何?」の一言で終わりそうだなぁと思って、自分の中ではそこまで話が広がらなかった(笑)
何というか「こう来たか!」というネタがあればぜひ読んでみたい。現代社会や学生パロではなくて、聖闘士のままで異母兄弟判明してからの展開。

(゚∀゚`)「え?何?お前オレっぴのオニーチャンになんの?同じ血ィ流れてんのキモ」
(・ゞ・)「お前みたいなクズが弟の方がキモい。全身の血を変えたい」
(#・ゞ・)(゚皿゚´)ギギギギギ…

でも、妙にテレパシーが通じやすかったような…と思うのは俺らが兄弟だったから?とお互い意識し始める…。そして急にデスマスクに対しての過保護が発動するシュラ。この「気になる」から始まった膨れ上がる想いは、家族愛なのか恋愛なのか…

多分、クライマックスはデスマスクのオニーチャン呼び。でもシュラからそう呼ぶなって怒られる。1歳も離れてない、って。
(゚Д゚)双子だってそうじゃん、半年も離れてたらニーチャンじゃん。
(#・ゞ・)言うな、やめろ。
(゚Д゚)…オレがクズだから?
(・ゞ・)…それもあったが、今は違う。
(゚Д゚)じゃあ何だよ
(・ゞ・)…言えるか、クソ!

シュラからいきなりキスされる蟹。

(゚Д゚)…何だよぉぉぉおおおお!

揺れる、複雑な想い…

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2024
03,20
 フェロモンを出したままデスマスクが聖域に戻った騒動の後、シュラはサガとの面会に強い意志を持って挑んだが、デスマスクに対して咎められたり強硬手段を取られる事は無く肩透かしを食らった。むしろ清らかなサガはどこか後ろめたい雰囲気でデスマスクの様子を気遣うほどであった。ただ「デスマスクはαと番う気は無いと言っている」とハッキリ伝えたシュラの言葉に「今は焦らず模索していこう」と、控えめに考えを改める気は無さそうな言葉を返してきた。

 巻き込んでしまったアルデバランや対決した聖闘士たちにはシュラが出向き詫びて回った。そしてサガよりもアフロディーテが最も恐ろしく、顔を合わせた瞬間にデスマスクから目を離した事をこっ酷く叱られた。本心からデスマスクを心配しての怒りという事が感じ取れたためシュラは何も言い返せなかった。説教をされる中でアフロディーテがデスマスクを傷付けてしまうかもしれない恐怖に震えていた事に気付き、シュラが来た事で心置きなく荒ぶりをぶつける事ができたという点だけは感謝された。何も嬉しくないが、自分の存在がデスマスクとアフロディーテの関係を守ったらしいという事は良かったと思う。デスマスクはαという存在を嫌うものの、アフロディーテ個人を嫌っているわけではないのだから。

 発情期が終わりデスマスクも聖域に戻ると、デスマスクは自分に対する周りの雰囲気が変わったように思えた。どこかΩが馬鹿にされていたような空気を感じていたものから、Ωを怖れるものへと。それを鼻で笑い、シュラと共に巨蟹宮まで向かったが私室への扉の前で足を止めた。
「どうした?」
「…ちょっと、嫌だな」
中へ入ろうとしないデスマスクの代わりにシュラが扉を開け、先に進んだ。
「誰もいないから大丈夫だ。…部屋も全て戻してある」
だから来い、と軽く両手を広げて部屋の中へ誘う。きっと、ここで見てしまったものがトラウマにでもなっているのだろう。デスマスクはシュラを見てその場所までゆっくり歩いて行くと隣に寄り添った。
「…なぁ、お前の宮に俺も住むことできねぇの?」
ぼそりと呟かれた提案にシュラは顔をしかめる。
「それはちょっと…理由が無いな…」
「Ωは狙われて危険ですから、で良いだろ。むしろ何で今までそうしてこなかったんだってレベル」
「基本的に黄金は自らの宮を守護しなくてはいけない。確かに外泊やら何やらで、あって無いような規則だが。それより俺たちが必要以上に近付く事は避けておいた方が良いと思う。お前は絶対にボロを出しそうだからな」
あくまでもここではβとΩを超えないように。そう言われたデスマスクは唇を尖らせると、シュラの腕を掴み居間の方へ向かった。
「だったらせめて、戻った初日だけお前もここに泊まってくれ」
「だから…「何か気持ち悪くて落ち着かねぇもん。お前の匂いでお清めしてくれよ。匂いわかんねぇけど」
ぎゅう、と腕を握って軽くもたれ掛かってくる。デスマスクの甘えた姿にため息が漏れた。
「…今夜だけだぞ、明日の朝は勝手に出て行くからな…」
んふっ…と満足そうに笑うデスマスクの体がポッと熱を帯びた気がして、シュラは慌てて開けたままの扉を固く閉めに戻った。

ーー

 年が明けシュラは21歳を迎えた。1月の終わり頃にはまたデスマスクの発情期がやってくる。聖域を経つ前に再検査を受けておこうと貴重な休日に検査機関を訪ね採血を終えたシュラは、帰りにロドリオ村へ寄り久しぶりに本屋の前で立ち止まった。
 デスマスクがΩかもしれないと知った頃、とにかくΩについて知りたくてたくさんの本を漁り読みふけっていた。あの頃の自分はデスマスクにどんな期待を抱いていたのだろう。Ωという希少な存在を見てみたい…それだけではなく、そのΩがデスマスクであれば良いのにと。その願いは呆気なく叶い、首輪を着けたデスマスクの姿を見た瞬間には芯から震えるものを感じた。
 似合ってる、かわいい、守ってやりたい、手にしたい、離したくない、俺のものになればいいのに…。
 自分の中に渦巻くαのような欲望を感じては振り切ってきたつもりだった。しかしβには手に入らないはずのΩはその欲望を次々と叶えていく。
 守られたい、離れたくない、愛してほしい、お前が好きだから…。
 それは、自分がαではなかったから選ばれたのだろうか?βだから、フェロモンに左右されない愛に憧れたΩに。ただ、どう足掻いてもβはαに敵わない。愛するΩを守り切れるのはα。βとΩがαの脅威から逃れる道は、今生に別れを告げることのみ。俺たちが愛を選ぶのは、無責任に聖域と世界の平和を投げ出すことにも繋がるだろう。この愛は平和を願うものではない。俺たちの、欲にまみれたもの…。

 店頭に並べられた生活雑誌を眺めてから、ふらっと店の中へ立ち入る。第二の性についてまとめられた本棚。何度ここに立ったことか。手に取りやすい平積みの雑誌を手にしてパラパラと眺める。雑誌のデザインや読者への訴え方はおそらく今風に書き換えられているが、中身としては知っている事がほとんだ。数百年前から知られていて長年研究され続けている第二の性は、そこまで頻繁に新しい情報が更新されたり新発見があるものでもない。何より自分はもう何年も本物のΩに寄り添って生活をしている。今なら自分が記事を書いた方が斬新な物に仕上げられそうな自信もあった。

 本を戻して店を出ようかと視線を動かした時、視界に「Ω」の文字が映った気がして無意識にそれを探した。いつもの場所とは違う、もう少し奥へ進んだところ…

――あぁ…こんなものまであったのか…
 踏み込んだ先は成人向けの雑誌コーナーで、その1冊が「Ω特集」の写真集だった。左開きの表紙には女Ω、裏を返して右開きの表紙には男Ω。首輪だけ着けた柔らかそうな裸は草花やレース、リボンなどで上手く芸術的に隠されている。
 絶対にやってくれないだろうが、こういう装飾は白い肌のデスマスクにも映えるだろうな…。
 そんな事を何気無しに思いながら雑誌を手に取ってみたが。

「……」
 中身を開いて騙されたと思った。Ω単体で写っている写真はおそらく発情期中のものかαに発情させられているあられも無い姿がほとんどで、更にはαと思われるモデルとの愛情よりも支配されているかのような品の無い絡みの写真も含まれていた。少しでも表紙のように芸術的なものかと期待した自分が馬鹿だった。
「…所詮、ただの性欲雑誌か…」
 何の魅力も感じない。こんなもので無理に発散するより、デスマスクの単なる寝顔でも見ている方がずっと満たされる。
 シュラは手に取った雑誌を静かに戻し、何も買わずに店を出た。

 …その様子を、店内で気配を消して伺っていた男がいた。その男はシュラが去った後、成人コーナーに立ち入り同じ雑誌を手に取った。パラパラめくる手が、震えている。
――あいつ、何でこんなものぉ…!
 下唇を噛んで、手にしていた雑誌を雑に投げ戻した。店を出るとシュラの姿は見当たらない。男は辺りを見渡し少し歩いてから、静かに姿を消した。

ーー

 再検査の結果は、何も期待していなかった通りβのままだった。むしろ数値が下がっている項目すらあった。シュラ自身それによって自分が弱くなったと感じるわけでもなかったので、特に気にする事は無かった。

 デスマスクの発情期が近付き聖域から連れ出す日、巨蟹宮でシュラは再検査の結果をデスマスクに見せた。チラ、とβの記号だけ確認したデスマスクは「もう検査しなくていいんじゃねぇの」と低く呟いた。
 十二宮の入り口まで二人で下りて行く中、デスマスクはどこか機嫌が悪そうで静かにしている。少し久しぶりに会うので嬉しさが隠しきれないような素振りをされるかと思っていたが、また早めに発情期が始まってしまうのではと考え、辺りの気配を探り、デスマスクを庇うようにすぐ側を並んで歩いた。

 今回隠れ家に向かったのは夕方。着くなり自分の部屋へ向かったデスマスクは夕食まで下りて来なかった。シュラはデスマスクの様子を見ていたが、熱っぽさは無く逆に冷めたような雰囲気を感じていた。普通に体調が悪いのかもしれない。リゾットでも温めるか…とレトルトを箱から取り出して準備をした。

 夜、階段から下りて来る音が聞こえる。シュラは扉が開く音を聞きながら、温めておいたリゾットを皿に盛り付けテーブルへ持って行こうとした。

「……」
 振り向いてデスマスクの姿を見たシュラは、違和感に立ち止まる。デスマスクもそんなシュラを見てソファーへ向かわず、手に持っていたリゾットの皿をわざわざ自分で受け取りに来た。
「……そんな衝撃かよ」
 シュラの目の前で首を傾げてみせる。いつもより、しなやかに曲がる首。
「お前、調子悪いのか…?」
 呟いたシュラは空いた右手を思わずデスマスクの首に伸ばして、触れた。柔らかく、温かい。いつも首をすっぽり覆っている保護首輪を着けていない。いや、それくらいはシャワー前後などでたまにあった。ただ黄金の首輪だけは何があっても外す事はなかったのに、それすら身に着けていない。7年前に見たきりの、何も着けていない無防備なデスマスクの首元。
「首が苦しい、とか…」
「何も無ぇよ。だってお前βだろ?二人きりなら守る必要無ぇし。それと、こんな状態のままどっかに消えて行きませんっていう意思表示」
 そう言ってデスマスクは首に触れる手を払い、テーブルにリゾットを置いてソファーに座り込んだ。シュラは寂しくなった右手でスプーンを二人分掴み、後に続く。
「お前ってβのくせに首輪ある方が好きとか?」
 スプーンを手渡すとデスマスクに問い掛けられた。「別に…」と答えてから考える。首輪は首輪で似合っているとは思っていたが、好きかと聞かれればそこまでこだわりも無い、はず。
「そりゃあアレは窮屈だからよ、これからここに居る間だけ外すことに決めた。βに噛まれても問題無ぇし。成人過ぎてαに変異ももう無理だろ…」
「わかった。好きにすればいい」

 そこから食事の間は言葉を交わさず、時おりスプーンが皿を打つ音が響いて終わった。
 シュラが洗い物をしていてもデスマスクはソファーに座ったままで部屋に戻る気配が無い。片付けを終えてデスマスクの元へ行くと、声をかける前に直ぐ隣の席を手でパタパタ叩かれた。
――普段は向かい合って座るが何か企んでいるのか…
 怪しく思いながらゆっくりと隣に腰を下ろす。
「何か話があるのか?」
「ちょっと気になってる事がある」
 デスマスクはシュラの問い掛けに答えながら、スル…と手のひらでシュラの太腿を撫ぜて。
「お前ってさ、今までどうやってコレ発散してきた?」
 ぐぐ、と体を寄せ、シュラにもたれて軽く股に触れた。その手は呆気なく払い退けられる。
「…どうも何も…普通に、だ…」
「普通に、何を考えてしていた?」
「わざわざ何かを考えるとかは無い」
 無い?とデスマスクは明らかに不満気な声をあげた。
「お前エロ本見てただろ」
 冷めた低い声で問われる指摘に今度はシュラが「はぁ?」と不満気な声を漏らす。そんなもの持っていないし興味も無い。

「この前、本屋で見てたのオレ知ってるからな!」
 …そう言えばそんな事もあった。下心で見たわけでは…と思ったが、デスマスクの裸がこんな風に装飾されたら、という妄想は下心で間違いないのか。
「しかもΩのな!俺の前では健全ぶってるくせに、そんな趣味あったのかよ!」
「アレはたまたま…「良い相手になりそうな子でもいましたか?!」
 すぐ真横に迫るデスマスクに押され、シュラはソファーの肘掛けを跨いで床に片手を付いた。まったく何を怒りだしたんだ。
「待て、ちょっと落ち着け。また発情期が早まるぞ…」
「早まってもお前に関係無ぇし。可愛くねぇΩの淫乱な格好なんて見ても萎えるだけだろ?!」
 その言葉を聞いて、あぁ…と納得したシュラは反らしている体を戻しデスマスクを押し返した。

「お前、勘違いして嫉妬したのか」
 よくある漫画みたいなこと本当にあるんだな、と続けると拳が飛んできたので避けた。怒っているのか恥ずかしいのか、眉間に皺を寄せたまま目が少し潤んでいる。そうか…急に怒りだしたのではなく、コイツは最初からずっと怒って不貞腐れていたのか。

「はぁ…お前の可愛さは見た目ではなくて、そういうところだ」
 いや…自分に限っては見た目も好みなのかもしれない。完全に男顔のデスマスクは"世間的に可愛いという表現には当てはまらない"というだけで、誰しも美形を好きになるわけではないのだし。
 地上で最も美しいらしいアフロディーテは美貌を称賛されるもそれが恋愛に直結している雰囲気は、長年見てきたがあまり感じられない。憧れる者は多くとも、手にしたいと追い掛ける強者はいなさそうだ。白銀には対抗心を燃やす男さえいると聞いた事がある。デスマスクと同じくらいアフロディーテの事も側で見てきたが、よく考えればアフロディーテに対して可愛いと感じたことは無い気がする。怖い、はよくあるが。

「お前は股を開いてあられもない格好なんか見せなくて良い。それは気持ち悪いとかではなくて、お前はそんな事しなくても何気ない素振りや仕草が可愛いから十分満たされるんだ」
 先程とは逆にじわじわ押し倒されてシュラに覆い被さられたデスマスクはソファーの上で丸くなって不満気なまま顔を逸らしている。
「…じゃあ、俺の事も考えたこと無ぇんだな…」
 小さく絞り出すような声が聞こえた。それが一番聞きたかったことか、と愛しさが増す。
「ずっと大事に守ってきている仲間をそんな風に扱えるか?」
「そんな綺麗事、言わないでくれ…」
 デスマスクは顔を腕で覆って隠してしまった。デスマスクに何かをしたりされたり、という妄想で処理をする事は本当に無かったが、体が熱を持つ切っ掛けのほとんどはデスマスクで間違いない。だいたいは目覚めた時に終わっている。起きている時、生理現象に襲われても普段から自慰を楽しんでいるわけでは無いので処理自体は直ぐに終わる。ゆっくり妄想なんてするまでもないというのが真実だ。
「お前は俺に考えてほしかったのか?」
「もぉいい…」
 自分に都合が悪くなったのか殻にこもってしまった。そもそもデスマスクの事を考えてしていたとして、それを正直に言うと思うか?好きな相手からそれを言われると嬉しく思うものなのか?例えば、シュラの場合デスマスクが発情期を癒すために自分との行為を考えながらしていたら、嬉しいと思うか…?
「…お前は、発情期の時に俺とのことを考えたりした事はあるのか?」
「ンなモンあるわけねぇだろ!ヴァーカ!」
 思い至ったままの疑問を口にすると、デスマスクは急に声を張り上げてからそのままテレポートでシュラの下から消えてしまった。

「…まぁ、意識も朦朧とする程だし何か考える余裕は無いよな…」
 一人取り残されたソファーの上で座り直しながら"あったとしてもアイツこそ素直に言うわけがない"と思う。ならば、自分との行為を考えていたとしたら?そもそも自分がどうやってデスマスクを抱くのかも想像できない。キスはした。キスをして、多分あいつのことだから自分から要求してくるかもしれない。触れてほしいところを、自ら体を開いて見せて…ん?そこまで大胆か?発情期の最中は積極的過ぎたが、実際は恥じらうタイプではないか?

「……」
 そんな事、真剣に考えてどうするんだ。おそらく自分がデスマスクを実際に抱くという事には至らないだろう。何か事故が起きない限り。妄想したところで虚しいだけではないか?妄想だけでも満たされるものなのだろうか?それで満足できるくらいなら、デスマスクもわざわざ抱いてほしいなんて口にしないだろう。
 もし「お前の事を想ってした事がある」と言っていたらあいつはどんな反応をした?素直になって「俺も」と本当の事を言うのか、それとも馬鹿にされるか。その先にどんな展開があった?まさか「妄想じゃなくて俺を抱けば良い」とか結局言い出して…。

「…気を抜かないに越した事は無いな…」その必死さは可愛いだけだが。
 溜め息をつきながらシュラは立ち上がり、シャワーを浴びる事にした。

ーつづくー

拍手

2024
03,17
「ンンッ…!ふ、はぁっ…!ァアッ…」
 しゅらとキスした、しゅらにキスされたぁっ…
 すき、すき、もっと触ってほしい、もっと触って、おれに触って、舐めて、なめてくれよぉっ…!

 シュラが部屋を去った直後、それまで効いていた抑制剤の効果は一瞬にして打ち消されデスマスクは強い幸福感と快感に乱れていく自分が止められなかった。聖域で体中を打ち付けた痛みは全く感じず、中途半端に服をはだけ脱いで、触れて欲しいところに手を這わせた。でも今回はそれだけでは足りない。ベッドからずり落ちて、這いながらΩを癒す道具を求めて引き出しを開けた。
 抱いてほしい、抱いてほしいけど、ダメだって…。注射するって…。
 ジワっと涙を滲ませながら道具と潤滑剤を取り出す。薬が変わってからずっと使っていなかった。
 今日は苦しくて使うんじゃない、もっと…もっとシュラを感じたくて、使う…。
床に寝そべりながら躊躇いなくパクっと口に含んで、先端が上顎を撫でるように動かした。ジンジンしてくすぐったい。
 あいつは多分、おれにこんなことしねぇだろうから、せめてここを舌で撫でてほしい…。でもおれがしたい、って言えばやらせてくれるか…?性欲くらい、βでもふつうにあるよな…。あいつ今までどうやって処理してたんだ?…なにも考えない、が一番いい。ただの処理だ。女なら…十分嫌だが普通に考えればそうだろうから仕方ない。他の男だけは、特にΩは絶対に嫌だ。おれだって男なんかあいつの事しか考えた事ない!
 ずるっと道具を口から引き抜いて、舌で小さく舐めた。
 おれのこと、考えたことあるのだろうか?おれにこんなことされて、とか…。
 ふやんと口元を弛ませたデスマスクは、シュラが自分のことを想いながら処理する妄想でいくことに決めた。こんな事を考えられているなんてドン引きだろうとは思うが、Ωの底なしの欲望に抗えない。自分だって被害者なんだと言い訳がましく体を開いていった。



 隠れ家に来て4日目の夕方、シュラが居間のソファーに腰掛けてスケジュール帳を眺めながら、そろそろ夕食の支度を始めようかもう少し待とうか考えていた時。デスマスクが下りてくる音が聞こえ、そのままシャワー室へ入ったようだった。普段ならまだピークの最中だろうが、今回は早めに来たため抜けるもの早いようだ。
――二人分だな。
ピークの終わりを記入してスケジュール帳を自室の引き出しに仕舞ってから、シュラは夕食の準備を始めた。

 シャワーの後デスマスクは当たり前のように居間のソファーで横たわり、夕食が完成するのを待つ。そして小皿に少しだけ盛られたペンネ料理が配膳されるとチマチマ食べて完食し、シュラの手が開くのを待った。
「ピークは予定通り過ぎたな、キツくなかったか?」
自分用の夕食を食べ始めるなり、待っていたデスマスクに話し掛ける。
「今はもう薬飲めば問題無ぇし」
ソファーで横たわったままシュラの食事風景を眺めて答えた。
「初日、体もボロボロなうえかなり熱が上がっていたようだったが」
「あれは…原因わかってっから…」
シュラにキスしてもらった事は思い出すだけで体がジンとする。一人の時意外はなるべく思い出さないようにしたい。

「…で、言いたい事はあるか」
発情期を挟んでしまって保留にしていた、初日にデスマスクが聖域へすっ飛んでしまった事だ。デスマスクは色々と自業自得だが、迎えに来たシュラに傷を負わせ体力も使わせた。Ωを避けていたであろう聖域のαたちを惑わせ、争わせてしまった。雑兵に至っては何人か死んだかもしれない。
「俺はまたお前の発情期が落ち着いたら先に聖域へ戻ってみるが…サガから何を言われるかわからんぞ」
「…番の話、とか?」
「あの惨状を経験して、即当てがわれるかもな」
確かに一刻も早くΩのフェロモンを抑制するには番を持たせる事だ。自分はシュラの態度に不満を感じて試すような事をやらかしてしまったが、αを巻き込んでしまい本気で首を絞める事態になりそうである。それでも…
「…その話が出ても、嫌だ、と伝えてくれ…」
「言うは言ってやるが、それが通ると思うなよ」
シュラに頼んでもどうしようもない事は分かっているものの言わずにはいられない。忘れていたαに対する嫌悪感がデスマスクの中で急に込み上げてきた。
「なぁ、お前は知っていたのか…」
「何をだ」
「俺が聖域に居ねぇ時、αが部屋に侵入してたこと」
食事をしていたシュラの手が止まる。デスマスクの方をチラリと見た。
「お前さ、たまに俺の部屋整理してただろ?あれってαに荒らされた部屋を片付けてたって事か?だとしたらかなり前からそうだったんだよな?」
「…気付いていたのか…」
「だからこっちが聞いてるだろ!」
シュラは目を伏せ、あぁ…と低く唸るような返事をしてから食事を再開した。それを見たデスマスクの体から力が抜ける。
「…現場目撃しちまったらよぉ…無理に決まってんだろ…。怖いとかじゃなくて、なんかもうスゲェ嫌。お前が言い出せなかった気持ちもわかるけどさぁ」でも、全く何も言わないは無いだろう…。
おかげで衝撃が倍増している気がする。整理された部屋に気付きつつ聞きそびれていたデスマスクにも非があるとは言え。
「αのフェロモン食らってそんな事どうでも良くなるくらいグッチャグチャにされてもよ、好きでもないαにされてもよ、Ωとして悦ぶだけなんだろうなとか考えると死にたくなるぜ…」
ぼそぼそ呟く言葉を俯き気味で聞いていたシュラは、そっとフォークを置くと静かに語りかけた。
「…αへのマイナスな感情を与えず説明することができなくて、結局お前に伝えられないでいた。まだ発情期の症状が不安定だったのもあって余計な不安感を抱かせたくなかったんだ…が、早く正直に話すべきだったな。すまない」
「もういいけどさぁ、そんなだからこれから俺にα薦めるのはやめろよ?」
仕方ない、という表情を見せてから食事を終えたシュラが立ち上がりシンクへ向かう。デスマスクは洗い物をする姿を横から眺め、水の音に負けないよう声を張って自分が気になっていた事を聞いてみた。

「お前ってさ、オレが消えたのいつ気付いた?」
「そもそもいつ消えたのか定かではないのだから、早いか遅いか俺にはわからん。気配が消えていることに気付いた時、隠れているだけかと森も見たがどこから入っていったのかもわからんし見当がつかなかった。探っても動物がやけに集まってる場所があったくらいでお前はいない。コスモを辿ってみれば聖域の方から僅かに感じて、まさかそんな馬鹿な事とは思ったがお前ならそれくらいの馬鹿やってもおかしくないもんな」
…シュラが一気に喋る時は多分、何かしら感情が溜まっている時だ。途中でこちらが返す隙もない。
「既にフェロモンが出ているかもわからないし、単に忘れ物を取りに行っただけかもしれない。それでも俺に一言も無いのはおかしいよな?万が一の事を考えて聖衣で向かったが正解だった。生身でα黄金の攻撃を食らうにも限界がある。実際、聖衣を着ていても未だに体が痛い。もう4日目だぞ?」
「…あぁ、ぅん…負傷させて悪かったって…」
「いや、悪いばかりではない。十二宮へ着くなりお前のフェロモンに酔っているらしいαの青銅と白銀がいたのだが、ちょうど戦ってみたいと思っていたからそれは好都合だった」
「…へ…そうなのか…試せてよかったな…」
入り口付近で倒れている青銅と白銀は見た。金牛宮と白羊宮の間辺りから十二宮の入り口までフェロモン飛ぶなんてほんとオレっぴ最強Ω♡…だなんて言ってられない。
「ならば、αの青銅と白銀はβのお前でも倒せたんだ?」
「雑兵に比べると安易ではなかった。だからお前が巨蟹宮辺りにいる時点で俺は聖域に来ていたが、かなり時間がかかってしまったな」
確かにそれならアフロやサガと対峙してるより時間がかかっている。まぁ二人からは逃げただけだが、アルデバランなんかほぼ一撃で吹っ飛ばして終わらせたと言うのに。シュラ自身、αだろうと青銅や白銀に対して高を括っていた感はあるが"ちゃんと倒す"にはそれなりの闘い方が必要だったのだろう。
「そうか…来てたのか。全然感じなかったぜ、お前のコスモ」
「感じない方が危機感あって自分で努力できたんじゃないのか?」
「そりゃあオレサマは自力で抜け出すつもりだったぞ!」
「フン、俺が出てきた途端へろへろに力が抜けていったくせに」
あとは任せた、ぐらいにな。と言われると否定はできない。シュラが来てくれた事を認識した瞬間は泣きたいほど安堵して、まだ危機を脱していないというのに抱き上げられただけで自分はもう助かった気分でいた。アフロが追いかけて来るまでは。
「アフロの言い草では俺の登場が余程嬉しかったようだな。体力は無くてもフェロモンは無限に出せるものなのか」
「…んな事、俺にわかるわけねぇだろ…」
 洗い物も終えたシュラは再びソファーに戻りデスマスクの向かえに座る。

「馬鹿な事をした自覚があるのなら答えろよ?お前はなぜ聖域へ向かった?αを弄ぶためか?」
「……それ、言っていいのか」
「聞いている、答えろ」
真っ直ぐ見てくるシュラの視線が、まるで答えを知っているのにわざと引き出そうとしているようで、自分の口から言えと命令されているようで、その圧力はちょっとαっぽくて息苦しくなる。
「…αはどうでも良くて、お前が、ちゃんと…どこまで俺に本気になって、追い掛けて来てくれるかって…」
モゴモゴと聞き取りにくい喋りで本音を明かすと、溜め息が聞こえてきた。
「…やはり。なんとなくパターンは見えてきた。お前、俺のことを考えるとフェロモンが出るんじゃないのか?」
そんな恥ずかしい事、ハッキリ言わないでくれ。
「知らねぇよ!自分でわかんねぇんだし、お前もわかんねぇんだし!」
「アフロはわかっていた。おそらく…わかっていて、お前との番にも消極的なんだ」
理性が切れるとあんな状態ではあったが、素のアフロディーテは昔から仲が良くても友人関係を超える事はなかった。デスマスク自身にその気は無かったし、アフロディーテも…。多分、きっと、そう…思っているだけなはず…。俺がシュラを好きとか、最近の事だし…。まさかバレてて遠慮とか…。

「来年、俺が21になったらまた検査は受けてみるが…βで揺るぎなければ、お前もちゃんと考えろよ」
「…アフロにしとけ、って事言ってんのか…だからαとは
「誰とも番にならない覚悟が決めれるのなら、そうとは限らない」
どういうこと…とシュラの顔を見た。
「それは俺にとって、最善で最悪の結末だ」
囁くような、低く小さい声で告げられる。
もう、そういうのが狡い。とにかく狡い。そんな聖域や世界のこと何も考えて無ぇ発言。俺のためにそこまでできるって宣言と受け止めてしまうぞ。

「…βがΩを命がけで大事にするのって、やっぱ、そういう事だよな…?」
シュラからちゃんと引き出したい。自分をどう思っているのか。少し上目にジッと見つめて言葉を溢した。
「お前の場合、言うだけ無駄だろ。俺が使命感から大事にしてるだけ、とかグチグチ考えて結論は一生出ない」
もうそこまでお見通しでデスマスクの事を知り尽くしている。なんでわかるんだ。鈍感な時は演技なのか?ってくらい急に鋭くなるのは何なんだ。そしてシュラのように圧力を掛けたいと視線を送っても全く動じない。お前の眼力どうなってるんだ。
「俺がどれだけお前を追い掛けても、お前は満足しないだろう。一生、死ぬまで、ずっと、永遠に。それを望んでいる限り、お前の俺に対する願望は底無しだからな」
再びシュラがデスマスクを強く見返す。顔を逸らしていても視線を感じて合わせてしまう。そうなるともう、真っ暗な瞳に釘付けで…
「死を以って愛を知り、終わりを迎えるはずだった。なのにお前は死を終止符としない。死を迎えても満足できない欲望を抱え、俺を追い掛け続けている。やがて次の生へと繋ぎ、姿を変えても、性を変えても、俺を必ず見つけ出す」
「…なんの、話…」
「俺と、お前の話だ。死んでも終わらない。どれだけ愛を貪っても満足しない。それをずっと繰り返している」
「…俺は、知らねぇ…。じゃあ、俺に好きって言っても無駄だから言わねぇって事か?…俺の、せいになんの…?」
愛が足りない、いや愛され続けても満足できそうもない飢えには自覚がある。シュラから言葉を引き出したい今この瞬間のように。それはΩに人生を狂わされてから自分が変わってしまったのか、押し込めていた生まれ持った性がΩによって解放されたのかはわからない。でもそんな風に言われると自分が責められているようで、それが悪い事のようで、寂しさと苛立ちが同時に湧き上がってきて体がフルっと震えた。

「…いや、すまない…」
ハッと目覚めた表情を見せたシュラがソファーを立ち上がり、横になっているデスマスクの前に跪く。眉間に皺を寄せたデスマスクの頬に触れようと手を伸ばせば、片手で払われた。
「…俺は、お前が好き。お前は?俺のこと好きだと思ってんの?」
真剣な硬い声が響く。直ぐに答えないシュラの顔を見てデスマスクの口がへの字に曲がる。
「…αに渡したくないと思っている」
「それが限界?」
やっと答えたシュラの言葉には何も満足できなかった。そんな曖昧な事が聞きたいのではない。無駄と切り捨てないで、今だけでも満たしてほしい。
「…この前、キスをしただろう。お前はあれをどう思う?同情でしてやっただけと思っているのか?」
「なんでそんな頑ななんだよぉ!」
自分で考えても答えが出ないから聞いているというのに、言っても無駄だとか、わかってるだろう?とか、そんなことばかりで逃げないでくれ。発情期のピークは終わったはずなのに、抑制剤も飲んで効いているのに、体が熱ってくる。自然と涙目になって、多分、今、ものすごくフェロモンを出している気がする。
「ここは誰も居ねぇからいいだろ?!誰にもバレねぇじゃん!俺が好きなら言ってほしいし、キスして抱いてほしいんだよ!何でお前だけ…何で、こんな、好きになっちまったお前だけぇ!」
「俺と、お前の違いだろうな…。アフロならきっとお前が望むものを与えてやれただろう。だが俺はそれができない。だからずっと俺たちの間には一定の距離感があった。違うんだ。俺たちはどれだけ前に手を伸ばしても掴めない。見えない後ろに手を伸ばしてみて、初めてお互いを捕らえることができるのだと思う…最も離れている、山羊座と蟹座の位置関係のように」
「お前ほんっとめんどくせぇ!お前なんか好きになりたくなかった!もう一生βでいろ!一生βで一生俺の世話してサガにボコボコにされても死ぬまで俺をαから遠ざけてろ!」

 デスマスクは目の前のシュラを片手で何度も殴る。シュラはそれを避けず、体に受け止めて背後のテーブルがガタンと揺れた。シュラももうデスマスクを手放したくない事は自覚しているが、αのように正々堂々と表に出す事ができなかった。時々、自制できない気持ちの荒ぶりを感じ何かを口走っているというのに自分は殻を突き破れず、βの平凡さと弱さがこんなところでも感情を押し殺してしまうとは。
…いや、それなら、まだ良かった。
 本当は弱さとかそういうものではなく。ただ、デスマスクの意識を自分に向けさせ、わざと追い詰めさせているだけなのでは…?
 そう思い至ったシュラは無意識に奥歯を噛み締めた。心が、どこか落ち着かない。噛み合わせが悪くなっているのか犬歯が口内や下唇を傷付ける事が最近よくある。食事中など口の中を噛んでしまうことは昔からあったのに、なぜか最近それが気になる。αでもないのに、自分がデスマスクを傷付けてしまいそうな錯覚が…。

「ちょっ…やめろよ!」
 殴られていたシュラは不意にデスマスクの手を捕らえ、ソファーで寝ていた体をそのまま抱き上げた。
「責任を持って、世話はしてやる」
 そう告げて、デスマスクの顔を見る。怒っていたデスマスクはシュラを見上げた途端、強い視線に戸惑う表情を見せた。強気なデスマスクが息を潜める瞬間はゾクリとする。そっと顔を寄せて…キスくらい、してやろうと思えばできるが、しない。そう思うのはβの自制心なのか自身の駆け引きなのか。
「体が熱っぽいな。またフェロモンが溢れているのか…」
 かわいい体だな…と耳元で囁いて抱く腕に力を込める。その言葉にデスマスクはもう一撃シュラの肩を殴ってから胸元に赤くなった顔を埋め大人しくなった。より体が熱っぽくなった気がする。
 かわいい、なんだかんだ言って俺には敵わず必ず折れるデスマスクが。俺が、守ってやらなくては。
 シュラはゆっくり居間を出て階段を上り、まだ発情期中なので部屋の前でデスマスクを下ろした。

「望むものを与えてやれなくてすまない。上手く言えないが、お前の気持ちが無駄にならないよう努力はする。それを見ていてくれ」
「……」
「βとして、俺が死ぬまではお前が望むまま守ってやる。何を敵に回しても」
 その言葉にデスマスクは俯いたままシュラの体を引き寄せて抱き締めた。心を掴ませてもらえない代わりに、ギュッと抱き締めて心音を重ね合わせる。デスマスクの方が少し速い。しばらく無言で抱き合ってから、やがてするりと腕を外したデスマスクは静かに部屋の扉を開けた。

 扉が閉まるのを見届けたのち、シュラはゆっくり階段を下りて居間のソファーへ戻る。先程までデスマスクがいた場所に腰を下ろすと、なんとなくまだ温かいようで愛しさが込み上げてきた。
 デスマスクのΩ判定が出てから7年。聖域から言われるがまま従ってきたβとΩの関係に一つの区切りがついたと感じた。アテナが謳う愛と平和は同じ軸にあると思っていた。しかし、この選択は…。
「ハハッ…そう決めたからには、貫くしかあるまい」
 デカい口を叩くだけで果たせない間抜けな奴にはなりたくないからな。そう呟きながら、愛を選んだシュラはソファーに横たわって聖域の、世界の平和について考え始めた。

ーつづくー

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2024
03,16
突然フリータイムができたのでオメガバネタ絵を描こうと思ったのですが、一回思い付いたけどメモる暇が無かったネタが何なのか全く思い出せない…(゚Д゚)
外へ出掛ける直前に思い付いたんだよね…ストックしてあるネタよりいいやつ!と思ったけど全く思い出せん(笑)いや大したものではないけども。

なので、とりあえず半裸でも描きました(゚∀゚`)



全裸ではない…首輪してるから半裸だと思う…(・ゞ・)

Ωになると体より首を死守する感覚がわからん、とか思ってる初期のβシュラ。そりゃ首は生涯の傷になりかねないのはわかるけど、だったら体も守れよとか考えている。
シュラだから裸くらいいーの、という蟹心はわかってない。
若い頃からデスマスクの誘惑をかわしてきたシュラにはもはや一般女子の一般的な誘惑は全く効かないであろう(・ゝ・)

……「デスマスクの誘惑」ってだけで何か圧があるね…受け蟹思考のきゅるるん妄想ではなく、原作軸デスマスクで考えると(笑)このタイトルで本を出すと、ギャグ本なのかガチ本なのかわからないかもしれない(゚∀゚`)

表紙は"もしも「デスマスクの誘惑」という中世耽美主義絵画があったら"風で。描ける自信は全く無い(笑)表紙だけで1ヶ月かかるやつ。
中身は誘い受け&襲い受けデスマスクがとにかくひたすら塩対応のシュラを誘惑しようと頑張る本。最初はギャグでひたすら玉砕。デスマスクも別にシュラが好きというわけではなく悪戯感覚だったけどだんだんエスカレートしてR18に突入。
最後にはシュラに本気になってしまい、シュラに関わる他キャラ(アテナとか紫龍とかロスリアとかアフロとか)に嫉妬して嫌がらせを始めてしまう。そして、さすがに放っておけなくなったシュラからの問い詰めに、みんなの前で泣きながら告白させられる。
…いや、なんかだんだん可哀想なことに…(゚Д゚)
せめて、みんなの前で、は止めておこうか…。シュラに裏へ引っ張られて悪さを責められ、泣きながら「ごめんなしゃいオレっぴ本気の本気でお前がしゅきなのぉぉぉ〜!だからオレのことは嫌いでも他の誰とも付き合わなでくだしゃいぃぃ〜!」みたいな事を言いながら泣き縋ってるのが外まで丸聞こえだった…くらいの展開に…

正式にシュラに受け入れて貰えたデスマスクは心が満たされ豊かになり、悪さもしなくなった。シュラに愛してもらうほど、全く無かった色気も増してきた…。
「きれいなデスマスク」になったデスマスクを一目見たいと、聖域の色々な者がデスマスクに視線を向けるようになった。今やデスマスクはただ立っているだけでも人々を魅了してしまっている。
その「デスマスクの誘惑」を今度はシュラが許せなくなって、聖域を出て2人暮らしを始めて存分にデスマスクを独り占めしてラブラブめでたしめでたし♡

…という本…(・ゝ・)

描ける気はしないけど読んでみたいな。
復活後開始設定。基本ほのぼの?ギャグかな。
候補には入れておこう。(゚∀゚)φ

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2024
03,14

«円周率»

本日より3月中はほぼ夜しか創作時間が取れないのでペースが落ちる見込みです(゚∀゚`)
…と、言うほど普段も更新激しくないですけど(笑)4月から挽回できるか?

オメガバ文が更新できたら…と粘っていましたが、今の展開に難航中。スラスラ進む時との落差が激しい。数行に数日かかったり一気に数千字進んだり。〆切があるわけでもないのでじっくりいきます。

秋の大系、9月かと思っていたら10/27でした(・ゝ・)
祭りも終わってるので予定さえ無ければ出ようと思います(゚∀゚)ノ
なるべく出たい。特に他のジャンル買いたいとかもないですけど(笑)でも急にハマるかもしれないし!久々に会場ブラつくか?
新年度の年間予定表出てから夏まで様子見ではありますが、イベント直参は秋重視で考えております。6月は出れたら行くけど新作無いかもなので(゚∀゚`)

今までに、会場ブラついて何となく買ったら刺さって今でも残してる同人誌にルパン三世の「VS複製人間」本(要するに映画版)があります。カプ無し。完全に大手作家でもないごく普通の同人誌ですが、最後の峰不二子の台詞にやられてずっと残している。
実家帰省してたまに読むと、やっぱいい(笑)こういうの作れたらなぁとも思える一冊。
そんなファン作品を見つけると、あー同人って良いなぁと思いますね〜

そしてホワイトデー…今日まで頭から抜けてました(゚∀゚`)
バレンタインはネタを描くけどホワイトデーは描いた事無いかもしれないなぁ。だいたいバレンタインだけでネタが完結すると言うか、デスマスクが贈ると言うよりシュラが贈る(告る)パターンが多い。

リアルでもホワイトデーは忘れやすい(笑)友人の間でチョコをあげるにしても交換して完結してしまうもんね…あえてホワイトデーに…ってやらんもんね…。

昔3/14生まれの先輩のナンバープレートが「3.14」になっていて我々文系組は「そう言えば誕生日ホワイトデーですね」と言ったら、本人と理系組が揃って「いやこれは円周率でしょ」って返されたのは今でも忘れられない(笑)根本的に思考が違う(・ゝ・)

というわけでかれこれ15年くらいは会っていないであろう先輩、ハピバ!
そして過ぎ去りしアフロディーテ誕…おめでとうございます!ξ゚、ゝ゚・ξ
申し訳ない役回りばかりさせてしまってアレですが、なるべく今年もアフロ描こうと思ってはおります。
実現は未知数…。


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2024
03,08
オメガバ文、10万字無理です…(゚∀゚`)今で9万字くらい。
余分なシーンが増えに増えて、pixivにまとめる時にどこかごっそり削るかどうか。ブログではとにかく完走目指して書き連ねていくので長ったらしくなります。同じこと書いてる…と自分でも思う箇所があるのでそういうところはまとめる時に整理したい。

いやしかし、長い話を書くに1番の難関はストーリーがどうこうよりも確認で読み返すだけでかなり時間がかかる点(笑)なので序盤1万5千字くらいまでは何度も最初から読み直して修正してが安易でしたので完成しているのですが、それ以降がグダグダになっていくという。

当初の予定よりかなり早い段階で相思相愛になってしまっているので色々と元ネタから修正してます。そのせいで何か余計なシーン増えたんだな…。
あとは21歳と、22歳でシュラがα化→番、23歳十二宮戦、死後〜ラスト…。先は見えている…3月中完結は無理かもですが。そして本にするのも6月パラ銀無理そう(゚∀゚`)早割〆切が4月末か5月頭だと思うとちょっと微妙。8月?星祭りの時にはできてると思います。



定期的に絵も描かないと…と突然のコスパロ2。
古い作品ばかりでアレですが、我が永遠の聖典〜Bible〜なる田村由美さんの「BASARA」より柿人と銀子。いつも言うけど戦国ゲームではない(笑)最近だと実写化してた「ミステリと言う勿れ」も田村由美さんですね。

BASARAは漫画仲間と居酒屋で本気泣きしながらBASARA語りをしたという黒歴史を抱えるほど好きで、多分これを読まれると「五月雨の山羊蟹はほぼBASARAのパク…影響受け過ぎやん」と言われても仕方ないくらいにはBASARAです(・ゝ・)
いや山羊蟹がと言うより漫画の構成とか言い回しだな。コマ割りとか詰まったらBASARA、ドリフターズ、ドラえもんを確認する(笑)

柿人の銀子に対する責任感と愛の深さがそれはもう切ないし格好良い。淡路島で主人公が初めて柊と対峙するまでの流れがほんと柊のヤバさ(強さ)を煽ってきて好きです。こういう漫画が描けたら最高だけど私には無理だ(゚∀゚`)
ラスボスが誰かと言えばおそらく国王ではなく銀子なのだろうと思いますが、ただの悪女ではないし、そこで主人公と重なるのか!と実に柿人と銀子の関係がニクい。

山羊蟹を重ねたつもりはないけど、色々と山羊蟹話を描いていくうちに「あ〜山羊蟹の理想と似てるな」と思いまして。いやこれも山羊蟹と言うかシュラのデスマスクに対する理想が柿人、だな。

うむ、既に何を言っているのやら状態かと思います。語りがとまらなさそうなのでここまでにしておきます(笑)
それではまた。

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2024
03,07
ーデスマスクがいない。確かに強く抱いていたはずなのにー

そう感じて意識が戻った時、真っ暗な視界に自分は眠っていたのかと瞼を開ける。シュラは隠れ家の、狭い自室のベッドの上にいた。聖衣は脱がされている。起きあがろうとすれば全身に痛みを感じた。
聖衣を着ていてこの様か…
ゆっくり上体を起こしてベッドから立ち上がろうとすると、すぐ脇の床の上でデスマスクが倒れていた。
「デス?!おい、大丈夫か?!」
床に下りてそっと抱き上げる。頬に触れると熱っぽく息が荒い。そのままデスマスクを自分のベッドに寝かせた。
 この状況を見ると十二宮から戻った後にデスマスクはシュラを介抱したのだろう。途中で力尽きたのか、部屋に戻らず目覚めを待っていたのか…。シャワーを浴びたようで前髪は下りており、首には保護首輪を巻かず金の首輪だけ輝いている。腹が立つことも多いが、無防備な寝姿はただ愛おしくて、そっと頬を撫でた。

 デスマスクの気持ちが自分に向いているだろうということは気付いていた。シュラは自覚が無い頃からずっとデスマスクを見つめ続けているのだ、アプローチに本気で気付かないほど鈍感ではない。シュラ自身もデスマスクに好意を向けられるのは嫌ではなかった。βとしてΩの世話を任されてから、以前にも増してデスマスクの事が気になりデスマスクを思う事が増えたのは事実である。なぜデスマスクの事を考えてしまうのだろう?そんな鈍い事を思うのも今ではわざとらしい。シュラはもう心の中で自分もデスマスクに惹かれている事を認めていた。だからβとΩの関係が無くともデスマスクのために尽くしてやる事は苦にならないのだ。ただ、それをハッキリ伝えてやれない。Ωはαと番になる。βは捨てられる。デスマスクのためではなく自分のために好意をハッキリ伝えることができなかった。
 今回、とんでもない事をやらかしてくれたが自分の曖昧な態度のせいで引き起こした事故なのであれば、強く怒ることはできない。デスマスクは時々、自分に欲しい言葉を待っているような素振りを見せる。曖昧な、どちらとも取れる言葉しか掛けてやれないから、嬉しそうな顔をした後に不安を滲ませる事もある。そこまでシュラは見ていた。自分に好意を向けてくれるデスマスクが可愛い。手放したくない。でもどうしようもない…。サガから与えられる猶予はどれくらいだろう?その時が来たらデスマスクを送り出せるのか?デスマスクは従うのか?デスマスクが従うと決めて離れた時、自分は…デスマスクを許せるのか…?
「っ…」
無意識に強く噛んだ唇は犬歯が食い込み血の味がジワりと広がった。
――暗い、未来しか見えない…。
ベッド脇で床に座ったままシュラはデスマスクの手を握る。顔を寄せて、デスマスクの熱だけを感じ、何も考えなように目を瞑った。



「…ぅ…ゴホッ!ゴホッ!」
抑制剤の副作用もあり深く眠っていたデスマスクは不意に喉の渇きを感じ咳き込みながら目を覚ました。
「…んぁ?…」
ベッドの上にいる。自分の部屋ではなくシュラの部屋の…。いや、ここにはシュラを寝かせたはずだった。

 隠れ家の玄関先にテレポートした後、シュラは自分をキツく抱いたまま意識を失っていた。なかなか離してくれないのをどうにか抜け出し、聖衣は今の自分には重いので一つ一つ外し、それでも重い体を引きずって家の中に入れた。とにかく発情期の熱っぽさをどうにかしたくてシュラを居間の床に置いたまま自室へ抑制剤を飲みに行き、サガたちに触られた事が急に気持ち悪く思い出されたためシャワーも浴びた。シャワー室で座って、何度も泡をつけて擦った。次第に薬が効いてきて眠気に襲われながらも、濡れたタオルで簡単にシュラの体を拭いてやる。居間のソファーでも良かったのにすぐ隣にある狭いシュラ部屋までずるずる引きずっていくと、最後の底力でベッドの上へドサっと乗せた。
 ここまで全然起きない。眠るシュラの顔を見ながら、深いダメージを負わせてこんな状況なのに「今ならキスできるかも…」と馬鹿を超えた欲望がデスマスクに湧き上がる。何せ発情期の初日なのだ。
「キスをしたら、目覚めたり…?」
甘いお伽話の妄想にふわついてヘラっとニヤけたデスマスクはシュラに手を伸ばそうとしたが、自身を覆う熱っぽさと強い眠気に負けて頭から床に倒れ込み、そのまま意識を失った。その後入れ違いでシュラが目覚め、今の状況である。

「起きたのか?」
部屋の扉が開いてシュラと目が合った。途端に居た堪れなくなって視線を逸らす。
「自分の部屋へ行くか?明日にはピークが来るだろう?」
話し掛けられるとシュラの声が体に染みるようで肌がジン…と疼き、触れたい気持ちが芽生えてきた。我慢して、震えそうな指先をギュッと握り込んで口を開く。
「お前…大丈夫か?酷い出血は無いがかなり技を受けただろ…」
「普通に動いてはいるが、全身痛くて仕方ない」
「…だよな…」
シュラがベッド脇まで寄ってきてデスマスクを見下ろした。
「…全く、とんでもない事をしてくれたな」
その言葉にデスマスクは首を垂れる。
「さすが黄金のΩと言うか、あの状況で強姦されなかったのが不思議なくらいだ」
 今回デスマスクが無事でいられたのはシュラが助けに来た以外にもある。Ωのフェロモンが強過ぎたせいなのかαたちが誘惑フェロモンを使ってこなかった点だ。そうする余裕が無かったのかαたちは共食い状態で、争う事を優先していたようだった。
「いや、それを求めて行ったのなら助けてやった事が迷惑だったか?悪い事をしたな」
シュラの言葉に何度も首を振って見せる。
 助けに行った時、デスマスクが必死に抵抗しているのはわかった。腕に抱いた時、心底安心したように身を委ねてくれた事も。だからこそ命を張ってでも先ずはあの場から救出したいとシュラは努力した。

「…言いたい事があればピークが済んでから聞いてやる」
ベッド脇にしゃがみ、黙りこくっているデスマスクを抱いて部屋に連れて行こうと立ち上がった。
「?!…ァンッ!」
デスマスクは突然の事に甲高い変な声が出てしまったと慌てて口を手で覆う。シュラが顔を見ると真っ赤だ。
「…今更、そんな初心な事しなくても…もっと凄い姿をもう見せられてるんだぞ」
ククっと笑って二階の部屋へと連れて行く。デスマスクは眉間に皺を寄せ、熱っぽく潤んだ瞳でシュラを睨んだ。可愛いだけで全く凄みは感じない。

 狭いシュラの部屋から広い部屋、広いベッドの上に優しく降ろされる。
――今、手放すとこのまま数日シュラに会えなくなってしまう。
そう思ったデスマスクは背中から抜けていくシュラの腕に縋った。
――何か、何か引き留めるものは無いか…?!
縋るデスマスクの手をシュラがやんわりと退けようとする。
――まだ行かないでくれ!行くのなら…せめて…何か…
もう一度、強くシュラの腕を掴んで、

「きっ…キス、できねぇか…?」
「……」
「ほっぺとかじゃなくて、ちゃんと…。俺、色んな奴にキスされそうになる度にどうしても嫌で回避できてたけどさ、でももう次があるとダメかもしんねぇ…だから…最初はやっぱ好きな奴と済ませておきたいんだよぉっ…」
「……」
「前にも言ったが、αじゃなくてお前が良いんだよ…。お前はどう思ってるか知らねぇけど、Ωを助けると思ってでもできねぇかなぁ…?」
「Ωを、助ける…」
「そうだよ、お前βだからΩの発情期は癒せないって言ってたけどさ、鎮める事はできなくても俺の心はそれで癒されると思うんだよ!そう思わねぇか?だって、やっぱ、好きでも無ぇαより好きな奴の方が良いに決まってるだろぉ?!」
 熱っぽく潤んだ顔であまりにも必死に訴えてくるデスマスクが可愛いくて、愛おし過ぎて、あぁ、もうどうしようもないな。βにはフェロモンが効かないというのに、この魔性の男は…。
 以前ならばこの程度でも緊急抑制剤の使用を考えたかもしれない。ただ、自業自得とは言え先程の馬鹿な行動で怖い思いをした反動かもしれないと思うと、今は慰めてやりたい気持ちが勝る。これに応えるとデスマスクはどう受け取るだろう?デスマスクなりに逃げ道を用意してくれている言い様でもある。それとも、それほど必死なのか。

「…俺は、ちゃんとキスをしたことがない」
その言葉にどこか嬉しそうな表情を浮かべてから、戸惑う顔を見せた。
「あ…お前も初めては、好きな奴がいい系…?」
「…そこまでこだわりも無いな…上手くできる自信はない」
「上手いとか下手とか無ぇって!ちょっとやるだけだから!」
希望を見出したのか掴んでいるシュラの手を引いて、勢いのままやってしまえと急かしてくる。その場にしゃがみ、掴まれていない右手でデスマスクの頬を包んだ。

「…仕方ない…今回だけ、Ωのために」
低く、小さな声で呟くと「ん…」と短な返事が返る。そっと顔を寄せてみれば、せがんできたくせに顔を引いて逃げた。
「お前、唇切れてる…」
「そんな事、今はどうでもいいっ」
「んんっ!」
逃げたデスマスクの顔をグッと引き寄せて唇を合わせる。直ぐに離すとキョトンとした顔でシュラを見た。
…足りるわけ、ないよな…
「っ?!」
もう一度顔を寄せて唇を合わせた。今度は軽く食んでみる。普段は冷めた肌をしているが、さすがに今は温かい。気のない素振りを見せたところで欲張りたくなるのはシュラも同じだった。顔を離して、掴まれていたデスマスクの手を払い、肩を押してベッドに沈め覆い被さる。デスマスクの胸は大きく上下に揺れてどんどん熱が上がっているようだ。癒すなんてとんでもない。上がり続ける熱で壊してしまいそうだった。それでもシュラは再び顔を寄せてデスマスクの唇を舐める。つぐんだままの唇に指先を差し込んで、開けろ、と下唇を揺らす。ふわっと開かれた歯の隙間から指を滑り込ませて舌に触れた。熱い口内。デスマスクは切なそうに眉を寄せ、潤んだ瞳でシュラを見上げている。すり…と太腿を合わせてそこに右手を挟み込むのが見えた。
――限界、か…。
指を抜いて親指で下唇をひと撫でし、最後にもう一度唇を重ね合わせてそのまま舌を差し込んでみる。
「っ?!」
熱い口内への侵入を許されてデスマスクの舌を軽く撫でるように舐めた瞬間、びくんと体を震わせて息を漏らしながら何度か腰を捩った。デスマスクを見つめながらそっと顔を離していくと、薄く唇を開けて苦しそうなのに続きをねだるような素振りを見せる。離れていくシュラの顔を引き寄せようと伸ばしてきた左手は、指を絡めて捕まえた。

「ここまでにしよう。抑えが効かなくなっているぞ」
お互いこれ以上は歯止めが効かなくなりそうだ。既にデスマスクの理性は途切れそうで危うい。シュラ自身も体に僅かな疼きを感じ、息を吐いた。絡ませた指を撫でながらデスマスクから身を離す。
「最近はピークが3日くらいだな。俺は下で待っているから、頑張れ」
「…がまん、できねぇっ…」
「頑張れ、待ってる」
「しゅらぁ…」
「ここにいれば大丈夫だから、頑張れ。出てきたら注射だぞ」
これが本当の最後、と軽く触れるだけのキスをして、絡めていた指も解いた。デスマスクの熱は上がりきって息が荒い。この状態で残すことに心が痛んだが、これ以上は最後までいってしまう。
 去っていくシュラの背中をデスマスクは扉が閉まるまでずっと縋るように見つめ続けていた。

 シュラが扉を閉めた後、向こう側で鼻を啜る音が聞こえた。ギリギリまで耐えてたのか…それすら愛おしい。ゆっくり階段を下りながら自分の唇に軽く触れる。これが、デスマスクの味…。
「あれほど触れるのは控えていたというのに、呆気ないな」
βとしてΩには手を出さないつもりだった。手を出してはいけないと頭では考えていた。それは何故だった?いつかαに綺麗なまま引き渡す時のため?αと番になって、βのことなんか忘れ去られた時に自分が傷付かないため?…αと番になっても、フェロモンで虜にされても、忘れる事ができないくらい深い痕を残してしまうのは…?唇に触れていた指が、ふと犬歯に当たる。
「…いや、この醜さはあいつに向けるべきじゃない…」
このままだと油断すればデスマスクに求められるまま最後までいってしまいそうだ。向こうに気があるのだからそれが悪いとは思わないが、その先に何が残る?サガが動いた時、犠牲になるのが俺の心だけで済むとはもう…
――思えない…
「時代が違うというのに、結局繰り返すことしかできないのか…」
なぜ自分はβとなった?αを嫌っていたわけではなかった。ただあいつがΩになるだけで全てが解決したはずだったが…。いや、あいつは…性に惑わされない愛を、求めていた…?だから、α兵士の中でも副作用が危ぶまれる抑制剤を飲み続けて…Ωに嫉妬して、Ωを憎んで、αとΩの運命に憧れて…そして、
 ――ドンッ!
「っ…くそ、何だ?」
シュラは居間の扉にぶつかって後退りした。疲れてはいる。キスまでして呆けていたか。
「あのデスマスク相手にこんな風になってしまうとはな…」
何を考えていたのかも飛んでしまった。デスマスク…デスマスクのことは考えていた。いつもそうではあるが、ここまでくると手遅れだ。αに渡せる自信は全く無い。

「…シャワーでも浴びるか…」
デスマスクに触れて疼いた熱が、ほんの僅かであるのになかなか引きそうもなかった。あいつはまだ俺を想ってグスグス泣いているだけだろうか?一人にされて、もうとっくに純粋さも失って今は欲が求めるまま慰めているのでは…。
 シュラにはもちろん恋人などいなかったが、20歳を過ぎた成人である。経験は無くとも性欲は放っておいてもある。自ら進んで発散するタイプではなかったが、そのおかげで逆にどうしようもない時も度々あった。シュラは居間の扉には触れず、そのままシャワー室へと入って行った。

ーつづくー

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2024
03,05
 季節は秋も終わりに近付く11月。突然デスマスクのフェロモンが聖域で漏れる騒動はあったが、予定通りであれば発情期が来る時期となったため二人は隠れ家へ移動した。番探しの一環でデスマスクを移動させる事も中止になるかもしれないと危惧したもののそんな事はなく、サガからいつも通り許可は通った。

 聖域にいた数ヶ月でデスマスクに番候補として接触しようとする黄金聖闘士はいなかった。白銀も青銅も遠巻きに見る者はいたがさすがにαだからと気安くデスマスクに近付ける者はいなかった。
「オレっぴ想像以上に人気無ぇな」
「…自分で理解してるくせに、そんな事言うのか」
今回は朝から移動したため家に着くなり途中で買った昼食を二人で食べ始める。
「どうせ集られたらそれはそれで文句言うやつだろ」
「だけどよぉ、俺のフェロモンって実際どんなんか気にはなるんだよな」
「やめとけ」
低い声で強く言われるが無視して続けた。
「フェロモン使ってα同士を争わせたりできるんだっけ?Ωの存在は聖域崩壊の危機ってくらいだもんな。生き残った最強αこそ最強Ω様に相応しくねぇか?」
「外道だ、そうならないために俺がずっと動いてきてたんだぞ。それにお前は…そういう形だけの相手は嫌なんだろ…」
「俺はお前がずっと世話してくれるってんなら形だけαと番になっても良いって妥協しようかと思ったんだよ。でもお前がそれできねぇって言うし」
「無理だろ?αのフェロモンにやられたらお前の方こそ俺の事なんかどうでも良くなって邪魔になるだけだ!だから両立なんてできないと言っている!」
シュラは食事のゴミを持って立ち上がった。
「ハァ…」直ぐこうして雰囲気が悪くなる。
 デスマスクはため息を吐いて食事を続けた。純粋に好きなのにこんな事の繰り返しばかりだ。喧嘩するほど仲が良い、とは少し違う気がする。共感とか同調しないわけではないが、アフロに比べるとそれが薄い。でもそんなあいつがちゃんと俺のこと考えてくれてるって事実がなぜか嬉しくて惹かれてしまう。酷いことを言われても、その後フォローされるだけで簡単に見捨てる奴じゃないと信頼感が増してしまう。これがアフロであれば、好かれてもそれは当然、みたいな気持ちで終わる。アフロに対して失礼な事だが。

 食事を終えたデスマスクも立ち上がり、ゴミを処理してから部屋ではなく外へ出ようと玄関へ向かった。
「どこへ行く」
ソファーにいたシュラから監視官のように声が掛かる。
「ちょっと家の周り歩くだけだよ。またしばらく引き籠り生活だしな」
一緒に着いて来るかもと思ったが、シュラからの返事はなくソファーからも動かない。デスマスクは一人で外へ出て行った。

 ここがどこなのか知ってしまわないためにデスマスクは隠れ家の周囲を探ろうとはしてこなかった。こうして家の周りの森を、家が見える範囲まで歩くことはあるがそれ以上先へは進まない。進めばシュラが追いかけて来るかもしれない。それもちょっと面白そうだなと悪戯心が湧いた。すぐ険悪になる…と悩んだばかりのくせに、まさか自分はシュラに怒られるのが嫌ではないのか?それともどこまで迷惑をかけても許されるのか試している…?シュラが、どこまで自分に対して真剣なのか…。どれだけ言葉を貰っても、実感しても、足りない。足りなくて足りなくて、満たされても底無しの闇に吸い込まれていくばかりですぐにまた気に掛けてほしくなって…。
 森の中を進んで振り返ると、木の隙間からまだ隠れ家の壁が見える。もう少し、進んでも良いか…。一歩づつ踏み込んでは振り返って遠ざかる家の壁を確認する。光に反射して薄くなっているが、まだ見える。もう少し…。前を向けば木漏れ日も届かない、蒼く薄暗い森の闇が広がっている。

 いつしか風は止まっていた。木々のざわめきも聞こえない。空気すら動きを止めているような冷たい静けさ。デスマスクの息遣いと落ち葉を踏む足音だけがやけに大きく聞こえる。
"…踏み込みすぎたか…"
隠れ家はもう見えない。帰れない心配は微塵も無いし怪しい気配も無さそうだったが、これ以上進むのは良くないと感じて近くの岩に腰掛けた。シュラは追いかけて来ない。自分一人が世界から取り残されたかのように錯覚する。このままずっとここに居て誰にも見つからなければ…。そんな風に思ってみたが聖域はどんな手段を使ってでも最強のΩを見つけ出すだろう。逃げることはできない。

 そっと目を閉じて自分の中のΩに集中してみる。シュラが言っていた瞑想とやらはこういう事なのだろうか。コスモの、その内側。αの最高峰に並びながらもΩ性に目覚めた自分。なぜΩでありながら黄金の力を授かった?過去の因果か?宿命か?なぜシュラを想ってしまう?惹かれてしまう?βなのに、どうしようもないのに…。なぜシュラはαではない?望まなかった?せっかく俺はΩになったのに。番になれたというのに。お前がαなら、喜んで首を差し出すのに…。βとΩでは、どれだけ噛んでも一つにはなれないじゃねぇかよ…。

「ハァ…ヤバ…」
デスマスクは予定より早いのに少し熱っぽさを感じてきた。
「最近、早まるなァ…」
立ち上がり、フラつく体が木にもたれかかる。ぼうっとしていると、ふと視界を何かが横切っていった。
「…虫?」
どこから来たのか、蝶のようなものが3匹ヒラヒラとデスマスクの周りを飛び回る。目で追っていると今度はカサカサと落ち葉を踏む小さな音が近づいて来た。
「…動物?いたのか、こんな静かな場所に」
イタチなのかタヌキなのか全然違うのか、小さな生き物がデスマスクの足元まで来て匂いを嗅いでいる。
「…まさかお前ら、αじゃねぇよな…?」
冗談のつもりでハハっと笑えば、また遠くから低い木を揺らしながら何かがこちらに近付いて来た。
「え?マジ?」
今、自身からフェロモンが出ているとして、人間以外にも効果があるというのか?あのβ男には全く効かないというのに?隠れ家のあった方向を見てもシュラが来る気配は全く無い。じっとそちらを見つめていたデスマスクは次第に苛立ちとやるせ無さが込み上げてきた。
ーこのまま俺が消えたら、あいつどう思うだろう?
見捨てられるか、酷く怒られるか…。悪戯心では済まない。本気でシュラに迷惑をかける事になりそうだ。頭の中に警鐘が響くが好奇心がどんどん膨らんでいく。
ー今、お前が来てくれたら俺は何もしなくて済むのに。早く、何してんだ。なに安心して俺なんか信用して待ってんだよ。
隠れ家に戻って早く薬を飲むべきなのに、そうすれば治るのに。頭の中に浮かぶ場所はついさっきまでいた聖域で…。あ、巨蟹宮にも薬は置いてあったな。
ー俺、取り返しがつかなくなるかも…。
ヘラッと笑ったデスマスクは隠れ家で待っているシュラを想い、静かに森の中から消えた。デスマスクの居た場所には何種類かの虫や動物が集まり、喧嘩を始めている生き物もいた。



 つい1時間ほど前までいた聖域にデスマスクは再び戻ってきた。熱っぽいとは言えピークが来るのは明日以降だろう。ちょっと巨蟹宮まで行って薬を飲めば楽になる。誰にも会わなければ何事も無く散歩して帰るだけになりそうだ。フラッと揺れながら十二宮の階段を上り始めた。

 昼時で食事中なのかすれ違う人がほとんどおらず、巨蟹宮までの道のりでは気弱そうな雑兵の二人組を見掛けただけだった。おそらくβだろう、フェロモンなんか全く感じませんという風で、フラフラ歩く不審なデスマスクを視界に入れまいと階段の隅で息を殺しながら静かに下りて行った。

「…つまらん」
思いの外あっという間に巨蟹宮へ着いてしまった。調子が悪いと死面の唸り声が体に響いて吐き気を感じる。早く部屋に入ろうと私室へ続く扉の前まで来た。
「閉め忘れか?」
薄く、扉が開いている。
「アフロでも来てんのか?」
そのままヨイショ、といつもより重く感じる扉を開けて中へ入った。――瞬間、ここは駄目だと警鐘が響く。
 居間や寝室の扉が開いている。廊下にクッションや衣類が散乱していて…。ゾクリ、と痺れが体を貫いた。一歩、踏み出そうか迷う。いや、引くべきか?それよりも先ず、足が動かない…!布が擦れる音と荒い息が寝室から聞こえてくる。
――誰だ?!ーー
という叫びは夢の中のように声にならなかった。
「…ァ…ッ…ア…」
息が詰まる音だけが喉を通っていく。
――ギッ…――
扉の蝶番の隙間から、何か動いて来るのが見え…やがてデスマスクの前に姿を現した。

「ハァ…どうした?なぜお前がここに居る…?」
声を掛けられてもデスマスクは動けなかった。根元は黒く、毛先は金色の長い髪。着ている法衣は乱れ、雄の匂いが漂い、手には汚れたデスマスクの鍛錬服を持ち鼻に押し当てている。
――サガ…?!――
「…お前一人か?そんな状態で…山羊座はどうした?」
サガ自身も拒んでいるような、ぎこちない足取りでデスマスクに近付いて来る。
「あ…」
「来ては駄目だろう?はぁ…なんて良い匂いをしているんだ…残り香なんて比べ物にならない!あぁ、私を誘っているのか?」
サガが目の前まで来てデスマスクの首輪に触れた。
「ひゃっ…」
途端に嫌悪感が全身を巡る。
嫌だ、動け、動けよオレぇっ!!
サガの指が這い上がり、顎を軽く撫で、頬に触れて親指が下唇に触れる。少しヌメつく雄くさい手が何をしていたのか、考えたくも無いのに突き付けられる。
無理、無理だっ…形だけでもαと番なんて、やっぱ、無理だった…。

「あぁ…駄目だっ!全てを食べ尽くしたい…!」
キスされる…!!
瞼をギュッと閉じた瞬間、突然デスマスクは強い力でサガから引き離され私室の扉から宮の方へと吹き飛ばされた。
「ぅぎゃっ!」
やっと、声が思うように出た。

「なぜ君がここに居るんだ馬鹿者!シュラはどうした?!」
体を起こして見ると聖衣を着たアフロディーテがデスマスクに背を向けたまま叫んでいる。
「アフロ…「さっさと行け!走れ!離れろ!私ももう持たないぞ!」
必死の叫びにデスマスクはヨロっと立ち上がり、ヨタヨタと巨蟹宮を出ようと歩き出した。
「くっそバカ!!そんなので逃げれるか!いっそ私が食べてしまおうか?!」
Ωのフェロモンに耐え、牙を剥き出しにしたアフロディーテに向かってサガが殴り掛かってくる。
「どけ!魚座!そいつは私のものだ!」
「違う!あれは私のものだぁ!」
サガは髪を毛先まで真っ黒に染め、赤い瞳を光らせてアフロディーテと取っ組み合いながらも、ヒョロヒョロ転がり落ちるように逃げて行くデスマスクを睨み続けた。

「ひゃぁ…ひゃぁ…」
息をするにも上手くコントロールできなくて間抜けな音が漏れていく。岩に手を付きながら必死に下りているつもりだが全然進んだ気がしない。まだすぐ上でサガとアフロディーテがお互い罵り合っているのが聞こえてきて、αの本性剥き出しで怖いと言うか引く。それでもギリギリの理性でアフロディーテがサガを止めてくれている事には感謝しかない。やっとの事で双児宮を通過すると、下から数人の雑兵が上がってきた。その後ろにもまだ何人か続いているのが見える。
「最悪かよ…昼飯終わって、移動の時間かぁ?」
雑兵でさえβの方が珍しい。上ってくる時にαに出会わなかったのは奇跡だった。雑兵レベルのαこそ理性を保つ強さなんか持ち合わせていないだろう。
「突破…できるよな…?」
そんな事を考えていると雑兵たちがパタ、と足を止める。その場で話し始め、辺りを見渡し、そして顔を上げデスマスクを見た。
――来るか…!――
一人がデスマスクに向かって駆け出すと次々と後に続いていく。近くの岩場にもたれたままデスマスクは自分に触れようとしてくる雑兵を一人づつ殴り飛ばしていった。
「ひゃはっ!黄金舐めてんじゃねぇよっ!」
デスマスクとしては全然力が入っていなかったが、雑兵を倒れさせるには十分だった。シュラが言っていた、雑兵なんか問題じゃない、というのはコレか。αとΩ以前に圧倒的な力と体力の差がある。5、6人のグループを倒れさせては少し下りて、また次のグループを殴り飛ばし…を地道に続けた。金牛宮へ着く頃には最初に倒れた雑兵たちが起き上がり始め、デスマスクに向かって次々と下りて来るのが見える。
「まるでゾンビだな…」
振り返れば醜い本性を晒したαどもが追い掛けて来るなんて、なんとなくニッポンの黄泉比良坂にまつわる話を思い出した。もしあれがシュラだったら、自分は受け入れられるのだろうか。シュラになら、自分は逃げ出さず、捕まって、深く噛まれても…
 そんな事を考えていたら、何の傷も無いのにズクンと首筋に鈍い痛みを感じた。正面から向かって来る雑兵はもういない。ヨタヨタ足を進めるが熱っぽさが増してきて金牛宮を抜ける直前にデスマスクは倒れ込んでしまった。
…だめだ…ここで雑兵如きに犯られるわけにはいかねぇ…
すぐに起き上がったが、そもそも進みが遅かった。振り返ればもうすぐそこまで雑兵たちは追い付いてきている。
くっそ!このままもう一度全員殴り飛ばすか…?!
金牛宮の柱にもたれようと後ろへ下がっていくと、柱ではない何かにぶつかった。
ー…やば…ー
振り向かなくてもわかる。今、自分のすぐ後ろに何が現れたか。

――ドッ!

「ぎゃあああああ!」
その直後、デスマスクに向かって来ていた雑兵たちは全員凄まじい圧力に吹き飛ばされ壁に柱に宮の外にと叩き付けられた。
「…へへっ…こっわぁ…」
技を放った者がここまで本気の力を出す瞬間を見たのは初めてで、思わず笑ってしまう。闘いに於いてもシュラより遥かに冷静で、穏和な奴なのだ。
「やっぱお前も、ちゃんと黄金だよなぁ…」
振り向きたくないが、この場をやり切るにはずっと背を向け続けるわけにもいかない。ゆっくりと首を回して、逆光で顔がよく見えなくても誰だかわかる巨体を見上げた。間違いない、金牛宮の主、アルデバランがいる。
「正気…じゃねぇよな…息が荒いもんな…」
アルデバランは歯を食いしばって耐えているようだった。ギシギシと歯軋りが聞こえてくる程に。
「昼前に出て行ったはずだろう…なぜ、ここにいるのだ…?この匂いが、Ωのフェロモンというやつなのか…?!」
「そんなに良い匂いしてるのか?良かったな、体験できて…」
アルデバランを見上げながらふらり、ふらりと白羊宮の方へ足を進める。
あと少し…。こいつなら、耐えてくれるか?
黄金相手にコスモ無しの素手ではやり合えない。宮を抜けた瞬間にテレポートできるよう、無駄にコスモは消費したくない。アルデバランは眉間に皺を寄せ、少し前屈みになった。
「匂い、キツいのか?…悪いな…オレサマさっさと消えるからよ…」
アルデバランから視線を逸らさず、後ろ足で少しずつ下りていく。歩いているのに全然距離が開かない。アルデバランがゆっくりと近付いて来る。
「くっ…苦しい…デスマスク、離れないでくれ…っ!」
「やめとけって、オレっぴいない方が楽になれるからよぉっ!」
白羊宮に入る手前、突然突進してきたアルデバランの光速タックルを避けきれず、弾かれたデスマスクは近くの岩場に体を打ち付けた。
「ぅぎゅっ!」
直ぐに体を起こそうとしても遅かった。アルデバランがデスマスクの上にのし掛かりビクとも動かない。
「ぃやめろぉ!お前こういうタイプじゃねぇだろぉ!」
「自分でもわからぬ!お前がそうさせているのだろう!」
俺のせい?…あぁ、俺の、Ωのせいか…。全部、俺のせいか…。気まぐれで、フェロモン散らしながら戻って来たから…。俺、何がしたかったんだっけ…?あいつがいる隠れ家で大人しくしてりゃ良かったんだよな。あいつはフェロモン垂れ流しでも気付かねぇし。暴れねぇし。俺のこと襲ったりしねぇし…。いや、襲われたかったのか…。
アルデバランが顔を寄せてくる。キスは嫌だと顔を逸らすと首筋に顔を埋めて動きが止まった。
「…あるふぁの、匂いが…っ?!」
あぁ…サガに触られて、なんか、アレの匂いでも…
「おまっ…やっぱ駄目だっ…てぇっ!」
怒りを感じる。押さえ付けてくる力が強くなってきて、堪らずコスモを燃やし軽くアルデバランを弾き飛ばしたが、起き上がる間もなく足を掴まれ今度はうつ伏せに抑え込まれてしまう。
「ぎゃあっ!」
シャツの首元を強く引っ張られ布の裂ける音が聞こえた。後ろ首が晒されて保護首輪を編み上げている紐を強く引っぱられる。
「ぐえぇっ…」
苦しい!首が締まる!外し方はそうじゃねぇんだよ!犯される前に殺される…!この場を乗り切る為だけに一度コイツの魂をぶっこ抜くか…?!
どれだけ迷惑を掛けようとここで自分が死ぬのは嫌だった。その後魂を元に戻せなかったらどうしよう、と迷う暇もなく震える右手を握り、人差し指を立てて温存しておいた燃やせるだけのコスモを内側から…
「待てデスマスク!」
突然、デスマスクの体が宙を舞った。アルデバランもだった。落ちていく瞬間に綺麗な蹴り姿を見せている黄金聖衣を着た男が見えて…。その男が宙でもう一度脚を振り上げると、まともに食らったアルデバランは十二宮から離れた何処かへ吹き飛ばされていった。これでしばらくは時間が稼げるだろう。
「ぎゃぴぃっ!」
今日、地面や岩に叩き付けられるのは何度目だろうか。絶対どこかの骨は折れている。デスマスクが起き上がろうとすると、補助するように腕をグッと掴み上げられた。
「う…」
蹴り姿を見た瞬間にわかってはいた。今、突然現れた黄金聖衣の男と顔を合わせてデスマスクはギュッと下唇を噛む。その姿を見た男は何も言わず素早くデスマスクを抱き上げて白羊宮を抜けようと駆け出した。デスマスクも威勢の良さをすっかり潜め、身を委ねて大人しく抱かれた。

 のも束の間。白羊宮の中央辺りで突然降り注いだ赤い薔薇に男の足が止まる。
「遅いぞシュラァァアア!」
後方から艶のある低い声が宮中を響かせながら貫いていった。男はシュラと呼ばれ振り返り、デスマスクを抱く腕に力を込める。
「オマエの登場のおかげでなぁ、それはもう心地良い香りが増して増して!」
カツン、カツン、と余裕のある足取りで近付いて来る。薔薇といえばあの男しかいない。サガとやり合い、ギリギリでデスマスクを逃してくれたアフロディーテの理性はもう無かった。
「ほんとデスマスクは間抜けで可愛いΩだ。好きで仕方ないのが全く隠せてないのだよ!」
シュラが小さく足を踏み込ませるだけでもそれを制するよう直ぐに薔薇が飛んでくる。
「シュラよ、βのオマエに届かせようと必死にデスマスクがフェロモンを放つ度になぁ、私の飢えは増すばかりなのだ!この苦しさがわかるか?!さぁ早くΩを寄越せぇ!」
アフロディーテが向かって来るというのにシュラは動かない。いや、動けないのか?!
「やめてくれ!」
デスマスクが腕の中で身を起こしてシュラを庇おうと抱き締めた。アフロディーテはデスマスクの首を掴んで力任せにシュラから引き剥がし後ろに放つ。
「ぎゃあっ!…っだからどいつもこいつも叩き付けんな!」
アフロディーテの狙いはデスマスクだけかと思ったが、シュラと対峙している。やばい、と思った瞬間、黒い影が光の速さで後ろからアフロディーテをど突き倒した。シュラの縛りが解けたのか後ろにフラついてからデスマスクと視線が合う。
「ククッ!魚座如きに遅れを取るとは不覚!」
「オマエはノコノコ出てくるなぁ!仮面かぶって教皇宮で大人しくしていろ!」
アフロディーテの意識が邪悪なサガへ向かった瞬間、シュラはすかさずデスマスクの元へ駆け寄り、抱き上げて走り出した。妨げられなければ黄金で最も足が速い自信がある。
「くっそ!待てシュラァァアア!」
薔薇が降り注いでも今度は足を止めなかった。デスマスクに当たらないよう、少し背中を丸めている。白羊宮の出口が見えてきた。シュラが闘ったのだろうか?雑兵に加え聖衣を着た青銅と白銀聖闘士も数人倒れているのが見えた。
「っ…!」
シュラから時々衝撃に耐える声が漏れる。
早く…!
デスマスクは光よりも速くテレポートが繰り出せるよう、コスモを燃やし始め集中した。白羊宮を抜け、シュラは階段を蹴って跳び抜けようとする。降り注ぐ薔薇と黒い衝撃波。守るように強くデスマスクを抱くシュラが地に落とされる寸前、二人は遂に十二宮を抜け聖域から姿を消した。

ーつづくー

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2024
03,02
 発情期が明け聖域に戻ったデスマスクは巨蟹宮の私室でシュラから「何かあれば直ぐに呼べ」と何度も言われて別れた。
「仕事詰めのくせに、言われて直ぐに来れるような暇人じゃねぇだろ…」
先程、偽教皇の元へ戻った事を報告しに行ったが、直接デスマスクに番の事は伝えられなかった。
シュラに任せているつもりか?サガは二人の関係をどう見ているのだろう。
聖域では仲間以上に親しくしている姿は見せていないはずだ。ただ、村や街に出掛けた時の姿を目撃されていたら何とも言えない。サガ本人が動かなくとも、誰かしらに探らせる事は簡単だろう。もしもデスマスクがシュラに惹かれている事を知ったらどうすると思う?
「良い事なんか何一つ起こらねぇな」
ため息を吐きながら寝室へ着替えを取りに向かった。

「…そんなに散らかしてねぇつもりだけどなァ…」
発情期後、巨蟹宮に戻ると寝室や居間が整えられている事がよくあった。整えられていると言っても清掃プロの従者による仕業とは思えない雑さが残っており、衣服の畳み方などを見ればシュラがやったのだろうという事は隠れ家での生活を見ているため直ぐにわかった。発情期の4日前から連れ出されるようになって意識もハッキリしているので部屋の状態が悪いとは思えない。特に綺麗好きでもないシュラは何が気になって部屋を片付けてくれるのか。いつも会ったら聞こうと思いつつも聖域ではお互い忙しく、いざすれ違った時なんかはそんな事すっかり忘れてしまって何年も経つ。まぁそのうち…と着替えを持って浴室へ行き、翌日からの仕事に備えて早めに眠った。



 デスマスクは出掛ける際にαからの接触があるかもしれない、と内心は少し緊張しながら巨蟹宮を出るようになった。しかし元々遠征が多く、聖域に居ても黄泉比良坂へ潜っている時間が長いため他人と出会う事自体が他の黄金聖闘士よりも少なかった。そんな中、十二宮の入り口までテレポートで戻ってきた時、今から出掛けようとするミロが階段を下りて来た。普段であれば言葉を交わす事もなくすれ違って終わる。その通りデスマスクはミロを視界に入れていなかったが、向こうはデスマスクを見るなり「おい!」と声を張って呼んだ。
「…何だよ」
「αの番は見つかりそうか?」
ニヤけながら少しデスマスクを馬鹿にする物言いだ。
「そんなもの必要無い」
一言告げて通り過ぎようとしたが更に投げかけられる。
「お前がそんな風だからシュラが苦労するのだぞ」
「…それで良いんだよ」
シュラの名前を出されて思わず立ち止まってしまった。
「ハァ…βは大変だな。Ωの世話に加え番相手まで探してやらんといけないのか」
「俺が頼んだわけじゃねぇ」
「そうやってお前が何もしないからだろ?俺まで聞かれたぜ?Ωと番になる気はないか、とな」
…それは意味が違う。あいつが聞いたのはそういう事ではない、はず…。
「早く世話係から解放してやれ。俺ならば頼まれてもそこまで尽くせないぞ。だからと言ってお前の番になってやるのはお断りだがな!」
アフロディーテのように見た目が良いわけでもねぇし!など言いながら一人で笑っている。
…違う。最初は仕事としてだったかもしれないが、シュラはちゃんと俺のこと考えて、あいつの方が俺に尽くしたいから勝手に世話やいて。でも相手を探すなんて事は…。
不安を掻き消すようにデスマスクは声を荒げた。
「うるせぇ!クソガキ!お前と番うくらいなら死んだ方がマシだ!」
「だろうな、俺もそう思うぜ!…っぅお?!」
とことん失礼な奴!と近くの岩石を念力でミロに投げ付けると、浮遊して階段を滑るように上がって行く。まだはるか遠くから何かを叫んでいるのが聞こえてきた。
「鬱陶しいガキめ!」
苛立つままに吐き捨て、巨蟹宮の私室まで一気に滑り込んだ。

 …違う、シュラは俺の番探しなんかしてねぇ。俺に近付こうとする奴がいねぇか探ってるだけだ。だって、あいつはずっと俺を守るための行動をしていて…。
寝室のベッドの上で丸くなっていると、胸に支えるモヤモヤがじんわり広がっていく。急に不安が増していく。
オレはこんなに弱くねぇよ!と奮い立たせようとしても、支えられない膝のように崩れ落ちてしまう。
愛して、誰か、ちゃんと愛してくれよ…。
違う、オレの声じゃない!Ωの声っ…!
愛して…。
いやだ、シュラがいい。
誰でも…。
シュラがいい、シュラなら俺といてくれる!適当なαより俺を知ってる!誰でもよくねぇんだよぉ!

――ガタン!――

「?!」
不意に、私室への扉を叩く音が聞こえた。こんな時に誰だ、シュラ…ではない。

――ガタッ!ガタ!――

やめろ…誰にも会いたくない!
一度ぎゅっと体を縮めたデスマスクは扉の向こうを探る事なく、次の瞬間には勢い良くベッドから起きて黄泉比良坂へと逃げ込んだ。



 それからどのくらい籠っていたのだろうか。気持ちが落ち着き、黄泉比良坂に滞在し続けるのも疲れて巨蟹宮の寝室に戻ると辺りは真っ暗になっていた。
「はぁ…やりたい事が色々あったんだがな」
食事のため寝室を出て居間へ向かうと明かりがついている。電気の消し忘れか?と思って扉を開ければ、ソファーにシュラが座っていた。
「…なんで?」
「戻ったか…」
シュラはデスマスクを見るなり駆け寄って、首元の匂いを嗅いでくる。
「…何してんだ…」
「…βのくせにすまんな、やはり俺ではわからない」
「…何が?フェロモン?」
てか何でいるんだ?先に説明してくれ。
突然の事にぼんやりしていると、シュラに背中を押されソファーへ一緒に座らされた。
「お前、自分でわかって黄泉比良坂へ逃げたのか?」
「は?」
だから何の事かわからない。説明しろ。
「…今日、フェロモンが出ていたようだ」
「あぁ…そうなのか。発情期じゃねぇのにな…」
やっと説明されて何か自分に重大な事が起きたのだろうけど、それを気にするよりもシュラに会えた事が何だか嬉しく思えてきて気のない返事を返してしまう。呼んだわけでもないのに来てくれた事に、心の底へ沈めた不安感が和らいでいく。
「底辺のαどもが私室の扉まで集まって来ていた。通りがかったアイオリアが俺の仕事先まで来て知らせてくれたんだ」
「へぇ…アイオリアには効かなかったんだな」
「フェロモンは分かるようだがアイオリアはΩに惑わされぬようαの抑制剤を服用しているらしい」
αの抑制剤…そんな物も雑誌で見たことあったなと思い出す。無差別にΩを襲ったり、αのフェロモンを抑制しΩを惑さないようにする夢のような薬だが、合う合わないの差が激しく重い後遺症を患う事例も報告されているため推奨はされていない。強いこだわりを持つαが医師と相談を重ね、慎重に経過観察を行いながら服用するらしい。
「兄貴のこともあって面倒事には巻き込まれたく無いんだろ。あいつらしいぜ」
「俺とアイオリアで適当にαは散らしたが、ここへ来てもお前の気配が全く無かったので待っていた」
「ふーん。忙しいのにそこまでさせて悪かったな。発情期でなければ余裕でコスモ燃えるしアッチへ逃げれるから気にしなくていいぞ」
「本当に、大丈夫か…?なぜフェロモンが出てしまったのかが気になる」
直ぐ隣からデスマスクを見つめるシュラの顔が真剣で気恥ずかしくなる。
こういうのも素でそうなだけ?それとも俺だから?少しくらいなら、その気出してもいいか…?
顔を隠すようにしてシュラにもたれ掛かった。
「…わかんねぇよぉ。お前がいなくて呼びたかったんじゃねぇのぉ…」
自分でも気持ち悪い、甘えた声が出てしまう。
「……」
シュラの手がそっとデスマスクの肩に触れる。
やばい、怖い、何を言われる?
「…聖域では、やめておこう」
期待を捨てきれない、酷く、狡い言葉だ。もう言ってしまおうか?急に我慢できなくなって、顔を上げて、シュラを見て、静かな声を響かせて…
「お前さ、俺がαと番になっても愛してくれるか?」
お互い姿を瞳に映して見つめ合ったまま、シュラの指が軽く首輪に触れてきて、囁くような声が
「…そんな器用なこと、できないな…」
できない。
「…そうか、わかった…」
できない…。
ゆっくりシュラから身を離して再びソファーに沈み込む。
できないなら、αと番になっちゃダメだな…。
頭の中で反復した。
「デス、今夜ここにいても良いか?」
「……」
「駄目なら出て行くが」
「…ひゃあっ?!」
突然の提案に何を言われたかわからなかったが、やっと思考が追い付いてとんでもなく間抜けな声が出てしまった。
「αに侵入される事は無いと思うがまた集まって来られるとここから出れなくなるかもしれないだろ?黄泉比良坂への出入りはワープできたりするものなのか?」
「入った所からしか出れねぇよ。じゃねぇと十二宮で無敵になっちまうわ」
だよな、と言いながらシュラはソファーの隅に置いてあった雑誌を手にした。
「てかお前仕事は?いつからここにいるんだ?」
「仕事はもう明日でいい。昼過ぎからいたな」
…こんな夜まで何をしていたのか気になったが、それよりも自分は腹が減っていたので「泊まりたきゃ好きにしろ」と告げて冷蔵庫へ向かった。シュラがここにいるのは問題ない。むしろ嬉しい。だから空腹にもかかわらず1人分の食事をシュラに分けてやって量が減るのも気にならなかった。

 翌朝、いつも通りではシュラの仕事に響くかもと思い普段より早めにベッドから抜け出す。デスマスクは寝室、シュラは居間のソファーで一晩を過ごした。
「早いな」
やはり既に起きていたシュラがデスマスクを見るなり言う。
「俺は別に起きるのは遅くねぇんだよ。ベッドから出るのに時間がかかるだけ」
「低血圧だからか」
「そうそう」
本当のところどうなのかは知らないが、普段から血圧が低めなデスマスクは遅刻した時などに寝起きが悪い理由をそのせいにしていた。朝からたくさん食べる気もしないがシュラは食べるだろうと思って明日の分のパンも分けてやる。
「悪いな、飯のことまで考えていなかった。後で補充しておく」
「いいって、俺どうせ朝はそんなに食わねぇし」
「不規則だとフェロモンに影響するかもしれないぞ」
「ヘイヘイ気を付けます」
聖域では仲良くするな、と言われても境目がよくわからない。どこまでが幼馴染の範疇と見られるのだろう。そもそも仲良くしていたわけではなかったので、用事以外で並んでいるだけでも不思議に思う奴がいるかもしれない。いや、それもβとΩの関係がある今は気にしなくて良いのか…。
少し考えている間にシュラは食事が終わってデスマスクを見ている。
「…何だよ、終わったならもう行っても良いぞ」
「お前も殺りに行くだろ?十二宮の入り口まで同行してやる」
今日はテレポートするまでお見送りか。手厚すぎて感動するぜ。
「へー…ありがとさん。でもそのために忙がねぇぞ」
「知ってるからいい」
シュラが何を知っているかって、口ではそう言ってもこういう時のデスマスクは無駄な行動を見せないという事。その通りスムーズに食事を終え支度をしたデスマスクは、外にαが来ていない事を確認してシュラと共に階段を下りて行った。途中、シュラかアイオリアにでも殴られて階段に転がったままの雑兵がいる。
「あいつ死んでないだろうな」
「出血してないから大丈夫だろ」
いや内臓やられてたり…とか思ったがまぁどうでもいい。
「なぁ、フェロモン抜きで俺に接触して来るα見たら殴るの我慢できるか?」
「…本当に、フェロモン抜きで気持ちがあるのならな」
また中途半端な答え。
「…そんな事、お前にはわからんくせに」
「お前だって自分がフェロモン出してるかわからないのだろ?」
わからない。自分の匂いがいつ出ているのかも。αのはわかる。βにはそんな物ない。だからこそ、何にも惑わされていない事が事実であるこの気持ちが信用できるというのに。
「ミロにすら美しくないΩに興味は無いみたいな事言われてムカつくが、正直フェロモン抜きで俺が気になる奴は絶対に頭おかしいと思う。そうそういないだろ」
隣のβ以外に。
「フッ…Ωでも生きやすいように神が美形にしなかったのかもな。まぁわからんなりに、お前が嫌だと言えばどうにかしてやる。発情期でなければ自分で返り討ちにできるのだろ?」
白羊宮を抜けて十二宮の入り口が見えてきた。あっという間の一晩だった。じわり名残惜しくなって、少し意地悪な言葉が口から出てしまう。
「保護者のお前が番相手に認められるような、ちゃーんと俺の中身好きになってくれるようなαってアフロくらいしか居ねぇと思う」
「…俺もそう思うがな、まだわからないだろ」
その言葉にデスマスクは顔を上げてシュラを見た。
わからない…?
アフロディーテで良い、とは言わなかった。他の可能性なんてあるのか?それとも、何か可能性を滲ませている?
入り口に着いて「じゃあな」と少し笑って片手を振るシュラの八重歯がいつもより気になって見えた。

ーつづくー

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2024
02,29
突然のコスパロですが一度は描いてみたいと思っていたスレイヤーズのガウリナコスプレ山羊蟹。
剣士×魔導士の定番?



同人を読むほどではないけどスレイヤーズNEXTをリアルタイムで観てた頃ガウリナ展開が好きでした。スレイヤーズの良いところはリナがちゃんと強いところ(笑)水戸黄門みたいなお決まり展開でスッキリするのが良い。
男でも女でも基本的に受けがナヨってないというか、何かしら強い受けが好きなので自分の中では定番ですね。誰も狙おうと思わない受けを攻めが空気読まず真面目に攻め込んでいく感じが(笑)空気読めないからめげない、諦めない(・ゝ・)
そして折れる受けたち…(゚∀゚`)ンモゥ…バカ…
強いけど、その気になれば攻めをぶちのめせるけど、ちゃんと受け入れて可愛いとこも見せちゃう。っていう。

ガウリイは別にシュラっぽくない朗らかお兄さんキャラですが、若干アホ入ってるのは共通かもしれない…(・ゞ・)
ここにアフロを混ぜるならアメリアかゼロス…かリナの姉(人間世界最強人物だけど引退している)…姉が妥当か?アメリアだとゼルガディスは誰?になってしまうし(笑)

しかしスレイヤーズも30年前くらいになるのか…学年に1人はドラグスレイブ?とかの暗唱できる子いましたよね…。自分は「ふしぎ遊戯」の朱雀召喚の呪文を暗唱し、今も前半だけなら何となく言える(笑)友人と下校しながら唱えていた(笑)

ここぞと草ペン?草スタンプ?使ってみました。草だけ上手い(笑)自分の目が慣れないけど、使っていけば素材も馴染んで見えてくるだろうか。木のトーンは何故か気にならないんですよね。その差は何だろうなぁ。

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2024
02,28
フリーレンの絵を見て、ナデシコのホシノルリを思い出すのは自分だけではなかったんだなと(笑)同級生が子どもの名前をナデシコのキャラから付けたと聞いて一同「あ〜いたね!」となったけど、ナデシコの主役たちは完全にホシノルリに食われてますよね(゚∀゚`)いやぁ懐かしい。

先週から午後の時間をことごとく潰され、若くないので夜は寝てしまうという、創作的にはダメな状態ですが健康的には良い生活を送らされております(゚∀゚`)
マインクラフトで「洞窟から出れなくなったから脱出しといて」とか言われたけど手が回らん!
そろそろやるかも言いながら山羊蟹を描くためだけに2021年から真メガテン5とソウルハッカーズ2を未開封で積んだままなのですが、今年また真5の続編か!真6でなく!と言うか今年はDDSATが発売20周年だと思うけど、リメイクとかそっちの動きがあるかと思っていたら真5かい!
意外と人気なんだなぁ(・ゝ・)と思ってタグを見てみたら、たまたまなのかシナリオが微妙とボロクソに言われていた(笑)まぁ特に古からのファンはどこも辛口傾向ですからね…。
もちろん買うけど一先ず積む…。発売日6/21は蟹誕描いてる最中だろう(゚∀゚`)でもいい加減消化しなくてはと思ってはいる。始めたらソフト1本2ヶ月くらいは消費するかな。
そして地域役員になったので祭り準備日程次第では秋の大系も出れない可能性が(゚∀゚`)しかし今年もどれか1つくらいは直参したいなぁ。まぁ様子見ながらで(゚∀゚)ノ

オメガバ話もこんなにモダモダさせる意味あるのかと思いつつまだひたすらモダモダが続く見込み…(・ゝ・)
時代背景含めα×αの悲恋からβ→α×Ωの悲恋(結局十二宮で死別するので)ではあるけど、どうにかして良い感じにまとめたい。毎度同じく。
晴れて番になりました♡終わり♡で良い気もしますが(笑)やっぱ十二宮まで書かないと締まらないと言うか(゚∀゚`)でも十二宮で死んだままだとハピエン感が出せないと思うので、もう少し先まで…って毎回どんどん伸びていくんですよね。そういう病(笑)
多分、最終的に10万字くらいかなと思います。完走できて本にもできたら達成感凄くて1ヶ月くらい燃え尽きてそうです(笑)いや、そうなれるように少ない語彙力叩き出して楽しみます!

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2024
02,28
「β君お帰り〜。驚けよ?調子良かったからこの俺様が晩飯もう作ってやっちゃったんだぜ?」
夕方、聖域からシュラが戻ると扉を開けるなりデスマスクがスィーっと浮遊して出迎えた。テーブルを見るとたくさんの焼いた肉が盛られている。
「パンもこんがり焼き直してやったし、スープもまぁ温めただけだが用意してやったし?」
そう言って宙をくるりと一回転して笑った。
…こんな日に、何をしてくれるんだ…
シュラは浮遊しているデスマスクの腕を掴むと、グッと引き寄せて地に降ろす。
「美味そうなのが腹立つ」
「美味いに決まってんだろ。レトルト料理にオレッぴの愛情♡」
そう冗談めかして嫌な笑い方をする。それを覆うよう不意にシュラが正面から抱きしめると、デスマスクはヒェッ?と体を震わせて固まった。肩に顎を乗せて「助かる…」とため息混じりに呟いた。
「今日はドッと疲れて何もする気が起きなかった」
「へぇ…仕事大変だったんですね…」
「お前…」
抱いていた体を離し、デスマスクを見つめながら首輪にそっと触れる。シュラが何をしてもデスマスクは嫌がる素振りをあまり見せなくなっていた。
「…いや、後にする。先ずは食べよう」
シュラは目を伏せてデスマスクの背中をパシっと叩くと、キョトンとしていたデスマスクは「何で叩くんだよっ!」と吠えてテーブルの席に着いた。

 食事を終えてデスマスクの調子が悪くない事を確認したシュラは「話がある」と切り出した。
「αの事をどう思う?」
「……え?」
今更な質問をされてデスマスクは言葉に詰まった。
「αはまだ怖いか?」
「怖いっつーか、危ねぇってだけで…アフロとか嫌じゃねぇけど、お前や本人が気を付けろって散々言うだろ?今だって危険だからっつって隔離されてんだし」
「周りが何も言わなくなればお前は自由になれると思うか?」
その言葉にデスマスクは眉をしかめる。
「…何だよいきなり、今更俺を見捨てるとかそういう流れにでもなってんのか?」
突然の話に嫌な予感がする。前にシュラは、誰もデスマスクに興味が無ければとっくにαに喰われてる、みたいな事を言っていた。自由って、放り出されるって、そういう事だろ…。
「見捨てはしない。見捨てるどころかΩの将来の事を考えての話だ」
そう言うシュラの声は気持ちが無く硬い。デスマスクのためを思って言い聞かせようとする時は単調なりにも想いが込もった喋り方をするのに。
「Ωの将来って何だよ。俺の事だろ。遠回しに言うなよ」
「……」
シュラの口元が何かを切り出そうか止めようかと何度か動くのを見てデスマスクは軽くテーブルを叩いた。
「もう何でもいいから、とりあえず言ってみろよ!言わないとどうせお前もスッキリしねぇだろ!」
そこまで意味深な態度を出されると探られるだけでは気が済まない。
「そうだな…どうせ聖域に戻る前には話しておく必要があった。これはお前のためという事を頭に入れて聞いてくれ」
そんな事を予め言うなんて、デスマスクにとって都合の悪い話でしかないのだろう。余計に丸分かりだ。

「サガが、お前にαの番を持たせる事を決めた」
低めの、聞き取りにくい不貞腐れた喋り方。
「…どうせ、そんな話がくるとは思ってたぜ」
デスマスクもシュラに合わせて不機嫌そうに返してやった。
「今すぐという話ではない。ただ、お前に興味のあるαがアプローチをしてくる可能性がある」
「あぁ、相手は選ばせてもらえるんだな」
「…お前、受けるのか?!」
返答に何を思ったのか今度は声を荒げてきた。
「嫌に決まってんだろ!」
んな事くらい、知ってるくせに…とデスマスクは顔を逸らす。
αがどうこう以前に今、目の前にいるβを知ってしまったデスマスクには何も興味が湧かない。ただこうして目の前にいるβとこのまま穏やかに過ごしていく以外の良い未来は考えられなくなってしまった。この現状を生み出したのはサガ。それをぶち壊そうと動き出したのもサガ。聖域を、自分たちを弄ぶ圧倒的な力にもう聖戦が起きてもサガ一人に任せれば良いんじゃないかとさえ思う。それで世界が壊れようとも…。
「今は考えられない、という事でいいんだな。とりあえずサガにもそう伝えてはある」
「永久に、って伝えとけ。聞かねぇなら俺が直接行く」
「それは止めておいた方がいい。サガの方に何か策があるようだ」
「はぁ?」
その言葉にデスマスクはシュラの顔を見直した。
「お前に相手ができなければサガは"どうにかする"と言っていた」
「……」
「お前が番を持たない選択は無い。おそらく強制的にでも相手を用意されるだろう。今はサガを挑発するような行動は避けた方が良いと思う」
シュラの真剣な声が響く。今すぐにでも聖戦が始まらない限り、逃げ切りは許されなさそうだ。
「…サガはわかった。で、お前はそれ聞いてどう考えてんだ?俺のためになるって思ってんの?」
デスマスクは勢いに任せて最も知りたい事を口にした。だが期待通り返してくれない怖さもあった。
「…今日、黄金全員に聞くだけ聞いてみたがΩとの番に積極的な者はいない。俺はできればお互いにちゃんと好意を持てる相手が良いと思っているが…」
「それが俺のためになると思ってんのか?!」
上手いこと言おうとする姿に腹が立つ。もう何年この関係を続けていると思ってるんだ。そんな風にβぶるのは俺のためにならない!
「…フェロモンの抑制が効くようになれば「俺をαのゴミ捨て場に捨てるんだな?!」
聞きたくないとばかりにシュラの言葉を遮った。遂に冷静を装って下手なことを言い続けていたシュラも声を荒げる。
「そんな事はしない!最後までやれる事は果たす!」
「最後までってなんだよ?!βに何ができんだよ?!せいぜい俺を殺すくらいだろうが!!」
「?!」

――暗い夜、森の中、冷たい、雪が降っている。どれだけ噛んでも、どれだけ愛が深くとも、αとαでは、一つに結ばれないんだよ…――

デスマスクの言葉に突然頭が真っ暗になったシュラはテーブルに肘をつき右手で顔を覆った。
「お前俺の気持ちわかってんだろ?!わかってなかったのかよっ?!お前じゃねぇとっ…嫌に決まってんだろぉっ!」
叫び、震え声で溢れそうになった涙を堪えたデスマスクはシュラを置いて勢いよく居間を出て行く。シュラは頭を抱えたままデスマスクの言葉が入ってこなかった。頭の片隅に「追いかけないと…」とモヤモヤしたものが浮かぶが、今にも忘れていた何か重要な光景が思い出されそうで…それも結局叶わなかった。

 デスマスクが納得できる結末とは。
一つ、シュラが今すぐαに変異すること。
一つ、デスマスクがβに変異すること。ただし発情期を迎える前のΩ判定は誤診を含め性が覆される事もあったが、発情期到来後のΩで変異した報告は無い。
一つ、サガに番を止めさせる。清らかな方は聞き入れてくれても邪悪な方では話にならない。要するに本人の気が変わらない限り無理。
一つ、サガを討伐する。ただしこちらが殺される可能性の方が高い。
一つ、デスマスクが自決する。

 昨夜聞いた状況の中ではシュラがデスマスクのために身を呈しようとしても何の解決にも繋がらないだろう。翌朝ベッドの中でデスマスクは今後について考えていた。シュラに期待しすぎていた。βにしてはあまりに出来が良いし、でもシュラはαではないのだ。デスマスクの盾になったところでαの最高峰相手に何ができる?シュラがどれだけデスマスクを守ろうとしても果たせない壁がある。デスマスクは自分の気持ちを優先し過ぎてシュラに酷く当たってしまった事を一晩反省していた。そしてシュラと自分の気持ちが同じではないかもしれないという可能性も芽生えて落ち込んだ。βとΩだから素直に本心を出せないだけだろうとか、自分の考え方が前向き過ぎた。同じ気持ちだと勝手に思い込んでいたのは自分だけかもしれない。シュラは本当に、最初から今日まで気持ちは変わらず周りに言われてクソ真面目にただβとしてΩを守っているだけかもしれない。不安にさせるとフェロモンが乱れるかもしれないから、そうならないようにデスマスクの気持ちに合わせてくれていただけで。…でも、そんな器用な事ができる奴じゃないだろ?だって、あんなにっ…!!
「っ…ふ…ぅ…しゅらっ…」
発情期のピークは過ぎているため、今日もシュラは仕事を消化するため聖域へ向かった。小さな家に夕方まで一人きり。
「しゅらぁっ…」
不安が強すぎて我慢ができない、嫌な体。堪らず下着の中に手を差し入れる。いつからだろう、利用していただけだったのに、名前を呼ぶようになってしまったのは。
「しゅらっ…しゅらっ…」
無意識にコスモを飛ばしてしまって聞こえているかもしれない。俺が、こんな声で呼んだら気持ち悪がられる…?
「…ごめん…っ…しゅら…」
いやだ、いつもよりスムーズに快感が得られない。だって、今日の"シュラ"はオレを見ていない…。βが、浅ましいΩを冷静に見ている。
「しゅらぁっ…」
それでもいい、って少し乱暴にして燻るものを吐き出した。気持ちは晴れない。

「はぁ…」
どうしたらいい?どうすればいい?シュラの気持ちさえ聞ければ満足できるか?それが本心だとわかるか?「αと番になってもずっと愛してる」とか、そういう事言ってほしいのか?そこにシュラの幸せは?
「……」
一晩反省したところで、結局デスマスクはシュラを手放したくなかった。例えαと番になっても、同じ宮に住まわせてずっと世話をさせ続けるんだ。何が1番嫌かと言えば、自分がαと番関係になる事よりもシュラが他の誰かと結ばれてしまう事が嫌だと気付いた。身の回りの世話をずっとシュラがやるのならαと番になってやる、という条件をサガに出してみるのはどうだろう?この際シュラに拒否権は与えない。だってあいつ本心で俺のことどう思っているかわかんねぇし。好きと思ってくれてるなら地獄だろうが、そうでも無いのなら今までと変わらない環境だろう。αを裏切って不倫するわけじゃない。どうせあいつは俺を抱くことなんかしない。死ぬって脅してもしないと思う。
「…はぁ…」
ほんと、自分はシュラを何だと思っているんだ。あいつだって人間だ。ちょくちょく怒るし頑固だし。そんな都合の良い関係、泣き落としても受け入れてくれるわけがない。でも…できる限りのことはしておきたい…。ズルりとベッドから抜け出したデスマスクはタオルを持ってヨタヨタとシャワー室へ向かった。

 「β君お帰り〜」
その夜、再びデスマスクは夕食を用意してシュラの帰りを待った。シュラは一瞬驚いた顔をすると、昨日と同じ調子で出迎えたデスマスクを「無理するな」と軽く抱いた。
「だってもういつまでこの生活できるかわかんねぇし?明日も用意してやるって」
「……気持ちは落ち着いたのか」
「そんな単純に終われるものじゃねぇの、わかるだろ?」
そう言いながらシュラの首に腕を回す。頬にキスでもしてやろうかと眺めてから、首元に顔を埋めるだけにした。息を吸って、どうしてもシュラからは何の匂いも感じない。
「…ごっこ遊びは、ここだけだぞ」
小さく、低い声で応えてくれた。優しいと言うか甘いと言うか。やはりシュラは俺の気持ちには気付いている。キスぐらいしてみれば良かった。

席に着いて食事をしながらデスマスクは明日の帰りこそ「お帰り♡」のキスでも試してみようと考えた。そしてαにどうこうされる前にシュラでファーストキスを終えてしまおう。チャンスが無ければ寝込み…は鍵掛かってて襲えねぇから、聖域に戻ったら磨羯宮に侵入して…。
「なぁ、薬が効いているとは思うが俺を襲うのだけは無しだぞ」
「へへぇっ?」
自分がどんな顔をしていたかわからないが、前科ありのΩから身の危険を感じる程の何かが漏れ出ていたのだろう。
「そこまではしねぇよ」
シュッと気を引き締めて答えるデスマスクを訝しげに見たシュラは「どこまでやろうとしてたんだ」と身に不安を感じていた。

ーつづくー

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2024
02,27
 処方される薬が変わってからデスマスクの症状は発情期が始まった頃のように軽くなった。完全に薬が効くわけではなかったが副作用による熱っぽさや怠さの方が勝り、Ωとしての性欲は体内まで触れなくても癒されるまでに戻った。その事をシュラに伝えても、念のためと夜間は自室に鍵を掛け続けている。しばらくは大きな騒動も無く発情期が始まればシュラと過ごし、治れば聖域に戻る生活が繰り返された。

 シュラはデスマスクの症状が新しい薬で改善された事に安心したものの、彼が放つフェロモンの強さに変わりない事を気にかけていた。どうしても、毎回ではないが何者かの侵入を許し巨蟹宮の私室が荒らされてしまう。発情期のピークでデスマスクが部屋に籠っている間、シュラは何度か隠れ家から巨蟹宮に侵入するコスモを探ろうと試みていた。ハッキリとは感じ取れないが、どうも侵入者は1人だけではなさそうだ。Ωのフェロモンに…デスマスクに群がるαのことを想像しただけで気分が悪くなった。

 せめて黄金以外のαくらいどうにか対応できないだろうか…19歳の夏、一度αとの実力の差を調べてみたいと考えたシュラは脱走罪により処刑が決まったαの雑兵に対し、自らはβである事を告げ聖衣も脱いでから一つ提案した。
「今からお前の目の前まで歩いて行く。その間に3秒俺の動きを封じる事ができれば解放してやろう」
サガに相談する事もなく独断で行った。この雑兵の名前は知らない。同じ黒髪をしていて背丈もあった。顔立ちも悪くないだろう。立ち姿からαらしい恵まれたものを持っているのはわかる。しかし聖闘士にはなれなかった。
「どうした、お前たちαが得意とする睨みを使ってみろ」
いくらシュラがβとは言え黄金聖闘士である偉大さと威圧感が雑兵を圧倒してしまうのだろうか。ゆっくりと雑兵に向かって歩いて行くが、一向に立ち向かって来ようとはしない。こちらを見つめたまま岩のように固まっている。このままあっさり死を選ぶのか。
「やり方を知らないわけではあるまい。まさかそれでもう睨んでいるつもりか?」
左腕をゆっくり振り上げて見せた。もしここにフェロモンを放つΩがいれば少しは本気を見せてくれただろうか?…そんな事、デスマスクの協力を得てやるつもりなどもちろん無いが。
「せっかくαの性を授かったというのにな、β社会であれば頂点に立てたかもしれないがお前は俺すら止める事ができん。所詮はその程度のつまらんαだったのだ」
雑兵の目の前で立ち止まる。シュラとしては珍しく、どうでもいい感想を述べて少しの猶予を与えているつもりだった。
「賢いαだ、自分でもわかったのだろう?αの底辺で居続けるより、死を覚悟してでも抜け出そうとした勇気だけは認めてやりたいが…」
それも期待するだけ無駄か、と雑兵の首を見る。
「その勇気と底力を今、使わなかった事には失望しかないな」

 それからシュラはαの処刑がある度に同じ挑戦を繰り返した。成功する者などいないだろうと頭から考えて結局サガには相談しなかった。最初こそ気合いを入れて楽しみにしていたが、次第にわざと気を緩め、それでも手応えが何もなかったため遂には遊びのようなものへ変わっていった。
「聖闘士でないと話にならないのか…」
季節が秋になる頃、αの処刑があってもシュラは10秒足らずでその場から去るようになっていた。



「お前さぁ、カプリコーン様のアブナイ噂立ってんの知ってるか?」
11月、ある日の午後。発情期直前のデスマスクを連れ出すために十二宮の出入り口までシュラが来ると顔を見るなり尋ねられた。
「知っている。だがもう止めた。つまらんかったからな」
「え…マジ話?」
ひど…と呟かれるのを無視してデスマスクの手を握る。そんな事より早くテレポートしろという意味だ。
「おい、移動の主導権は俺にあるんだぞ!」
そう愚痴てから2人は静かな隠れ家まで移動した。

「お前ぼんやりしてる割にサドっぽいとは思っていたが死刑囚相手にそれを発揮するとはなぁ」
デスマスクが部屋へ向かう前に話を蒸し返す。
「噂話をそのまま信用するのか」
「やってたんだろ?自分で肯定したくせに」
「カプリコーンはαを妬んで残虐すると?」
シュラは呆れた顔をして居間のソファーに座った。
「俺はαたちの力を試していた。コスモとは別にα、βの関係で力の差は実際にどのようものかと。死を前にすれば底辺のαであろうと俺くらいのβと互角の力が出るのではと思ったのだがな」
「思ったより雑魚でムカついてなぶり殺したのか」
「お前、俺をそんな風に見てるのか」
シュラが仕事をする場面はたまに見掛けるが、その時は処刑場に入るなり左手でサクッと斬ってすぐ帰る。右手を使う気もないし早技と言えるくらいアッサリしたもので、なぶり殺しなんか趣味ではなさそうなのだが…。やりかねない雰囲気は持っているとデスマスクは思った。黙ったデスマスクを見てシュラが鼻で笑う。
「やってみろと煽っただけで、何も起きなければ今まで通り一振りで終了だ。そんな奴ら腕を振るうだけ無駄。一度たりと何も起きなかったしな。どうせβ黄金に良い気がしない底辺αが盛った話だろ。あいつらは高いステータスに満足して実力が伴わない。実際にαの能力すら使いこなせない現実を見せつけられて俺は聖域の脆さを実感した。あの程度のαは数を揃えても無駄だな。攻め込まれたら十二宮まで10秒持たないんじゃないか」
「…すげぇ、喋る…」
シュラからαの愚痴が溢れ出てきて思わずニヤけてしまった。そんなデスマスクの目をシュラがすっと微笑んで見つめる。
「聖闘士以外のαは俺たちにとって問題ではない。次は青銅と白銀も試してやる。俺の勘ではここも問題無いと思うがな」
「へ?おま…また聖闘士に手を…?」
シュラは優しい顔をしているのに瞳の中が真っ暗に見える。どこにデスマスクを映しているのかわからなくて少し声が震えてしまった。
「ククッ…殺すわけないだろ。闘技場でやり合ってみようと考えているだけだ」
顔を傾けたシュラの瞳に光が差した。それだけでデスマスクは小さく息を吐く。
「そいつらからコスモではなくαの力を引き出せるかどうかが問題だけどな」
「そんなん、Ω使えば一発じゃねぇの」
「使えるΩがいない」
声を張って返されてしまった。オレ…と喉から声が出そうになったがグッと飲み込んだ。簡単にそういう事を言えば機嫌を悪くしそうな雰囲気が出ている。
「まぁ、やりたいならやってみれば。お前の噂がデマで良かったぜ」
もういい、と手をヒラヒラさせてデスマスクは居間から出て行った。

 自室に入ってベッドで横になったデスマスクは下で動く足音を聞きながら改めて考えた。シュラがαに対して劣等感を抱いているのかわからない。α自体に興味は無いと言いはするが、心の底はわからない。ただ対抗心には満ちている。今でも"瞑想"とか言うのをしているのだろうか。漠然と、αに良いイメージを持っていないだろうなというのは数年前から感じる。それは自分がβだから…でないのなら何故だろう。
「……」
デスマスクは一つの可能性を考えて胸がキュッとなった。
「俺のせいか?」
本来βはβでまとまり、またαとΩの架け橋になれる。でもシュラは完全にΩ贔屓だと思う。
「…いや…」
Ω贔屓と言うのは嫌だ。
「俺だから、だろ…」
自分以外のΩも守るシュラなんか見たくない。それにシュラがやる事は全部俺のためだ。俺を守るために俺のことばかり考えているくらいだぞ。そんなことを思っていると、予定日より早く移動したというのに急に体が火照り始めた気がしてデスマスクは気休めに抑制剤を飲んだ。今日からまたしばらくシュラと2人きりだ…ほとんど別々の部屋で過ごすのだが、薬の効きが良い今は発情期の到来を嬉しく思うようになっていた。2人きりのこの小さな家は間もなくデスマスクのフェロモンで満たされるだろう。どれだけ溢れさせても、シュラには伝わらないが。伝わらないけど、多分きっとあいつは気付いている…。デスマスクがシュラの事を時々甘く想っていることは。フェロモンなんか使わなくとも何気ないフリをして静かに応えてくれている。だってここまで大事にされ続けたら、そうとしか思えない。……だろ?



 シュラは20歳になってもβのままだった。毎年検査も受けているがαに寄る数値は見られない。どちらかが死ぬまでこの生活のままかもな…そんな事を考え始めた頃。それはデスマスクも20歳を迎える少し前だった。デスマスクが発情期で聖域を不在にしていたある日、シュラが日帰りで聖域へ来るタイミングに合わせて教皇宮に黄金聖闘士が呼び出された。偽教皇は敢えてデスマスクを呼ばなかったのだろう。伝えられた内容は「今後の戦いに備え、Ωである蟹座にαの番を与えたい」はっきりとそう聞こえた。
「20歳にもなればΩの体は完成する。番を得れば発情期のコントロールも楽になるだろう。αから身を守る必要は無くなる」
教皇は仮面をシュラの方へ向けて続ける。
「βに負担を掛け続けるわけにもいかぬ。Ωのためにαを殱滅させられても困るからな」
今まで何も言われてこなかったが、噂はサガの元にも届いていたようだ。
「蟹座の発情期も安定したのだろう?一番身近で蟹座を見てきたお前はどう思う」
「…本人には、まだその気は無いようですが…」
突然問われたシュラは一瞬言葉に詰まってから正直な意見を述べた。間違ってはいない。
「今すぐにとは言わぬ。蟹座の扱いも難しいからな。しかしなるべく早い方が良いだろう。Ωとの番に興味のある者は今後蟹座に近付く事を認めるが、間違いだけは起こさぬように」
「……っ?!」
「ただ相性や好みはどうにもならないからな、誰も候補者がいないのであればこちらでどうにかする」
突然の宣言にシュラは少しの間立ち尽くしていた。仲間たちは教皇の退室を見届けてから静かに解散していく。
「そろそろお世話から解放されそうで良かったな」
アフロディーテから掛けられた言葉に「あぁ…」と小さく答え、やっと足が動いた。

「しかしデスマスクが番を持つことに納得するとは思えないが…サガは本気で恋愛させようとしているのか強行突破でどうにでもなると思っているのか…」
他の黄金聖闘士たちが去ってからシュラとアフロディーテはゆっくり教皇宮からの階段を下りていた。サガからデスマスクについて追加で何か相談でもあるかと思ったが特に無く、偽教皇はすぐに自室へ戻ったまま姿を現さなかった。
「ここまでΩを守ってきたというのに準備が整ったら無理矢理でも、だなんて。邪悪な方がしゃしゃり出てきたか」
「お前は…」
双魚宮が見えてきた頃、ふいにシュラが声を漏らした。
「…立候補する気、あるか?」
その問いに"ん?"と返されてから
「それが、彼の幸せになるのならば…」
と…思いの外、弱気な声が掠れて消えた。

 アフロディーテと別れ一人で磨羯宮へ向かう階段を下りるたび、シュラは何も考えられなかった状態から徐々に怒りが込み上げてくるのを感じ奥歯を強く噛み締めて耐えた。
デスマスクにその気があるのならいい…。
いや耐えられない!許せない!
デスマスクにとっての幸せがあるのなら本人を説得して…。
できない!望まぬ未来を押し付ける事など!離したくない、嫌だ、今更!αなんかに傷付けられるなど許せるはずがない!ならば…ならば?デスマスクはどうしたいと思う?どうしたいと言った?あの時…そう、あの夜…。暗く冷え込んだ静寂の中で…。あの時、俺は…デスマスクに、求められて…?俺は…
「シュラ!」
突然、後ろから呼ばれた瞬間にシュラの体は冷たい冷気で覆われた。
「何をする!やめんか!」
宝瓶宮を抜ける手前、振り返り左手を振ると主のカミュが右手をシュラに向けている。手加減された拳は遠くの柱に鋭い裂け目を残した。睨みつけるシュラに怯む事なくカミュは手をかざしたまま少しづつ距離を詰めていった。
「いきなり手を出して済まない。だがどうしても見過ごせなかったのだ」
「……」
カミュが放つ冷気は攻撃的なものではなく、癒しのコスモである事はすぐにわかった。
「俺がどうかしていると言うのか」
「…まるで日食のようにシュラの光を覆うものが見えた、気がしたが…」
目の前まで来たカミュはシュラの表情が落ち着いたものに変わっていくことを確認する。
「抜けていったようだな」
カミュの言葉が理解できなかったシュラは顔をしかめた。
「…もういい、この冷めたコスモを解いてくれ」
カミュの手が下ろされ夏の暑さを再び感じると、癒されるどころか余計に疲れた気分になる。
「このような事をさせて悪かったな」
一言告げて背を向けたシュラは踏み出す前にハッと振り返りカミュを見た。
「お前はΩに興味はあるか」
「…私は今、育成中の弟子がいるのだ。気持ち的にもΩとどうこう、という余裕は無い」
そうか、と呟いたシュラは今度こそ背を向けて磨羯宮へと下りて行った。

「…気にならないのか?」
自分自身の状態が…。
シュラよりも先に教皇宮を出ていたカミュはシベリアへ向かうため私室から出たところだった。宝瓶宮を通過していくシュラのコスモに異様な圧力を感じしばらく眺めていたが、次第にカミュをも弾き飛ばしそうな力の増長を感じ堪らず手を出してしまった。
「私がした事よりも自身の状態よりも、Ωを気に掛けるというのか」
デスマスクの世話をずっとしている事は知っているが、あのシュラが…。デスマスク相手に情が移るようには思えないが。やがて磨羯宮へシュラが到達したことを感じると、カミュは思い出したかのようにシベリアへ向けて駆け出して行った。

ーつづくー

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2024
02,20
突然ですが「名刺サイズ透明カードお試しワンコイン」をやっていまして、毎度用途不明ですが定規付き年中カードでも作ってみようかなと。身長差だけリアルにしてみました(笑)シュラ⇔アフロはリアルに3cm。アフロが真メガテン3の閣下(坊っちゃまver)に見えてきた(゚∀゚`)



改めて見ると「おに、しょた、しょた」みたいになってしまっているな…。アフロが寝たらデスマスクだけ悪戯されるやつですかね…(゚Д゚)
悪い「おに」だなぁ(・ゝ・)

ーーー
うーん、グラード財団の孤児院。4人部屋にシュラ、デス、アフロが入って暮らしている。二段ベッドが2台あり、1台はシュラが1人下で寝てもう1台は下にアフロ、上にデスマスクが寝ている。

デスマスクはよく消灯時間が過ぎても枕灯を点けて本を読んだり夜食を食べたりしていた。デスマスクはシュラと比べると少年のように小さかったが実は同い年である。シュラは「だから成長しないんだ」と不摂生を何度も注意したが、シュラに対して反抗的なデスマスクは全く聞かなかった。不摂生は認めるがデスマスクなりに食べて大きくなろうとしているのである。昔は大差無かったのに13歳頃から年相応以上に成長していくシュラがデスマスクは憎たらしかった。

18歳、シュラは背が高く体も立派で雰囲気も良いからよくモテた。逆にデスマスクは体が立派でも背が伸びず、モテるには程遠い。女の子にすらよく揶揄われていた。
シュラは昔からデスマスクに対してやたら世話を焼いて口煩い。もう近くにいてほしくない。デスマスクは「さっさと恋人作ってここから出て行け!」と何度も言ったがシュラが恋人を作る気配は一向に無かった。「ガキ置いて出ていけるか」とかムカつく事を言ってくる。シュラは物心がついた頃からデスマスクのだらしない可愛さに惚れ込んでいたのだ。

…これまた長くなりそうな…。

成長前のデスマスクを煽りまくって濡れ場に持ち込み、大人にしていくんですよ…
1歳下のアフロが急に成長し始めて
(゚Д゚)「お前何したんだ!」
ξ゚、ゝ゚・ξ「うーん成長ホルモンが活発になってきたのかも」
(゚Д゚)「成長ホルモン?!」
てなってる所にシュラがデスマスクにこっそり
(・ゝ・)σ「こうする(突っ込まれる)と成長ホルモンがでるらしいぞ(笑)」
とか適当なこと言って。何かデスマスクも
(゚Д゚`)「お前が触るとおっきくなるからぁ!」
(下ネタ併用)とか言い出しもはやラブコメ。

(・ゞ・)「俺の成長ホルモン分けてやろうか?(笑)」
と騙され続けてシュラに好き勝手される。
(゚Д゚;)「ちょ、待て!これもうセッ……じゃねぇの?!」
(・ゝ・)「……」
(・ゝ・)「……違うぞ……お尻だし、お前も男だろ」
(゚∀゚`)「…あ、そうか…ベビーできねぇもんな」
(・ゝ・)つ「そうそう、違うから大丈夫だ」
(∩゚∀゚;)「ち、違うなら…いっか…♡」
(・ゝ・)oO(…ばかかわいい)

そして遅れて来た成長期で一気にデスマスクの背が伸びた!「マジで背が伸びた!(゚∀゚)」とタイミングよくデスマスクは騙され続けるが、シュラに2cm届かない!すっかりデスマスクの方が「もっとヤるぞ!」と成長ホルモンを促し(と思い込んでいる)シュラを追い越すためにひたすら抱かれるのであった。

しかしある日、デスマスクはシュラとずっとしてきた事がやっぱりセッ…であったことを知る…。
ξ゚、ゝ゚・ξ「えっ…君たち、そんな事までしてたの…」
(゚Д゚;)「……………」

騙されていた事に腹が立ってデスマスクは孤児院を出て行ってしまった。ムカついただけではない。ずっと恋人も作らないシュラの性欲処理扱いされていただけと今更傷付いたのだ。一応ちゃんとしてるし子どもの頃からずっと一緒にいたので、鬱陶しいけどシュラの事は信用していた。シュラからしたら遊びでもデスマスクにとっては取り返しのつかない事を散々されてしまった。傷付かない方がおかしい。

シュラはデスマスクの家出を知って、いつかこうなるかもとは考えていた。そうなる前にケアできれば良かったが何となくまだ良いかと先延ばしにしていた。デスマスクの家出先は何となく想像つくので、島根県にある黄泉比良坂まで向かった。
デスマスクを見つけて一悶着し、いつも通りのパターンでちゃんと愛情がある事をわからせて晴れて恋人に(゚∀゚`)
全てはシュラの計画通り…

(・ゝ・)「予想外だったのはデスマスクが意外と馬鹿だったことだな」

色んな意味で「鬼」(・ゞ・)クク…

ーーー
果たしてどう仕上がってくるか?
いや、おにしょたではなくカードが…
格安のため数が集まってから印刷、らしいのでそんなに利用者多くなさそうだから忘れた頃に来るかも。

最近の同人グッズ事情を考えると無配としても公式で着てる服は避けた方が無難かなぁと思ってモサくなる(゚∀゚`)聖衣が1番映えるのはわかっているが、なるべく星矢感消さないとみたいな(゚∀゚`)

さて明日からやっとオメガバの続きを考えるぞ。

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