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そこはかとなく

そこはかとない記録
2024
04,11
 時の流れを早く感じるようになってきた。季節は秋。目の前に迫る冬を迎えればシュラはまた一つ歳を重ねる。外での仕事を終え、その日は私服でもあったため珍しく聖域まで歩いて戻って来たシュラは十二宮から離れた岩場で修行中の師弟を見かけた。聖戦に備え聖闘士の育成を急いでいるがそう容易くなれるものではない。αであればなれるという保証も無く、運命である。黄金でも育成を任されている者はいるが自分はそうならなかった。代わりにΩの世話を任されているこれもまた、運命だろう。
 不意に、白銀の若い女聖闘士がシュラに気付き軽く頭を下げた。その場にいる弟子は生意気そうな顔で真っ直ぐシュラを見つめる。コスモを理解していないのか、聖闘士の階級など頭に無いのか、まだまだ未熟な候補生がβに向けるのは開花する前のαの視線。
 ――大物か、ただの意気がりか――
 実力があれば近く聖闘士として再会するだろう。Ωを狙うのであれば仲間とは思えないがな。目を細めたシュラはニヤ、と笑い二人の前を通り過ぎて行った。

「天気が良いからゆっくり散歩か?健康運動?暇そうでいいな」
 シュラが十二宮の階段を上り始めてすぐ、天から声が降り注いだ。
「お前こそのんびり浮かんで付いてくるのは暇だからだろ」
 一緒に散歩でもしていたつもりか?と、空を見上げてデスマスクを探す。軽く跳んで風船の糸を掴むように黄金の足首を捕らえたシュラは、デスマスクをそのまま地面に引き下ろした。マントがハタハタと音を立てる。
「お前はストーカー癖があるのか?黙ってないで声を掛ければいいだろ」
「だって仲良くするなって言うし、加減がわかんねぇんだよ」
「それだけなら良いが俺の行動を監視するのはやめろ」
「エロ本見てないかとかな」
 その言葉を無視して再び階段を上り始めると後ろからカツカツと歩いて付いて来る音が聞こえてきた。
「なぁ、さっきお前が見てたガキどう思う?」
 黄金未満の他人事などほとんど興味を示さないデスマスクがそんなことを聞いてくるとは。
「まだまだだな。αの図太さは秘めているようだが」
「アイツらニッポンジンなんだってよ」
「そんなことよく知ってるな、珍しい」
「賢いオレっぴは極東アジアに興味あるんで」
 確かにデスマスクが隠れ家へ持ってくる本には東アジアへの旅行雑誌や戦史に加え"カンエイジテン"やら"コトワザシュウ"やらよくわからない物が混ざっている。蟹座の必殺技が中国の星占い由来のものである事が興味を持った切っ掛けらしい。ごちゃごちゃした"カンジ"がカッコイイと言っていた。実際に読めているのかは知らない。
「キリストってさ、実は処刑されてなくてニッポンまで行ったとかいう説があるんだぜ?」
「ふっ…そんなの布教するための作り話だろ」
「死んだと思われたアテナが実は生きていてニッポンに行った可能性、どう思う?」
急に声を低くして響かせる。
「なぜニッポンなんだ、他にも可能性はいくらでもあるだろ」
「俺ら西洋人から見て東の果てにある島国ニッポンは終点なんだよ」
ピンとこない顔をするシュラにデスマスクは続けた。
「そういう目の届かない場所で何かが着々と進んでたりするんだよなぁ。大陸とは繋がっていない。囲まれてもいない。資源は豊富。ニッポンってのは国そのものが巨大な空母みたいなもんだ。平和ボケに隠れながらこちらを監視するにはちょうど良い」
「聖戦前にアテナがはるばるニッポンから攻めて来るとでも?」
「生き延びたアテナが大人しく帰還してサガに協力するとは思えないだろ。さっきのガキが聖域に来た同じ頃、ニッポンのグラード財団から候補生が大量に送られて来た。もうほとんど死んだが十人ばかりは生き残っている。カミュの所にいるのもその一人だ。アテナが生きていれば11歳。距離なんか何の障害にもならないだろう。ニッポンのガキどもが聖闘士になるかならないか注視しておくに越したことは無い」
そこまで一気に喋るとデスマスクは不意にシュラの腕を引いて囁く。
「例えそれが青銅であろうとアテナは反則だ。コレが当たりなら、俺たちの運命に大きく関わってくるからな…」
シュラより一段下から上目に見上げて、どこか急かすような顔。時間が無い?サガが動くが先か、アテナが生きているとして動くが先か。どちらも自分たちにとって無傷ではいられなさそうな事案だ。だからと言って…。
「なぁ…俺さ、報告行ったらフリーなんだ。お前は?飯でも行かないか?怪しまれないようにすんならアフロも呼ぼうぜ」
真剣な話をしていたかと思えば、狙いはコレか…とシュラは体から力が抜けた。情に訴えかけてその気にさせるセコさ。素直にOKは出したくなくなる。
「…暇ではない、今日は書き物が多いんだ」
「せっかく俺が暇なのに、そんなん一人になってからやればいいだろ?寝るの我慢しろ」
「明日に響く。生活習慣は崩したくない」
そこまで言うとデスマスクはシュラから手を離し、口を曲げてふわんと浮かび上がった。今回は意外と諦めるのが早い。マントを靡かせスーっと宙を滑りあっという間に視界から消える。見えなくなってシュラは軽くため息を吐いた。少し残念な気持ちと、まだ間に合うという考え。このまま歩いて行けば教皇宮から戻って来るデスマスクと再びすれ違えるだろう。あいつが変なルートで戻らない限りは。いや…自分が巨蟹宮で待っていてやれば良いのか…。ちょうど私服を着ている。財布もある。わざわざ着替えに戻る必要はない。
「……ダサいな」
笑って一言呟き階段を上り始めたシュラは、巨蟹宮に着くと迷わず私室の方へ向かった。
 それから数十分後、教皇宮から戻って来たデスマスクは居間のソファーに座っているシュラを見るなり満足そうな笑顔を溢れさせる。こちらを見たシュラに「アフロは来れないってよ」と言い放ち、シュラのため息を聞きながら出掛ける準備を整えた。

ーーー

「あいつがいれば、美味い店じゃなくても良いとか思えるなんてなぁ…」
 シュラと食事に行った翌日、余韻に浸るデスマスクの頭の中は平和で穏やかだ。不味い店に当たった事はないが、近さで選んだ昨夜の店は特別美味いわけではなかったと思う。地元民で繁盛している町料理屋で、忙しさからとにかく盛り付けが雑だった。それが逆に可笑しくて「これは酷い」「もう少しセンターに寄せれるだろ」「量に対して皿のデカさが無駄過ぎる」などと二人でツッコミ続けたのが楽しかった。帰り道もケラケラ笑いながら「また行こうぜ」と溢したデスマスクに「またな」とサラッと言う姿が自然で格好良いと思ってしまう。"本気で待っちゃうぞ"と心の中で呟いた。

「はぁー…」
 偶然休暇が重なって二人で過ごすとか、発情期を理由に二人で過ごすとか、いつ死ぬかわからない聖闘士にとっては十分な幸せなんだろうと頭では思う。それでもやはり、結ばれたところでまた引き裂かれると知っていても、あの腕に抱かれたい…。
 巨蟹宮の寝室で以前シュラから貰った鍛錬着を片手にぼんやり横になる。なんとなく感じるかも、と思っていたシュラの匂いはもうすっかり無くなって自分の匂いに変わってしまったようだ。そろそろ次の物をねだっても良いかなと考えた。
「発情期来たら貰お…」
 本人が手に入ればそれだけで良いというのに、なぜ焦らすんだ。第二性が邪魔をし過ぎる。未来の暗い不毛な恋愛だからこそ今に全力を注げば良いと考えないのか?死んだら終わりなんだよ。普通は。…なんかあいつは死んでも終わってくれないとかグチグチ言っていたが。
 そんな鬱憤を晴らすように発情期以外では任務をこなし続け、巨蟹宮もかなり煩くなってきた。強力な力を持たぬただのαくらい、Ωだろうと自分なら簡単に殺せてしまう。シュラの言う通り自分にとっても問題になるのは黄金のαくらいだ。
「そろそろ準備するかぁ…」
 手にしていた鍛錬着に軽く口付けてからベッドに戻す。夜の任務に備え早めの夕食を摂りデスマスクは聖衣を纏って教皇宮へ向かった。まだ仕事に出ているのか磨羯宮にシュラは不在のようだった。

 教皇宮入り口の重い扉の前。夜でも誰かが守っているものだが、外も中も人気を感じない。
――俺に、話か――
 手は下ろしたまま扉を見つめ、念力で少しだけ開けて中へ滑り込む。嫌な感じはしない。いつもの雰囲気のまま教皇座にサガは座っていた。
「何か特別なお話でも?」
 サガの元へ向かいながらデスマスクから投げ掛けた。マスクから覗く髪色も清らかなサガを示す金色だ。根元まではわからないがコスモからして邪悪な方は息を潜めているだろう。
「今更な話にはなるが、20歳を過ぎたお前に番を持たせたいと考えている。シュラから聞いているだろう?」
「ええ、その気が無い事もご存知かと思いますが。番を持たせる理由はフェロモンの抑制だけですか」
「それ以外の理由があるのなら何だと思う」
「こちらが聞いているんですけど。…まぁ、俺にαの子ども産ませたいとか?」
 サガの前まで来て跪くこともなく仁王立ちで言えば、清らかなサガにしては珍しくバカにするような笑いが溢れた。
「そんな事…"私は"考えていない」
 ならば邪悪な方はどうなんだよ、と喉まで出たが下手に刺激するのは止めようと飲み込む。
「α嫌いは昔から変わらないようだな。それは私も体験してみて理解できるようになった」
「……αは自分がαであるからこそそんな事を呑気に言える。αになれなかった者を見下しているようにしか受け取れませんよ」
「見下す、か。お前はαこそ力の頂点であると思うか?お前にも記憶が残っているだろう?」
「何の」
「かつての、記憶だ」
 マスクの奥でサガが目を細めた気がした。唐突な話にデスマスクが黙っているとサガはゆっくりマスクを外して顔を晒す。根元まで金色の清らかなサガで正解だった。
「かつても、我々は仲間だった。証拠など無いが思い当たる節が多すぎるのだ。霊感の強いお前はわかっているものと期待したが」
「はぁ」
「聞いてくれるか」
 聞かせようとして人を払いデスマスクを招いたのだろう。それに精神不安定なこの男を適当に扱う方が厄介な事になるのは身を持って知っている。内容がどうであれ断るという選択肢が無い。
「……どうぞ、続けてください」
 サガの側から一歩下がり、顔は上げたまま跪くように腰を下ろした。

「私も全てを覚えているわけではないが、かつてはΩだったと思う」
 だからデスマスクに対しての扱いが手厚いものだったと言うのであれば、わからないでもない。
「好いたαがいた。世界中を戦火に巻き込んでいく大戦の中で私たちは自国を守り抜くために戦っていた。…とは言え、既に国は占領下にあり滅亡は免れなかったがな。希望を、王女の亡命を託したんだ。アイオロスに」
 サガからは聞きたくない名前が飛び出してデスマスクは気を張った。話をさせるのは不味かったか…
「亡命は成功した。もちろんその時私は戦地で死んだため成功も知らなかったが、こうして現代に生まれ変わり歴史を学んだ時知ったのだ」
「そうですか…」
「私はΩで、αを好いたにもかかわらず結ばれることは叶わなかった。亡命を提案したのは私だったが、少しは期待していたのだよ。彼が、もう滅亡の見えている国ではなく今、目の前にいる私を選んでくれないかと」
 サガのアイオロスに対する執着は昔から感じていた。そのくせ瓜二つな弟のアイオリアには何の興味も示さない。アイオロスでなければならないという執着。
「期待が外れた悲しみは自分が思う以上に深かった。それはαである今生の私をも蝕んで亡命の成功を素直に喜べない自分がいた。好いた者の幸せよりも、私と同じように願い叶わず死んでしまえば良かったのにと思えてしまう醜さ。お前もよく苛まれるだろう?愛に飢えて飢えてたまらない苦しみに。番を持たないと解消されないΩの苦しみ。それから解放されたいとは思わないのか?」
「…思いますが、だからこそ好きな相手としか番いたくない気持ちもわかるのでは…」
「番えない苦しみの方が重いと思うのだ。Ωの性なのだよ」
 それは貴方が失敗したから、とは口が裂けても言えない。アイオロスはサガに強い信頼を持っていたことは感じられたが、サガだけに限らなかった。デスマスクのように他に対して好き嫌いが露骨なタイプではない。シュラとも違う、シュラは人を選んでいるがアイオロスは誰に対しても土足で踏み込んで来るタイプなのだ。しかしサガはそんな彼と相性が良いと感じ惹かれたのだろう。問題なのはサガもアテナもアイオリアも、アイオロスにとって"一番"であったこと…。
「フェロモン抑制だけではなく俺を気遣っての提案でしたか。聖域の事を考え、聖闘士のケアも怠らない。さすが教皇」
「我々αも醜い姿ばかり見せたいわけではないのだ。かつてお前が副作用に耐えながらもαの抑制剤を使用していた覚えがある」
「…それは何のために」
「自分の事ではないためそこまではわからないが、お前はαだった。シュラ、アフロディーテと共に」
 全員αの世界、今で言えば理想だった世界に於いても自分は満足できずαの抑制剤を服用していたのか。"かつて"がいつの話かわからないが、現代に於いてもαの抑制剤はリスクが高い。昔ならば早死にしておかしくない…いや、早死にしたのか。おそらく。
「私含め全員、戦災などの孤児で出身地はバラバラであった。かつての祖国はそういった難民を数多く受け入れていたのだろう。危機に瀕した時、ほとんどの者がパルチザンとして立ち上がったのだ。そこにお前たちもいた」
「はっきりと覚えているものなんだな」
「ハハッ、二重人格で頭のおかしい男の作り話と思うならばそれでもいい。某国王女の亡命とソ連国境でのゲリラ戦、発情させたΩ兵を投入してのα隊殱滅作戦…。大戦の中ではマイナーな戦記ではあるが、戦史を好んで学ぶお前なら気付いているのではと思っていた」
「勉強不足ですみませんね。で、俺たちはどうなったかも知っているのですか?この聖域の行く末と重ねるのであれば重要過ぎる話ですよ」
デスマスクの問いにサガは瞼を伏せ少し考える素振りを見せた。
「最後はわからない。発情させられたΩ兵が押し寄せて来た時、Ωの私と抑制剤を服用していたお前だけはフェロモンに惑わされなかった。シュラを引き摺ってアフロディーテと共に退避していく姿が私の記憶に残るお前たちの最後だ」
「へぇ、戦わず敗走して死ぬとは俺として最悪なものだ。貴方もそこで死んだのですか」
「私とアイオロスで鍛え上げたα隊は呆気なく離散し、一人ではどうにもならなかったな。戦争は有能なαが前線に立ちやり合うもの、という各国のプライドが崩壊した。とにかく勝てば良い。特攻させられるΩ兵に飛び付くαたちを、βどもが後方から味方のΩごと撃ち殺していくのだ。地獄を見る戦地で最もおぞましい光景だったよ。βの狡猾さ、やがてはこいつらが生き残り、数を増やして世界を握っていくのかと思うとそれこそが世界の終わりのように思えた!」
――その地獄の光景が、邪悪なサガの欲望にも結び付いたと…――
「デスマスクよ、αを嫌うのもわかるがβはより恐ろしいぞ。こちらの様子を伺い大人しくしている裏で爪を研いでいる。一人では何の力も持たないが数が増えると厄介だ。現に過去の戦争に於いて尽力したαは数を減らし、また利用されたΩはより希少な存在となっている。だからこそ
「そうですか、βは駄目ですね。ところで教皇、少し休憩しませんか」
 話に熱が入り始めサガのコスモに歪みが感じられるようになってきた。話の半分は邪悪なサガの意見が混ざっていると思われる。この話は良くない。別の話題に切り替えたいが…
「デスマスクよ、我々のフェロモンが通用しないβは裏切る。Ωが満たされるのはαだけなのだ」
「お気遣いありがとうございます。番についてはまた考えておきますから」
 気付いてなのか無意識なのか、シュラの事を言われているようで気分が悪くなった。結局はβもΩも支配してやりたいだけなのだろう。一言言ってやりたいがサガを刺激したくない。それがストレスになる。
「休憩されないようであればそろそろ出発したいのですが。話はもう良いでしょうか」
 一歩後退るデスマスクを見て、サガは引き留めるように身を乗り出した。

「どうしても番の相手が見つからなければ、私を頼りなさい」
 声を張ったわけでもないのに、宮内を響き渡っていく言葉。
――これが、本題か――
「再びアイオロスを亡くした私はもう誰かを愛することは無いが、お前を大切にしてやる事はできる」
 ちょっとそれは流石に失礼なのではないか。シュラと番になれない自分も重なり、まるで傷を舐め合おうという提案を出してくるなど。しかも本気で心配して親切心からの申し出っぽいところが厄介すぎる。
「…お気遣いありがとうございます。でも俺は好きな相手が良いので時間をください。意外と身持ちが堅くて一途なんですよ。例え相手に裏切られても足首掴んで離さないような。そういうタイプの蟹座ですので」
 口早に告げ、一礼してから素早く退室した。つい嫌味を込めてしまったが大丈夫か?教皇宮を出た後に扉の前で立ち止まり、中の様子を伺う。少し淀んだコスモのまま、しかし邪悪さが増す様子もなくサガはゆっくり私室へ戻って行ったようだった。一気にどっと疲れが出て大きなため息が漏れる。

「お前、今から出発か?」
 突然正面から掛けられた声に勢い良く顔を上げると、聖衣を着た顔に汚れが残ったままのシュラがすぐ側に立っていた。その姿を見た途端、嬉しさと安心感が込み上げてきて顔面がデロンと溶けた気がする。シュラに近寄り肩へ腕を回した。
「報告なら明日にした方がいいぞ」
「何かあったのか」
「うん、まぁ、問題無ぇけど今は刺激を与えない方が良いな」
 そのまま不審がるシュラの背中を押して磨羯宮まで下りていく。デスマスクにとってシュラの登場は本当にタイミングが良く、胸に支える不安感が次第に和らいでいった。
「はぁ…お前タイミング良すぎだろ、わざとか?」
「偶然だ。お前が夜の仕事とは知っていたがとっくに出ているものと思っていた。それより本当に何もされていないな?」
 ――そんなに心配してくれるのなら、ちゃんと愛してくれって――
「ちょっと変な話聞かされただけで、手は出されてねぇよ」
「そうか」
 付かず離れず並んで歩き、磨羯宮に着くと私室への扉の前でシュラが足を止めた。それに合わせてデスマスクも立ち止まり、辺りが静まり返る。「じゃあな」と別れて進めば良いものを、なんだか離れがたい。女々しいのは嫌いだがそう思ってしまう。自分が思っている以上に不安が解消されてないというのか。気持ちを整えデスマスクが足を踏み出す前に、シュラの聖衣がカツンと響いた。
「下まで付き合おう。どうせ俺はもう食べて寝るだけだからな」
笑いながらそう言って今度はシュラがデスマスクの背中を押す。ハハっと軽く笑い返したデスマスクはシュラの顔を見て、目の下に残っている汚れを指で拭った。
「ここ汚れてっから寝る前にちゃんと洗えよ」
「あぁ…今日は雨上がりの場所でぬかるみまくっていたんだ」
「地を蹴らないと飛べない山羊は大変だな」
 他愛のない話を繰り返して心にシュラを補充する。十二宮の入り口に着く頃にはいつものデスマスクに戻れるだろう。貰った鍛錬着ではこうなれない。やはりシュラ本人が良い。なぜαにならなかったのか。なぜαになってくれない?諦めきれず何百回と思ってもどうしようもない事。愛に飢えようがシュラに捨てられようがサガの元へは行かない。シュラ以外の誰の元へも行かない。それを、自身が持つ力で証明してやる。
 別れ際、シュラはよくニヤりと笑う。昔は嫌だったがもう気にならなくなった。肉をよく食べるからか?今日も何だかβにしては鋭い歯が目につく。
ーーいつか…死ぬ時でもいい。ソレで、俺を、噛んでみて…くれないかな…ーー
 僅かにフェロモンを溢して、デスマスクは聖域から消えた。

ーつづくー

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2024
04,10

«SYO-WA»

4月、やっとフリータイム再開と思った矢先に家族の体調不良が到来(゚Д゚)
そういうものは春休みに済ませてくれたまえ…。
新しい環境は無意識に疲れると思いますので、皆さまも年度始めは無理なさらず山羊蟹を補給しながらいきましょう(´・ゝ・)つ(゚∀゚`)

星矢の一番くじ、うちの市と隣接市一帯は取り扱いが無く、まぁそこはカービィでさえ1、2件しかやらないレベルの田舎だし理解できるのですが、自分の地元が県内ぶっちぎりで14件もやってて噴く(笑)合併してデカくなったからねぇ。都市は区でバラけますしね。景気良いなぁ。

しかしせっかくやるのなら新しい絵とか用意できなかったのか?いや、あえての昭和なのか。フィギュアに全振りして燃え尽きた感が(笑)
もうシュラ、悪い顔しか無いやん…
✌︎(・ゝ・)✌︎ドヤ

でもここまで来るとシュラの良い顔って何だ?となってくる。エルシド様は良い顔ばかりだよね…。昭和のデスマスクも良い顔ばかりだというのに(゚∀゚)キリッ

(・ゝ・)ドヤァ  ←コレがいかんのか

(゚∀゚)キリッ  (・ゝ・)キリッ

落書き描きたいですが落ち着くまで我慢(゚皿゚´)ギギ…
オメガバ文も更新したいけど、ちょっと話逸れててキリの良い場面に辿り着けない(゚∀゚`)
もうちょい!
花見ももちろんできなかったので、葉桜でやるしかあるまい!(刺蛾の幼虫落ちてくるやつ)

↓マニゴルドとエルシド
(゚∀゚)「ハナミ?何だそれは」
(・ゝ・)「ニッポンの"エンカイ"パーティーだ」
(゚∀゚)「へー。幼馴染がニッポンジンなだけあるな」
(・ゝ・)つ●「猪を狩って焼いたから食べよう」
(゚∀゚)「さっすが山育ちぃ〜」

モグ((・ゝ・))    ((゚μ゚))モグ

↓シュラとデスマスク
(・ゝ・)(゚∀゚) …      ウマ〜♡>|桜|

(゚∀゚)「なぁ、オレっぴお腹空いたのだが」
(・ゝ・)つ⑩「金やるからテレポートして何か買ってこい」

グハァ(・ゝ(◯≡=(゚∀゚`)「ほんとわかってねぇ男!」

でも今夜、不器用に抱かれちゃう☆
キリッ(・ゝ・)´Д`; )ピィ…♡


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2024
04,03
 αとは番にならない、シュラはもうαにはならないだろうから。その先にある未来がどんなに暗いものであろうと、それだけは貫き通したい。それくらいの強さだけは、どれだけΩに歪められようとも最後まで手放さず持ち続けたい…。

 シュラの誕生日から半年が経ちデスマスクも21歳を迎えた。サガからは何か仕掛けられる事もなく、以前と同じ聖域と隠れ家を行き来する生活。今も変わりなく自分の面倒を見続けてくれるシュラ。昔はアフロディーテと比べて付き合い難く、警戒すらしていたというのに8年も時が経てばこうも関係が変わってしまうものなのだろうか。まさか自ら好きだと、抱いてほしいと懇願してしまうほどシュラに溺れてしまうとは。そこまで曝け出したというのに、シュラだって自分のことを好きでいるはずだろうのに、決定的な言葉だけは避けてβを理由に自分の役目を淡々とこなし続けるだけ。

 初夏、ニ人だけの隠れ家。デスマスク21歳最初の発情期も終わりが近付きシュラは聖域へ戻っている。今は誰もいない。シュラが用意していった昼食を食べた後、自室へは戻らずシュラの部屋へゆっくり踏み込んで行った。ほとんど物を置いてない狭い病室のような部屋。磨羯宮のシュラの部屋とは違う。あそこにはそれなりに物が溢れていて、隅に積み上げられた畳んでいない洗濯の山とか、テーブルの端に積み上がった雑誌とか間に挟まっている書類とか…本当は片付けが苦手なのだろうと思える。隠れ家ではやる事が無いからか、もしかしたら俺がいるからなのか洗濯もちゃんと畳むし、食器類だって乾いたら収納場所へ戻している。やれば出来るのに、自宮でのだらしなさには親近感がわいてシュラのそんなギャップにすらデスマスクの心は掴まれていた。

 部屋のほとんどを占めるベッドを見つめ、息を吐いてからそっと寝転ぶ。起きた時に捲られたままのタオルケットを掴み両手で抱いた。当然のことだが何の匂いも感じない。枕に顔を埋めても、何も匂わない。夜風は涼しいかもしれないが冷房のない部屋で寝て、フェロモンとかではなく少しは汗とかシュラ自身の匂いくらい感じてもいいと思うのに…嗅覚が奪われているのかというほど何も感じない。

 諦めて起き上がったデスマスクはクローゼットに目が行った。勝手に見るなんて最低だなという思いとは裏腹に足はクローゼットの前へ向かい、扉を開ける。中を覗いて思わず「フッ」と噴き出してしまった。ハンガーにはニ着のちょっとイイ外出着が掛かっているだけで、部屋着用の服や下着は下段に置かれた籠の中に畳まず放り込まれ積み上げられているだけ。いつもデスマスクの洗濯物はちゃんと畳んで渡されるのに。
「どうせやる事無ぇなら俺のついでに畳めばいいだろ」
見えていないだけでシュラの雑さは隠れ家でも健在だった。ニヤけながらクローゼットの前に座り込み、上から一枚シャツを掴んで、畳んでやるでもなく、匂いをかぐ。
――匂わない――
 そんな事わかりきっているのに、一枚、一枚と次々出しては繰り返し、籠が空になるとデスマスク自身がシュラの服に埋もれていた。そのまま服の中に寝そべってぼんやりしていると、ふと「Ωの巣作り」を思い出した。番持ちΩが発情期を癒すために行う行為の一つで、αの匂いを求めて私物をかき集め、番が外出中はその中に埋もれて過ごすというもの。
「諦めきれない、ってぇーのか…」
シュラはαにはならないというのに。どれだけそう言い聞かせて納得したフリをしても本能が求めてしまう。
「シュラ…」
 短くて呼びやすい名前。今更だがコレって本名なのか?お前も本当の名前持ってたりするのか?この名前しか知らないから、聖闘士ではないお前の名前を知っても呼ぶ気は無いが。なんだか凄く、俺の口に馴染むんだよな…

――ただ、お互い好き合って結ばれて、二人で穏やかに暮らしたいだけなのにいつもそれが許されなくて。想いは通じているはずなのに。想いが通じても、結ばれても、直ぐに引き裂かれてそれが何度も何度も…。次こそはと未練がましく生まれて来ては、繰り返すばかり。本当に、満たされない。一緒にいれるだけでいいなんて、それだけではもう満足できないんだ。こんな俺たちを、神は何が楽しくて眺めているというのか。愛と平和の神に使えさせて、それを裏切るシナリオで、きっとまた、俺たちを突き落とすのだ…――

――……
「……デスマスク」

 耳に馴染む声に名前を呼ばれ、体が揺れた。ふ、と瞼を持ち上げると涙が溜まっていて視界がぼやける。横を向いていた体を仰向けに倒されて、瞬きを繰り返しながら目の前の黒い影を眺めていると布で目元を優しく拭われた。
「デスマスク、調子が悪くなったのか?せめてベッドに上がれ」
 視界がハッキリして自分を覗き込む顔に手を伸ばした。シュラだ。
「…帰り早くねぇ?俺寝てた?もうそんな時間?」
 伸ばした手は頬へ届く前に掴まれて、仕方なくそのまま体を起こす。その体からタオルケットではない布がハラハラと落ちていった。体を起こして床に手を付いたはずなのに、布に触れて少し滑る。
「今日は早く終わってな。お前は何か探していたのか?それにしても散らかし過ぎだろ」
 ため息を吐きながらシュラはデスマスクの体に乗る衣類を集め始めた。それはシュラの服だ。デスマスクが全部、クローゼットから引き出した…
 その様子を見たデスマスクは突然何度も首を回してシュラの部屋を見渡した。狭い部屋に散らかる衣類、そこに埋もれてうずくまっていた自分。それは、まるで…

――あんなにαの荒らし行為が気持ち悪いと言ったくせに、Ωとして全く同じ事をしている――

 そう気付いた瞬間、デスマスクは動悸がして胸を押さえた。
「おい…本当に調子が悪いのか?」
 不審に思ったシュラは集めていた服を置いてデスマスクの背中に手を添える。
「一度部屋に戻れ、連れて行ってやるから…「違う」
 抱き上げようとしたシュラを制し、息を整えてから少し震える声が響いた。
「お前、この部屋見てどう思う…」
「どう?…まぁ、やってくれたな」
「気持ち悪くねぇ?気持ち悪いよな…?勝手に部屋荒らされて…αのように…」
 そこまで聞いてやっとシュラは"あぁ…"と何かに気付き納得した素振りを見せた。集めた服の中から適当にTシャツを1枚掴んでデスマスクの前に差し出す。
「コレ、が欲しかったのか」
差し出されたTシャツを一目見て、恥ずかしさからデスマスクは顔を背けた。
「βのものでも構わないのか?αのように癒しにはならんだろう。好きならばそんな事関係無いのか?」
 シュラはデスマスクに持たせるようにぐいぐいとTシャツを押し付けた。それを振り切るようにデスマスクが声を荒げる。
「コレはいらねぇっ…!何も匂わんし何の癒しにもならねぇよっ!」
「…だよな、所詮βではな」
「そうではなくて、お前の物持つとか気持ち悪いだろ…お前、が…」
 消え入るような語尾も聞き逃さず、真っ直ぐデスマスクを見続けるシュラから軽く笑う声が漏れた。
「別に、これはΩの巣作りみたいなものなのだろ?β相手にもこんな愛情表現、可愛いことしてくれる」
「だっ…?!うるせぇ!好きだから、仕方ねぇだろ!」
「あぁ、仕方ないな。コレも、αのアレも…」
 静かに呟いて、シュラは再び散らばった服を集め始めながら言葉を続けた。
「欲しければどれかお前にやるが?」
「いらねぇよ!さっき言っただろ!こんなん、貰っても…」
「だが気になるから出したのだろ?一つくらい持っておけ」
 そんなこと言われても、わかっているのか?コレを貰って、コレがどう使われるのか…。自分でさえわからない。抱いて寝るとかそんなかわいいコトだけで終われるなんて、思えない。それこそ最低なαの行為と同じで…。βの物だから、それでも癒されなくてとことん最低な行為の道具になるとか想像つかないのか?
「好きにすればいい。俺ができるのはこれくらいだからな…寧ろ役に立つなら持っていってほしい」
 言葉にしていないのに、さすがΩを調べ上げてただけある。いやαの行為を見ていれば分かり切った事なのか。
「…コレ、ぐしょぐしょになるとか考えねぇの?」
「だから好きにしろ。返さなくて良いぞ。使えなくなったらまた何かやる」
 シュラはククッ…と笑った。例えシュラが自分に好意があるのだとしても、そんなこと気持ち悪いとは思わないのか?心からの愛があれば、受け入れられるものなのだろうか。俺の信用を得るために無理しては…いない、と思う…。嫌な事であればこんな提案すらしてこないだろう。
「…だったら」
 デスマスクの声にシュラは動きを止めて顔を向ける。
「さ…、洗ったコレじゃなくてよ…」
 手が伸びてきて、袖をクイっと軽く引かれた。
「今着てる、コレがいいんだけど…」

ーー

 デスマスクの申し出にシュラは直ぐその場で鍛錬着を脱いで渡した。受け取ったデスマスクは両手でそれを握り締めてから、何も言わず突然テレポートをして自室に戻ってきてしまった。
「…せめて、あの部屋片付けてやるべきだったな…」
 しかしまた戻るのも恥ずかしい。今のシュラなら怒ったりしないだろ。
 ベッドの上で、まだ温かい脱ぎたてのシュラの鍛錬着を抱いて横になる。さすがにこれは、ほんの少しシュラの匂いが残っているような気がする。フェロモンではない人間の匂い。
……やばい、むずむずする、かも……
 たった今の今で使ってしまうのは、あからさま過ぎて自分でも嫌だ。昔はそうだったが今、自分は欲を癒すためにシュラを利用しているのではなく本当に惚れてしまっているのだ。嬉しい。ただの鍛錬着一着だけなのに今腕の中にあることが嬉しすぎる。せっかく手にした物だから、汚さないように…。あぁ、そうか。汚さなければ…いっか…。

 上半身裸のまま部屋の片付けを終えたシュラは部屋着を掴んでシャワー室へ向かった。居間を出て階段の下で足を止める。特に上からの音は何も聞こえない。いや、耳を澄まして何か聴こえてきたら満足するというわけではないのだが。
 着ていた鍛錬着を渡した瞬間に見せた、デスマスクの蕩けた顔がずっと頭に残って離れなかった。嬉しそう、とは違う。発情期のピーク中に見せた情緒の激しい表情とも違う。キスをしなくてもただの服一着であんな顔を見せられると、もっと良い物をあげたらどうなるのだろう?そんな期待が沸いたが、普段から与えていないからこそだよなと考え階段下から足を動かしシャワー室へ入った。

 ――好きな男が自分に夢中になる姿がたまらない――
 どこまで我が儘をしても見捨てられないか試す男と、どこまで与えなくても追い続けるか試す男。ただ穏やかに愛し愛される事が叶わないゆえに歪んできた関係。βとΩとして生まれてきても切れそうにない二人の運命。何をしても切れそうにない関係は、何をすれば壊す事ができるのだろうという好奇心が少し出てしまう。デスマスクを無理矢理αに渡していたらどうなった、とか。…そんな事できるはずもないと知っているからあえて考えられるのだが。きっと、聖域が早くに崩壊するだけだろう。怒ったデスマスクがしおらしく自死するとは思えない。俺を困らせる全ての策を尽くし、聖域のみならず世界の平和を巻き込む最悪の結末だ。
「それも面白そうだが、俺の大切な男だからな…」
 好奇心はあっても本当に傷付け合うような事はしたくない。悲しい顔より先ほどのような蕩けた幸せそうな顔が見たい。いつになれば叶う?いつになれば…。早く…もう、そろそろ、良いのではないか…?オレは何を待っている?

 じわり、デスマスクを想うと疼く事が増えてきた。与えた鍛錬着をあいつはどうする?どうしている?今、抱いているのだろう?いや、抱かれているのか。αの遺物でもないアレを相手にして、フェロモンなんか無いというのに必死に縋って…。
「はぁ……デスマスク……」
 流れ続けるシャワーの中で吐息混じりに名前が溢れた。隠しても無駄だったな、お前の名前。巨蟹宮にデスマスクが現れるから、という理由だけで付けられた名前。お前自身を表すものではないと思って最初こそ呼び慣れなかったが、今はこれしか考えられない。死を覆い隠し、生まれ変わっても追い続ける姿。死を終止符として終着としない。死んだ事を隠し続けて終わりを見せない。だから俺がβであっても、あいつは諦める事など頭に無い。疲れてしまう前に一度、抱き締めてやらないと。それだけで、どんなに蕩けた顔を見せてくれるのか…。
「……ふっ……」
 沸き出た欲望は素早く流れ消えていった。目の前のタイル壁に腕を付いて、排水口を眺める。ずっと意識することなど無かったというのに、ただ吐き出すだけの行為でもデスマスクの事を考えるようになっていた。裸を考えるまでもなく果ててしまえる自分に可笑しくなる。以前、デスマスクから仕掛けられた些細な切っ掛けにこうも影響を受けてしまうとは。
 サガがデスマスクの様子を見続けるのはいつまでだろう。自分の中でずっと秘めていた愛おしさが、こうして欲となり溢れるようになってきている。それよりもっと強い執着が奥底で燻っているのを時おり感じる。知らない景色と知らない自我がデスマスクを渇望してくるようで。それはまるで、敵が自分の中にいるような…。αの、ような…。

ーつづくー

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2024
03,30
結局平日の夜はバテて創作進まず…。休日、無人になる隙を狙って一気に落書きです。描いてないと描きたくなりますねぇ。



オメガバ落書き。最初からシュラα、デスΩの世界。
まだお互い好きでもないのに反応してしまうのを耐えて、苛々するの図。

デスマスクはもうだめかも、と思うけどシュラが腕とか関係無いところ噛んで気合いで気を紛らわせてどうにかデスマスクを巨蟹宮にぶち込む。
それからシュラはデスマスクを本格的に避けるようになるが、デスマスクはシュラに噛まれた腕の痕を見る度に思い出してだんだん沼っていくパターン。ちゃんと我慢してくれた事もポイントが高い。
シュラはシュラで噛んだ時の快感が忘れられなくて苛々している(欲求不満)今まで他のΩに対して理性が飛んだ事など無いというのに何でコイツなんかに!という展開。

(`・ゝ・)「お前と番になる気は無い!」
(゚Д゚)「俺の何が嫌?どこが嫌なんだ?お前が気になること全部直すから教えてくれ!」

デスマスクに誘惑されまくって、もう殺しそうになるけど、殺されてもいいとか言うデスマスクにまた困惑して結局手がかけられない。シュラもだんだんコイツがダメな理由って何だ?とか頭がおかしくなっていく。そして他のαと話しているだけで許せなくなっていく。
トドメにデスマスクから改めて「番にして」と誘われ勢いでゴールイン…。ゴールインしてやっとシュラからデスマスクへのラブが解放され加熱。

(゚∀゚`)「結局お前、俺のどこが嫌だったんだ」
(・ゝ・)「…ワカラナイ」

カワイイ(・ゝ・)づ(゚∀゚`)カワイイ

♡ジ・エンド♡

オメガバ本の挿絵に向けて裸を描く練習しないとなぁと思い無駄に蟹を剥いてますが、昔からシュラの裸はあまり描く気がしない(笑)
元々、男性の裸に興味が無いのもありますがそれ以上にプレッシャーがあるのかもしれない…
蟹のためにいい体を描かねばならんという…☝︎(・ゝ・)☝︎ドヤ
聖闘士イチ鍛え抜いた自信ありそうだもんね…
自信はあるけど、それが当然っていう態度。ドヤ(・ゝ・)ドヤ
結局、デスマスクと大差ない体にしかならないと思います(゚∀゚`)

話変わりまして(・∀・)
子がいきなり「ミスターバナナになる」とか言い出し、その流れで突然ミスターポポ(オリエンタルカレーみたいなやつ)を思い出してからミスターポポが頭から離れない!
しかもオリエンタルカレーのキャラは別に顔面黒くなかった(笑)



確認したら耳がとんがっている以外だいたい合ってた…

鳥山明さんの訃報は本当に残念ですね。ファンでもない自分でさえそうなので。実家近くに鳥山さんの母校があるからわりと身近に感じる人ではありました。同人仲間でそこ通ってる人もいたし(笑)
美術の先生が赴任前に種村有菜さんを教えてたとかもあったなぁ。学生時代のポスターが美術室に掲示されていた(笑)少女漫画絵ではなく普通の絵。中学生であの画力はさすがというレベル。

自分自身が歳を取ったので、よく知っている有名人の訃報ばかりになってきました。自身が早死にでない限りこれはみんな経験する事だろうし仕方ないけど、改めて考えさせられることが多いですね。

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2024
03,28
近くの灯台にずっと刀剣乱舞のキャラとコラボしたカレーが売ってると思い込んでいて、ひょんな事から改めて調べてみたら刀剣乱舞関係無かった…

灯台擬人化だった(゚Д゚)

灯台擬人化って何(・ゝ・)
正直、刀剣乱舞もわかってないですが(笑)



そんな近所の灯台がこちら↑

しかも声優揃えて本格的な展開をしている。日本財団関わってるならお金は持ってそう(笑:勝手なイメージ)音声作品多いから声優ファン向けなのかな?灯台ファンは別にキャラクターとか求めないですしねぇ。

声優の名前わからん自分でも置鮎さんとグリーンリバーライト氏はわかる!
シュラ声優さんもいた(・ゝ・)三重県の灯台(笑)近いから行きやすそう。
青二プロが担当してるようなのでキャラ名でならわかる人多いですね。まだ擬人化されてるのは半分くらいであと40人くらいは追加される模様(笑)伊良湖岬もまだっぽい。

何コレ状態ですが、灯台は好きなので地味に追ってみようと思います(笑)
昔、潮岬に行った時はとんでもない暴風雨で灯台どころではなかった…(゚∀゚`)あそこは再訪したい。
潮岬灯台の声優は瞬だったけど、まさかネビュラストームから選ばれたとか関係無いよな…。

ここ数十年で擬人化とか偉人・神話のキャラ化がめちゃ増えましたね。もう飽和状態と言うか。
刀剣乱舞も知らないなりに、五月雨ってキャラがいる事は知っている(笑)艦隊これくしょんも。
ゲームやる余裕が無いので手を出す事は無いだろうけど、そういうキャラは贔屓目で見てしまいますねー。

ーーー
話変わってあれから異母兄弟について考えてみました(・ゝ・)
アフロディーテも加えて。

ξ゚、ゝ゚・ξ へー、シュラが兄さんになるのか
ξ゚、ゝ゚・ξ よろしく☆兄さん♡

(゚Д゚)…
(゚Д゚)ケッ!オレサマ絶対に呼ばねー。シュラはシュラだ。クソシュラ!

兄さん♡ξ゚、ゝ゚・ξつ(・ゞ・)…ヤメロ

(゚Д゚)…ケッ!

(゚Д゚)…
(゚Д゚)…
(゚Д゚`)…

ニッ…ニィサン…(゚Д゚`)ボソッ…   Σ(・ゞ・)

早速兄弟ごっこを始めるアフロディーテを見て、キモ、と思っていたデスマスク。でも何かだんだん2人の関係が本当に兄弟みたいに見えてきて、無意識に嫉妬し始める。2人の前では兄弟ぶらず今まで通り突っ張り続けたデスマスクだが、うらやましさのあまりシュラを「兄」と呼ぶ練習を始めてしまう(流されやすい蟹)
兄さん、兄貴、兄、兄ちゃん…どれも恥ずかし過ぎると一人で悶える夜…。

ξ゚、ゝ゚・ξ      (゚Д゚)シュラはお前だけの兄じゃねぇ!

知ってるけど…ξ゚、ゝ゚・ξ      (゚Д゚)

ξ゚、ゝ゚・ξ    どうした(・ゝ・)    Σ(゚Д゚)

オレのシュラ兄さんを独り占めするな!だって♡
ξ゚、ゝ゚・ξ    (・ゝ・)    Σ(゚Д゚)

逃がさんぞ(・ゝ・)つ<`Д´;))ピィー!

やっぱオチがね…全く思いつかないのだ…。
モダモダが続きすぎて山羊蟹に辿り着けん…。

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2024
03,24
とある、頬が赤らむ描き方が見たことある表現多くて流行かと思っていたら、アレ多分そもそもペンで描いてるのではなくカケアミペン?か何か使ってるから別人でも同じ照れ頬になってんだなと今更気付く(笑)そうか…もう頬の斜線すら描く時代じゃないのか(笑)あの雰囲気をアナログで出そうとするとトーンになるから手間とお金かかるけど、デジタルなら手間じゃないもんなぁ。ぼちぼち商業作品とか見てますが、自分アナログ描きから全然アップデートできん(゚∀゚`)
で、この絵で試してみれば良かったと今思う(笑)またの機会にでも(∩゚∀゚)



一応オメガバ落書きですが首がよく見えないので、ただの痴漢に(笑)とにかくシュラと体の関係持ちたいΩ蟹(オメガニ)。お手伝いを申し出ては断られる(゚∀゚`)
デスマスクは体も同じくらい大きいし、手も同じくらい大きいし、何より口がデカい(と私は思っている)ただ喉までデカいかはわからん(笑)
お尻に手をつけるよりは圧倒的に負担が軽いだろうと思うけど、一つ許したら際限無くなりそうなので性的な事はお断りしているβシュラ。今は行為に進むことよりも、デスマスクが擦り寄って来ることの方が内心興奮する時期、みたいな。
(゚Д゚)「オマエもオレの事好きなくせにぃぃいい!」
と自信満々なデスマスクは見てるだけで可愛い(・ゝ・)

それとは関係無い話ですが、復活後設定でシュラが長生きする中で自分の髪がどんどん白髪に変わっていく…というのは何となく、デスマスクと一つになっていくのを感じて最後の救いみたいだなとは思います。
自分設定のデスマスクは復活後でも早めに亡くなり、シュラもそんなに長生きではなくアフロディーテが全てを折り畳んで終わるイメージでいるのですが(おそらく描く事はない)、シュラの髪が総白髪になるまで生きて終わる方が山羊蟹の復活設定の終わり方としては一番綺麗かなとは思う。
多分シュラは禿げない(笑)髪の毛、太くて硬そうだから(・ゝ・)白くなるタイプだと思う。
そう思うと、山羊蟹というのはそこまで完成されたカップリングなのか…と感心しかない(笑:全て妄想)

あと、星矢ならではのネタで多くの人が一度は頭を過ぎるであろうネタ…「シュラとデスマスクが実は異母兄弟だった」
スペイン出身でもスペイン人とは限らない…
イタリア出身でもイタリア人とは限らない…
ただ、この2人に関しては正直ガチ兄弟だったとしても恋愛感情に関して「だから何?」の一言で終わりそうだなぁと思って、自分の中ではそこまで話が広がらなかった(笑)
何というか「こう来たか!」というネタがあればぜひ読んでみたい。現代社会や学生パロではなくて、聖闘士のままで異母兄弟判明してからの展開。

(゚∀゚`)「え?何?お前オレっぴのオニーチャンになんの?同じ血ィ流れてんのキモ」
(・ゞ・)「お前みたいなクズが弟の方がキモい。全身の血を変えたい」
(#・ゞ・)(゚皿゚´)ギギギギギ…

でも、妙にテレパシーが通じやすかったような…と思うのは俺らが兄弟だったから?とお互い意識し始める…。そして急にデスマスクに対しての過保護が発動するシュラ。この「気になる」から始まった膨れ上がる想いは、家族愛なのか恋愛なのか…

多分、クライマックスはデスマスクのオニーチャン呼び。でもシュラからそう呼ぶなって怒られる。1歳も離れてない、って。
(゚Д゚)双子だってそうじゃん、半年も離れてたらニーチャンじゃん。
(#・ゞ・)言うな、やめろ。
(゚Д゚)…オレがクズだから?
(・ゞ・)…それもあったが、今は違う。
(゚Д゚)じゃあ何だよ
(・ゞ・)…言えるか、クソ!

シュラからいきなりキスされる蟹。

(゚Д゚)…何だよぉぉぉおおおお!

揺れる、複雑な想い…

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2024
03,20
 フェロモンを出したままデスマスクが聖域に戻った騒動の後、シュラはサガとの面会に強い意志を持って挑んだが、デスマスクに対して咎められたり強硬手段を取られる事は無く肩透かしを食らった。むしろ清らかなサガはどこか後ろめたい雰囲気でデスマスクの様子を気遣うほどであった。ただ「デスマスクはαと番う気は無いと言っている」とハッキリ伝えたシュラの言葉に「今は焦らず模索していこう」と、控えめに考えを改める気は無さそうな言葉を返してきた。

 巻き込んでしまったアルデバランや対決した聖闘士たちにはシュラが出向き詫びて回った。そしてサガよりもアフロディーテが最も恐ろしく、顔を合わせた瞬間にデスマスクから目を離した事をこっ酷く叱られた。本心からデスマスクを心配しての怒りという事が感じ取れたためシュラは何も言い返せなかった。説教をされる中でアフロディーテがデスマスクを傷付けてしまうかもしれない恐怖に震えていた事に気付き、シュラが来た事で心置きなく荒ぶりをぶつける事ができたという点だけは感謝された。何も嬉しくないが、自分の存在がデスマスクとアフロディーテの関係を守ったらしいという事は良かったと思う。デスマスクはαという存在を嫌うものの、アフロディーテ個人を嫌っているわけではないのだから。

 発情期が終わりデスマスクも聖域に戻ると、デスマスクは自分に対する周りの雰囲気が変わったように思えた。どこかΩが馬鹿にされていたような空気を感じていたものから、Ωを怖れるものへと。それを鼻で笑い、シュラと共に巨蟹宮まで向かったが私室への扉の前で足を止めた。
「どうした?」
「…ちょっと、嫌だな」
中へ入ろうとしないデスマスクの代わりにシュラが扉を開け、先に進んだ。
「誰もいないから大丈夫だ。…部屋も全て戻してある」
だから来い、と軽く両手を広げて部屋の中へ誘う。きっと、ここで見てしまったものがトラウマにでもなっているのだろう。デスマスクはシュラを見てその場所までゆっくり歩いて行くと隣に寄り添った。
「…なぁ、お前の宮に俺も住むことできねぇの?」
ぼそりと呟かれた提案にシュラは顔をしかめる。
「それはちょっと…理由が無いな…」
「Ωは狙われて危険ですから、で良いだろ。むしろ何で今までそうしてこなかったんだってレベル」
「基本的に黄金は自らの宮を守護しなくてはいけない。確かに外泊やら何やらで、あって無いような規則だが。それより俺たちが必要以上に近付く事は避けておいた方が良いと思う。お前は絶対にボロを出しそうだからな」
あくまでもここではβとΩを超えないように。そう言われたデスマスクは唇を尖らせると、シュラの腕を掴み居間の方へ向かった。
「だったらせめて、戻った初日だけお前もここに泊まってくれ」
「だから…「何か気持ち悪くて落ち着かねぇもん。お前の匂いでお清めしてくれよ。匂いわかんねぇけど」
ぎゅう、と腕を握って軽くもたれ掛かってくる。デスマスクの甘えた姿にため息が漏れた。
「…今夜だけだぞ、明日の朝は勝手に出て行くからな…」
んふっ…と満足そうに笑うデスマスクの体がポッと熱を帯びた気がして、シュラは慌てて開けたままの扉を固く閉めに戻った。

ーー

 年が明けシュラは21歳を迎えた。1月の終わり頃にはまたデスマスクの発情期がやってくる。聖域を経つ前に再検査を受けておこうと貴重な休日に検査機関を訪ね採血を終えたシュラは、帰りにロドリオ村へ寄り久しぶりに本屋の前で立ち止まった。
 デスマスクがΩかもしれないと知った頃、とにかくΩについて知りたくてたくさんの本を漁り読みふけっていた。あの頃の自分はデスマスクにどんな期待を抱いていたのだろう。Ωという希少な存在を見てみたい…それだけではなく、そのΩがデスマスクであれば良いのにと。その願いは呆気なく叶い、首輪を着けたデスマスクの姿を見た瞬間には芯から震えるものを感じた。
 似合ってる、かわいい、守ってやりたい、手にしたい、離したくない、俺のものになればいいのに…。
 自分の中に渦巻くαのような欲望を感じては振り切ってきたつもりだった。しかしβには手に入らないはずのΩはその欲望を次々と叶えていく。
 守られたい、離れたくない、愛してほしい、お前が好きだから…。
 それは、自分がαではなかったから選ばれたのだろうか?βだから、フェロモンに左右されない愛に憧れたΩに。ただ、どう足掻いてもβはαに敵わない。愛するΩを守り切れるのはα。βとΩがαの脅威から逃れる道は、今生に別れを告げることのみ。俺たちが愛を選ぶのは、無責任に聖域と世界の平和を投げ出すことにも繋がるだろう。この愛は平和を願うものではない。俺たちの、欲にまみれたもの…。

 店頭に並べられた生活雑誌を眺めてから、ふらっと店の中へ立ち入る。第二の性についてまとめられた本棚。何度ここに立ったことか。手に取りやすい平積みの雑誌を手にしてパラパラと眺める。雑誌のデザインや読者への訴え方はおそらく今風に書き換えられているが、中身としては知っている事がほとんだ。数百年前から知られていて長年研究され続けている第二の性は、そこまで頻繁に新しい情報が更新されたり新発見があるものでもない。何より自分はもう何年も本物のΩに寄り添って生活をしている。今なら自分が記事を書いた方が斬新な物に仕上げられそうな自信もあった。

 本を戻して店を出ようかと視線を動かした時、視界に「Ω」の文字が映った気がして無意識にそれを探した。いつもの場所とは違う、もう少し奥へ進んだところ…

――あぁ…こんなものまであったのか…
 踏み込んだ先は成人向けの雑誌コーナーで、その1冊が「Ω特集」の写真集だった。左開きの表紙には女Ω、裏を返して右開きの表紙には男Ω。首輪だけ着けた柔らかそうな裸は草花やレース、リボンなどで上手く芸術的に隠されている。
 絶対にやってくれないだろうが、こういう装飾は白い肌のデスマスクにも映えるだろうな…。
 そんな事を何気無しに思いながら雑誌を手に取ってみたが。

「……」
 中身を開いて騙されたと思った。Ω単体で写っている写真はおそらく発情期中のものかαに発情させられているあられも無い姿がほとんどで、更にはαと思われるモデルとの愛情よりも支配されているかのような品の無い絡みの写真も含まれていた。少しでも表紙のように芸術的なものかと期待した自分が馬鹿だった。
「…所詮、ただの性欲雑誌か…」
 何の魅力も感じない。こんなもので無理に発散するより、デスマスクの単なる寝顔でも見ている方がずっと満たされる。
 シュラは手に取った雑誌を静かに戻し、何も買わずに店を出た。

 …その様子を、店内で気配を消して伺っていた男がいた。その男はシュラが去った後、成人コーナーに立ち入り同じ雑誌を手に取った。パラパラめくる手が、震えている。
――あいつ、何でこんなものぉ…!
 下唇を噛んで、手にしていた雑誌を雑に投げ戻した。店を出るとシュラの姿は見当たらない。男は辺りを見渡し少し歩いてから、静かに姿を消した。

ーー

 再検査の結果は、何も期待していなかった通りβのままだった。むしろ数値が下がっている項目すらあった。シュラ自身それによって自分が弱くなったと感じるわけでもなかったので、特に気にする事は無かった。

 デスマスクの発情期が近付き聖域から連れ出す日、巨蟹宮でシュラは再検査の結果をデスマスクに見せた。チラ、とβの記号だけ確認したデスマスクは「もう検査しなくていいんじゃねぇの」と低く呟いた。
 十二宮の入り口まで二人で下りて行く中、デスマスクはどこか機嫌が悪そうで静かにしている。少し久しぶりに会うので嬉しさが隠しきれないような素振りをされるかと思っていたが、また早めに発情期が始まってしまうのではと考え、辺りの気配を探り、デスマスクを庇うようにすぐ側を並んで歩いた。

 今回隠れ家に向かったのは夕方。着くなり自分の部屋へ向かったデスマスクは夕食まで下りて来なかった。シュラはデスマスクの様子を見ていたが、熱っぽさは無く逆に冷めたような雰囲気を感じていた。普通に体調が悪いのかもしれない。リゾットでも温めるか…とレトルトを箱から取り出して準備をした。

 夜、階段から下りて来る音が聞こえる。シュラは扉が開く音を聞きながら、温めておいたリゾットを皿に盛り付けテーブルへ持って行こうとした。

「……」
 振り向いてデスマスクの姿を見たシュラは、違和感に立ち止まる。デスマスクもそんなシュラを見てソファーへ向かわず、手に持っていたリゾットの皿をわざわざ自分で受け取りに来た。
「……そんな衝撃かよ」
 シュラの目の前で首を傾げてみせる。いつもより、しなやかに曲がる首。
「お前、調子悪いのか…?」
 呟いたシュラは空いた右手を思わずデスマスクの首に伸ばして、触れた。柔らかく、温かい。いつも首をすっぽり覆っている保護首輪を着けていない。いや、それくらいはシャワー前後などでたまにあった。ただ黄金の首輪だけは何があっても外す事はなかったのに、それすら身に着けていない。7年前に見たきりの、何も着けていない無防備なデスマスクの首元。
「首が苦しい、とか…」
「何も無ぇよ。だってお前βだろ?二人きりなら守る必要無ぇし。それと、こんな状態のままどっかに消えて行きませんっていう意思表示」
 そう言ってデスマスクは首に触れる手を払い、テーブルにリゾットを置いてソファーに座り込んだ。シュラは寂しくなった右手でスプーンを二人分掴み、後に続く。
「お前ってβのくせに首輪ある方が好きとか?」
 スプーンを手渡すとデスマスクに問い掛けられた。「別に…」と答えてから考える。首輪は首輪で似合っているとは思っていたが、好きかと聞かれればそこまでこだわりも無い、はず。
「そりゃあアレは窮屈だからよ、これからここに居る間だけ外すことに決めた。βに噛まれても問題無ぇし。成人過ぎてαに変異ももう無理だろ…」
「わかった。好きにすればいい」

 そこから食事の間は言葉を交わさず、時おりスプーンが皿を打つ音が響いて終わった。
 シュラが洗い物をしていてもデスマスクはソファーに座ったままで部屋に戻る気配が無い。片付けを終えてデスマスクの元へ行くと、声をかける前に直ぐ隣の席を手でパタパタ叩かれた。
――普段は向かい合って座るが何か企んでいるのか…
 怪しく思いながらゆっくりと隣に腰を下ろす。
「何か話があるのか?」
「ちょっと気になってる事がある」
 デスマスクはシュラの問い掛けに答えながら、スル…と手のひらでシュラの太腿を撫ぜて。
「お前ってさ、今までどうやってコレ発散してきた?」
 ぐぐ、と体を寄せ、シュラにもたれて軽く股に触れた。その手は呆気なく払い退けられる。
「…どうも何も…普通に、だ…」
「普通に、何を考えてしていた?」
「わざわざ何かを考えるとかは無い」
 無い?とデスマスクは明らかに不満気な声をあげた。
「お前エロ本見てただろ」
 冷めた低い声で問われる指摘に今度はシュラが「はぁ?」と不満気な声を漏らす。そんなもの持っていないし興味も無い。

「この前、本屋で見てたのオレ知ってるからな!」
 …そう言えばそんな事もあった。下心で見たわけでは…と思ったが、デスマスクの裸がこんな風に装飾されたら、という妄想は下心で間違いないのか。
「しかもΩのな!俺の前では健全ぶってるくせに、そんな趣味あったのかよ!」
「アレはたまたま…「良い相手になりそうな子でもいましたか?!」
 すぐ真横に迫るデスマスクに押され、シュラはソファーの肘掛けを跨いで床に片手を付いた。まったく何を怒りだしたんだ。
「待て、ちょっと落ち着け。また発情期が早まるぞ…」
「早まってもお前に関係無ぇし。可愛くねぇΩの淫乱な格好なんて見ても萎えるだけだろ?!」
 その言葉を聞いて、あぁ…と納得したシュラは反らしている体を戻しデスマスクを押し返した。

「お前、勘違いして嫉妬したのか」
 よくある漫画みたいなこと本当にあるんだな、と続けると拳が飛んできたので避けた。怒っているのか恥ずかしいのか、眉間に皺を寄せたまま目が少し潤んでいる。そうか…急に怒りだしたのではなく、コイツは最初からずっと怒って不貞腐れていたのか。

「はぁ…お前の可愛さは見た目ではなくて、そういうところだ」
 いや…自分に限っては見た目も好みなのかもしれない。完全に男顔のデスマスクは"世間的に可愛いという表現には当てはまらない"というだけで、誰しも美形を好きになるわけではないのだし。
 地上で最も美しいらしいアフロディーテは美貌を称賛されるもそれが恋愛に直結している雰囲気は、長年見てきたがあまり感じられない。憧れる者は多くとも、手にしたいと追い掛ける強者はいなさそうだ。白銀には対抗心を燃やす男さえいると聞いた事がある。デスマスクと同じくらいアフロディーテの事も側で見てきたが、よく考えればアフロディーテに対して可愛いと感じたことは無い気がする。怖い、はよくあるが。

「お前は股を開いてあられもない格好なんか見せなくて良い。それは気持ち悪いとかではなくて、お前はそんな事しなくても何気ない素振りや仕草が可愛いから十分満たされるんだ」
 先程とは逆にじわじわ押し倒されてシュラに覆い被さられたデスマスクはソファーの上で丸くなって不満気なまま顔を逸らしている。
「…じゃあ、俺の事も考えたこと無ぇんだな…」
 小さく絞り出すような声が聞こえた。それが一番聞きたかったことか、と愛しさが増す。
「ずっと大事に守ってきている仲間をそんな風に扱えるか?」
「そんな綺麗事、言わないでくれ…」
 デスマスクは顔を腕で覆って隠してしまった。デスマスクに何かをしたりされたり、という妄想で処理をする事は本当に無かったが、体が熱を持つ切っ掛けのほとんどはデスマスクで間違いない。だいたいは目覚めた時に終わっている。起きている時、生理現象に襲われても普段から自慰を楽しんでいるわけでは無いので処理自体は直ぐに終わる。ゆっくり妄想なんてするまでもないというのが真実だ。
「お前は俺に考えてほしかったのか?」
「もぉいい…」
 自分に都合が悪くなったのか殻にこもってしまった。そもそもデスマスクの事を考えてしていたとして、それを正直に言うと思うか?好きな相手からそれを言われると嬉しく思うものなのか?例えば、シュラの場合デスマスクが発情期を癒すために自分との行為を考えながらしていたら、嬉しいと思うか…?
「…お前は、発情期の時に俺とのことを考えたりした事はあるのか?」
「ンなモンあるわけねぇだろ!ヴァーカ!」
 思い至ったままの疑問を口にすると、デスマスクは急に声を張り上げてからそのままテレポートでシュラの下から消えてしまった。

「…まぁ、意識も朦朧とする程だし何か考える余裕は無いよな…」
 一人取り残されたソファーの上で座り直しながら"あったとしてもアイツこそ素直に言うわけがない"と思う。ならば、自分との行為を考えていたとしたら?そもそも自分がどうやってデスマスクを抱くのかも想像できない。キスはした。キスをして、多分あいつのことだから自分から要求してくるかもしれない。触れてほしいところを、自ら体を開いて見せて…ん?そこまで大胆か?発情期の最中は積極的過ぎたが、実際は恥じらうタイプではないか?

「……」
 そんな事、真剣に考えてどうするんだ。おそらく自分がデスマスクを実際に抱くという事には至らないだろう。何か事故が起きない限り。妄想したところで虚しいだけではないか?妄想だけでも満たされるものなのだろうか?それで満足できるくらいなら、デスマスクもわざわざ抱いてほしいなんて口にしないだろう。
 もし「お前の事を想ってした事がある」と言っていたらあいつはどんな反応をした?素直になって「俺も」と本当の事を言うのか、それとも馬鹿にされるか。その先にどんな展開があった?まさか「妄想じゃなくて俺を抱けば良い」とか結局言い出して…。

「…気を抜かないに越した事は無いな…」その必死さは可愛いだけだが。
 溜め息をつきながらシュラは立ち上がり、シャワーを浴びる事にした。

ーつづくー

拍手

2024
03,17
「ンンッ…!ふ、はぁっ…!ァアッ…」
 しゅらとキスした、しゅらにキスされたぁっ…
 すき、すき、もっと触ってほしい、もっと触って、おれに触って、舐めて、なめてくれよぉっ…!

 シュラが部屋を去った直後、それまで効いていた抑制剤の効果は一瞬にして打ち消されデスマスクは強い幸福感と快感に乱れていく自分が止められなかった。聖域で体中を打ち付けた痛みは全く感じず、中途半端に服をはだけ脱いで、触れて欲しいところに手を這わせた。でも今回はそれだけでは足りない。ベッドからずり落ちて、這いながらΩを癒す道具を求めて引き出しを開けた。
 抱いてほしい、抱いてほしいけど、ダメだって…。注射するって…。
 ジワっと涙を滲ませながら道具と潤滑剤を取り出す。薬が変わってからずっと使っていなかった。
 今日は苦しくて使うんじゃない、もっと…もっとシュラを感じたくて、使う…。
床に寝そべりながら躊躇いなくパクっと口に含んで、先端が上顎を撫でるように動かした。ジンジンしてくすぐったい。
 あいつは多分、おれにこんなことしねぇだろうから、せめてここを舌で撫でてほしい…。でもおれがしたい、って言えばやらせてくれるか…?性欲くらい、βでもふつうにあるよな…。あいつ今までどうやって処理してたんだ?…なにも考えない、が一番いい。ただの処理だ。女なら…十分嫌だが普通に考えればそうだろうから仕方ない。他の男だけは、特にΩは絶対に嫌だ。おれだって男なんかあいつの事しか考えた事ない!
 ずるっと道具を口から引き抜いて、舌で小さく舐めた。
 おれのこと、考えたことあるのだろうか?おれにこんなことされて、とか…。
 ふやんと口元を弛ませたデスマスクは、シュラが自分のことを想いながら処理する妄想でいくことに決めた。こんな事を考えられているなんてドン引きだろうとは思うが、Ωの底なしの欲望に抗えない。自分だって被害者なんだと言い訳がましく体を開いていった。



 隠れ家に来て4日目の夕方、シュラが居間のソファーに腰掛けてスケジュール帳を眺めながら、そろそろ夕食の支度を始めようかもう少し待とうか考えていた時。デスマスクが下りてくる音が聞こえ、そのままシャワー室へ入ったようだった。普段ならまだピークの最中だろうが、今回は早めに来たため抜けるもの早いようだ。
――二人分だな。
ピークの終わりを記入してスケジュール帳を自室の引き出しに仕舞ってから、シュラは夕食の準備を始めた。

 シャワーの後デスマスクは当たり前のように居間のソファーで横たわり、夕食が完成するのを待つ。そして小皿に少しだけ盛られたペンネ料理が配膳されるとチマチマ食べて完食し、シュラの手が開くのを待った。
「ピークは予定通り過ぎたな、キツくなかったか?」
自分用の夕食を食べ始めるなり、待っていたデスマスクに話し掛ける。
「今はもう薬飲めば問題無ぇし」
ソファーで横たわったままシュラの食事風景を眺めて答えた。
「初日、体もボロボロなうえかなり熱が上がっていたようだったが」
「あれは…原因わかってっから…」
シュラにキスしてもらった事は思い出すだけで体がジンとする。一人の時意外はなるべく思い出さないようにしたい。

「…で、言いたい事はあるか」
発情期を挟んでしまって保留にしていた、初日にデスマスクが聖域へすっ飛んでしまった事だ。デスマスクは色々と自業自得だが、迎えに来たシュラに傷を負わせ体力も使わせた。Ωを避けていたであろう聖域のαたちを惑わせ、争わせてしまった。雑兵に至っては何人か死んだかもしれない。
「俺はまたお前の発情期が落ち着いたら先に聖域へ戻ってみるが…サガから何を言われるかわからんぞ」
「…番の話、とか?」
「あの惨状を経験して、即当てがわれるかもな」
確かに一刻も早くΩのフェロモンを抑制するには番を持たせる事だ。自分はシュラの態度に不満を感じて試すような事をやらかしてしまったが、αを巻き込んでしまい本気で首を絞める事態になりそうである。それでも…
「…その話が出ても、嫌だ、と伝えてくれ…」
「言うは言ってやるが、それが通ると思うなよ」
シュラに頼んでもどうしようもない事は分かっているものの言わずにはいられない。忘れていたαに対する嫌悪感がデスマスクの中で急に込み上げてきた。
「なぁ、お前は知っていたのか…」
「何をだ」
「俺が聖域に居ねぇ時、αが部屋に侵入してたこと」
食事をしていたシュラの手が止まる。デスマスクの方をチラリと見た。
「お前さ、たまに俺の部屋整理してただろ?あれってαに荒らされた部屋を片付けてたって事か?だとしたらかなり前からそうだったんだよな?」
「…気付いていたのか…」
「だからこっちが聞いてるだろ!」
シュラは目を伏せ、あぁ…と低く唸るような返事をしてから食事を再開した。それを見たデスマスクの体から力が抜ける。
「…現場目撃しちまったらよぉ…無理に決まってんだろ…。怖いとかじゃなくて、なんかもうスゲェ嫌。お前が言い出せなかった気持ちもわかるけどさぁ」でも、全く何も言わないは無いだろう…。
おかげで衝撃が倍増している気がする。整理された部屋に気付きつつ聞きそびれていたデスマスクにも非があるとは言え。
「αのフェロモン食らってそんな事どうでも良くなるくらいグッチャグチャにされてもよ、好きでもないαにされてもよ、Ωとして悦ぶだけなんだろうなとか考えると死にたくなるぜ…」
ぼそぼそ呟く言葉を俯き気味で聞いていたシュラは、そっとフォークを置くと静かに語りかけた。
「…αへのマイナスな感情を与えず説明することができなくて、結局お前に伝えられないでいた。まだ発情期の症状が不安定だったのもあって余計な不安感を抱かせたくなかったんだ…が、早く正直に話すべきだったな。すまない」
「もういいけどさぁ、そんなだからこれから俺にα薦めるのはやめろよ?」
仕方ない、という表情を見せてから食事を終えたシュラが立ち上がりシンクへ向かう。デスマスクは洗い物をする姿を横から眺め、水の音に負けないよう声を張って自分が気になっていた事を聞いてみた。

「お前ってさ、オレが消えたのいつ気付いた?」
「そもそもいつ消えたのか定かではないのだから、早いか遅いか俺にはわからん。気配が消えていることに気付いた時、隠れているだけかと森も見たがどこから入っていったのかもわからんし見当がつかなかった。探っても動物がやけに集まってる場所があったくらいでお前はいない。コスモを辿ってみれば聖域の方から僅かに感じて、まさかそんな馬鹿な事とは思ったがお前ならそれくらいの馬鹿やってもおかしくないもんな」
…シュラが一気に喋る時は多分、何かしら感情が溜まっている時だ。途中でこちらが返す隙もない。
「既にフェロモンが出ているかもわからないし、単に忘れ物を取りに行っただけかもしれない。それでも俺に一言も無いのはおかしいよな?万が一の事を考えて聖衣で向かったが正解だった。生身でα黄金の攻撃を食らうにも限界がある。実際、聖衣を着ていても未だに体が痛い。もう4日目だぞ?」
「…あぁ、ぅん…負傷させて悪かったって…」
「いや、悪いばかりではない。十二宮へ着くなりお前のフェロモンに酔っているらしいαの青銅と白銀がいたのだが、ちょうど戦ってみたいと思っていたからそれは好都合だった」
「…へ…そうなのか…試せてよかったな…」
入り口付近で倒れている青銅と白銀は見た。金牛宮と白羊宮の間辺りから十二宮の入り口までフェロモン飛ぶなんてほんとオレっぴ最強Ω♡…だなんて言ってられない。
「ならば、αの青銅と白銀はβのお前でも倒せたんだ?」
「雑兵に比べると安易ではなかった。だからお前が巨蟹宮辺りにいる時点で俺は聖域に来ていたが、かなり時間がかかってしまったな」
確かにそれならアフロやサガと対峙してるより時間がかかっている。まぁ二人からは逃げただけだが、アルデバランなんかほぼ一撃で吹っ飛ばして終わらせたと言うのに。シュラ自身、αだろうと青銅や白銀に対して高を括っていた感はあるが"ちゃんと倒す"にはそれなりの闘い方が必要だったのだろう。
「そうか…来てたのか。全然感じなかったぜ、お前のコスモ」
「感じない方が危機感あって自分で努力できたんじゃないのか?」
「そりゃあオレサマは自力で抜け出すつもりだったぞ!」
「フン、俺が出てきた途端へろへろに力が抜けていったくせに」
あとは任せた、ぐらいにな。と言われると否定はできない。シュラが来てくれた事を認識した瞬間は泣きたいほど安堵して、まだ危機を脱していないというのに抱き上げられただけで自分はもう助かった気分でいた。アフロが追いかけて来るまでは。
「アフロの言い草では俺の登場が余程嬉しかったようだな。体力は無くてもフェロモンは無限に出せるものなのか」
「…んな事、俺にわかるわけねぇだろ…」
 洗い物も終えたシュラは再びソファーに戻りデスマスクの向かえに座る。

「馬鹿な事をした自覚があるのなら答えろよ?お前はなぜ聖域へ向かった?αを弄ぶためか?」
「……それ、言っていいのか」
「聞いている、答えろ」
真っ直ぐ見てくるシュラの視線が、まるで答えを知っているのにわざと引き出そうとしているようで、自分の口から言えと命令されているようで、その圧力はちょっとαっぽくて息苦しくなる。
「…αはどうでも良くて、お前が、ちゃんと…どこまで俺に本気になって、追い掛けて来てくれるかって…」
モゴモゴと聞き取りにくい喋りで本音を明かすと、溜め息が聞こえてきた。
「…やはり。なんとなくパターンは見えてきた。お前、俺のことを考えるとフェロモンが出るんじゃないのか?」
そんな恥ずかしい事、ハッキリ言わないでくれ。
「知らねぇよ!自分でわかんねぇんだし、お前もわかんねぇんだし!」
「アフロはわかっていた。おそらく…わかっていて、お前との番にも消極的なんだ」
理性が切れるとあんな状態ではあったが、素のアフロディーテは昔から仲が良くても友人関係を超える事はなかった。デスマスク自身にその気は無かったし、アフロディーテも…。多分、きっと、そう…思っているだけなはず…。俺がシュラを好きとか、最近の事だし…。まさかバレてて遠慮とか…。

「来年、俺が21になったらまた検査は受けてみるが…βで揺るぎなければ、お前もちゃんと考えろよ」
「…アフロにしとけ、って事言ってんのか…だからαとは
「誰とも番にならない覚悟が決めれるのなら、そうとは限らない」
どういうこと…とシュラの顔を見た。
「それは俺にとって、最善で最悪の結末だ」
囁くような、低く小さい声で告げられる。
もう、そういうのが狡い。とにかく狡い。そんな聖域や世界のこと何も考えて無ぇ発言。俺のためにそこまでできるって宣言と受け止めてしまうぞ。

「…βがΩを命がけで大事にするのって、やっぱ、そういう事だよな…?」
シュラからちゃんと引き出したい。自分をどう思っているのか。少し上目にジッと見つめて言葉を溢した。
「お前の場合、言うだけ無駄だろ。俺が使命感から大事にしてるだけ、とかグチグチ考えて結論は一生出ない」
もうそこまでお見通しでデスマスクの事を知り尽くしている。なんでわかるんだ。鈍感な時は演技なのか?ってくらい急に鋭くなるのは何なんだ。そしてシュラのように圧力を掛けたいと視線を送っても全く動じない。お前の眼力どうなってるんだ。
「俺がどれだけお前を追い掛けても、お前は満足しないだろう。一生、死ぬまで、ずっと、永遠に。それを望んでいる限り、お前の俺に対する願望は底無しだからな」
再びシュラがデスマスクを強く見返す。顔を逸らしていても視線を感じて合わせてしまう。そうなるともう、真っ暗な瞳に釘付けで…
「死を以って愛を知り、終わりを迎えるはずだった。なのにお前は死を終止符としない。死を迎えても満足できない欲望を抱え、俺を追い掛け続けている。やがて次の生へと繋ぎ、姿を変えても、性を変えても、俺を必ず見つけ出す」
「…なんの、話…」
「俺と、お前の話だ。死んでも終わらない。どれだけ愛を貪っても満足しない。それをずっと繰り返している」
「…俺は、知らねぇ…。じゃあ、俺に好きって言っても無駄だから言わねぇって事か?…俺の、せいになんの…?」
愛が足りない、いや愛され続けても満足できそうもない飢えには自覚がある。シュラから言葉を引き出したい今この瞬間のように。それはΩに人生を狂わされてから自分が変わってしまったのか、押し込めていた生まれ持った性がΩによって解放されたのかはわからない。でもそんな風に言われると自分が責められているようで、それが悪い事のようで、寂しさと苛立ちが同時に湧き上がってきて体がフルっと震えた。

「…いや、すまない…」
ハッと目覚めた表情を見せたシュラがソファーを立ち上がり、横になっているデスマスクの前に跪く。眉間に皺を寄せたデスマスクの頬に触れようと手を伸ばせば、片手で払われた。
「…俺は、お前が好き。お前は?俺のこと好きだと思ってんの?」
真剣な硬い声が響く。直ぐに答えないシュラの顔を見てデスマスクの口がへの字に曲がる。
「…αに渡したくないと思っている」
「それが限界?」
やっと答えたシュラの言葉には何も満足できなかった。そんな曖昧な事が聞きたいのではない。無駄と切り捨てないで、今だけでも満たしてほしい。
「…この前、キスをしただろう。お前はあれをどう思う?同情でしてやっただけと思っているのか?」
「なんでそんな頑ななんだよぉ!」
自分で考えても答えが出ないから聞いているというのに、言っても無駄だとか、わかってるだろう?とか、そんなことばかりで逃げないでくれ。発情期のピークは終わったはずなのに、抑制剤も飲んで効いているのに、体が熱ってくる。自然と涙目になって、多分、今、ものすごくフェロモンを出している気がする。
「ここは誰も居ねぇからいいだろ?!誰にもバレねぇじゃん!俺が好きなら言ってほしいし、キスして抱いてほしいんだよ!何でお前だけ…何で、こんな、好きになっちまったお前だけぇ!」
「俺と、お前の違いだろうな…。アフロならきっとお前が望むものを与えてやれただろう。だが俺はそれができない。だからずっと俺たちの間には一定の距離感があった。違うんだ。俺たちはどれだけ前に手を伸ばしても掴めない。見えない後ろに手を伸ばしてみて、初めてお互いを捕らえることができるのだと思う…最も離れている、山羊座と蟹座の位置関係のように」
「お前ほんっとめんどくせぇ!お前なんか好きになりたくなかった!もう一生βでいろ!一生βで一生俺の世話してサガにボコボコにされても死ぬまで俺をαから遠ざけてろ!」

 デスマスクは目の前のシュラを片手で何度も殴る。シュラはそれを避けず、体に受け止めて背後のテーブルがガタンと揺れた。シュラももうデスマスクを手放したくない事は自覚しているが、αのように正々堂々と表に出す事ができなかった。時々、自制できない気持ちの荒ぶりを感じ何かを口走っているというのに自分は殻を突き破れず、βの平凡さと弱さがこんなところでも感情を押し殺してしまうとは。
…いや、それなら、まだ良かった。
 本当は弱さとかそういうものではなく。ただ、デスマスクの意識を自分に向けさせ、わざと追い詰めさせているだけなのでは…?
 そう思い至ったシュラは無意識に奥歯を噛み締めた。心が、どこか落ち着かない。噛み合わせが悪くなっているのか犬歯が口内や下唇を傷付ける事が最近よくある。食事中など口の中を噛んでしまうことは昔からあったのに、なぜか最近それが気になる。αでもないのに、自分がデスマスクを傷付けてしまいそうな錯覚が…。

「ちょっ…やめろよ!」
 殴られていたシュラは不意にデスマスクの手を捕らえ、ソファーで寝ていた体をそのまま抱き上げた。
「責任を持って、世話はしてやる」
 そう告げて、デスマスクの顔を見る。怒っていたデスマスクはシュラを見上げた途端、強い視線に戸惑う表情を見せた。強気なデスマスクが息を潜める瞬間はゾクリとする。そっと顔を寄せて…キスくらい、してやろうと思えばできるが、しない。そう思うのはβの自制心なのか自身の駆け引きなのか。
「体が熱っぽいな。またフェロモンが溢れているのか…」
 かわいい体だな…と耳元で囁いて抱く腕に力を込める。その言葉にデスマスクはもう一撃シュラの肩を殴ってから胸元に赤くなった顔を埋め大人しくなった。より体が熱っぽくなった気がする。
 かわいい、なんだかんだ言って俺には敵わず必ず折れるデスマスクが。俺が、守ってやらなくては。
 シュラはゆっくり居間を出て階段を上り、まだ発情期中なので部屋の前でデスマスクを下ろした。

「望むものを与えてやれなくてすまない。上手く言えないが、お前の気持ちが無駄にならないよう努力はする。それを見ていてくれ」
「……」
「βとして、俺が死ぬまではお前が望むまま守ってやる。何を敵に回しても」
 その言葉にデスマスクは俯いたままシュラの体を引き寄せて抱き締めた。心を掴ませてもらえない代わりに、ギュッと抱き締めて心音を重ね合わせる。デスマスクの方が少し速い。しばらく無言で抱き合ってから、やがてするりと腕を外したデスマスクは静かに部屋の扉を開けた。

 扉が閉まるのを見届けたのち、シュラはゆっくり階段を下りて居間のソファーへ戻る。先程までデスマスクがいた場所に腰を下ろすと、なんとなくまだ温かいようで愛しさが込み上げてきた。
 デスマスクのΩ判定が出てから7年。聖域から言われるがまま従ってきたβとΩの関係に一つの区切りがついたと感じた。アテナが謳う愛と平和は同じ軸にあると思っていた。しかし、この選択は…。
「ハハッ…そう決めたからには、貫くしかあるまい」
 デカい口を叩くだけで果たせない間抜けな奴にはなりたくないからな。そう呟きながら、愛を選んだシュラはソファーに横たわって聖域の、世界の平和について考え始めた。

ーつづくー

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2024
03,16
突然フリータイムができたのでオメガバネタ絵を描こうと思ったのですが、一回思い付いたけどメモる暇が無かったネタが何なのか全く思い出せない…(゚Д゚)
外へ出掛ける直前に思い付いたんだよね…ストックしてあるネタよりいいやつ!と思ったけど全く思い出せん(笑)いや大したものではないけども。

なので、とりあえず半裸でも描きました(゚∀゚`)



全裸ではない…首輪してるから半裸だと思う…(・ゞ・)

Ωになると体より首を死守する感覚がわからん、とか思ってる初期のβシュラ。そりゃ首は生涯の傷になりかねないのはわかるけど、だったら体も守れよとか考えている。
シュラだから裸くらいいーの、という蟹心はわかってない。
若い頃からデスマスクの誘惑をかわしてきたシュラにはもはや一般女子の一般的な誘惑は全く効かないであろう(・ゝ・)

……「デスマスクの誘惑」ってだけで何か圧があるね…受け蟹思考のきゅるるん妄想ではなく、原作軸デスマスクで考えると(笑)このタイトルで本を出すと、ギャグ本なのかガチ本なのかわからないかもしれない(゚∀゚`)

表紙は"もしも「デスマスクの誘惑」という中世耽美主義絵画があったら"風で。描ける自信は全く無い(笑)表紙だけで1ヶ月かかるやつ。
中身は誘い受け&襲い受けデスマスクがとにかくひたすら塩対応のシュラを誘惑しようと頑張る本。最初はギャグでひたすら玉砕。デスマスクも別にシュラが好きというわけではなく悪戯感覚だったけどだんだんエスカレートしてR18に突入。
最後にはシュラに本気になってしまい、シュラに関わる他キャラ(アテナとか紫龍とかロスリアとかアフロとか)に嫉妬して嫌がらせを始めてしまう。そして、さすがに放っておけなくなったシュラからの問い詰めに、みんなの前で泣きながら告白させられる。
…いや、なんかだんだん可哀想なことに…(゚Д゚)
せめて、みんなの前で、は止めておこうか…。シュラに裏へ引っ張られて悪さを責められ、泣きながら「ごめんなしゃいオレっぴ本気の本気でお前がしゅきなのぉぉぉ〜!だからオレのことは嫌いでも他の誰とも付き合わなでくだしゃいぃぃ〜!」みたいな事を言いながら泣き縋ってるのが外まで丸聞こえだった…くらいの展開に…

正式にシュラに受け入れて貰えたデスマスクは心が満たされ豊かになり、悪さもしなくなった。シュラに愛してもらうほど、全く無かった色気も増してきた…。
「きれいなデスマスク」になったデスマスクを一目見たいと、聖域の色々な者がデスマスクに視線を向けるようになった。今やデスマスクはただ立っているだけでも人々を魅了してしまっている。
その「デスマスクの誘惑」を今度はシュラが許せなくなって、聖域を出て2人暮らしを始めて存分にデスマスクを独り占めしてラブラブめでたしめでたし♡

…という本…(・ゝ・)

描ける気はしないけど読んでみたいな。
復活後開始設定。基本ほのぼの?ギャグかな。
候補には入れておこう。(゚∀゚)φ

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2024
03,14

«円周率»

本日より3月中はほぼ夜しか創作時間が取れないのでペースが落ちる見込みです(゚∀゚`)
…と、言うほど普段も更新激しくないですけど(笑)4月から挽回できるか?

オメガバ文が更新できたら…と粘っていましたが、今の展開に難航中。スラスラ進む時との落差が激しい。数行に数日かかったり一気に数千字進んだり。〆切があるわけでもないのでじっくりいきます。

秋の大系、9月かと思っていたら10/27でした(・ゝ・)
祭りも終わってるので予定さえ無ければ出ようと思います(゚∀゚)ノ
なるべく出たい。特に他のジャンル買いたいとかもないですけど(笑)でも急にハマるかもしれないし!久々に会場ブラつくか?
新年度の年間予定表出てから夏まで様子見ではありますが、イベント直参は秋重視で考えております。6月は出れたら行くけど新作無いかもなので(゚∀゚`)

今までに、会場ブラついて何となく買ったら刺さって今でも残してる同人誌にルパン三世の「VS複製人間」本(要するに映画版)があります。カプ無し。完全に大手作家でもないごく普通の同人誌ですが、最後の峰不二子の台詞にやられてずっと残している。
実家帰省してたまに読むと、やっぱいい(笑)こういうの作れたらなぁとも思える一冊。
そんなファン作品を見つけると、あー同人って良いなぁと思いますね〜

そしてホワイトデー…今日まで頭から抜けてました(゚∀゚`)
バレンタインはネタを描くけどホワイトデーは描いた事無いかもしれないなぁ。だいたいバレンタインだけでネタが完結すると言うか、デスマスクが贈ると言うよりシュラが贈る(告る)パターンが多い。

リアルでもホワイトデーは忘れやすい(笑)友人の間でチョコをあげるにしても交換して完結してしまうもんね…あえてホワイトデーに…ってやらんもんね…。

昔3/14生まれの先輩のナンバープレートが「3.14」になっていて我々文系組は「そう言えば誕生日ホワイトデーですね」と言ったら、本人と理系組が揃って「いやこれは円周率でしょ」って返されたのは今でも忘れられない(笑)根本的に思考が違う(・ゝ・)

というわけでかれこれ15年くらいは会っていないであろう先輩、ハピバ!
そして過ぎ去りしアフロディーテ誕…おめでとうございます!ξ゚、ゝ゚・ξ
申し訳ない役回りばかりさせてしまってアレですが、なるべく今年もアフロ描こうと思ってはおります。
実現は未知数…。


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2024
03,08
オメガバ文、10万字無理です…(゚∀゚`)今で9万字くらい。
余分なシーンが増えに増えて、pixivにまとめる時にどこかごっそり削るかどうか。ブログではとにかく完走目指して書き連ねていくので長ったらしくなります。同じこと書いてる…と自分でも思う箇所があるのでそういうところはまとめる時に整理したい。

いやしかし、長い話を書くに1番の難関はストーリーがどうこうよりも確認で読み返すだけでかなり時間がかかる点(笑)なので序盤1万5千字くらいまでは何度も最初から読み直して修正してが安易でしたので完成しているのですが、それ以降がグダグダになっていくという。

当初の予定よりかなり早い段階で相思相愛になってしまっているので色々と元ネタから修正してます。そのせいで何か余計なシーン増えたんだな…。
あとは21歳と、22歳でシュラがα化→番、23歳十二宮戦、死後〜ラスト…。先は見えている…3月中完結は無理かもですが。そして本にするのも6月パラ銀無理そう(゚∀゚`)早割〆切が4月末か5月頭だと思うとちょっと微妙。8月?星祭りの時にはできてると思います。



定期的に絵も描かないと…と突然のコスパロ2。
古い作品ばかりでアレですが、我が永遠の聖典〜Bible〜なる田村由美さんの「BASARA」より柿人と銀子。いつも言うけど戦国ゲームではない(笑)最近だと実写化してた「ミステリと言う勿れ」も田村由美さんですね。

BASARAは漫画仲間と居酒屋で本気泣きしながらBASARA語りをしたという黒歴史を抱えるほど好きで、多分これを読まれると「五月雨の山羊蟹はほぼBASARAのパク…影響受け過ぎやん」と言われても仕方ないくらいにはBASARAです(・ゝ・)
いや山羊蟹がと言うより漫画の構成とか言い回しだな。コマ割りとか詰まったらBASARA、ドリフターズ、ドラえもんを確認する(笑)

柿人の銀子に対する責任感と愛の深さがそれはもう切ないし格好良い。淡路島で主人公が初めて柊と対峙するまでの流れがほんと柊のヤバさ(強さ)を煽ってきて好きです。こういう漫画が描けたら最高だけど私には無理だ(゚∀゚`)
ラスボスが誰かと言えばおそらく国王ではなく銀子なのだろうと思いますが、ただの悪女ではないし、そこで主人公と重なるのか!と実に柿人と銀子の関係がニクい。

山羊蟹を重ねたつもりはないけど、色々と山羊蟹話を描いていくうちに「あ〜山羊蟹の理想と似てるな」と思いまして。いやこれも山羊蟹と言うかシュラのデスマスクに対する理想が柿人、だな。

うむ、既に何を言っているのやら状態かと思います。語りがとまらなさそうなのでここまでにしておきます(笑)
それではまた。

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2024
03,07
ーデスマスクがいない。確かに強く抱いていたはずなのにー

そう感じて意識が戻った時、真っ暗な視界に自分は眠っていたのかと瞼を開ける。シュラは隠れ家の、狭い自室のベッドの上にいた。聖衣は脱がされている。起きあがろうとすれば全身に痛みを感じた。
聖衣を着ていてこの様か…
ゆっくり上体を起こしてベッドから立ち上がろうとすると、すぐ脇の床の上でデスマスクが倒れていた。
「デス?!おい、大丈夫か?!」
床に下りてそっと抱き上げる。頬に触れると熱っぽく息が荒い。そのままデスマスクを自分のベッドに寝かせた。
 この状況を見ると十二宮から戻った後にデスマスクはシュラを介抱したのだろう。途中で力尽きたのか、部屋に戻らず目覚めを待っていたのか…。シャワーを浴びたようで前髪は下りており、首には保護首輪を巻かず金の首輪だけ輝いている。腹が立つことも多いが、無防備な寝姿はただ愛おしくて、そっと頬を撫でた。

 デスマスクの気持ちが自分に向いているだろうということは気付いていた。シュラは自覚が無い頃からずっとデスマスクを見つめ続けているのだ、アプローチに本気で気付かないほど鈍感ではない。シュラ自身もデスマスクに好意を向けられるのは嫌ではなかった。βとしてΩの世話を任されてから、以前にも増してデスマスクの事が気になりデスマスクを思う事が増えたのは事実である。なぜデスマスクの事を考えてしまうのだろう?そんな鈍い事を思うのも今ではわざとらしい。シュラはもう心の中で自分もデスマスクに惹かれている事を認めていた。だからβとΩの関係が無くともデスマスクのために尽くしてやる事は苦にならないのだ。ただ、それをハッキリ伝えてやれない。Ωはαと番になる。βは捨てられる。デスマスクのためではなく自分のために好意をハッキリ伝えることができなかった。
 今回、とんでもない事をやらかしてくれたが自分の曖昧な態度のせいで引き起こした事故なのであれば、強く怒ることはできない。デスマスクは時々、自分に欲しい言葉を待っているような素振りを見せる。曖昧な、どちらとも取れる言葉しか掛けてやれないから、嬉しそうな顔をした後に不安を滲ませる事もある。そこまでシュラは見ていた。自分に好意を向けてくれるデスマスクが可愛い。手放したくない。でもどうしようもない…。サガから与えられる猶予はどれくらいだろう?その時が来たらデスマスクを送り出せるのか?デスマスクは従うのか?デスマスクが従うと決めて離れた時、自分は…デスマスクを許せるのか…?
「っ…」
無意識に強く噛んだ唇は犬歯が食い込み血の味がジワりと広がった。
――暗い、未来しか見えない…。
ベッド脇で床に座ったままシュラはデスマスクの手を握る。顔を寄せて、デスマスクの熱だけを感じ、何も考えなように目を瞑った。



「…ぅ…ゴホッ!ゴホッ!」
抑制剤の副作用もあり深く眠っていたデスマスクは不意に喉の渇きを感じ咳き込みながら目を覚ました。
「…んぁ?…」
ベッドの上にいる。自分の部屋ではなくシュラの部屋の…。いや、ここにはシュラを寝かせたはずだった。

 隠れ家の玄関先にテレポートした後、シュラは自分をキツく抱いたまま意識を失っていた。なかなか離してくれないのをどうにか抜け出し、聖衣は今の自分には重いので一つ一つ外し、それでも重い体を引きずって家の中に入れた。とにかく発情期の熱っぽさをどうにかしたくてシュラを居間の床に置いたまま自室へ抑制剤を飲みに行き、サガたちに触られた事が急に気持ち悪く思い出されたためシャワーも浴びた。シャワー室で座って、何度も泡をつけて擦った。次第に薬が効いてきて眠気に襲われながらも、濡れたタオルで簡単にシュラの体を拭いてやる。居間のソファーでも良かったのにすぐ隣にある狭いシュラ部屋までずるずる引きずっていくと、最後の底力でベッドの上へドサっと乗せた。
 ここまで全然起きない。眠るシュラの顔を見ながら、深いダメージを負わせてこんな状況なのに「今ならキスできるかも…」と馬鹿を超えた欲望がデスマスクに湧き上がる。何せ発情期の初日なのだ。
「キスをしたら、目覚めたり…?」
甘いお伽話の妄想にふわついてヘラっとニヤけたデスマスクはシュラに手を伸ばそうとしたが、自身を覆う熱っぽさと強い眠気に負けて頭から床に倒れ込み、そのまま意識を失った。その後入れ違いでシュラが目覚め、今の状況である。

「起きたのか?」
部屋の扉が開いてシュラと目が合った。途端に居た堪れなくなって視線を逸らす。
「自分の部屋へ行くか?明日にはピークが来るだろう?」
話し掛けられるとシュラの声が体に染みるようで肌がジン…と疼き、触れたい気持ちが芽生えてきた。我慢して、震えそうな指先をギュッと握り込んで口を開く。
「お前…大丈夫か?酷い出血は無いがかなり技を受けただろ…」
「普通に動いてはいるが、全身痛くて仕方ない」
「…だよな…」
シュラがベッド脇まで寄ってきてデスマスクを見下ろした。
「…全く、とんでもない事をしてくれたな」
その言葉にデスマスクは首を垂れる。
「さすが黄金のΩと言うか、あの状況で強姦されなかったのが不思議なくらいだ」
 今回デスマスクが無事でいられたのはシュラが助けに来た以外にもある。Ωのフェロモンが強過ぎたせいなのかαたちが誘惑フェロモンを使ってこなかった点だ。そうする余裕が無かったのかαたちは共食い状態で、争う事を優先していたようだった。
「いや、それを求めて行ったのなら助けてやった事が迷惑だったか?悪い事をしたな」
シュラの言葉に何度も首を振って見せる。
 助けに行った時、デスマスクが必死に抵抗しているのはわかった。腕に抱いた時、心底安心したように身を委ねてくれた事も。だからこそ命を張ってでも先ずはあの場から救出したいとシュラは努力した。

「…言いたい事があればピークが済んでから聞いてやる」
ベッド脇にしゃがみ、黙りこくっているデスマスクを抱いて部屋に連れて行こうと立ち上がった。
「?!…ァンッ!」
デスマスクは突然の事に甲高い変な声が出てしまったと慌てて口を手で覆う。シュラが顔を見ると真っ赤だ。
「…今更、そんな初心な事しなくても…もっと凄い姿をもう見せられてるんだぞ」
ククっと笑って二階の部屋へと連れて行く。デスマスクは眉間に皺を寄せ、熱っぽく潤んだ瞳でシュラを睨んだ。可愛いだけで全く凄みは感じない。

 狭いシュラの部屋から広い部屋、広いベッドの上に優しく降ろされる。
――今、手放すとこのまま数日シュラに会えなくなってしまう。
そう思ったデスマスクは背中から抜けていくシュラの腕に縋った。
――何か、何か引き留めるものは無いか…?!
縋るデスマスクの手をシュラがやんわりと退けようとする。
――まだ行かないでくれ!行くのなら…せめて…何か…
もう一度、強くシュラの腕を掴んで、

「きっ…キス、できねぇか…?」
「……」
「ほっぺとかじゃなくて、ちゃんと…。俺、色んな奴にキスされそうになる度にどうしても嫌で回避できてたけどさ、でももう次があるとダメかもしんねぇ…だから…最初はやっぱ好きな奴と済ませておきたいんだよぉっ…」
「……」
「前にも言ったが、αじゃなくてお前が良いんだよ…。お前はどう思ってるか知らねぇけど、Ωを助けると思ってでもできねぇかなぁ…?」
「Ωを、助ける…」
「そうだよ、お前βだからΩの発情期は癒せないって言ってたけどさ、鎮める事はできなくても俺の心はそれで癒されると思うんだよ!そう思わねぇか?だって、やっぱ、好きでも無ぇαより好きな奴の方が良いに決まってるだろぉ?!」
 熱っぽく潤んだ顔であまりにも必死に訴えてくるデスマスクが可愛いくて、愛おし過ぎて、あぁ、もうどうしようもないな。βにはフェロモンが効かないというのに、この魔性の男は…。
 以前ならばこの程度でも緊急抑制剤の使用を考えたかもしれない。ただ、自業自得とは言え先程の馬鹿な行動で怖い思いをした反動かもしれないと思うと、今は慰めてやりたい気持ちが勝る。これに応えるとデスマスクはどう受け取るだろう?デスマスクなりに逃げ道を用意してくれている言い様でもある。それとも、それほど必死なのか。

「…俺は、ちゃんとキスをしたことがない」
その言葉にどこか嬉しそうな表情を浮かべてから、戸惑う顔を見せた。
「あ…お前も初めては、好きな奴がいい系…?」
「…そこまでこだわりも無いな…上手くできる自信はない」
「上手いとか下手とか無ぇって!ちょっとやるだけだから!」
希望を見出したのか掴んでいるシュラの手を引いて、勢いのままやってしまえと急かしてくる。その場にしゃがみ、掴まれていない右手でデスマスクの頬を包んだ。

「…仕方ない…今回だけ、Ωのために」
低く、小さな声で呟くと「ん…」と短な返事が返る。そっと顔を寄せてみれば、せがんできたくせに顔を引いて逃げた。
「お前、唇切れてる…」
「そんな事、今はどうでもいいっ」
「んんっ!」
逃げたデスマスクの顔をグッと引き寄せて唇を合わせる。直ぐに離すとキョトンとした顔でシュラを見た。
…足りるわけ、ないよな…
「っ?!」
もう一度顔を寄せて唇を合わせた。今度は軽く食んでみる。普段は冷めた肌をしているが、さすがに今は温かい。気のない素振りを見せたところで欲張りたくなるのはシュラも同じだった。顔を離して、掴まれていたデスマスクの手を払い、肩を押してベッドに沈め覆い被さる。デスマスクの胸は大きく上下に揺れてどんどん熱が上がっているようだ。癒すなんてとんでもない。上がり続ける熱で壊してしまいそうだった。それでもシュラは再び顔を寄せてデスマスクの唇を舐める。つぐんだままの唇に指先を差し込んで、開けろ、と下唇を揺らす。ふわっと開かれた歯の隙間から指を滑り込ませて舌に触れた。熱い口内。デスマスクは切なそうに眉を寄せ、潤んだ瞳でシュラを見上げている。すり…と太腿を合わせてそこに右手を挟み込むのが見えた。
――限界、か…。
指を抜いて親指で下唇をひと撫でし、最後にもう一度唇を重ね合わせてそのまま舌を差し込んでみる。
「っ?!」
熱い口内への侵入を許されてデスマスクの舌を軽く撫でるように舐めた瞬間、びくんと体を震わせて息を漏らしながら何度か腰を捩った。デスマスクを見つめながらそっと顔を離していくと、薄く唇を開けて苦しそうなのに続きをねだるような素振りを見せる。離れていくシュラの顔を引き寄せようと伸ばしてきた左手は、指を絡めて捕まえた。

「ここまでにしよう。抑えが効かなくなっているぞ」
お互いこれ以上は歯止めが効かなくなりそうだ。既にデスマスクの理性は途切れそうで危うい。シュラ自身も体に僅かな疼きを感じ、息を吐いた。絡ませた指を撫でながらデスマスクから身を離す。
「最近はピークが3日くらいだな。俺は下で待っているから、頑張れ」
「…がまん、できねぇっ…」
「頑張れ、待ってる」
「しゅらぁ…」
「ここにいれば大丈夫だから、頑張れ。出てきたら注射だぞ」
これが本当の最後、と軽く触れるだけのキスをして、絡めていた指も解いた。デスマスクの熱は上がりきって息が荒い。この状態で残すことに心が痛んだが、これ以上は最後までいってしまう。
 去っていくシュラの背中をデスマスクは扉が閉まるまでずっと縋るように見つめ続けていた。

 シュラが扉を閉めた後、向こう側で鼻を啜る音が聞こえた。ギリギリまで耐えてたのか…それすら愛おしい。ゆっくり階段を下りながら自分の唇に軽く触れる。これが、デスマスクの味…。
「あれほど触れるのは控えていたというのに、呆気ないな」
βとしてΩには手を出さないつもりだった。手を出してはいけないと頭では考えていた。それは何故だった?いつかαに綺麗なまま引き渡す時のため?αと番になって、βのことなんか忘れ去られた時に自分が傷付かないため?…αと番になっても、フェロモンで虜にされても、忘れる事ができないくらい深い痕を残してしまうのは…?唇に触れていた指が、ふと犬歯に当たる。
「…いや、この醜さはあいつに向けるべきじゃない…」
このままだと油断すればデスマスクに求められるまま最後までいってしまいそうだ。向こうに気があるのだからそれが悪いとは思わないが、その先に何が残る?サガが動いた時、犠牲になるのが俺の心だけで済むとはもう…
――思えない…
「時代が違うというのに、結局繰り返すことしかできないのか…」
なぜ自分はβとなった?αを嫌っていたわけではなかった。ただあいつがΩになるだけで全てが解決したはずだったが…。いや、あいつは…性に惑わされない愛を、求めていた…?だから、α兵士の中でも副作用が危ぶまれる抑制剤を飲み続けて…Ωに嫉妬して、Ωを憎んで、αとΩの運命に憧れて…そして、
 ――ドンッ!
「っ…くそ、何だ?」
シュラは居間の扉にぶつかって後退りした。疲れてはいる。キスまでして呆けていたか。
「あのデスマスク相手にこんな風になってしまうとはな…」
何を考えていたのかも飛んでしまった。デスマスク…デスマスクのことは考えていた。いつもそうではあるが、ここまでくると手遅れだ。αに渡せる自信は全く無い。

「…シャワーでも浴びるか…」
デスマスクに触れて疼いた熱が、ほんの僅かであるのになかなか引きそうもなかった。あいつはまだ俺を想ってグスグス泣いているだけだろうか?一人にされて、もうとっくに純粋さも失って今は欲が求めるまま慰めているのでは…。
 シュラにはもちろん恋人などいなかったが、20歳を過ぎた成人である。経験は無くとも性欲は放っておいてもある。自ら進んで発散するタイプではなかったが、そのおかげで逆にどうしようもない時も度々あった。シュラは居間の扉には触れず、そのままシャワー室へと入って行った。

ーつづくー

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2024
03,05
 季節は秋も終わりに近付く11月。突然デスマスクのフェロモンが聖域で漏れる騒動はあったが、予定通りであれば発情期が来る時期となったため二人は隠れ家へ移動した。番探しの一環でデスマスクを移動させる事も中止になるかもしれないと危惧したもののそんな事はなく、サガからいつも通り許可は通った。

 聖域にいた数ヶ月でデスマスクに番候補として接触しようとする黄金聖闘士はいなかった。白銀も青銅も遠巻きに見る者はいたがさすがにαだからと気安くデスマスクに近付ける者はいなかった。
「オレっぴ想像以上に人気無ぇな」
「…自分で理解してるくせに、そんな事言うのか」
今回は朝から移動したため家に着くなり途中で買った昼食を二人で食べ始める。
「どうせ集られたらそれはそれで文句言うやつだろ」
「だけどよぉ、俺のフェロモンって実際どんなんか気にはなるんだよな」
「やめとけ」
低い声で強く言われるが無視して続けた。
「フェロモン使ってα同士を争わせたりできるんだっけ?Ωの存在は聖域崩壊の危機ってくらいだもんな。生き残った最強αこそ最強Ω様に相応しくねぇか?」
「外道だ、そうならないために俺がずっと動いてきてたんだぞ。それにお前は…そういう形だけの相手は嫌なんだろ…」
「俺はお前がずっと世話してくれるってんなら形だけαと番になっても良いって妥協しようかと思ったんだよ。でもお前がそれできねぇって言うし」
「無理だろ?αのフェロモンにやられたらお前の方こそ俺の事なんかどうでも良くなって邪魔になるだけだ!だから両立なんてできないと言っている!」
シュラは食事のゴミを持って立ち上がった。
「ハァ…」直ぐこうして雰囲気が悪くなる。
 デスマスクはため息を吐いて食事を続けた。純粋に好きなのにこんな事の繰り返しばかりだ。喧嘩するほど仲が良い、とは少し違う気がする。共感とか同調しないわけではないが、アフロに比べるとそれが薄い。でもそんなあいつがちゃんと俺のこと考えてくれてるって事実がなぜか嬉しくて惹かれてしまう。酷いことを言われても、その後フォローされるだけで簡単に見捨てる奴じゃないと信頼感が増してしまう。これがアフロであれば、好かれてもそれは当然、みたいな気持ちで終わる。アフロに対して失礼な事だが。

 食事を終えたデスマスクも立ち上がり、ゴミを処理してから部屋ではなく外へ出ようと玄関へ向かった。
「どこへ行く」
ソファーにいたシュラから監視官のように声が掛かる。
「ちょっと家の周り歩くだけだよ。またしばらく引き籠り生活だしな」
一緒に着いて来るかもと思ったが、シュラからの返事はなくソファーからも動かない。デスマスクは一人で外へ出て行った。

 ここがどこなのか知ってしまわないためにデスマスクは隠れ家の周囲を探ろうとはしてこなかった。こうして家の周りの森を、家が見える範囲まで歩くことはあるがそれ以上先へは進まない。進めばシュラが追いかけて来るかもしれない。それもちょっと面白そうだなと悪戯心が湧いた。すぐ険悪になる…と悩んだばかりのくせに、まさか自分はシュラに怒られるのが嫌ではないのか?それともどこまで迷惑をかけても許されるのか試している…?シュラが、どこまで自分に対して真剣なのか…。どれだけ言葉を貰っても、実感しても、足りない。足りなくて足りなくて、満たされても底無しの闇に吸い込まれていくばかりですぐにまた気に掛けてほしくなって…。
 森の中を進んで振り返ると、木の隙間からまだ隠れ家の壁が見える。もう少し、進んでも良いか…。一歩づつ踏み込んでは振り返って遠ざかる家の壁を確認する。光に反射して薄くなっているが、まだ見える。もう少し…。前を向けば木漏れ日も届かない、蒼く薄暗い森の闇が広がっている。

 いつしか風は止まっていた。木々のざわめきも聞こえない。空気すら動きを止めているような冷たい静けさ。デスマスクの息遣いと落ち葉を踏む足音だけがやけに大きく聞こえる。
"…踏み込みすぎたか…"
隠れ家はもう見えない。帰れない心配は微塵も無いし怪しい気配も無さそうだったが、これ以上進むのは良くないと感じて近くの岩に腰掛けた。シュラは追いかけて来ない。自分一人が世界から取り残されたかのように錯覚する。このままずっとここに居て誰にも見つからなければ…。そんな風に思ってみたが聖域はどんな手段を使ってでも最強のΩを見つけ出すだろう。逃げることはできない。

 そっと目を閉じて自分の中のΩに集中してみる。シュラが言っていた瞑想とやらはこういう事なのだろうか。コスモの、その内側。αの最高峰に並びながらもΩ性に目覚めた自分。なぜΩでありながら黄金の力を授かった?過去の因果か?宿命か?なぜシュラを想ってしまう?惹かれてしまう?βなのに、どうしようもないのに…。なぜシュラはαではない?望まなかった?せっかく俺はΩになったのに。番になれたというのに。お前がαなら、喜んで首を差し出すのに…。βとΩでは、どれだけ噛んでも一つにはなれないじゃねぇかよ…。

「ハァ…ヤバ…」
デスマスクは予定より早いのに少し熱っぽさを感じてきた。
「最近、早まるなァ…」
立ち上がり、フラつく体が木にもたれかかる。ぼうっとしていると、ふと視界を何かが横切っていった。
「…虫?」
どこから来たのか、蝶のようなものが3匹ヒラヒラとデスマスクの周りを飛び回る。目で追っていると今度はカサカサと落ち葉を踏む小さな音が近づいて来た。
「…動物?いたのか、こんな静かな場所に」
イタチなのかタヌキなのか全然違うのか、小さな生き物がデスマスクの足元まで来て匂いを嗅いでいる。
「…まさかお前ら、αじゃねぇよな…?」
冗談のつもりでハハっと笑えば、また遠くから低い木を揺らしながら何かがこちらに近付いて来た。
「え?マジ?」
今、自身からフェロモンが出ているとして、人間以外にも効果があるというのか?あのβ男には全く効かないというのに?隠れ家のあった方向を見てもシュラが来る気配は全く無い。じっとそちらを見つめていたデスマスクは次第に苛立ちとやるせ無さが込み上げてきた。
ーこのまま俺が消えたら、あいつどう思うだろう?
見捨てられるか、酷く怒られるか…。悪戯心では済まない。本気でシュラに迷惑をかける事になりそうだ。頭の中に警鐘が響くが好奇心がどんどん膨らんでいく。
ー今、お前が来てくれたら俺は何もしなくて済むのに。早く、何してんだ。なに安心して俺なんか信用して待ってんだよ。
隠れ家に戻って早く薬を飲むべきなのに、そうすれば治るのに。頭の中に浮かぶ場所はついさっきまでいた聖域で…。あ、巨蟹宮にも薬は置いてあったな。
ー俺、取り返しがつかなくなるかも…。
ヘラッと笑ったデスマスクは隠れ家で待っているシュラを想い、静かに森の中から消えた。デスマスクの居た場所には何種類かの虫や動物が集まり、喧嘩を始めている生き物もいた。



 つい1時間ほど前までいた聖域にデスマスクは再び戻ってきた。熱っぽいとは言えピークが来るのは明日以降だろう。ちょっと巨蟹宮まで行って薬を飲めば楽になる。誰にも会わなければ何事も無く散歩して帰るだけになりそうだ。フラッと揺れながら十二宮の階段を上り始めた。

 昼時で食事中なのかすれ違う人がほとんどおらず、巨蟹宮までの道のりでは気弱そうな雑兵の二人組を見掛けただけだった。おそらくβだろう、フェロモンなんか全く感じませんという風で、フラフラ歩く不審なデスマスクを視界に入れまいと階段の隅で息を殺しながら静かに下りて行った。

「…つまらん」
思いの外あっという間に巨蟹宮へ着いてしまった。調子が悪いと死面の唸り声が体に響いて吐き気を感じる。早く部屋に入ろうと私室へ続く扉の前まで来た。
「閉め忘れか?」
薄く、扉が開いている。
「アフロでも来てんのか?」
そのままヨイショ、といつもより重く感じる扉を開けて中へ入った。――瞬間、ここは駄目だと警鐘が響く。
 居間や寝室の扉が開いている。廊下にクッションや衣類が散乱していて…。ゾクリ、と痺れが体を貫いた。一歩、踏み出そうか迷う。いや、引くべきか?それよりも先ず、足が動かない…!布が擦れる音と荒い息が寝室から聞こえてくる。
――誰だ?!ーー
という叫びは夢の中のように声にならなかった。
「…ァ…ッ…ア…」
息が詰まる音だけが喉を通っていく。
――ギッ…――
扉の蝶番の隙間から、何か動いて来るのが見え…やがてデスマスクの前に姿を現した。

「ハァ…どうした?なぜお前がここに居る…?」
声を掛けられてもデスマスクは動けなかった。根元は黒く、毛先は金色の長い髪。着ている法衣は乱れ、雄の匂いが漂い、手には汚れたデスマスクの鍛錬服を持ち鼻に押し当てている。
――サガ…?!――
「…お前一人か?そんな状態で…山羊座はどうした?」
サガ自身も拒んでいるような、ぎこちない足取りでデスマスクに近付いて来る。
「あ…」
「来ては駄目だろう?はぁ…なんて良い匂いをしているんだ…残り香なんて比べ物にならない!あぁ、私を誘っているのか?」
サガが目の前まで来てデスマスクの首輪に触れた。
「ひゃっ…」
途端に嫌悪感が全身を巡る。
嫌だ、動け、動けよオレぇっ!!
サガの指が這い上がり、顎を軽く撫で、頬に触れて親指が下唇に触れる。少しヌメつく雄くさい手が何をしていたのか、考えたくも無いのに突き付けられる。
無理、無理だっ…形だけでもαと番なんて、やっぱ、無理だった…。

「あぁ…駄目だっ!全てを食べ尽くしたい…!」
キスされる…!!
瞼をギュッと閉じた瞬間、突然デスマスクは強い力でサガから引き離され私室の扉から宮の方へと吹き飛ばされた。
「ぅぎゃっ!」
やっと、声が思うように出た。

「なぜ君がここに居るんだ馬鹿者!シュラはどうした?!」
体を起こして見ると聖衣を着たアフロディーテがデスマスクに背を向けたまま叫んでいる。
「アフロ…「さっさと行け!走れ!離れろ!私ももう持たないぞ!」
必死の叫びにデスマスクはヨロっと立ち上がり、ヨタヨタと巨蟹宮を出ようと歩き出した。
「くっそバカ!!そんなので逃げれるか!いっそ私が食べてしまおうか?!」
Ωのフェロモンに耐え、牙を剥き出しにしたアフロディーテに向かってサガが殴り掛かってくる。
「どけ!魚座!そいつは私のものだ!」
「違う!あれは私のものだぁ!」
サガは髪を毛先まで真っ黒に染め、赤い瞳を光らせてアフロディーテと取っ組み合いながらも、ヒョロヒョロ転がり落ちるように逃げて行くデスマスクを睨み続けた。

「ひゃぁ…ひゃぁ…」
息をするにも上手くコントロールできなくて間抜けな音が漏れていく。岩に手を付きながら必死に下りているつもりだが全然進んだ気がしない。まだすぐ上でサガとアフロディーテがお互い罵り合っているのが聞こえてきて、αの本性剥き出しで怖いと言うか引く。それでもギリギリの理性でアフロディーテがサガを止めてくれている事には感謝しかない。やっとの事で双児宮を通過すると、下から数人の雑兵が上がってきた。その後ろにもまだ何人か続いているのが見える。
「最悪かよ…昼飯終わって、移動の時間かぁ?」
雑兵でさえβの方が珍しい。上ってくる時にαに出会わなかったのは奇跡だった。雑兵レベルのαこそ理性を保つ強さなんか持ち合わせていないだろう。
「突破…できるよな…?」
そんな事を考えていると雑兵たちがパタ、と足を止める。その場で話し始め、辺りを見渡し、そして顔を上げデスマスクを見た。
――来るか…!――
一人がデスマスクに向かって駆け出すと次々と後に続いていく。近くの岩場にもたれたままデスマスクは自分に触れようとしてくる雑兵を一人づつ殴り飛ばしていった。
「ひゃはっ!黄金舐めてんじゃねぇよっ!」
デスマスクとしては全然力が入っていなかったが、雑兵を倒れさせるには十分だった。シュラが言っていた、雑兵なんか問題じゃない、というのはコレか。αとΩ以前に圧倒的な力と体力の差がある。5、6人のグループを倒れさせては少し下りて、また次のグループを殴り飛ばし…を地道に続けた。金牛宮へ着く頃には最初に倒れた雑兵たちが起き上がり始め、デスマスクに向かって次々と下りて来るのが見える。
「まるでゾンビだな…」
振り返れば醜い本性を晒したαどもが追い掛けて来るなんて、なんとなくニッポンの黄泉比良坂にまつわる話を思い出した。もしあれがシュラだったら、自分は受け入れられるのだろうか。シュラになら、自分は逃げ出さず、捕まって、深く噛まれても…
 そんな事を考えていたら、何の傷も無いのにズクンと首筋に鈍い痛みを感じた。正面から向かって来る雑兵はもういない。ヨタヨタ足を進めるが熱っぽさが増してきて金牛宮を抜ける直前にデスマスクは倒れ込んでしまった。
…だめだ…ここで雑兵如きに犯られるわけにはいかねぇ…
すぐに起き上がったが、そもそも進みが遅かった。振り返ればもうすぐそこまで雑兵たちは追い付いてきている。
くっそ!このままもう一度全員殴り飛ばすか…?!
金牛宮の柱にもたれようと後ろへ下がっていくと、柱ではない何かにぶつかった。
ー…やば…ー
振り向かなくてもわかる。今、自分のすぐ後ろに何が現れたか。

――ドッ!

「ぎゃあああああ!」
その直後、デスマスクに向かって来ていた雑兵たちは全員凄まじい圧力に吹き飛ばされ壁に柱に宮の外にと叩き付けられた。
「…へへっ…こっわぁ…」
技を放った者がここまで本気の力を出す瞬間を見たのは初めてで、思わず笑ってしまう。闘いに於いてもシュラより遥かに冷静で、穏和な奴なのだ。
「やっぱお前も、ちゃんと黄金だよなぁ…」
振り向きたくないが、この場をやり切るにはずっと背を向け続けるわけにもいかない。ゆっくりと首を回して、逆光で顔がよく見えなくても誰だかわかる巨体を見上げた。間違いない、金牛宮の主、アルデバランがいる。
「正気…じゃねぇよな…息が荒いもんな…」
アルデバランは歯を食いしばって耐えているようだった。ギシギシと歯軋りが聞こえてくる程に。
「昼前に出て行ったはずだろう…なぜ、ここにいるのだ…?この匂いが、Ωのフェロモンというやつなのか…?!」
「そんなに良い匂いしてるのか?良かったな、体験できて…」
アルデバランを見上げながらふらり、ふらりと白羊宮の方へ足を進める。
あと少し…。こいつなら、耐えてくれるか?
黄金相手にコスモ無しの素手ではやり合えない。宮を抜けた瞬間にテレポートできるよう、無駄にコスモは消費したくない。アルデバランは眉間に皺を寄せ、少し前屈みになった。
「匂い、キツいのか?…悪いな…オレサマさっさと消えるからよ…」
アルデバランから視線を逸らさず、後ろ足で少しずつ下りていく。歩いているのに全然距離が開かない。アルデバランがゆっくりと近付いて来る。
「くっ…苦しい…デスマスク、離れないでくれ…っ!」
「やめとけって、オレっぴいない方が楽になれるからよぉっ!」
白羊宮に入る手前、突然突進してきたアルデバランの光速タックルを避けきれず、弾かれたデスマスクは近くの岩場に体を打ち付けた。
「ぅぎゅっ!」
直ぐに体を起こそうとしても遅かった。アルデバランがデスマスクの上にのし掛かりビクとも動かない。
「ぃやめろぉ!お前こういうタイプじゃねぇだろぉ!」
「自分でもわからぬ!お前がそうさせているのだろう!」
俺のせい?…あぁ、俺の、Ωのせいか…。全部、俺のせいか…。気まぐれで、フェロモン散らしながら戻って来たから…。俺、何がしたかったんだっけ…?あいつがいる隠れ家で大人しくしてりゃ良かったんだよな。あいつはフェロモン垂れ流しでも気付かねぇし。暴れねぇし。俺のこと襲ったりしねぇし…。いや、襲われたかったのか…。
アルデバランが顔を寄せてくる。キスは嫌だと顔を逸らすと首筋に顔を埋めて動きが止まった。
「…あるふぁの、匂いが…っ?!」
あぁ…サガに触られて、なんか、アレの匂いでも…
「おまっ…やっぱ駄目だっ…てぇっ!」
怒りを感じる。押さえ付けてくる力が強くなってきて、堪らずコスモを燃やし軽くアルデバランを弾き飛ばしたが、起き上がる間もなく足を掴まれ今度はうつ伏せに抑え込まれてしまう。
「ぎゃあっ!」
シャツの首元を強く引っ張られ布の裂ける音が聞こえた。後ろ首が晒されて保護首輪を編み上げている紐を強く引っぱられる。
「ぐえぇっ…」
苦しい!首が締まる!外し方はそうじゃねぇんだよ!犯される前に殺される…!この場を乗り切る為だけに一度コイツの魂をぶっこ抜くか…?!
どれだけ迷惑を掛けようとここで自分が死ぬのは嫌だった。その後魂を元に戻せなかったらどうしよう、と迷う暇もなく震える右手を握り、人差し指を立てて温存しておいた燃やせるだけのコスモを内側から…
「待てデスマスク!」
突然、デスマスクの体が宙を舞った。アルデバランもだった。落ちていく瞬間に綺麗な蹴り姿を見せている黄金聖衣を着た男が見えて…。その男が宙でもう一度脚を振り上げると、まともに食らったアルデバランは十二宮から離れた何処かへ吹き飛ばされていった。これでしばらくは時間が稼げるだろう。
「ぎゃぴぃっ!」
今日、地面や岩に叩き付けられるのは何度目だろうか。絶対どこかの骨は折れている。デスマスクが起き上がろうとすると、補助するように腕をグッと掴み上げられた。
「う…」
蹴り姿を見た瞬間にわかってはいた。今、突然現れた黄金聖衣の男と顔を合わせてデスマスクはギュッと下唇を噛む。その姿を見た男は何も言わず素早くデスマスクを抱き上げて白羊宮を抜けようと駆け出した。デスマスクも威勢の良さをすっかり潜め、身を委ねて大人しく抱かれた。

 のも束の間。白羊宮の中央辺りで突然降り注いだ赤い薔薇に男の足が止まる。
「遅いぞシュラァァアア!」
後方から艶のある低い声が宮中を響かせながら貫いていった。男はシュラと呼ばれ振り返り、デスマスクを抱く腕に力を込める。
「オマエの登場のおかげでなぁ、それはもう心地良い香りが増して増して!」
カツン、カツン、と余裕のある足取りで近付いて来る。薔薇といえばあの男しかいない。サガとやり合い、ギリギリでデスマスクを逃してくれたアフロディーテの理性はもう無かった。
「ほんとデスマスクは間抜けで可愛いΩだ。好きで仕方ないのが全く隠せてないのだよ!」
シュラが小さく足を踏み込ませるだけでもそれを制するよう直ぐに薔薇が飛んでくる。
「シュラよ、βのオマエに届かせようと必死にデスマスクがフェロモンを放つ度になぁ、私の飢えは増すばかりなのだ!この苦しさがわかるか?!さぁ早くΩを寄越せぇ!」
アフロディーテが向かって来るというのにシュラは動かない。いや、動けないのか?!
「やめてくれ!」
デスマスクが腕の中で身を起こしてシュラを庇おうと抱き締めた。アフロディーテはデスマスクの首を掴んで力任せにシュラから引き剥がし後ろに放つ。
「ぎゃあっ!…っだからどいつもこいつも叩き付けんな!」
アフロディーテの狙いはデスマスクだけかと思ったが、シュラと対峙している。やばい、と思った瞬間、黒い影が光の速さで後ろからアフロディーテをど突き倒した。シュラの縛りが解けたのか後ろにフラついてからデスマスクと視線が合う。
「ククッ!魚座如きに遅れを取るとは不覚!」
「オマエはノコノコ出てくるなぁ!仮面かぶって教皇宮で大人しくしていろ!」
アフロディーテの意識が邪悪なサガへ向かった瞬間、シュラはすかさずデスマスクの元へ駆け寄り、抱き上げて走り出した。妨げられなければ黄金で最も足が速い自信がある。
「くっそ!待てシュラァァアア!」
薔薇が降り注いでも今度は足を止めなかった。デスマスクに当たらないよう、少し背中を丸めている。白羊宮の出口が見えてきた。シュラが闘ったのだろうか?雑兵に加え聖衣を着た青銅と白銀聖闘士も数人倒れているのが見えた。
「っ…!」
シュラから時々衝撃に耐える声が漏れる。
早く…!
デスマスクは光よりも速くテレポートが繰り出せるよう、コスモを燃やし始め集中した。白羊宮を抜け、シュラは階段を蹴って跳び抜けようとする。降り注ぐ薔薇と黒い衝撃波。守るように強くデスマスクを抱くシュラが地に落とされる寸前、二人は遂に十二宮を抜け聖域から姿を消した。

ーつづくー

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2024
03,02
 発情期が明け聖域に戻ったデスマスクは巨蟹宮の私室でシュラから「何かあれば直ぐに呼べ」と何度も言われて別れた。
「仕事詰めのくせに、言われて直ぐに来れるような暇人じゃねぇだろ…」
先程、偽教皇の元へ戻った事を報告しに行ったが、直接デスマスクに番の事は伝えられなかった。
シュラに任せているつもりか?サガは二人の関係をどう見ているのだろう。
聖域では仲間以上に親しくしている姿は見せていないはずだ。ただ、村や街に出掛けた時の姿を目撃されていたら何とも言えない。サガ本人が動かなくとも、誰かしらに探らせる事は簡単だろう。もしもデスマスクがシュラに惹かれている事を知ったらどうすると思う?
「良い事なんか何一つ起こらねぇな」
ため息を吐きながら寝室へ着替えを取りに向かった。

「…そんなに散らかしてねぇつもりだけどなァ…」
発情期後、巨蟹宮に戻ると寝室や居間が整えられている事がよくあった。整えられていると言っても清掃プロの従者による仕業とは思えない雑さが残っており、衣服の畳み方などを見ればシュラがやったのだろうという事は隠れ家での生活を見ているため直ぐにわかった。発情期の4日前から連れ出されるようになって意識もハッキリしているので部屋の状態が悪いとは思えない。特に綺麗好きでもないシュラは何が気になって部屋を片付けてくれるのか。いつも会ったら聞こうと思いつつも聖域ではお互い忙しく、いざすれ違った時なんかはそんな事すっかり忘れてしまって何年も経つ。まぁそのうち…と着替えを持って浴室へ行き、翌日からの仕事に備えて早めに眠った。



 デスマスクは出掛ける際にαからの接触があるかもしれない、と内心は少し緊張しながら巨蟹宮を出るようになった。しかし元々遠征が多く、聖域に居ても黄泉比良坂へ潜っている時間が長いため他人と出会う事自体が他の黄金聖闘士よりも少なかった。そんな中、十二宮の入り口までテレポートで戻ってきた時、今から出掛けようとするミロが階段を下りて来た。普段であれば言葉を交わす事もなくすれ違って終わる。その通りデスマスクはミロを視界に入れていなかったが、向こうはデスマスクを見るなり「おい!」と声を張って呼んだ。
「…何だよ」
「αの番は見つかりそうか?」
ニヤけながら少しデスマスクを馬鹿にする物言いだ。
「そんなもの必要無い」
一言告げて通り過ぎようとしたが更に投げかけられる。
「お前がそんな風だからシュラが苦労するのだぞ」
「…それで良いんだよ」
シュラの名前を出されて思わず立ち止まってしまった。
「ハァ…βは大変だな。Ωの世話に加え番相手まで探してやらんといけないのか」
「俺が頼んだわけじゃねぇ」
「そうやってお前が何もしないからだろ?俺まで聞かれたぜ?Ωと番になる気はないか、とな」
…それは意味が違う。あいつが聞いたのはそういう事ではない、はず…。
「早く世話係から解放してやれ。俺ならば頼まれてもそこまで尽くせないぞ。だからと言ってお前の番になってやるのはお断りだがな!」
アフロディーテのように見た目が良いわけでもねぇし!など言いながら一人で笑っている。
…違う。最初は仕事としてだったかもしれないが、シュラはちゃんと俺のこと考えて、あいつの方が俺に尽くしたいから勝手に世話やいて。でも相手を探すなんて事は…。
不安を掻き消すようにデスマスクは声を荒げた。
「うるせぇ!クソガキ!お前と番うくらいなら死んだ方がマシだ!」
「だろうな、俺もそう思うぜ!…っぅお?!」
とことん失礼な奴!と近くの岩石を念力でミロに投げ付けると、浮遊して階段を滑るように上がって行く。まだはるか遠くから何かを叫んでいるのが聞こえてきた。
「鬱陶しいガキめ!」
苛立つままに吐き捨て、巨蟹宮の私室まで一気に滑り込んだ。

 …違う、シュラは俺の番探しなんかしてねぇ。俺に近付こうとする奴がいねぇか探ってるだけだ。だって、あいつはずっと俺を守るための行動をしていて…。
寝室のベッドの上で丸くなっていると、胸に支えるモヤモヤがじんわり広がっていく。急に不安が増していく。
オレはこんなに弱くねぇよ!と奮い立たせようとしても、支えられない膝のように崩れ落ちてしまう。
愛して、誰か、ちゃんと愛してくれよ…。
違う、オレの声じゃない!Ωの声っ…!
愛して…。
いやだ、シュラがいい。
誰でも…。
シュラがいい、シュラなら俺といてくれる!適当なαより俺を知ってる!誰でもよくねぇんだよぉ!

――ガタン!――

「?!」
不意に、私室への扉を叩く音が聞こえた。こんな時に誰だ、シュラ…ではない。

――ガタッ!ガタ!――

やめろ…誰にも会いたくない!
一度ぎゅっと体を縮めたデスマスクは扉の向こうを探る事なく、次の瞬間には勢い良くベッドから起きて黄泉比良坂へと逃げ込んだ。



 それからどのくらい籠っていたのだろうか。気持ちが落ち着き、黄泉比良坂に滞在し続けるのも疲れて巨蟹宮の寝室に戻ると辺りは真っ暗になっていた。
「はぁ…やりたい事が色々あったんだがな」
食事のため寝室を出て居間へ向かうと明かりがついている。電気の消し忘れか?と思って扉を開ければ、ソファーにシュラが座っていた。
「…なんで?」
「戻ったか…」
シュラはデスマスクを見るなり駆け寄って、首元の匂いを嗅いでくる。
「…何してんだ…」
「…βのくせにすまんな、やはり俺ではわからない」
「…何が?フェロモン?」
てか何でいるんだ?先に説明してくれ。
突然の事にぼんやりしていると、シュラに背中を押されソファーへ一緒に座らされた。
「お前、自分でわかって黄泉比良坂へ逃げたのか?」
「は?」
だから何の事かわからない。説明しろ。
「…今日、フェロモンが出ていたようだ」
「あぁ…そうなのか。発情期じゃねぇのにな…」
やっと説明されて何か自分に重大な事が起きたのだろうけど、それを気にするよりもシュラに会えた事が何だか嬉しく思えてきて気のない返事を返してしまう。呼んだわけでもないのに来てくれた事に、心の底へ沈めた不安感が和らいでいく。
「底辺のαどもが私室の扉まで集まって来ていた。通りがかったアイオリアが俺の仕事先まで来て知らせてくれたんだ」
「へぇ…アイオリアには効かなかったんだな」
「フェロモンは分かるようだがアイオリアはΩに惑わされぬようαの抑制剤を服用しているらしい」
αの抑制剤…そんな物も雑誌で見たことあったなと思い出す。無差別にΩを襲ったり、αのフェロモンを抑制しΩを惑さないようにする夢のような薬だが、合う合わないの差が激しく重い後遺症を患う事例も報告されているため推奨はされていない。強いこだわりを持つαが医師と相談を重ね、慎重に経過観察を行いながら服用するらしい。
「兄貴のこともあって面倒事には巻き込まれたく無いんだろ。あいつらしいぜ」
「俺とアイオリアで適当にαは散らしたが、ここへ来てもお前の気配が全く無かったので待っていた」
「ふーん。忙しいのにそこまでさせて悪かったな。発情期でなければ余裕でコスモ燃えるしアッチへ逃げれるから気にしなくていいぞ」
「本当に、大丈夫か…?なぜフェロモンが出てしまったのかが気になる」
直ぐ隣からデスマスクを見つめるシュラの顔が真剣で気恥ずかしくなる。
こういうのも素でそうなだけ?それとも俺だから?少しくらいなら、その気出してもいいか…?
顔を隠すようにしてシュラにもたれ掛かった。
「…わかんねぇよぉ。お前がいなくて呼びたかったんじゃねぇのぉ…」
自分でも気持ち悪い、甘えた声が出てしまう。
「……」
シュラの手がそっとデスマスクの肩に触れる。
やばい、怖い、何を言われる?
「…聖域では、やめておこう」
期待を捨てきれない、酷く、狡い言葉だ。もう言ってしまおうか?急に我慢できなくなって、顔を上げて、シュラを見て、静かな声を響かせて…
「お前さ、俺がαと番になっても愛してくれるか?」
お互い姿を瞳に映して見つめ合ったまま、シュラの指が軽く首輪に触れてきて、囁くような声が
「…そんな器用なこと、できないな…」
できない。
「…そうか、わかった…」
できない…。
ゆっくりシュラから身を離して再びソファーに沈み込む。
できないなら、αと番になっちゃダメだな…。
頭の中で反復した。
「デス、今夜ここにいても良いか?」
「……」
「駄目なら出て行くが」
「…ひゃあっ?!」
突然の提案に何を言われたかわからなかったが、やっと思考が追い付いてとんでもなく間抜けな声が出てしまった。
「αに侵入される事は無いと思うがまた集まって来られるとここから出れなくなるかもしれないだろ?黄泉比良坂への出入りはワープできたりするものなのか?」
「入った所からしか出れねぇよ。じゃねぇと十二宮で無敵になっちまうわ」
だよな、と言いながらシュラはソファーの隅に置いてあった雑誌を手にした。
「てかお前仕事は?いつからここにいるんだ?」
「仕事はもう明日でいい。昼過ぎからいたな」
…こんな夜まで何をしていたのか気になったが、それよりも自分は腹が減っていたので「泊まりたきゃ好きにしろ」と告げて冷蔵庫へ向かった。シュラがここにいるのは問題ない。むしろ嬉しい。だから空腹にもかかわらず1人分の食事をシュラに分けてやって量が減るのも気にならなかった。

 翌朝、いつも通りではシュラの仕事に響くかもと思い普段より早めにベッドから抜け出す。デスマスクは寝室、シュラは居間のソファーで一晩を過ごした。
「早いな」
やはり既に起きていたシュラがデスマスクを見るなり言う。
「俺は別に起きるのは遅くねぇんだよ。ベッドから出るのに時間がかかるだけ」
「低血圧だからか」
「そうそう」
本当のところどうなのかは知らないが、普段から血圧が低めなデスマスクは遅刻した時などに寝起きが悪い理由をそのせいにしていた。朝からたくさん食べる気もしないがシュラは食べるだろうと思って明日の分のパンも分けてやる。
「悪いな、飯のことまで考えていなかった。後で補充しておく」
「いいって、俺どうせ朝はそんなに食わねぇし」
「不規則だとフェロモンに影響するかもしれないぞ」
「ヘイヘイ気を付けます」
聖域では仲良くするな、と言われても境目がよくわからない。どこまでが幼馴染の範疇と見られるのだろう。そもそも仲良くしていたわけではなかったので、用事以外で並んでいるだけでも不思議に思う奴がいるかもしれない。いや、それもβとΩの関係がある今は気にしなくて良いのか…。
少し考えている間にシュラは食事が終わってデスマスクを見ている。
「…何だよ、終わったならもう行っても良いぞ」
「お前も殺りに行くだろ?十二宮の入り口まで同行してやる」
今日はテレポートするまでお見送りか。手厚すぎて感動するぜ。
「へー…ありがとさん。でもそのために忙がねぇぞ」
「知ってるからいい」
シュラが何を知っているかって、口ではそう言ってもこういう時のデスマスクは無駄な行動を見せないという事。その通りスムーズに食事を終え支度をしたデスマスクは、外にαが来ていない事を確認してシュラと共に階段を下りて行った。途中、シュラかアイオリアにでも殴られて階段に転がったままの雑兵がいる。
「あいつ死んでないだろうな」
「出血してないから大丈夫だろ」
いや内臓やられてたり…とか思ったがまぁどうでもいい。
「なぁ、フェロモン抜きで俺に接触して来るα見たら殴るの我慢できるか?」
「…本当に、フェロモン抜きで気持ちがあるのならな」
また中途半端な答え。
「…そんな事、お前にはわからんくせに」
「お前だって自分がフェロモン出してるかわからないのだろ?」
わからない。自分の匂いがいつ出ているのかも。αのはわかる。βにはそんな物ない。だからこそ、何にも惑わされていない事が事実であるこの気持ちが信用できるというのに。
「ミロにすら美しくないΩに興味は無いみたいな事言われてムカつくが、正直フェロモン抜きで俺が気になる奴は絶対に頭おかしいと思う。そうそういないだろ」
隣のβ以外に。
「フッ…Ωでも生きやすいように神が美形にしなかったのかもな。まぁわからんなりに、お前が嫌だと言えばどうにかしてやる。発情期でなければ自分で返り討ちにできるのだろ?」
白羊宮を抜けて十二宮の入り口が見えてきた。あっという間の一晩だった。じわり名残惜しくなって、少し意地悪な言葉が口から出てしまう。
「保護者のお前が番相手に認められるような、ちゃーんと俺の中身好きになってくれるようなαってアフロくらいしか居ねぇと思う」
「…俺もそう思うがな、まだわからないだろ」
その言葉にデスマスクは顔を上げてシュラを見た。
わからない…?
アフロディーテで良い、とは言わなかった。他の可能性なんてあるのか?それとも、何か可能性を滲ませている?
入り口に着いて「じゃあな」と少し笑って片手を振るシュラの八重歯がいつもより気になって見えた。

ーつづくー

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2024
02,29
突然のコスパロですが一度は描いてみたいと思っていたスレイヤーズのガウリナコスプレ山羊蟹。
剣士×魔導士の定番?



同人を読むほどではないけどスレイヤーズNEXTをリアルタイムで観てた頃ガウリナ展開が好きでした。スレイヤーズの良いところはリナがちゃんと強いところ(笑)水戸黄門みたいなお決まり展開でスッキリするのが良い。
男でも女でも基本的に受けがナヨってないというか、何かしら強い受けが好きなので自分の中では定番ですね。誰も狙おうと思わない受けを攻めが空気読まず真面目に攻め込んでいく感じが(笑)空気読めないからめげない、諦めない(・ゝ・)
そして折れる受けたち…(゚∀゚`)ンモゥ…バカ…
強いけど、その気になれば攻めをぶちのめせるけど、ちゃんと受け入れて可愛いとこも見せちゃう。っていう。

ガウリイは別にシュラっぽくない朗らかお兄さんキャラですが、若干アホ入ってるのは共通かもしれない…(・ゞ・)
ここにアフロを混ぜるならアメリアかゼロス…かリナの姉(人間世界最強人物だけど引退している)…姉が妥当か?アメリアだとゼルガディスは誰?になってしまうし(笑)

しかしスレイヤーズも30年前くらいになるのか…学年に1人はドラグスレイブ?とかの暗唱できる子いましたよね…。自分は「ふしぎ遊戯」の朱雀召喚の呪文を暗唱し、今も前半だけなら何となく言える(笑)友人と下校しながら唱えていた(笑)

ここぞと草ペン?草スタンプ?使ってみました。草だけ上手い(笑)自分の目が慣れないけど、使っていけば素材も馴染んで見えてくるだろうか。木のトーンは何故か気にならないんですよね。その差は何だろうなぁ。

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