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そこはかとなく

そこはかとない記録
2024
09,02
 デスマスクはほとんど周期を乱れさせる事なく定期的に発情期を迎え、その度にシュラは三日ほどデスマスクを支え続けるという生活を繰り返した。発情期中でも体調が良ければ部屋を出る事もあったが、フェロモンに誘惑されるαはおらず聖域に於いても自由に過ごすことができた。番を得て体質が変わったことはもちろんあるものの、それよりも常にデスマスクの隣にいるシュラを怖れ、二人に近付こうとする者は黄金聖闘士を除きいなくなっていた。

「デスは昔から近付こうとする物好きな奴はいなかったけど、君の周りからもサッパリ人が消えてしまったね」
「βだからと甘く見ていた奴らが散っただけだろ」
 1月11日の朝、シュラが23歳を迎える前日にアフロディーテが磨羯宮を訪ねてきた。どうせ当日は二人で過ごすだろうからとフライングで祝いに来たらしい。しかも任務へ向かう道すがらと素っ気なく言う。特にプレゼントと言うような"物"はなく、シュラはいつも通り薔薇を三輪贈られた。すぐに行くからと告げられ磨羯宮と私室を繋ぐ扉の前で立ち話をしている。
「αなのは大前提で他の黄金とは候補生や雑兵たちも付き合っているじゃないか。第二性だけが問題ではないな。君が怖いんだよ。脱走者の処刑、デスマスクの分も理由付けて君がやっているのだろ?外でも放っておけば良いような悪者を退治しちゃってるみたいだし」
 二人が番になってから、任務中に無駄な殺しをする事が無かったシュラも小さな事件を起こすことが増えた。デスマスクのように周りを巻き込むような形ではなく、ちゃんと悪事を働いていた輩を通りすがりに成敗しているだけなので咎める事でもない。それでも任務以外は無関心を貫いてきたシュラの殺人が増えたことには違和感があった。
「生まれ持つことができた力を無駄にして、碌でもない事をする奴らに正義を教えてやってるだけだ」
「ふぅん、死を以って解ってくれるといいね。君がデスマスクを染め替える方かと思っていたけど、案外そうでもないんだな。惚れた相手にハマってしまうタイプか」
 好きな相手に尽くしたい気持ちというのはシュラにもあるだろうが、それでもデスマスクの方が尽くす側だと思っていた。奔放な闘い方に良い意味で影響を与えられるかと考えていたが…。
「俺のαはデスマスクの為にある」
「世界の平和ではないのだな」
「世界の平和のためでもあるぞ。あいつが望むαとΩの殲滅は」
「おっそろし…」
 支配しているのはどちらなのだろう。番なのだから共依存と言うのか。アフロディーテが言葉を失っていると、シュラの笑い声が小さく漏れた。
「クク…お前はどう思っている?第二性が平和の妨げになっているとは思わないか?」
「私は力関係こそハッキリしている方が良いと思うがな。βだって平凡面しているだけだろう。それに性差の問題なら男女すら無くしてこそだ」
「あぁ、できれば男女も無くなればいいな。好きになったやつくらい自由に愛させて欲しい」
「それは家族や血縁関係もあるぞ。何でも自由になれば良いというものでもないだろう?その先には混沌しかない」
 神々でさえも「自由」というものは制御できない。自由とは、全てのものが永久に果たせない秩序なのだ。
「だからこそ知恵や理性、肉体的差別を与え人を縛るのか。そこまでして世界を造り、何がしたいのだろうな。神同士でさえ争うというのに、人には平和を押しつけて。考えるほどわからなくなる。おそらくデスマスクはΩが判明する前から世界の存在について疑問を持っていたのだろう」
「それがαやΩの憎しみに?そんなに簡単な話だろうか」
「α、Ωを通してあいつが憎むのは神だ。簡単な話ではないから、俺も理解が追いつかないのかもな」
 ため息混じりに呟くシュラの姿を見て、このバカを心底惚れさせるデスマスクの魅力は何だろうと純粋に思った。アフロディーテ自身もデスマスクには好意的で、もしも本気でデスマスクが自分を選んでくれたのならば受け入れられたと思う。もちろん「αだから」だけではなく。しかしシュラの愛し方とは違うと言えた。自分はもっと表面的に友人のままデスマスクを愛して終わるだろう。シュラのように深いところまで杭を打ち付けて潜り込むような愛し方はきっとできない。他人の深部になんか触れたいとは思わない。殻の硬いデスマスクも同じタイプであるはずなのに、シュラには自ら晒しているのが容易くわかる。自分なら晒されても対応に困ってしまうがシュラはデスマスクの闇にすら愛おしさを感じている。懐が深いと言うかデスマスクバカと言うか。
「もしも、アテナが生存していて戻られるとしたらどうする?裏切るのか?」
「デスマスクに従う。それ以外はない。俺がアテナに命を捧げることができる可能性はデスマスクの待遇に依る」
「まぁ…そうだよな。聞いた私がバカだったよ」
 アフロディーテはシュラの肩を軽く叩き、明日はごゆっくり、と伝えて去って行った。

 発情期には高待遇で休みを受けているため誕生日程度では自動的に休みになるわけでもなく。翌日シュラは夕方までに仕事を終えて磨羯宮の自室に戻った。デスマスクは昼に出て夜までかかるらしい。会えるのは20時頃からか。巨蟹宮の方が外から近いのだからそちらで過ごそうかと提案したが、シュラの誕生日だから自分が磨羯宮へ行くと聞かなかった。食事はシュラが用意した。水に挿したアフロディーテの薔薇を食卓に置き、寝室と浴室を整え、他にも仕事に関してやる事はあったが何も考える気が起きず居間のソファーに沈み込んでデスマスクが来るのを待つ。番である安心感からか会えない日が続いても苦にはならなかった。デスマスクは必ず自分の元へ戻って来るという自信。来なければ自分が捕まえに行くだけだと、必ず見つけ出せるという自信。敵は全て殺せばいい。仮に自分たち以外に"運命"が存在しているとしても、サガと対面した時のように自分は何を犯してでもデスマスクを手放さない。それを彼も望んでいるという自信。死に別れても、必ず再会できるという自信。
(無敵だな…)
 一人ニヤリと笑いながらそう思った。
(どうしようもない時は、俺が殺してやる…)
 二人にとってほとんどの者は相手にならない。黄金以上の闘士、そして神との闘いに限るだろう。デスマスクが誰かに殺されることも今では許せないと思いながら、シュラは右手をかざして眺めた。

 ふ、と磨羯宮に侵入するコスモを感じソファーから身を起こす。扉に視線を移すと間もなく開き、小さな箱を手にしたデスマスクが笑いながら姿を現した。それを見たシュラの表情も柔らかく崩れていく。
「お待ちかねの俺様とケーキがやって来たぞ」
 ニコニコしたまま小箱を食卓に置き、ソファーにふんわり飛び込んでシュラの頭を抱いた。
「っあー…いい匂いだな、ほんと…。すき…」
 胸いっぱいにシュラの匂いを吸い込むと、頭を離し「おめでと」と呟いて軽いキスを何度も交わす。放っておくと食事を忘れてしまいそうだと感じたシュラはキスをしたままデスマスクを抱き上げて食卓まで移動した。
「せっかく用意したからな、先に済ませてしまうぞ」
 椅子に座らされたデスマスクは「ハイハイ」と軽い返事をしてフォークを手に取る。少し首を垂れれば、白い首を横切る黒い首輪と丸見えな噛み跡が露わになった。ちょっと苦しい、と言いながらもオフになれば必ず首輪を着けている。自身が与える物全てに価値があり、大事にする姿は見ていてとても気分が良かった。何でも与えたくなってしまう。軽く首筋を撫でると、ビクンと跳ねたデスマスクに「早く食え」と睨まれた。

「お前って何でも食うから正直どういうケーキが好きなのかわかんねぇんだけどさ、まぁ冬だしシンプルにチョコレートとフルーツでも買ってみたわけよ。俺の地元の良いお店のヤツ」
 食事を終えてから食卓の隅に置いていた小箱を開けると、ショートケーキが3個入っていた。
「さすがにホールはいらねぇよな、って。俺一個で良いしニ個お前の分」
「いや俺も一個で良かったんだが」
「でも食えるだろ?食っとけよ。誕生日なんだし」
 デスマスクはシュラに選ばせることなく真っ先に一つのケーキを取り出して自分の皿に乗せた。自分が食べたい物はハッキリしている。そういう性格なのは知っているし不満も無いのでシュラは残りの二個を皿に乗せて、あっという間に食べ終えた。「うまい?」と尋ねる声に頷けば、そうに決まってると笑ってデスマスクも最後の一口を口に含んだ。
「何だかんだでお前の誕生日ちゃんと祝うのも初めてだよな。だから奮発してお高いケーキ買ってきたんだけど」
「プレゼントはケーキだけか?」
「え?お前プレゼント欲しがっちゃう?何か新鮮」
 そう言いながらデスマスクはポケットに手を入れてゴソゴソしている。ケーキの箱以外を持って来ている感じは無かった。ポケットに入るサイズならあり得るが、デスマスクがプレゼントをポケットになんか入れるだろうか?
 やがてするりと引き抜いて見せた手には、何も見当たらなかった。
「プレゼントさ、考えたんだよ。絶対に何か渡したかったからな。でも良いのが思い付かなかった」
「俺はケーキだけで十分だ、気にしなくていい」
「でも少しは期待しただろ?…何かなぁ…どれもしっくりこなくて今日になっちまったよ。適当なのは渡せねぇって考え尽くした結果、自爆した」
 言い終えて食卓に突っ伏すデスマスクの髪に手を伸ばして撫でる。何でも器用にこなす奴なのに、行き詰まるほど自分の事を考えているのは嬉しい。
「何か持ってくるだろうと考えてはいたが、お前のこんな姿が見れるのは俺にとってサプライズだぞ」
「へー…うれぴー…」
「本当の事だ。冗談でも何でも適当な物を持ってくれば良かったのに、それができなかったほど俺に真剣なんだろ?どうでもいい奴ほど何でも渡せるもんな」
 髪を撫でていた手が耳へ、頬へと滑り込み、デスマスクの顔を上げさせる。本当は何か渡したかったのに、という悔しさを隠し切れない顔を見ると、シュラも釣られて困った笑顔を返した。
「何か良いものが閃いたら持って来い。来年まで待つなよ?俺たちには明日があるとは限らない」
「お前が死んでも黄泉比良坂で足止めして渡す…」
「ハハ、あの世へ持って行ける物は良いな。どこまで持っていられるか試してみたい」
「すぐ閻魔サマに没収されるだろうよ」
 エンマ?ハーデスじゃないのか、と笑いながらシュラは食事の後片付けを始める。長年の隠れ家生活が染み付いているのか聖域に戻ってからも発情期の有無に関わらず、私室で食事をする時はいつもシュラが担当していた。もちろん手の込んだ料理なんか作らない。デスマスクが当たり前のようにソファーで食事を待つから自然といつもシュラが台所に立った。それは誕生日であろうと変わらない。
「まぁ、最後まで手にしていたいのはお前だけどな…」
 食器を洗いながら溢した言葉に「知ってる」と小さく返ってきた。
「多分だけどそれはどうにかなるんじゃねぇ?俺らって強い運命で結ばれちゃってるっぽいし。サガすらそんな事言ってた」
「…サガが?」
 突然出てきた名前に手を止める。
「何かあいつ前世の記憶が残ってるらしいんだよな。俺らとアフロもいたんだってよ。戦争してて死んだらしい」
「戦争…?それは、雪の中でか?」
 真剣に食い付いてきたシュラが意外でデスマスクは思わず「ふぇ?」と間抜けな声が出てしまった。
「いや、俺は知らねぇからサガに聞いてくれ。まさかお前も前世の記憶が残ってるのか?」
「…わからない、がβの時によく夢を見たのだ。そう言えばαになってからは見ていないな…」
「へぇ…俺とお前の夢?そんなのβの時に見てたんだな。何も言わなかったくせに」
 少し拗ねた声で返される。よく見る夢ではあったがハッキリとデスマスクの姿を見たわけではない。ただいつも夜で、森の中で、雪が降ってきて、誰かを抱いていた。戦争、と聞いて何故か今それが思い出された。戦争の夢という意識は全く無かったのに。死んだのであればデスマスクを抱いていた?アフロディーテとは思えない。やはりデスマスクは殺された?…誰に…。

「しゅーらっ!」
 突然大きな声で呼ばれて意識を戻すと、隣に来ていたデスマスクがシュラの腰を抱く。
「…いきなり変な話して悪かった、忘れようぜ…」
 顔を寄せ、ペロっと唇を舐められる。デスマスクの舌先に薄っすらと血が滲んでいる。ドクンと胸が高鳴った。
「噛み締め過ぎだっつーの」
 いつの間にか剥き出していた牙や唇に滲む血をペロ、ペロ、と舐め取られてからキスを交わす。そのままデスマスクは隣に立ち、シンクに残った器を手に取るとシュラに代わって洗い始めた。
「ホラさっさと終わらせてベッド行くぞ!俺、ずっと我慢してんだから…」
 洗い物をしながら肩をシュラに寄せて何度か突く。意識を自分に向けさせるように。直ぐに洗い終えると勢いよくシュラの腕を引いて寝室へと向かった。

「もちろんシャワーは済ませてんだよな?」
 その言葉に返事をする間もなくシュラはベッドに押し倒され、上に乗っかったデスマスクはするりと上着を脱ぎ落とす。
「何かウズウズして噛みたければ俺を噛めよ、どこでもいいから。好きなだけ」
 覆い被さり、シュラの頭を柔らかく抱くとデスマスクのフェロモンが漂い始めた。"かつて"の事を思い出そうとしていたシュラの意識が徐々にデスマスクへ引き戻されていく。
「お前、俺のどこが好き?胸?指?太腿?腰?」
「…噛むのは…頸とは違う。傷も残るかもしれない…」
 誘惑に耐えて言い返したが、噛みたい衝動が沸き上がったのは事実だった。自分は今どんな顔をしているのだろう。デスマスクが焦る程に飢えた表情を見せているのだろうか。あの夢を思い出してから妙にドキドキする。噛みたい。もうデスマスクは番で自分のものなのに、たった今まで感じていた安心感は全て失われ強い不安が胸を打つ。誰が殺した…?噛みたい。誰かに傷付けられる前に…。噛みたい。誰かに奪われる前に…。噛みたい!誰かに殺される前に…!

「いっ…て…!!」
 顔を上げたシュラはデスマスクを押し除け左肩に牙を立てた。ゆっくり口を離すと白い肌にじわじわ血が浮き上がってくる。デスマスクの顔を見ると眉を寄せながらも笑っていた。
「っは、ぁっ…!」
 乗っていたデスマスクを引き倒し、今度はシュラが乗り上げると次は右胸の脇に噛み付く。再びデスマスクの顔を覗くと瞳に涙を溜めながらやはり笑っていた。
「い…いいから、続けろって…」
「気持ちいいのか」
「ん…もぅ…わかんねぇけど、いいんだよぉっ!…ぁっ、や…!」
 続けて腰に噛みついたあと、パンツを引き下ろして次々と牙を立てていった。痛みを訴える喘ぎ声は正直なのに笑顔で打ち消そうとする姿が健気で、1秒でも早く止めてやらなければならないと頭では思えど衝動が抑えられない。自分はデスマスクを殺す時は一振りの手刀で終わらせるものと思っていた。傷付け、解らせるようなこの行為は良くない。シュラを思って誘い続けるデスマスクも悪い。愛を繋ぐためのαの牙がΩを殺めてしまう。
 しかしそれも本来の姿なのだろう。たまたまシュラは手刀という手段を持っているだけなのだ。

「デス…これで気持ち悦くなっては、ダメだろう…」
 デスマスクの全身が赤く染まる頃、衝動が治ってきたシュラはシーツに散った体液に気付き指で掬って見せた。痛みと熱っぽさでぼんやりしているデスマスクには見えていないだろうが、自覚はあるようで恥ずかしそうに下唇を噛み締める。
「だって、お前がやる事だしっ…んっ…!」
 デスマスクが溢したものを舐めてから、ずっと触れずにいた下腹部へと指を挿し入れる。もうすっかり濡れていて、ようやく挿入ってきた指に悦んで吸いついてくるようだ。肌に滲む血を肩から順番に舐めていけばビクビクと震えて弱くイき続けている。
「酷いことをして済まない…お前のフェロモンのおかげで煽られはしたが意識して加減する事はできた。あとは少しづつ、俺のコスモでどこまで戻せるかわからないが…気持ち良いことしかしないから力を抜いて良いぞ」
「…たんじょうびだから…おおめにみてやる…」
 ゆっくり腕を伸ばしたデスマスクはシュラの首を引き寄せてキスを強請った。血の味がする舌を舐め合いながら腰を揺すって一番欲しいものを訴える。
「ゆびはもういい、早く脱いで肌で抱いて…。お前も噛みまくって、気持ち良くなってんだろ?ハードだっただけで前戯はもう終わってんだよ…」
 その言葉にシュラも服を脱ぎ捨ててデスマスクをいつものように内から優しく抱いた。擦れる肌にデスマスクの血がシュラにも移る。コスモを込めて外からも内からもデスマスクを包み込んだ。吐息混じりに「きもちいい…」と繰り返される言葉にはシュラも煽られて愛しさが募っていく。なぜ、この優しい愛だけを貫けられないのだろう。これも神が試す行為なのか。
 疲れ果ててデスマスクが瞼を閉じた頃、ようやく肌の赤みも引いていった。

 翌朝デスマスクが目覚めると傷は残っているが痛みは無く、体は清められ、血の滲んでいたシーツも全て綺麗に整えられたベッドの中にいた。体を起こそうとするとさすがに倦怠感がある。小さく溜め息を吐いてベッドに身を預けた。
 シュラの豹変には身の危険を感じつつも、自分を食い殺しかねない真っ黒な瞳に興奮して誘ってしまった。おそらくシュラは自身が暴走したと思っているだろうが、デスマスクが望んだ事でもあった。シュラがかなり気を遣って噛んでいたこともわかった。もっと強く噛めば良いのにと思っていたなんて絶対に言えない。口元をもっと血で濡らして…。その光景をデスマスクは知っている。何の記憶かわからない。でも知っている。それはとても嬉しい瞬間だったから。

 ギィっとドアが開き、戻って来たシュラと目が合った。ベッド脇に跪いてデスマスクの髪を指先で梳く。「大丈夫か」と聞かれて正直に「怠い」と呟けば、部屋を出て行ったシュラは朝食を手にして再び戻って来た。
「…食べさせてくれるとか?」
「そうしてほしければ、してやってもいい」
 少し考えたデスマスクは思い切って起き上がり、朝食を受け取ると枕元にある棚の上に置いた。
「まぁ、自分で食える。ただ俺っぴ寝起きすぐは食欲無ぇから後で」
「今日の任務は午後からだろう?それまで休んでいけ。俺も夕方からだから巨蟹宮まで送ってやる」
 そっと握られた手からシュラのコスモが流れ込んでくるのがわかる。傷を治そうとする癒しのものだが、番になってからは少し性欲も掻き立てられるのでできれば寝ている間だけにしてほしい…なんて言えず。
「…キスぐらいなら、俺が出て行くまでしても良いか?」
「ぐらい、ってなんだ。抱かれ足りないのか」
 半笑いで黙っていると、シュラの唇が頬に当たった。
「怠いと言う上こんな姿になっても懲りずに…かわいすぎる」
 朝食を食べ終えたら呼びに来い、と部屋を出て行くシュラの背中を眺め、ドアが閉まると同時にデスマスクは器に乗ったパンを手に取ってかじり始めた。寝起きすぐの飲み込み辛さは気にならなかった。

 シュラに噛まれた痕は聖衣を着けると脇から腕部分しか見えないはずだ。マントをして激しく動かなければ何となく隠せていると思う。が、目敏いアフロディーテには全く効果が無く、すれ違い際に腕を掴まれ確認されてしまった。教皇宮に行けば清らかなサガも目を細め、噛み痕を見る視線が痛い。二人とも特に何かを言うでもなく、静かに溜め息を漏らして終わった。

ーつづくー

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