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そこはかとなく

そこはかとない記録
2024
06,04
※今回いわゆる「本番」シーンがありますが全年齢ブログのためカットしています。ゆえに番になる瞬間の描写がありません。完結後pixivへ投稿する際に追加します。
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「クク、おまえカシコイなぁ!この部屋なんでも揃ってるぜ」
 蕩けた顔のデスマスクは腕を伸ばしてシュラの頭を抱き、グッと首元へ引き寄せた。その行動はαにフェロモンを嗅がせ理性を破壊しようとするΩの本能なのか。強く感じる爽やかな甘い香りにシュラは堪らず首筋を何度も舐めた。それだけでデスマスクは喘ぎ、身を捩り、シュラの頭を撫でてもっと、もっととせがむ。
「ハァ…きもちい、くび、舐めて…。すげぇ、もぅ…んんっ…!」
 匂いも、声も、動きも全てがシュラを操ってくるようで、とにかくこの愛おしいΩを悦ばせたいと求められるまま舐めた。こんなの止められるはずがない。これがΩの恐ろしさなのか?デスマスクへの愛なのか?わからない。初めて味わうαの愛の衝動。ただ間違いなく今デスマスクは自分の腕の中に在り、奪おうとする敵もおらず、あぁ思う存分に愛してやれる!これはオレのもの!そう、もう何の迷いもいらない。オレのものにできる。愛して、愛して、オレをこの体に覚えさせて噛んでしまえばいい!できる、それが、遂に、今なら!
 首筋から顎を、耳を、頬を舐めながらデスマスクの服を探った。かぶりのシャツはいちいち脱がせるのが煩わしい。早くこの体も気持ちよくさせてやりたいとシュラは軽く空気を斬った。切り裂かれたデスマスクのシャツは手で払うだけでスルスルと落ちていく。触れたことのある肌はこんなにも触り心地が良かっただろうか?温かくて、張りがあって、その気持ち良さに撫でさする手は止まらず下へと伸びていく。もっと柔らかく気持ちの良い場所があることを知っている。下着の中へ手を差し込み、触れた肌の柔らかさに震え、筋をなぞりながら中指を谷の中へと埋めていく。挟まれた指が温かくて気持ちいい。指を少し前後に動かすとデスマスクから戸惑うような喘ぎが漏れ、頭を抱く腕に力がこもった。
 愛おしい、可愛い、オレの恋人…
 シュラの舌はデスマスクの唇をなぞり、重ね合わせ、デスマスクはすぐに受け入れた。恥じらいなくお互い何度も舌先を触れ合わせ、滑る感触に気持ちが高まっていく。気持ちいい。どれだけ重ね合わせても絡ませても足りない。ここだけじゃ足りない!
「シュラァッ、ぬぎたい…下も斬っていいから、早く裸にしてくれよぉ!」
 甘えた声が言い終わる前にデスマスクの服は全て切り裂かれた。すぐ脚がシュラの腰に絡み付き、布切れがすり落ちていく。
「きもちいぃが、もぉツラい…薬飲んでねぇんだよ。早く挿れてくれ、一度楽になりたいっ、挿れて、ぐちゃぐちゃになりたいっ!」
「…ぐちゃぐちゃ…?」
 その言葉にシュラは動きを止めた。ぐちゃぐちゃにしてやりたい疼きも衝動もあるのに、急に心臓を強く掴まれるような苦しさに襲われた。
「オレ黄金だし、壊れねぇって。だいじょうぶだって。はやく訳わかんねぇくらい気持ちよくしてくれよぉ」
 シュラを抱き締めて、今度はデスマスクがαの匂いを嗅ぎながら首筋を猫のように小さく何度も舐めてくる。
「いや、ちょっと、待て…」
「なに…まだそんなコト言えんの…?足りないのか?おまえ…気持ち良くない?」
 突然、理性を取り戻したシュラの姿に眉を寄せ、困り顔で見上げてくる。その表情とは裏腹に、残された理性を叩き壊してやろうとフェロモンが濃くなった。なぜ足りないんだと訴えかけてくる様は、シュラがβだった頃に見せてきた姿と同じで。
「すまん、ちょっと、待ってくれ…」
 デスマスクは誰にも渡さない、オレのものだ。番にしてオレだけのものにするんだ…。
 ――そうしたい、そうするつもりであるのに胸が苦しい。何だこれは、誰がオレを止める?βか?βだった、オレの心か…?
「しゅらっ、なぁ、おまえもう我慢しなくていいんだよぉ!こんな時に迷うなよぉ!」
 デスマスクの舌がシュラの口元を舐め、ちゅっちゅとキスを繰り返す。開けろ、キスを返してくれ、と必死にシュラを誘う。
「…ん…デス…」
 キスを返してなだめるが、水を差すように頭の片隅で警鐘が響く。このまま奪ってしまうのは嫌っていたαの本性と何も変わらないぞと、深淵に呑み込まれ死んだβが恨めしそうに叫ぶ。デスマスクを大切にするとはどういう事か、番になるとはどういう事か忘れてしまったのかと。そんなこともうどうだって良いと思うのに、αになり切れていないシュラは自分の衝動とは裏腹に喉が震え、声をこぼした。
「…すまん、やはり今、番になるのはやめた方がよくないか…」
「はぁ?!ここまできてなに言ってんだよ!いやだ、早くおまえと番になりたい、がまんできねぇ!」
「…俺たちは聖闘士だ。番になって、もし俺が先に死ぬような事があれば…」
 番を失ったお前はどうなってしまう?直ぐに後を追うとしても失った事実、耐え難い悲しみをお前に与えてしまうのか。
「死ぬかよ!おまえ死なねぇだろ!そんな弱くねぇだろうが!」
「でもわからないだろ?!神をも相手にするんだぞ!」
「だったら余計にオレを番にしろ!絶対に死ねなくなるだろうが!オレを残して、おまえだけなんてっ!」
 デスマスクの右手がシュラの腹部に伸び、誤魔化せない熱に触れた。
「正直、もう死ぬとか死なないとか関係無ぇんだよ…番にしてくれ、おまえがαであるなら早くオレを縛ってくれ…。辛いんだ、発情期とかαに惑わされるとか…全部おまえだけで満たされるようにオレの体を作り変えてくれよ…それはもうおまえにしかできねぇんだよ…!なぁ、本当におまえが先に死にやがってオレが一人残る事になってもよ、おまえの事ばかり考え続けて狂って死ぬならそれで良いって思えるんだよ!どれだけ寂しくて飢えてもおまえの事で頭がいっぱいになれるならそれでいいんだ、だから早く!オレを助けろって言ってんだ!」
 涙ながらにシュラの服を脱がそうと、両手を伸ばしてズリ下げていく。上手くできなくて苛立ち、唇を噛んでシュラの腰を叩いた。
「オレはずっと、おまえはαだと思っていた。初めてバース判定した時からそう信じていた。全然αに変異しなくて本当にβなのかって思った時、悔しくて悲しかったんだ。それってもうその頃からおまえの事好きだったって事だろ?何故かなんてわかんねぇよ!おまえに惹かれる要素なんて無かったし。でも好きなんだ!他の奴らじゃ嫌なんだ、おまえがいい。ずっとおまえといたい。おまえがαになったのならなおさら、他の知らねぇΩに取られたくねぇよ!だからオレしか知らないうちにさっさと番にしろ!こんなに好きだからいいだろ!つらいんだ、はやくしろばかやろう!」
「っ…?!ぐ…デス…っ」
 限界を超えたデスマスクは息を荒くして下げた服の隙間からシュラの熱を引き出し、手の中で自身のものと擦り合わせ始めた。体格に似合わず幼いデスマスクの熱は既に弾けていて、甘く香る粘液が二人の芯を包み込むと僅かに残された理性はどろどろに溶かされていく。
――おまえがオレを愛しているのはちゃんと知ってるから、それでいいんだよ。悲劇なんて何度も超えてきた。どうせまた突き落とされるのなら、今我慢する方がもったいねぇだろ――
「しゅらぁ…オレをつがいに、できるよな?」
 歪ませた口元は悪童のようなのに、ふにゃんと笑う目元は潤んで艶やかで。シュラの下で大きく体を開き、硬くなった熱を入り口まで導いていく。βの愛は忘れねぇよと愛し続けたシュラに別れを告げ、ずっと求めていたαのシュラを誘う。オレのからだ、準備いらねぇから…と囁く言葉が、部屋に満ちる爽やかな甘い香りが、麻薬のように効いて…いつの間にか胸の苦しさも危機感も消えていた。デスマスクの覚悟は聞いた、それで十分だろ?βよ…。
――こんなにもオレを求めるこいつを、早く愛してやらないと。これ以上我慢させたくない。何でもしてやりたい――
「優しくできなくても、許せよ…」
「ククッ…うれしすぎるぜ…」
窓の外、燃えるように赤い夕焼けがカーテンの隙間から溢れていた。
太陽が、落ちていく。

ーーー

*****

ーーー

 手で強く顎を抑えられ、首筋が突っ張る。そこに強い視線を感じる。シュラのフェロモンが増して麻酔のように染み込んだ。――もう、逃げられない。
「…永遠に、愛すると誓おう…」
 低く響いた声すら肌を舐めるようで気持ちいい。溢れる涙に視界がぼやける。揺れ続ける腰は快感を止めることなく、シュラの髪がファサッと頬に触れたと同時に鋭い痛みが体を貫いた。

――暗い。真っ暗で、茂る木々の葉が空を覆って星も見えない。痛い、首が痛くて動かせない。誰かが必死で舐めているけど、あぁ…止まらないんだ…おれの血が…。だって、おれ、Ωじゃねぇもんな。αだもんな。薬飲んで、誤魔化しても、Ωにはなれない。Ωになりたいわけではなかった。ただ、お前がαだったから…。αはΩとしか結ばれないって言うから。周りが、世界が、神がそう言うから。そんなの、気持ちの問題だなんて思ってもフェロモンが、遺伝子が否定してくるから。だからもうこうするしか無かったんだよ…。どうせ死ぬのなら、結ばれて死にたい。このαが愛した男はΩではなくおれであったのだと。こいつにも、おれの体にも、周りにも世界にも神にも!…わからせて、やりたかった…。あぁ…お前はそんな顔しなくていいんだよ、おれ嫌じゃねぇよ、おれがお前に頼んだんだから。もう舐めなくてもいいって。口元の血ぃ拭えよ。おれのカッコイイ顔もっと見ててくれよ。嬉しいぜ、お前がシてくれて。願いを叶えてくれて。わかるか?おれ笑えてる?口ももう上手く動かせねぇんだ。…あぁ、勝ちたい…いつか神をも超えてみせたい。全てを見返す力が欲しい。おれと、お前を守るだけの…。お前を手に入れるだけの…。力を…手に入れて…共に、また…――

「…デス…ちゅ、デス…かわいい、ちゅ…」
 優しく名前を呼ばれながら首筋を何度も舐められるのが心地良くて、うっすら瞼を持ち上げては閉じるをしばらく繰り返していた。
――生きてる、な…――
 首に痛みは感じるものの絶え間なくケアされて苦痛ではない。下腹部の中にはまだシュラを感じる。結ばれたままだ。抱き締め続けるシュラの肌は温かく、いい匂い。時折胸先にも軽く触れられて、とにかく全身気持ち良くてなんで溶けてしまわないのだろうとぼんやり思う。
「…あ、オレのケツ…壊れてねぇ…?」
 シュラが噛む直前、自分の腰はもうどろどろに溶けていたように感じた。モゾっと動いて尻に触れてみるがちゃんと丸く残っているし、シュラと結ばれている部分もぐちゃぐちゃにはなっていない。しっかり締め付けている。
「…おい、目覚めた最初がケツの心配か」
 晴れて番となった第一声がロマンチックとは程遠い発言で、シュラはため息をついた。
「だってよ、めちゃわけわかんなくて凄かったんだぞ?お前だって俺の尻ぶち破ってないか心配にならなかったのか?」
「俺はもうαだからな、βのような気遣いはできないぞ」
「…いや、それでいいけどよぉ…」
 αになれ、オレは壊れないと豪語していた手前、勢いを無くしたデスマスクの首筋をシュラは軽く笑いながらそっと指で触れた。
「クク、とは言え俺もまだαになり切れていない部分はある。嫌ではなかったか?酷いことしていなかったか?」
「はぁ?大丈夫だよ、悦いコトしかしてくれてねぇよ」
 そう言って擦り寄るデスマスクに、そうか、と呟いてシュラはもう一度噛み跡を舐めた。
「首の痛みは?血は止まったようだ」
「ジンジンするが…言うほどではない。寧ろ嬉しくてジンジンするのかもしれん」
 デスマスクもそっと手で触れてみる。小さく皮膚が抉られた場所を探し当て、微笑みが溢れた。
――これが、Ωの体…――
「これで、俺のフェロモンはお前にしか届かない…」
「お前も俺のフェロモンしか感じ取れない」
 何度も噛み跡に触れながら呟かれた言葉にシュラが返した。
「ハハッ…手に入った…遂に、番になって…もう誰も俺らの邪魔はさせねぇ…!」
 笑いながら涙が溢れるデスマスクを抱き締めて、シュラもじんわりと目頭が熱くなった。

 遂に、報われた。途方もなく永い間引き離されていたように感じる。デスマスクとは出会って10数年、気持ちを交えたのはここ数年のことなのに、もっと昔から知っていたと思う。体を一つに結んでより強くそう感じた。失われていたものが取り戻された安心感。そして二度と手放したくないと感じる独占欲。自分からだけではなく、デスマスクからもそれは感じられる。自分たちは誰の邪魔も許さない、全てに於いて結ばれた存在に間違いない。神に引き裂かれ、打ち壊されようともこうして二人は必ずシュラとデスマスクに辿り着くのだ。これは神も予期していなかった強い運命なのかもしれない。ならば今度こそ、果たせるだろうか?デスマスクと笑い合って生涯を終えることが…。

「デス、発情期はまだ辛いか?」
「ん?…ヤりまくって噛んでもらったしな…薬飲んでねぇけど、落ち着いてるな…」
「何がしたい?何か食べるか?」
「えぇ?…なにってよぉ…お前、コレぶっ挿したままで何言ってんだよ…」
 そう言うとデスマスクは腰をシュラに押し付けるように揺らしてみせる。
「αサマならまだ余裕だろ?俺も落ち着いたし…今度はゆったり抱いてくんねぇ?」
 以前はシュラを誘おうと必死に色気を出しているようだったが、番となった余裕からかデスマスクに素の可愛さが戻ったように思えた。媚びるような声も軽くなって耳に馴染む。部屋に満ちるΩのフェロモンは想像していたような甘ったるいものではない。柑橘系の爽やかな甘い香りは体にスッと溶け込んで、いつまでも嗅いでいられる。海をバックに笑うイタリア男にピッタリだなと納得した。今までコレを自分だけが知らなかったというのはジリジリと妬けるが、これからこの香りは自分だけのもの…。
「そうだな、俺もやってみたいことが色々ある」
「へ?…お前ってさ、元々スケベだったのか?そんな急に変われるもんなのか?」
「さあ?まぁ知らないことが多いからな、こことかこことかどうなるか見てみたい。後ろからも試してみるか?」
 そう告げながら指先で肌を弾いていく。デスマスクはその感触にピクン、と身を縮ませてから力を抜いて、シュラの手に自身の手を重ねた。
「…ぜんぶ、いい…けどぉっ…。おれもやってみたいことあるから、調子ノリすぎんなよ?」
「クク、それができるだけの体力が残っていればな、な」
 シュラに押し倒されて、聖剣を放つ手が、指先が肌を優しく滑っていく。部屋で一人シュラを想わなくてもここにいる。もう「だめ」だなんて言われない。求めれば与えられる。辛い発情が薬も無く癒やされていく。願っていた全てが今、ここにある。
 デスマスクは喜んで何もかもをシュラに捧げ、満たされた幸福に溺れ続けた。

ーつづくー

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