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そこはかとなく

そこはかとない記録
2022
07,07
49頁まできた!そして先も3頁は終わってるから残り8頁だー。もうちょっとだぁー。
バンテリン効いてないけど、どうにかやってます(・ゝ・)

せっかくなので七夕ネタを…と考え始めたら、結構長いのが爆誕しそう…もう寝たいので途中なんですけど。後で漫画にしたいなーと思ったけど、長くなりそうなので迷いが出てきた…チマイ絵でもあれ意外と時間かかるんですよ…
んーでも漫画にしたいなぁー。検討入り。(それより蟹誕漫画は…)
あ、ファンタジー物です。
ーーー

山羊座のシュラだった俺は、宇宙に飛ばされて燃え尽きて死んだ。
何度か地上の危機とかで冥界や嘆きの壁に呼ばれはしたが、結局死んでからも墓場である宇宙を漂っている。
恋人である蟹座のデスマスクは地獄に落ちて死んだらしい。
何度か再会する機会はあったが話どころではなく、用が済めば死んだ場所へと引き離された。
だから多分、あいつは地獄にいる。

会いたくても会えない、生まれ変わる気配もない。

あまりに暇すぎて、ふとその辺に浮かんでいる小さな星を手に取ってみた。
とある神話で、死んで星となり離れ離れになった夫婦が空に散らばる星をかき集めて大きな橋を作って再会できたという話を思い出したからだ。
星と星をくっ付けるふりをしてみれば、なんと本当に星がくっ付いた。
暇潰しには面白く、俺はひたすら星を集めながら繋いでいき、やがてそれは星でできた一本の紐のようなものに見えてきた。
地球に向かって垂れ下がらせれば届くかもしれない。
しかし地獄は地球にあるのか?
疑問に思ったが、考えてもわからないのでひたすら紐作りに専念した。

地獄まで届きますように。

届いたからどうなるなんて考えてもいないが。

ーーー

蟹座のデスマスクだった俺は、神様のサポートを得ていい気になったザコ聖闘士に吹き飛ばされて生きたまま地獄に落ちて死んだ。
恋人だったシュラは遥か彼方、宇宙にいるらしい。
ここからは空、いや地上すら見えない。
もう一度会いたいけど、諦めていた。俺はもう永遠にここから出られないのだ。

シュラの事を思いながら崖にもたれてぼんやりしていたある日、上の方にぽかんと空いた漆黒の穴から何やらキラキラしたものが垂れ下がってきた。
それは日が経つにつれ徐々にこちらへ向かってのびてくる。
随分近くまで垂れてきた時、そのキラキラしたものは星であるとわかった。

何だこれは…地獄に垂れ下がる一本の糸のような紐のような…

地獄の神話でこんなような話があった気がする。
「蜘蛛の糸」だ。
その話の結末を俺は知っている。

サッと周りを見渡すと、周りにいる亡者たちも顔を上げてその星の糸を眺めていた。

…これは何かの罠なのか…俺がこんなものに引っかかるとでも…

何日かして、やがて星の糸はついに手が届くところまで垂れてきた。
星の糸は目の前で見ると、とても糸とは呼べないくらい太くてゴツかった。縄だった。
亡者たちがそれに触れようか触れまいかと躊躇っている。
貪欲そうなのに意外だなと思った。
が、本当のところは触れたくても触れられなかったのかもしれない。

俺は亡者をかきわけて目の前に行き、何故か、とても懐かしい感じがしてそっと触れてみた。

触れた瞬間、体の中にじわじわと流れ込んでくる暖かいもの。

「……っ……!」

「……ぅ……」

反射的にどっと流れ出る涙が止まらない。

俺の中を満たしていくものが何かはすぐにわかった。

「……シュラ……!」

忘れることなどできない、体が覚えている、シュラのコスモ。

何で、ここにシュラのコスモが…あいつは今、宇宙の彼方で…

「?!」

もしかして、宇宙から伸びている…?!この星は、宇宙の…

「ぅおっ!」

星の縄が伸びる先を見上げた瞬間、触れていた縄が引き揚げられるように動き始めたのでとっさにしがみ付いた。

ーーー

繋げていた星の先が見えなくなって随分経ったある日、突然それは感じられた。
いつものようにカチカチと星を繋いでいたら、急に流れ込んできたのだ。

あいつのコスモが!!

「デスマスク?!」

間違いない、忘れることなどできない彼の異様なコスモが握っている星の紐から流れ込んでくる。

「と…届いたのか?!」

うっかり離してしまわないように両手で握り締めると、コスモはより強く流れ込んできた。

本当に届くなんて考えていなかった。どうすればいいんだ?!

「デス、離さないでくれ!!」

俺はデスマスクのコスモを感じながら、必死に星の紐を引き上げ始めた。
どれくらい時間が経ったのかわからない。
引いても引いても姿は現れず、それどころかどんどん重みが増しているような気もする。
ただ、デスマスクのコスモが途切れない事だけが支えだった。

ーーー

いきなり動きだした星の縄を、シュラのコスモを離したくなくてただひたすらしがみ付いていた。
どんどん上へと引き揚げられていく。
結構揺れるので本当にしがみ付くだけで必死だ。
やはり、予想した通り引き揚げられていく俺に続いてとんでもない量の亡者たちも連なってしがみ付いていた。

縄が千切れる…!

そんな不安でいっぱいになるも、悲劇の結末だけは避けたくて誰一人亡者を蹴落とす事なく縄を握り続けた。

地獄を抜け、地上を超え、そして遂にその時がきた。

ーーー

信じられない、本当にしがみ付いている!!

デスマスクのコスモを信じ、紐を引き続けて遂にその時が来た。

デスマスクが、見える…!

「デスマスク!!」
「シュラァ!!」

もう少し、あと少し頑張れば…!
それにしても終わりが近いというのに重過ぎる。

その謎は直ぐに解けた。
デスマスクの足にしがみ付いている亡者から更に亡者がしがみ付いていて…その数が多過ぎて先が見えない!

「デス!!そいつら振り落とせないのか?!」
「ダメだ!コイツらを落としちゃダメなんだ!」
「お前も危ないぞ!」
「ちゃんと捕まってるから、もう少し頑張ってくれ!!ダメなんだ、これは蜘蛛の糸なんだ…!」
「蜘蛛の糸ぉ?!」

とにかく俺は言われるまま引き揚げ続けた。

重い、もう少し…あと少し…

重い…!あと少しで…


あと少しで…


腕が届きそうなくらいまで近付いていたのに

突然、星の紐は粉々に砕け散った

ーーー

何がいけなかったのだろう…
あと少しで届きそうだった。
すごく近くにシュラを感じた。

でも、ダメだった。

突然、しがみ付いていた縄が砕け散って、俺と亡者たちは宇宙を漂うことなく、再び地獄へと真っ逆さまに落ちていった。
シュラの、名前を呼ぶ暇も無かった。

ふと、1年に1回だけ会えるカップルの伝承がアジアにある事を思い出した。

「1年に1回も会えれば十分じゃねぇか」

あんな奇跡、もう2度と無いだろうな。
それにシュラに会えてもこうしてまた地獄に引き落とされるんだろうな。

……俺たち、そんなに悪い事したのかな……

10歳で突然支えを失って、3人で聖域を守っていたつもりだった。
俺たちなりに精一杯やっていたつもりだった。
裏切ったのって本当に俺たちだったのかよ。

……考えても仕方ない、力無くして負けたんだ。
後から来た強いやつの勝ちだよ。

落ち込みっぷりが相当可哀想に見えるのか、亡者たちでさえしばらく俺にちょっかいをかけてくることは無かった。

ーーー

それは突然の事で、デスマスクの姿が霞んだ頃にやっと俺はあいつの名前を叫ぶ事ができた。
届くことは無かっただろう。
地獄から来た者たちは無重力を無視して真っ逆さまに落ちていった。

やはり亡者たちが…と思ったが、星の砕け方が気になった。
消えるように粉砕したのだ。

こんな奇跡、もう2度と無いかもな…と思いながら目の前に浮かんでいる星を掴み重ねてみた。

くっ付いた。

「……」

また作ったところで失敗するかもしれない。
それにデスマスクが掴めたからと言って地獄に引き戻されないという保証はない。

ただ、俺がコレを作らない限り…アイツを引き揚げる術は何も無い。

あいつはまた、待ってくれているだろうか…

ーつづくー

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