2023 |
12,09 |
シュラが15歳を迎えアフロディーテも14歳を過ぎた。シュラは相変わらずであったが、アフロディーテには徐々にαとしての成長が感じられるようになっていた。黄金としてのコスモを増長させるように取り巻くαの持つ威圧的な空気感。アフロディーテはより強く美しく輝きを増していた。
春、教皇宮の私室に呼ばれたシュラとデスマスクは7月に再検査を行う旨をサガから聞いた。その場にアフロディーテはいなかった。早い者は12、3歳から第二の性の影響が出るらしいがもちろん個人差があり、デスマスクにはまだΩの兆候は出ていない。
教皇宮からの帰り道でシュラは「再検査もう直ぐだな」とデスマスクに喋りかけたが「あぁ」と一言返ってきただけだった。無言のまま二人は双魚宮を抜け、やがて磨羯宮が見えてくる。こういう黙りこくっているデスマスクがシュラは苦手だ。なのでこのまま別れれば良いのだが今日は何か気になる。
「お前、調子でも悪いのか?」
磨羯宮内の真ん中でもう一度デスマスクに声をかけた。
「大丈夫だ」
いつもより低い声。悪くない、とは言わない。デスマスクの顔を見ると少し虚ろで眠そうな顔をしていた。
「お前まさかただの寝不足か?」
「寝たつもりだけどな、そうかもな」
シュラは気になってデスマスクの腕に触れてみた。体は思ったより暖かいが熱がある感じではなさそうだ。
「ナンだよ」
「熱でもあるのかと」
「少し眠いがそういう感じじゃねぇ」
シュラの手を払ってデスマスクは歩き出した。磨羯宮を抜け姿が見えなくなるまで眺めていたが、デスマスクが視界から消えた途端シュラは不安感に襲われデスマスクを追って駆け出した。
「下に用があるのを思い出した」
「あ、そう」
わざわざ並んで歩く必要は無かったが、後ろを付いて行ってもコスモで丸分かりなので追い付いたデスマスクに適当な理由を伝えた。
教皇宮からの帰り道でシュラは「再検査もう直ぐだな」とデスマスクに喋りかけたが「あぁ」と一言返ってきただけだった。無言のまま二人は双魚宮を抜け、やがて磨羯宮が見えてくる。こういう黙りこくっているデスマスクがシュラは苦手だ。なのでこのまま別れれば良いのだが今日は何か気になる。
「お前、調子でも悪いのか?」
磨羯宮内の真ん中でもう一度デスマスクに声をかけた。
「大丈夫だ」
いつもより低い声。悪くない、とは言わない。デスマスクの顔を見ると少し虚ろで眠そうな顔をしていた。
「お前まさかただの寝不足か?」
「寝たつもりだけどな、そうかもな」
シュラは気になってデスマスクの腕に触れてみた。体は思ったより暖かいが熱がある感じではなさそうだ。
「ナンだよ」
「熱でもあるのかと」
「少し眠いがそういう感じじゃねぇ」
シュラの手を払ってデスマスクは歩き出した。磨羯宮を抜け姿が見えなくなるまで眺めていたが、デスマスクが視界から消えた途端シュラは不安感に襲われデスマスクを追って駆け出した。
「下に用があるのを思い出した」
「あ、そう」
わざわざ並んで歩く必要は無かったが、後ろを付いて行ってもコスモで丸分かりなので追い付いたデスマスクに適当な理由を伝えた。
無言のまま黙々と十二宮を下り、巨蟹宮内にある私室への分かれ道で「じゃあな」とデスマスクはシュラに手を振った。「暇なら寝とけよ」の声に小さく「あぁ」と聞こえてきた。バタン、と扉が閉まりシュラはようやく少し気持ちが落ち着いた。
デスマスクの私室周辺には個人的な結界が張ってあるようで普段から黄金クラス以外は出入りができない。ここなら安全だろう…となぜそんな事を思ったのかはシュラ自身にもわからなかった。そしてそのまま磨羯宮へ引き返すのもデスマスクにコスモを探られていたら何となく気まずいので、ロドリオ村まで行く事にした。
お金を持って来れば良かったな…と、本屋の前でΩに関する特集が組まれた雑誌を見つけてしまい、中身を確認しながら考える。結局、磨羯宮まで戻ってその本を購入した。
Ωの目覚めは風邪のひき始めに似ているらしい。
デスマスクの私室周辺には個人的な結界が張ってあるようで普段から黄金クラス以外は出入りができない。ここなら安全だろう…となぜそんな事を思ったのかはシュラ自身にもわからなかった。そしてそのまま磨羯宮へ引き返すのもデスマスクにコスモを探られていたら何となく気まずいので、ロドリオ村まで行く事にした。
お金を持って来れば良かったな…と、本屋の前でΩに関する特集が組まれた雑誌を見つけてしまい、中身を確認しながら考える。結局、磨羯宮まで戻ってその本を購入した。
Ωの目覚めは風邪のひき始めに似ているらしい。
6月、デスマスクが誕生日を迎える前。シュラはサガに呼び出されて教皇宮へ向かった。春からデスマスクの体調が優れないという。どんな勅命でも請け負ってきた彼が遂に休みを申し入れてきたと。
「以前から気に掛けてきたが、Ωの兆候かもしれない」
「……」
「お前がβであるという前提で頼みたい、今からデスマスクの元へ医師と共に行ってほしい」
再検査を前倒しで行うということだった。もしもΩが覚醒し、デスマスクが発情期に入っているならば私室から一歩も外に出してはならない。一般社会でもそれはΩにとって危険行為となるが、αの巣窟である聖域ではΩの身の危険の他に発情フェロモンに惑わされたα同士の闘争が勃発しかねない。巨蟹宮の私室へ入るためにはシュラが必要で、また万が一αが集まって来た時のためにもシュラが必要だった。
「俺がまず説明します」とシュラは十二宮を駆け下り、医師より先にデスマスクの私室へ向かった。
「以前から気に掛けてきたが、Ωの兆候かもしれない」
「……」
「お前がβであるという前提で頼みたい、今からデスマスクの元へ医師と共に行ってほしい」
再検査を前倒しで行うということだった。もしもΩが覚醒し、デスマスクが発情期に入っているならば私室から一歩も外に出してはならない。一般社会でもそれはΩにとって危険行為となるが、αの巣窟である聖域ではΩの身の危険の他に発情フェロモンに惑わされたα同士の闘争が勃発しかねない。巨蟹宮の私室へ入るためにはシュラが必要で、また万が一αが集まって来た時のためにもシュラが必要だった。
「俺がまず説明します」とシュラは十二宮を駆け下り、医師より先にデスマスクの私室へ向かった。
デスマスクの私室に入った事はある。いつもアフロディーテと一緒だった。シュラだけで訪ねるのはもしかしたら初めてかもしれない。デスマスクは自身のプライベートを積極的に見せようとはしない男だった。
「デスマスク、シュラだが。」
私室の前の扉を叩き声を掛けてみる。返事は無い。
「検査が前倒しになった、今から医師が採血するために入るぞ」
デスマスクのコスモが揺らぐのを感じた。シュラがドアノブに手をかけゆっくり回すと動きは軽く、拒まれる気配も無い。立ち入りは許されているようだった。
「デスマスク、シュラだが。」
私室の前の扉を叩き声を掛けてみる。返事は無い。
「検査が前倒しになった、今から医師が採血するために入るぞ」
デスマスクのコスモが揺らぐのを感じた。シュラがドアノブに手をかけゆっくり回すと動きは軽く、拒まれる気配も無い。立ち入りは許されているようだった。
「デスマスク」と呼びながら先ずは居間まで行ってみるが薄暗く静かで誰もいなかった。
寝室か…。
Ωの発情期の過ごし方について書籍から無駄に知識を得てしまっていたため、様子を伺うのを躊躇った。いや、まだΩと決まったわけでは…と言い聞かせ寝室の扉を叩く。
「デスマスク、ここか?今開けていいか?」
「……」
何か聞こえてきたが聞き取れなかった。
「すまん、聞こえない。入るぞ」
ドアは軽く開いた、隙間からゆっくりデスマスクを探しながら中の様子を伺うと、彼はベッドの上に上体を起こして座っていた。想像していたコトは起きていないようで、シュラは安心してベッド脇に駆け寄った。
「起きていて大丈夫か?調子が悪いと聞いたが」
「…よくねぇから、こんなんなってんだろうが」
前髪を下ろしているデスマスクは目を閉じて項垂れ、息苦しそうにしている。
「早く、医者連れて来てんだろ…」
「あぁ」
言われて直ぐに巨蟹宮の私室前で待っている医者を呼びに戻った。もっと遅く来るかと思っていたが聖域専属医師は十二宮の上り下りに長けているらしい。
寝室か…。
Ωの発情期の過ごし方について書籍から無駄に知識を得てしまっていたため、様子を伺うのを躊躇った。いや、まだΩと決まったわけでは…と言い聞かせ寝室の扉を叩く。
「デスマスク、ここか?今開けていいか?」
「……」
何か聞こえてきたが聞き取れなかった。
「すまん、聞こえない。入るぞ」
ドアは軽く開いた、隙間からゆっくりデスマスクを探しながら中の様子を伺うと、彼はベッドの上に上体を起こして座っていた。想像していたコトは起きていないようで、シュラは安心してベッド脇に駆け寄った。
「起きていて大丈夫か?調子が悪いと聞いたが」
「…よくねぇから、こんなんなってんだろうが」
前髪を下ろしているデスマスクは目を閉じて項垂れ、息苦しそうにしている。
「早く、医者連れて来てんだろ…」
「あぁ」
言われて直ぐに巨蟹宮の私室前で待っている医者を呼びに戻った。もっと遅く来るかと思っていたが聖域専属医師は十二宮の上り下りに長けているらしい。
医師は簡単にデスマスクを診察し、採血を行った。ついでにシュラの分もと言われその場で行った。医師は自身がβであるため数値を見ないと断言できないが、と前置きしてから
「前回の結果も踏まえておそらく今の症状はΩの発情期と思われます」
と告げた。今回はまだ軽いと思うので薬が無くても耐えられると思いますが、辛い時に…と副作用のほとんど無い弱めの発情抑制剤を処方した。
「発情期の終わりは自身でわかると思います。それまではこの部屋から出ず、βの方を頼ってください」
特にここはαばかりですから、いくら貴方が強いとはいえ絶対に出ないように。そう念を押して医師は帰って行った。
「前回の結果も踏まえておそらく今の症状はΩの発情期と思われます」
と告げた。今回はまだ軽いと思うので薬が無くても耐えられると思いますが、辛い時に…と副作用のほとんど無い弱めの発情抑制剤を処方した。
「発情期の終わりは自身でわかると思います。それまではこの部屋から出ず、βの方を頼ってください」
特にここはαばかりですから、いくら貴方が強いとはいえ絶対に出ないように。そう念を押して医師は帰って行った。
デスマスクはしばらく薬を手にして眺めていた。
「…飲むか?飲むなら水を用意するが」
「…コレが効いたらΩ確定って事だよな…」
「…まぁ…そうなるな」
少ししてから薬を枕元の棚に放って横になり、布団の中へ潜り込んだ。飲まないか…とシュラはベッドに手をついて立ち上がると、ひょこっと布団の中からデスマスクが顔を出し「水持って来い」と言い放った。
「…飲むか?飲むなら水を用意するが」
「…コレが効いたらΩ確定って事だよな…」
「…まぁ…そうなるな」
少ししてから薬を枕元の棚に放って横になり、布団の中へ潜り込んだ。飲まないか…とシュラはベッドに手をついて立ち上がると、ひょこっと布団の中からデスマスクが顔を出し「水持って来い」と言い放った。
「もうさ、俺わかってたんだよ」
薬を飲み終えて再び横になったデスマスクがぽつりと喋り始めた。
「自分の体の事だからよ、あ、これやっぱΩの兆候なんかなって事がいくつもあったんだ」
「そうだったのか…」
デスマスクはシュラの方を向き、腕を伸ばしてベッドの下を指差した。
「この下の引き出し開けてみろ」
急に何だ?と思いながらシュラが引き出しを開けると、そこには第二の性について書かれた本が何十冊と並んでいた。
「お前も気にしてたようだから言うけど、俺も結構あの本屋で買ってたんだよな」
「そうか…」
この事は正直シュラにとって意外ではなかった。デスマスクの繊細な面を知っていればむしろこれくらいしていて当然と思える事だった。
「あー読みたいのあれば持って行って良いぜ、Ω確定なら色々考察する必要も無くなるしな」
シュラは自分が持っていない雑誌を一冊取り出す。
「こういう雑誌は内容のほとんどがαとΩだった」
「そうだよ、β向けの記事なんてほとんど無ぇからお前何見てんのかなって。やっぱαに憧れてんのかなとか思ったわけ」
てかどうせお前は次α判定出るんだろ…とぼやいた所でデスマスクはシュラを見た。
「やばい、お前どうせαになんじゃん…これから俺に近付くなよ」
「今はまだ違う」
「そういうの怖すぎんだよ!いきなり豹変したαに喰われるΩ話とか知ってんだろ!」
「知ってはいるがお前なんか…」
と言い掛けてシュラは口をつぐんだ。
「はぁ?!俺なんか襲うわけねぇって?!そういうαが事件起こしまくってんだろうが…っ!」
「?!、おい!」
まだ薬は効いていない、熱を上げてシュラに突っかかったデスマスクは目眩を感じ布団にドサっと沈み込んだ。
「大丈夫か?!」
荒い息を繰り返しながらサッと目元を手で覆い隠す。
「…すまん、適切な事が言えなくて」
グズっと鼻を啜る音がした。
「気ぃ遣ってんじゃねぇよ…クソ!ムカつく!」
かと言って適当な事も言えないだろとシュラは思い、この状況に成す術が無かった。
「発情期の間ここから出られねぇ…何だよ、巨蟹宮に閉じ込められたデスマスクって、俺の事じゃねぇかっ…」
その通りだ、と笑っていいのかもわからず何も言えない。
「おい、気まずいなら帰れぇ!帰ってαの勉強でもしてろ!」
酷い追い出し方だと思ったが、今はそれに乗るしかないなとシュラは立ち上がった。声は震えて、相当傷付いているだろうことはわかる。しかしシュラはそれを癒す技術や才能が無いことも自覚していた。デスマスクの場合は無理に側にいるより一人にさせる方がいい。
薬を飲み終えて再び横になったデスマスクがぽつりと喋り始めた。
「自分の体の事だからよ、あ、これやっぱΩの兆候なんかなって事がいくつもあったんだ」
「そうだったのか…」
デスマスクはシュラの方を向き、腕を伸ばしてベッドの下を指差した。
「この下の引き出し開けてみろ」
急に何だ?と思いながらシュラが引き出しを開けると、そこには第二の性について書かれた本が何十冊と並んでいた。
「お前も気にしてたようだから言うけど、俺も結構あの本屋で買ってたんだよな」
「そうか…」
この事は正直シュラにとって意外ではなかった。デスマスクの繊細な面を知っていればむしろこれくらいしていて当然と思える事だった。
「あー読みたいのあれば持って行って良いぜ、Ω確定なら色々考察する必要も無くなるしな」
シュラは自分が持っていない雑誌を一冊取り出す。
「こういう雑誌は内容のほとんどがαとΩだった」
「そうだよ、β向けの記事なんてほとんど無ぇからお前何見てんのかなって。やっぱαに憧れてんのかなとか思ったわけ」
てかどうせお前は次α判定出るんだろ…とぼやいた所でデスマスクはシュラを見た。
「やばい、お前どうせαになんじゃん…これから俺に近付くなよ」
「今はまだ違う」
「そういうの怖すぎんだよ!いきなり豹変したαに喰われるΩ話とか知ってんだろ!」
「知ってはいるがお前なんか…」
と言い掛けてシュラは口をつぐんだ。
「はぁ?!俺なんか襲うわけねぇって?!そういうαが事件起こしまくってんだろうが…っ!」
「?!、おい!」
まだ薬は効いていない、熱を上げてシュラに突っかかったデスマスクは目眩を感じ布団にドサっと沈み込んだ。
「大丈夫か?!」
荒い息を繰り返しながらサッと目元を手で覆い隠す。
「…すまん、適切な事が言えなくて」
グズっと鼻を啜る音がした。
「気ぃ遣ってんじゃねぇよ…クソ!ムカつく!」
かと言って適当な事も言えないだろとシュラは思い、この状況に成す術が無かった。
「発情期の間ここから出られねぇ…何だよ、巨蟹宮に閉じ込められたデスマスクって、俺の事じゃねぇかっ…」
その通りだ、と笑っていいのかもわからず何も言えない。
「おい、気まずいなら帰れぇ!帰ってαの勉強でもしてろ!」
酷い追い出し方だと思ったが、今はそれに乗るしかないなとシュラは立ち上がった。声は震えて、相当傷付いているだろうことはわかる。しかしシュラはそれを癒す技術や才能が無いことも自覚していた。デスマスクの場合は無理に側にいるより一人にさせる方がいい。
部屋を出る際「一応…まだαではない。今が本当に発情期であるのならお前のフェロモンも全くわからない。」だから…「信用できる間は俺を使え。αの兆候があれば直ぐに連絡する」
それだけ伝え、シュラは教皇宮へデスマスクについての報告に向かった。
それだけ伝え、シュラは教皇宮へデスマスクについての報告に向かった。
シュラが出て行ったあとデスマスクは布団の中で体を丸めて涙を流した。泣くことなんて今まで滅多に無かった。人前でなんて特に。これもΩに目覚めてしまったが故の弱さなのかと悔しくて泣いた。最強の黄金聖闘士であるのに、このせいで自分はどんどん弱くなってしまうのかもしれないと思うと恐ろしかった。αたちは強さを増していくであろうのに。泣きたくなくても今、涙すら止められない。体が、腹部がジンジンする。嫌だ、怖い…変わってしまう…!
Ωって何だ。発情期って何だ。妊娠って何だ。αと番う事がΩの幸せ…?デスマスクは全部調べた。Ωが持つ特性の全てが黄金聖闘士にとって必要の無いものだった。αに守られての愛なんかいらない。アテナの加護をとうに裏切っている自分には、巨蟹宮のデスマスクには愛など必要ない!戦い抜く強さが欲しかった。邪悪なサガの悪行からいつ崩壊してもおかしくない聖域で、いつかサガをも退け自らが君臨できるほどの強さが欲しかった!フェロモンなんかで狂わせるのではない。力で、俺の実力で!!なのに、これでは…一人で生きていく事すら…
Ωって何だ。発情期って何だ。妊娠って何だ。αと番う事がΩの幸せ…?デスマスクは全部調べた。Ωが持つ特性の全てが黄金聖闘士にとって必要の無いものだった。αに守られての愛なんかいらない。アテナの加護をとうに裏切っている自分には、巨蟹宮のデスマスクには愛など必要ない!戦い抜く強さが欲しかった。邪悪なサガの悪行からいつ崩壊してもおかしくない聖域で、いつかサガをも退け自らが君臨できるほどの強さが欲しかった!フェロモンなんかで狂わせるのではない。力で、俺の実力で!!なのに、これでは…一人で生きていく事すら…
教皇宮へ向かっていたシュラは不意にコスモの強い歪みを感じ足を止めた。巨蟹宮へ引き返そうかと思ったが、やがて薬が効いてきたのか落ち着いていったので再び上を目指した。
「可哀想…か」
一言呟いたシュラは言葉に似合わず軽く微笑んでいた。サガやアフロディーテに、デスマスクがおそらくΩである旨を早く知らせたいと思っていた。再検査の結果が楽しみだった。自分のではない、デスマスクのものが。
こんなこと…絶対に言えないが、シュラはデスマスクがΩであった事を心の底で嬉しく思っていた。
ーつづくー
「可哀想…か」
一言呟いたシュラは言葉に似合わず軽く微笑んでいた。サガやアフロディーテに、デスマスクがおそらくΩである旨を早く知らせたいと思っていた。再検査の結果が楽しみだった。自分のではない、デスマスクのものが。
こんなこと…絶対に言えないが、シュラはデスマスクがΩであった事を心の底で嬉しく思っていた。
ーつづくー
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