2023 |
12,10 |
数日後、シュラはまだ巨蟹宮で引きこもっているデスマスクの元を訪れた。再検査の結果が出たのだ。先日、追い出される形で別れたが私室への扉は軽く、入る事は許されているのだなと安心した。先ずは…と真っ直ぐ居間へ向かえばそこにデスマスクはいた。
「起きていて大丈夫なのか?」
言葉を聞き振り返ったデスマスクの姿を見て、シュラはドクッと心臓が高鳴った。首をすっぽり覆い隠すような幅の広い白いΩ用の保護首輪を着けている。
「もう…買ったのか?」
「万が一を思って予め買っておいたやつだ。ここ数日は外に出てねぇよ」
ただ首が隠されているだけでこんなにも神秘さが増すものなのか、これが一度見てみたかったΩの姿なのかとつい笑みが溢れてしまう。
「…なに笑ってんだよ、気持ち悪ぃな」
「いや…似合うな、と思って…」
そこまで言ってシュラはハッとした。デスマスクも驚いてから嫌そうに顔を歪ませる。
「何だそれ?αの口説き文句みたいなこと言いやがって」
明らかに警戒してデスマスクは首輪を隠すように片手を広げて覆いながらシュラを睨んだ。
「違う、ファッションとしてだ!何もかもΩやαに結び付けるな!」
「どうせお前、αになったんだろ」
シュラが手に持つ紙に視線を落としてデスマスクは嫌味を言った。
「そうだとしたら俺は今ここに来れないだろ」
「は?じゃあまたβだったのか?」
「俺はβのままだ」
信じられない…という顔でデスマスクは佇んでいる。
「そしてお前も、変わらずΩのままだ…」
検査結果の紙を差し出すと、ゆっくり受け取って上から順に目を通していた。
「Ω、か…まぁ、もうそのつもりだったけどよ」
ついでにシュラが自分の検査結果も差し出すとデスマスクはそれも受け取って目を通した。
「お前の発情期が終わり次第、黄金の召集をかけるらしい」
「へ〜俺の裁判でもすんの?Ω黄金は要らねぇって」
検査結果を見終え、二枚まとめてシュラに返却した。
「違う、さっきサガと話したがお前は発情期前後、聖域を離れて違う場所で過ごしてもらう」
「はぁ」
「Ωだろうとお前は聖域に必要な蟹座だ、発情期以外は普通に動けるだろ?」
話しながらシュラは二枚の紙を宙に投げ、以前と同じように粉々に切り裂いた。
「ふーん、で、俺はどこに連れて行かれるんだ?」
せめてゴミ箱の上でやれよ…とデスマスクは散らばった粉をサイコキネシスでザザーっと集め掃除する。
「それはこれから俺が決める」
「お前が?」
「俺がお前を連れ出さなくてはならない、αの誰もが知らない場所へ」
またあからさまに嫌な顔をされた。
「βだから?」
「そうだ」
コワ…と言いながらデスマスクはまだ体が怠いのかソファーで横になった。
「そんなに俺のβが信用できないのか」
「だってお前デカいし、態度もデカいし、肉ばかり食ってどう見てもβって様じゃねぇよ」
「お前とそう変わらないだろ、αのアフロディーテが一番小さいぞ」
態度もな、と付け加えれば「あぁ、そう言えばそうか」と素直に納得していた。
「お前は本とか外で得た知識に左右され過ぎだ」
自分でもそう思う節があるのか、デスマスクは口を曲げて黙ってしまった。
ため息をついてシュラが話を戻す。
「Ωの発情期はおよそ1週間と聞く。前後含めて2週間くらいになるだろう。その間、聖域に蟹座と山羊座は不在となる」
「デケェ穴が開くな、十二宮ガラガラじゃねぇか。俺をクビにしないのが不思議なくらいだ」
「サガは…良い方はお前の身を案じている。Ωだからと聖域の外に放り出すつもりはない」
今のところ清らかなサガはΩの黄金聖闘士に対してしっかり向き合おうとしている。話し合いの中でシュラは確かにそう感じたが、サガの本心を読むことができないというのも過去の事件が証明していた。デスマスクもそこが気になるらしい。聖域崩壊の火種になりかねないΩを残し囲う意味に、もっと別の思惑があるのではないかと。
「サガの事は考えても仕方ない。今はお前が聖域で生活していくための環境を整えるためにできることを考えているんだ。一先ずそれで良いだろ」
「じっくり温めて、後で何か見返りみたいなモンを求めてこなければな」
「単に戦力は必要だろう」
戦力…か、と呟いたデスマスクは自分の腹部を撫でながらニヤっと笑った。
「Ω黄金とα黄金の子どもなんて稀少中の稀少だろうし、相当強いんじゃねぇ?」
気持ち悪いこと想像させるな、とシュラは冷めた目でソファーを軽く蹴った。
ーつづくー
「起きていて大丈夫なのか?」
言葉を聞き振り返ったデスマスクの姿を見て、シュラはドクッと心臓が高鳴った。首をすっぽり覆い隠すような幅の広い白いΩ用の保護首輪を着けている。
「もう…買ったのか?」
「万が一を思って予め買っておいたやつだ。ここ数日は外に出てねぇよ」
ただ首が隠されているだけでこんなにも神秘さが増すものなのか、これが一度見てみたかったΩの姿なのかとつい笑みが溢れてしまう。
「…なに笑ってんだよ、気持ち悪ぃな」
「いや…似合うな、と思って…」
そこまで言ってシュラはハッとした。デスマスクも驚いてから嫌そうに顔を歪ませる。
「何だそれ?αの口説き文句みたいなこと言いやがって」
明らかに警戒してデスマスクは首輪を隠すように片手を広げて覆いながらシュラを睨んだ。
「違う、ファッションとしてだ!何もかもΩやαに結び付けるな!」
「どうせお前、αになったんだろ」
シュラが手に持つ紙に視線を落としてデスマスクは嫌味を言った。
「そうだとしたら俺は今ここに来れないだろ」
「は?じゃあまたβだったのか?」
「俺はβのままだ」
信じられない…という顔でデスマスクは佇んでいる。
「そしてお前も、変わらずΩのままだ…」
検査結果の紙を差し出すと、ゆっくり受け取って上から順に目を通していた。
「Ω、か…まぁ、もうそのつもりだったけどよ」
ついでにシュラが自分の検査結果も差し出すとデスマスクはそれも受け取って目を通した。
「お前の発情期が終わり次第、黄金の召集をかけるらしい」
「へ〜俺の裁判でもすんの?Ω黄金は要らねぇって」
検査結果を見終え、二枚まとめてシュラに返却した。
「違う、さっきサガと話したがお前は発情期前後、聖域を離れて違う場所で過ごしてもらう」
「はぁ」
「Ωだろうとお前は聖域に必要な蟹座だ、発情期以外は普通に動けるだろ?」
話しながらシュラは二枚の紙を宙に投げ、以前と同じように粉々に切り裂いた。
「ふーん、で、俺はどこに連れて行かれるんだ?」
せめてゴミ箱の上でやれよ…とデスマスクは散らばった粉をサイコキネシスでザザーっと集め掃除する。
「それはこれから俺が決める」
「お前が?」
「俺がお前を連れ出さなくてはならない、αの誰もが知らない場所へ」
またあからさまに嫌な顔をされた。
「βだから?」
「そうだ」
コワ…と言いながらデスマスクはまだ体が怠いのかソファーで横になった。
「そんなに俺のβが信用できないのか」
「だってお前デカいし、態度もデカいし、肉ばかり食ってどう見てもβって様じゃねぇよ」
「お前とそう変わらないだろ、αのアフロディーテが一番小さいぞ」
態度もな、と付け加えれば「あぁ、そう言えばそうか」と素直に納得していた。
「お前は本とか外で得た知識に左右され過ぎだ」
自分でもそう思う節があるのか、デスマスクは口を曲げて黙ってしまった。
ため息をついてシュラが話を戻す。
「Ωの発情期はおよそ1週間と聞く。前後含めて2週間くらいになるだろう。その間、聖域に蟹座と山羊座は不在となる」
「デケェ穴が開くな、十二宮ガラガラじゃねぇか。俺をクビにしないのが不思議なくらいだ」
「サガは…良い方はお前の身を案じている。Ωだからと聖域の外に放り出すつもりはない」
今のところ清らかなサガはΩの黄金聖闘士に対してしっかり向き合おうとしている。話し合いの中でシュラは確かにそう感じたが、サガの本心を読むことができないというのも過去の事件が証明していた。デスマスクもそこが気になるらしい。聖域崩壊の火種になりかねないΩを残し囲う意味に、もっと別の思惑があるのではないかと。
「サガの事は考えても仕方ない。今はお前が聖域で生活していくための環境を整えるためにできることを考えているんだ。一先ずそれで良いだろ」
「じっくり温めて、後で何か見返りみたいなモンを求めてこなければな」
「単に戦力は必要だろう」
戦力…か、と呟いたデスマスクは自分の腹部を撫でながらニヤっと笑った。
「Ω黄金とα黄金の子どもなんて稀少中の稀少だろうし、相当強いんじゃねぇ?」
気持ち悪いこと想像させるな、とシュラは冷めた目でソファーを軽く蹴った。
ーつづくー
PR
カレンダー
最新記事
アーカイブ
ブログ内検索
アクセス解析