2023 |
12,17 |
発情期開始から12日目。初めての隠れ家生活を終えた二人は、聖域に戻るなり黄金聖闘士に復帰した。デスマスクが「テレポートして帰るから」と言えば、シュラは好きにしろと言って自分は走って来た。先に戻っていたデスマスクは巨蟹宮で荷物を下ろし聖衣に着替え、ちょうど上ってきたシュラと合流して磨羯宮を目指す。そこでシュラの着替えを待ち、二人揃って教皇宮へ報告に向かった。そしてそのまま二人揃ってアフロディーテに帰還を伝えると「帰ってこなくてもいいぞ」とニッコリ言われた。翌日からはお互い仕事が詰まっていたため、しばらく顔を合わせる日が無かった。
隠れ家生活を終えてから、シュラはロドリオ村へ行く機会を伺っていた。スケジュール帳を買いたいと思って、それまでは忘れないように私室のカレンダーに大事な事を記入した。
何かといえば、デスマスクの発情期情報である。前回ほぼ突然始まったように思えたため、予め発情期の周期を把握しておきたいと思った。デスマスクに正確な記録をつけさせようかと思ったが、自分でやる方が絶対に早い。そうしてやっと到来した午後の休暇にシュラはカレンダーが大きめのシンプルな手帳を手に入れた。
帰宅してすぐ、私室のカレンダーに記入しておいた発情期の期間を書き写す。ピークの日、夕食を食べに来た日、昼食が食べれるようになった日…何を食べたか、どれくらい食べたか…。聖闘士としての任務報告書よりも細かくマメな情報量を一気に書き上げたシュラは、それを改めて見返してからガクッと頭を抱えた。
「…何をしているんだ、俺は…」
こんな事…好きじゃなければ絶対にしない…。
好きって何を?Ωの世話を?デスマスクを?
「…わからんな…」
Ωへの興味が尽きないことは認めた。そのΩがデスマスクでなくても自分はここまでするだろうか?
「…わからん…」
予定通り発情期が来るのであれば、次は秋。手帳をパタンと閉じ、滅多に使わない鞄の中に仕舞った。
発情期中は二人きりで過ごす分、聖域に戻ればデスマスクと会う機会が一気に減った。黄泉比良坂へもよく行くのかコスモが全く感じられない日も多い。巨蟹宮の死面が急に増えた気がする。あいつは発情期の不利な状況を抱えながらも聖闘士としての仕事量は減っていなかった。
…無理に動いて体に支障が出なければいいが…
そう気に掛けるのもΩだからだろ、と彼は機嫌を損ねそうなので思うだけに留めておく。
「はぁ…顔を合わせなくてもあいつのことばかり考えてしまうな…」
よく考えれば発情期中だってピークの数日は顔を合わせていない。それでもデスマスクに関する事ばかり考えていた気がするし、何かの流れでその事を本人にハッキリ伝えていたような…。
試しにアフロディーテの事を考えてみることにした。αとしての日常はどうだろうか。デスマスクと会話はできているだろうか?
「……」
一瞬でこれだ。一瞬で奴が存在をアピールしてくる。
「まぁ、周りから守れだの言われれば気にするのは仕方ないよな…」
やはりデスマスクに対する答えを有耶無耶にして、シュラは次の発情期前に買っておきたい物を紙に書き出し始めた。
何かといえば、デスマスクの発情期情報である。前回ほぼ突然始まったように思えたため、予め発情期の周期を把握しておきたいと思った。デスマスクに正確な記録をつけさせようかと思ったが、自分でやる方が絶対に早い。そうしてやっと到来した午後の休暇にシュラはカレンダーが大きめのシンプルな手帳を手に入れた。
帰宅してすぐ、私室のカレンダーに記入しておいた発情期の期間を書き写す。ピークの日、夕食を食べに来た日、昼食が食べれるようになった日…何を食べたか、どれくらい食べたか…。聖闘士としての任務報告書よりも細かくマメな情報量を一気に書き上げたシュラは、それを改めて見返してからガクッと頭を抱えた。
「…何をしているんだ、俺は…」
こんな事…好きじゃなければ絶対にしない…。
好きって何を?Ωの世話を?デスマスクを?
「…わからんな…」
Ωへの興味が尽きないことは認めた。そのΩがデスマスクでなくても自分はここまでするだろうか?
「…わからん…」
予定通り発情期が来るのであれば、次は秋。手帳をパタンと閉じ、滅多に使わない鞄の中に仕舞った。
発情期中は二人きりで過ごす分、聖域に戻ればデスマスクと会う機会が一気に減った。黄泉比良坂へもよく行くのかコスモが全く感じられない日も多い。巨蟹宮の死面が急に増えた気がする。あいつは発情期の不利な状況を抱えながらも聖闘士としての仕事量は減っていなかった。
…無理に動いて体に支障が出なければいいが…
そう気に掛けるのもΩだからだろ、と彼は機嫌を損ねそうなので思うだけに留めておく。
「はぁ…顔を合わせなくてもあいつのことばかり考えてしまうな…」
よく考えれば発情期中だってピークの数日は顔を合わせていない。それでもデスマスクに関する事ばかり考えていた気がするし、何かの流れでその事を本人にハッキリ伝えていたような…。
試しにアフロディーテの事を考えてみることにした。αとしての日常はどうだろうか。デスマスクと会話はできているだろうか?
「……」
一瞬でこれだ。一瞬で奴が存在をアピールしてくる。
「まぁ、周りから守れだの言われれば気にするのは仕方ないよな…」
やはりデスマスクに対する答えを有耶無耶にして、シュラは次の発情期前に買っておきたい物を紙に書き出し始めた。
デスマスクの発情期はほぼ予定通りやってくる。間隔は80日。誤差が出る事を考えて予定日の2日前には隠れ家へ連れ出すようにした。「お前よくわかるな、αになってないだろうな?」と言われるので「日にちをメモしている」とだけ答え、手帳に細かく記録している事は伏せておいた。
また、シュラが16歳になった時には聖域を通さず個人的に再診断を受け「ちゃんとβだぞ」と結果をデスマスクに見せた。デスマスクを安心させるために行ったが、シュラ自身もデスマスクの事ばかり考えるのはαに変異しかけているのではないかと気にし始めていた。数値はα寄りになることも無く、安定してβだった。
また、シュラが16歳になった時には聖域を通さず個人的に再診断を受け「ちゃんとβだぞ」と結果をデスマスクに見せた。デスマスクを安心させるために行ったが、シュラ自身もデスマスクの事ばかり考えるのはαに変異しかけているのではないかと気にし始めていた。数値はα寄りになることも無く、安定してβだった。
隠れ家へはデスマスクをテレポートで先に行かせていたところ、ある時「一緒に行こうぜ」と手を握られた。デスマスクも16歳になった夏だったか。驚く間もなく転送され、シュラが口を開く前に「β君、いつも来るの5秒遅ぇんだよ」と言って振り向きもせずさっさと自室に消えてしまった。それ以来、行きも帰りもテレポートで移動するように変わった。
移動初日は発情期が始まっていなくてもデスマスクは何も手伝わなかったが、発情期が終わって聖域に戻る前の2日ほどは自然とシュラと共に家事をするようになっていた。二人で一緒に行うというよりは分担して、洗濯や掃除以外に昼食の準備をデスマスクがする事もあった。…と言うのも、デスマスクは発情期が重い数日間の出来事は覚えていないことが多かったが、症状が軽くなってくるとぼんやりした中で何を思い、何をしていたのかはだいたい解っていた。
初めてシュラを利用して幸福感に溺れた日から、シュラの事を考えながら肌に触れる行為にハマってしまった。だからだんだんシュラに対して突っ張り続けるのが申し訳なく思うようになったのだ。
シュラのくせに妄想は出来が良い。はしたなくも女以外に色んな男も想像してみたが、どうしても見知った黒髪のドヤ顔男が強引に割り入ってきてアピールしてくる。俺が一番お前のことを想っているとか言ってめちゃくちゃ甘やかしてくれる。もちろんデスマスクの妄想だが。
やがて右手だけでは物足りなくなって、絶対に手を出すまいと思っていたΩ用の癒しグッズをつい買ってしまった。そのおかげで自力では生み出せない快感を知ってしまい、それこそシュラにも手伝ってもらえてる錯覚に陥ってしまう。
ただ間違ってはいけないのがこれは妄想のシュラだから良いのであって、実在するシュラに協力されると幻滅すると思う。俺のことしか考えてないあいつは間違いなく経験不足で鈍感で馬鹿で力だけは強いし、勢い余って首を落とされかねない。本気逝きしてしまう。所詮βのシュラはΩの癒しグッズにすら敵わないはずだ。だからその一線を越える気は全く無かった。
シュラに恋をしたわけではないのだ…。名前なんか呼ばない。妄想用。発情期発散にだけ使う都合の良い存在。顔と声と肉体美の使用料はテレポートと家事手伝い。これでいい。
移動初日は発情期が始まっていなくてもデスマスクは何も手伝わなかったが、発情期が終わって聖域に戻る前の2日ほどは自然とシュラと共に家事をするようになっていた。二人で一緒に行うというよりは分担して、洗濯や掃除以外に昼食の準備をデスマスクがする事もあった。…と言うのも、デスマスクは発情期が重い数日間の出来事は覚えていないことが多かったが、症状が軽くなってくるとぼんやりした中で何を思い、何をしていたのかはだいたい解っていた。
初めてシュラを利用して幸福感に溺れた日から、シュラの事を考えながら肌に触れる行為にハマってしまった。だからだんだんシュラに対して突っ張り続けるのが申し訳なく思うようになったのだ。
シュラのくせに妄想は出来が良い。はしたなくも女以外に色んな男も想像してみたが、どうしても見知った黒髪のドヤ顔男が強引に割り入ってきてアピールしてくる。俺が一番お前のことを想っているとか言ってめちゃくちゃ甘やかしてくれる。もちろんデスマスクの妄想だが。
やがて右手だけでは物足りなくなって、絶対に手を出すまいと思っていたΩ用の癒しグッズをつい買ってしまった。そのおかげで自力では生み出せない快感を知ってしまい、それこそシュラにも手伝ってもらえてる錯覚に陥ってしまう。
ただ間違ってはいけないのがこれは妄想のシュラだから良いのであって、実在するシュラに協力されると幻滅すると思う。俺のことしか考えてないあいつは間違いなく経験不足で鈍感で馬鹿で力だけは強いし、勢い余って首を落とされかねない。本気逝きしてしまう。所詮βのシュラはΩの癒しグッズにすら敵わないはずだ。だからその一線を越える気は全く無かった。
シュラに恋をしたわけではないのだ…。名前なんか呼ばない。妄想用。発情期発散にだけ使う都合の良い存在。顔と声と肉体美の使用料はテレポートと家事手伝い。これでいい。
何も知らないシュラはデスマスクのテレポートと家事手伝いで素直に好感度を上げている事だろう…その想像通り、シュラはデスマスクの症状が軽くなってくるとたまに家を空けて出掛けるようになった。移動が速いのですぐに戻って来るが、どこかの町へ行ってドーナツだのシュークリームだのスナックを買って帰ってくる。美味そうだったからお前にも、とデスマスクのために買ってきた雰囲気を出す。デスマスクは甘いもの好きというわけではないが嫌いでもなく、素直に受け取って食べるのでシュラからの貢ぎ物は止まらない。もしかしたらシュラが食べたいだけかもしれないが。
やがてシュラは発情期中の流れを把握すると、買い物だけではなく聖域に戻って日帰りで仕事をしてくるようになった。発情期のピークが過ぎると、朝食と洗濯を終わらせてから家を出ていく。夕方には戻り、夕食を準備してデスマスクと食べた。昼食もデスマスクの様子を見て作り置きしていく事がある。そこまでするのは発情期明けに待っている仕事の山を少しでも減らしておくためだった。自分に余裕があれば平常時でも万が一デスマスクに何か起きた時に対応できるかもしれない…。あいつは俺しか頼れないのだから…。そんな思いからの行動だった。
ーーー
「シュラ!」
シュラが17歳を過ぎた春先、双魚宮を通る時にアフロディーテから声がかかった。
「デスマスクの発情期は把握しているよな?」
「あぁ」
「もう少し、早めに聖域を出るようにした方がいいと思う。デスマスクが発し始めるフェロモンが最近濃くなっている気がするんだ…」
シュラが通ることに気付いていなかったのか、慌てて私室の方から駆けて来て息を整える。
「君には判らないかもしれないけど、発情期前から微量のフェロモンが漏れ始める事は知識として知っているよな?」
「そのために2日早く連れ出している」
「3日…いや4日早くしても良い。絶対にサガもこの事は気付いているはずだ、話せばわかるだろう」
そろそろお世話ごっこは終わりだぞ、と言ってシュラの聖衣を指でトントン突く。年下の黄金たちも14歳くらいになり、皆αらしさが滲み始めたなというのは感じていた。デスマスクに向けられる視線、唯一そばに居るシュラに向けられる圧力、いよいよ聖域が猛獣の檻の中のように感じられシュラは気を張っていたところだったが、デスマスクにも変化が出ている事には気付けなかった。
「そう…か。わかった、ありがとう」
「私もデスマスクのためになる事をしてやりたいのだ。全部任せろと言われてもな、βにはできない、αだからこそできる事もあるのだよ」
βのようにべったりお世話してやれなくともな、と付け加えられて、シュラは毎回最後には素のアフロディーテの良さを台無しにしてくるな…と思った。
シュラが17歳を過ぎた春先、双魚宮を通る時にアフロディーテから声がかかった。
「デスマスクの発情期は把握しているよな?」
「あぁ」
「もう少し、早めに聖域を出るようにした方がいいと思う。デスマスクが発し始めるフェロモンが最近濃くなっている気がするんだ…」
シュラが通ることに気付いていなかったのか、慌てて私室の方から駆けて来て息を整える。
「君には判らないかもしれないけど、発情期前から微量のフェロモンが漏れ始める事は知識として知っているよな?」
「そのために2日早く連れ出している」
「3日…いや4日早くしても良い。絶対にサガもこの事は気付いているはずだ、話せばわかるだろう」
そろそろお世話ごっこは終わりだぞ、と言ってシュラの聖衣を指でトントン突く。年下の黄金たちも14歳くらいになり、皆αらしさが滲み始めたなというのは感じていた。デスマスクに向けられる視線、唯一そばに居るシュラに向けられる圧力、いよいよ聖域が猛獣の檻の中のように感じられシュラは気を張っていたところだったが、デスマスクにも変化が出ている事には気付けなかった。
「そう…か。わかった、ありがとう」
「私もデスマスクのためになる事をしてやりたいのだ。全部任せろと言われてもな、βにはできない、αだからこそできる事もあるのだよ」
βのようにべったりお世話してやれなくともな、と付け加えられて、シュラは毎回最後には素のアフロディーテの良さを台無しにしてくるな…と思った。
アフロディーテの進言通りサガと相談し、次の発情期からは4日早く聖域を出ることになった。これでまた帰って来た時の仕事量が酷いことになるのか…と思い、どう処理していくか考えながら巨蟹宮へ向かう。急ぎではないが早めに伝えておきたいと思った。今、デスマスクのコスモは全く感じられない。おそらく黄泉比良坂へ潜っている。こういう場合いつ帰ってくるのか見当がつかなかったが、ちょうど自分は仕事が早く終わったので少し待ってみるつもりだった。私室の扉を開けて、真っ直ぐ居間へ向かいソファーに座って待つ。
以前なら考えられなかったことだが、デスマスクとはお互い本人が不在でも私室の居間を自由に出入りする仲になっていた。仕事で都合が合わない事が降り積もり、ある時デスマスクが「待ってろ」とシュラの滞在を許したのが始まりだ。巨蟹宮の扉の前でシュラを待たせると「門番がいる」だの「黄金のくせにボディーガードとは手厚い」だの鬱陶しい雑音が耳に入る事があり、デスマスクはそれが嫌だった。Ωの自分が馬鹿にされているというより、βのシュラが馬鹿にされていると感じるようになった。デスマスク自身シュラの事は「βのくせに」と思いはするが、長い付き合いの中…Ωとβの関係になってからデスマスクが信用できる者はもうシュラしかいないと、心の奥で大切に思うように変わっていたのだ。
あいつはΩの召使いではない…。
シュラの献身をデスマスクは正しく受け取っていた。
あいつはΩの召使いではない…。
シュラの献身をデスマスクは正しく受け取っていた。
ふと、シュラは目の前の机の上に置かれた薬袋に気付き手に取った。抑制剤の用量が増えた気がする。フェロモンが濃くなった話と関係があるのだろうか。何かあった時に飲ませる薬が解るよう、シュラはそこまで管理していた。デスマスクも「見れば?」と教えてくれたし、錠剤の他に緊急用の自己注射薬もシュラが持っている。Ω用の他にα用のものもアフロディーテから渡されていた。薬袋から薬を出して見ようとした時、巨蟹宮の方からコスモの歪みを感じ、居間の扉の方を眺めていればやがて黄金聖衣を着たままデスマスクが入ってきた。
「早かったな」
「知らねぇよ、俺は結構長くアッチにいたぞ」
するりとマントを外し、目の前でパァン!と聖衣を脱いでパンドラボックスに収める。腰からつま先までの下半身を覆う白いアンダーウェアだけで、色白とは違う血色の悪い白肌を露わにした姿には金の首輪がよく目立つ。シュラは首輪の輝きに目を細め、スッと口元を手で隠した。デスマスクが嫌がる表情をしたのだろう。嫌がられる前に自己防衛をするようになっていた。
「用件は?」
服を着ないままデスマスクはシュラの前に座った。
「早かったな」
「知らねぇよ、俺は結構長くアッチにいたぞ」
するりとマントを外し、目の前でパァン!と聖衣を脱いでパンドラボックスに収める。腰からつま先までの下半身を覆う白いアンダーウェアだけで、色白とは違う血色の悪い白肌を露わにした姿には金の首輪がよく目立つ。シュラは首輪の輝きに目を細め、スッと口元を手で隠した。デスマスクが嫌がる表情をしたのだろう。嫌がられる前に自己防衛をするようになっていた。
「用件は?」
服を着ないままデスマスクはシュラの前に座った。
「次の発情期から、4日前に出発する事になった」
「……そうか」
少し間を置いて、デスマスクはすんなり受け入れた。
「お前、自分でも何か変化があるとわかっているのか?」
「……まぁ、少しは」
歯切れが悪い。
「わかっているなら良いが…βの俺には解らないことが多い。αには解っても」
言いたくない事は言わなくてもいいと思っても、些細な事でも話してくれたら…というのがシュラの本音だった。そういう要求を嫌うのは知っているので、伝えることはしない。
「薬の用量も増えたんだな、効きが悪くなったのか?」
「…今は、まだ解らないがΩとして体の成熟が進んでいるとか何とか…」
そういうことか…発情期の始まりは妊娠可能のサインらしいが、体はまだ発展途上らしく男Ωは流産率も高いと聞く。それがおおよそ18歳くらいになれば体も整い、20歳頃が最適の状態になるとか。フェロモンの増加はΩの本能が強くなってきているのだろう。
「俺はこの前の再検査もβだった」
「また受けたのか」
「念のためにな。毎年受けるつもりだ」
「…好きにすれば」
繰り返す再検査がαになりたい願望などではなく、デスマスクと自分を安心させるためという事は理解されている。
「小僧だった奴らもαらしさが増してきている。言うまでもないと思うが、慎重に行動してくれよ」
「わかってるって」
「そんな格好、俺の前でだけだぞ」
指さされて言われると顔を逸らし、もじっと動いた。
「っ…当たり前だろ!βに見せたってしょうがねぇモンだろうよ!」
デスマスクは頭を掻きながら立ち上がって、服を着に部屋を出た。
「……そうか」
少し間を置いて、デスマスクはすんなり受け入れた。
「お前、自分でも何か変化があるとわかっているのか?」
「……まぁ、少しは」
歯切れが悪い。
「わかっているなら良いが…βの俺には解らないことが多い。αには解っても」
言いたくない事は言わなくてもいいと思っても、些細な事でも話してくれたら…というのがシュラの本音だった。そういう要求を嫌うのは知っているので、伝えることはしない。
「薬の用量も増えたんだな、効きが悪くなったのか?」
「…今は、まだ解らないがΩとして体の成熟が進んでいるとか何とか…」
そういうことか…発情期の始まりは妊娠可能のサインらしいが、体はまだ発展途上らしく男Ωは流産率も高いと聞く。それがおおよそ18歳くらいになれば体も整い、20歳頃が最適の状態になるとか。フェロモンの増加はΩの本能が強くなってきているのだろう。
「俺はこの前の再検査もβだった」
「また受けたのか」
「念のためにな。毎年受けるつもりだ」
「…好きにすれば」
繰り返す再検査がαになりたい願望などではなく、デスマスクと自分を安心させるためという事は理解されている。
「小僧だった奴らもαらしさが増してきている。言うまでもないと思うが、慎重に行動してくれよ」
「わかってるって」
「そんな格好、俺の前でだけだぞ」
指さされて言われると顔を逸らし、もじっと動いた。
「っ…当たり前だろ!βに見せたってしょうがねぇモンだろうよ!」
デスマスクは頭を掻きながら立ち上がって、服を着に部屋を出た。
その日はデスマスクも報告書を書き上げれば自由だと言うので、隣でそれを待ってから二人で夕食を食べに出掛けた。話しながら付かず離れず二人が並んで歩く姿は、道行く町の人々からすれば幸せそうなαとΩのカップルに思われた。
ーつづくー
ーつづくー
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