2023 |
01,11 |
「おいシュラー!お前の可愛くない彼氏が来てるぞー!」
闘技場で候補生たちの鍛錬を見ていたところにミロから声がかかった。
振り向いて辺りを見回すと、崩れかけた石柱の上に座っているデスマスクを見つける。
「今日は用事があるんだっけか?仕事?」
「いや、あいつの誕生日なんだ」
「あぁ……」
「予定よりまだ早いんだけどな」
時間まで待たせようと思ったがミロに止められた。
「いや、もう終われよ、あいつにずっと見られてやんの何か嫌だ」
「……」
「早く連れて行ってくれ」
そう言われながらデスマスクの方へと背中を押される。
本当に嫌なのか、誕生日と聞いて気を利かせたのかわからないが、予定よりも早く切り上げさせられた。
ーーー
「おい、まだ早いだろ」
石柱の元へ行き声をかけると、ふわ、と彼が舞い降りてくる。
「だって俺様暇だし」
「今日はもう終わりだ、一先ず宮に戻る」
「え?終わった?何で?」
「お前がいると嫌だからってミロに終わらされた」
「へー、気が利くじゃん」
嫌味を言われてるかもしれないのに、どこまでも前向きなこいつには感心する。
たまに、本当は凄く傷付いているんじゃないかって思えて、そんなこいつをフォローしている間に情が移って今に至るわけだ。
ふ、っと腰に腕をまわされて軽くキスをされた。
「まて、汚れているから宮に戻ってからにしろ」
「気にしないって」
「お前の服が…ほら、砂がついた」
パタパタ払い落としてやって、先に行こうとすれば腕を絡めてくる。
「だから……」
振り向いてデスマスクを見れば、別に甘えるような表情をしているわけでもないのに、腕を絡めて俺を見るその姿が無性に可愛く見えてしまう。
「……」
ため息一つついてグイっと腕を引き寄せた。
「お前ってさ」
「言うことキツいけど、やること優しいよな」
「ふーん」
「ちゃんと俺のこと好きなんだってわかる」
「良かったな」
「うん、良かった、お前で」
「……」
「……」
「……好き」
ぽつり呟かれた言葉にドクンと血が沸きたつ。
立ち止まってデスマスクの唇にチュっとキスをすれば、ふにゃっと目元を緩ませて俺を見た。
ハァ…贔屓抜きでこいつ可愛いと思うんだけどな、誰も賛同してくれない。
俺にだけ見せてくれる姿なんだろうけど。
隠しておきたい気持ちと、みんなに知ってもらいたい気持ち両方がある。
「なぁ、プレゼント何くれんの?」
「お前が欲しいもの」
「クク、もう手に入れてるし」
「……」
もう一度キスをしてデスマスクを抱き上げた。
ディナーまでまだ時間はある。
「好きなだけ俺をくれてやるよ」
「ヒヒ、最高」
すれ違う者たちの視線も気にせず、デスマスクを抱いたまま磨羯宮へ向かった。
ーおわりー
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