2025 |
01,29 |
オメガバ本用のイラスト作成開始(・ゝ・)φ
あれだけR絵をメインに!と言いながら現在2枚とも健全(笑)
まぁ…扉絵だしね…。表紙も健全だし。
まぁ…扉絵だしね…。表紙も健全だし。
もう本文挿絵やめて描きたいラブシーンだけ漫画にする、でもいいのか?しかし時間がなぁ。
とりあえず扉絵2枚のペン入れ終わったら本文修正に入ります(゚∀゚)b
本文が仕上がらないと背幅わからず表紙も描けないので(゚∀゚`)
本文できたら試しに1部だけ注文してみようかな。表紙も文字のみだけど(笑)小説を印刷所に頼んだ事がないので、やり方合ってるかの確認含めて。イラスト部分と小説部分でファイルの種類が違うから漫画を入稿する時より面倒そうなんですよね。一発で上手くいくかな?
ほかに落書きも一部ペン入れ中。オメガバ関係の落書きは成人向けも混ざるのでpixivにはまとめない予定です。紙本とブラだけかな。
これも特殊性癖?の一つですしね…女装とか女体化は無いけど(寧ろそれ苦手な人がオメガバいく印象)男性妊娠要素が重大すぎる(笑)
正直妊娠要素も自分にはあまり必要なく、確固たる山羊蟹の証明にオメガバ、って感じですかね。女性の代用ではなく、でも女性要素が強くなってしまった(Ω)デスマスクをいかに男性のまま愛せるか…を表現する挑戦…?ありのままの君が好き、ってやつでしょうか。
正直妊娠要素も自分にはあまり必要なく、確固たる山羊蟹の証明にオメガバ、って感じですかね。女性の代用ではなく、でも女性要素が強くなってしまった(Ω)デスマスクをいかに男性のまま愛せるか…を表現する挑戦…?ありのままの君が好き、ってやつでしょうか。
基本的にデスマスクも妊娠したいとは思っておらず(本音は妊娠が怖い)シュラもそれを尊重する傾向です。αだと何の避妊もしませんけど(笑)一応薬を飲み忘れてないか確認してくれる。
オメガバ話ラストにある未来の話…あれも駆け足でわかりにくいから修正したいのですが、99%の人類が両性具有の世界です。まだ進化の途中で男性寄り、女性寄り、両性と個人差が強い。
シュラは男性が強く、デスマスクは両性。男であり女である完璧なダブルであるものの男らしさに憧れている。男らしい人に「憧れて」自分もそうなりたいだけのはずだったが、シュラに会ってからは男らしいシュラが「好き」に変わっていく。かと言って憧れは消えておらず女々しくはなりたくない。
デスマスクの奮闘が始まり、シュラはだんだん健気なデスマスクに惹かれてゴールインまでは順調であった。結婚もできた。の、だが…。
シュラは男性が強く、デスマスクは両性。男であり女である完璧なダブルであるものの男らしさに憧れている。男らしい人に「憧れて」自分もそうなりたいだけのはずだったが、シュラに会ってからは男らしいシュラが「好き」に変わっていく。かと言って憧れは消えておらず女々しくはなりたくない。
デスマスクの奮闘が始まり、シュラはだんだん健気なデスマスクに惹かれてゴールインまでは順調であった。結婚もできた。の、だが…。
未来の2人に何が起きたのか、話を書く機会は無いですが設定として…
完璧な両性で優秀なはずのデスマスクは妊娠できなかった(過去で拒否し続けた業)シュラ側の親族からシュラの体で子どもを作るか別れるかを迫られる。どちらも受け入れられないデスマスクは自分を見捨てないでいてくれるシュラと共に行方をくらます。知らない土地で細々と暮らしていたが、ある日「聖闘士」が2人の前に現れ…
というような感じ(゚∀゚`)
性差が無くなっても無敵にはなれなかった、という悲劇。ぐるぐるといつまでも2人は繰り返すのである。
性差が無くなっても無敵にはなれなかった、という悲劇。ぐるぐるといつまでも2人は繰り返すのである。
そう言えば、在庫終わった「宇宙塵」と「明けの告白」のweb再録を今年くらいに…と書いてますが早くて年末か更に来年になるかもしれません(゚∀゚`)
オメガバ本を作ったら、12月にあるかもしれない星祭りに向けてまた1冊作りたい(笑)
オメガバ本を作ったら、12月にあるかもしれない星祭りに向けてまた1冊作りたい(笑)
読みたい方には行き届いているので、他の作業の様子見つつできそうな時にスキャン作業します。2冊とも頁数あるから時間かかるんですよねぇ。
「月の焼失」に出て「明けの告白」にも出る謎のオリキャラ、デスマスクの祖母(笑)
一応、母方の祖母で青銅、サイコキネシス使えた、そんな感じです。聖戦の無い時代だったので普通に恋愛してデスマスクの母を産んでます。でも育てていない。
何となく聖闘士には系譜があるだろうと思うので、シュラの先祖にも聖闘士がいるだろうなとは思っている。父方だな(・ゝ・)キリッ
一応、母方の祖母で青銅、サイコキネシス使えた、そんな感じです。聖戦の無い時代だったので普通に恋愛してデスマスクの母を産んでます。でも育てていない。
何となく聖闘士には系譜があるだろうと思うので、シュラの先祖にも聖闘士がいるだろうなとは思っている。父方だな(・ゝ・)キリッ
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2025 |
01,19 |
やっと今年のシュラ誕をpixivに投稿できました(・ゝ・)b
連日の夜作業で寝不足だったため昨夜は寝るぞ!と早めに布団に入ったものの結局全然寝付けなかったっていう…(゚∀゚`)
何かイベント前日とかそういう事多いですよね。寝たい時寝れないやつ。今夜こそ寝る!
ここでちょっとベルばら描かせてもらってからオメガバ本の作業に入ります(゚∀゚)ノ
2月が短い事を忘れていました…が、パラ銀出れなくなったから3月もギリギリまで作業しよう。
本ではありませんが「年中折りたたみミラー」が在庫終了となりました(∩゚∀゚)
手にしていただいた方ありがとうございます!最後の1個は明日発送しますね。
シュラ誕盛り上がり報告もありがとうございます(笑)
同じ誕生日良いですね!うちの家族の山羊①は「おめでとう」と言っても逆に「うるせぇ」とか言われます(゚∀゚`)山羊②も自分の誕生日に無関心過ぎてプレゼントを聞いたら「いらない」と言われた過去が(笑)当たり前ですが山羊も色々ですね〜
周りの山羊様のおかげでシュラのネタや設定が豊富にできて助かっています(笑)(・ゝ・)
今年も山羊たちを大切にしていこうと思います(゚∀゚)b
連日の夜作業で寝不足だったため昨夜は寝るぞ!と早めに布団に入ったものの結局全然寝付けなかったっていう…(゚∀゚`)
何かイベント前日とかそういう事多いですよね。寝たい時寝れないやつ。今夜こそ寝る!
ここでちょっとベルばら描かせてもらってからオメガバ本の作業に入ります(゚∀゚)ノ
2月が短い事を忘れていました…が、パラ銀出れなくなったから3月もギリギリまで作業しよう。
本ではありませんが「年中折りたたみミラー」が在庫終了となりました(∩゚∀゚)
手にしていただいた方ありがとうございます!最後の1個は明日発送しますね。
シュラ誕盛り上がり報告もありがとうございます(笑)
同じ誕生日良いですね!うちの家族の山羊①は「おめでとう」と言っても逆に「うるせぇ」とか言われます(゚∀゚`)山羊②も自分の誕生日に無関心過ぎてプレゼントを聞いたら「いらない」と言われた過去が(笑)当たり前ですが山羊も色々ですね〜
周りの山羊様のおかげでシュラのネタや設定が豊富にできて助かっています(笑)(・ゝ・)
今年も山羊たちを大切にしていこうと思います(゚∀゚)b
2025 |
01,12 |
シュラハピバ!(・ゝ・)
絵は1枚とうに完成しているのですが、その絵を描きながら短い話が湧いてきて勢いのまま漫画を描き始め、この様です(゚∀゚`)
今年も間に合ってません(・ゞ・)でも張り切って熱が入り過ぎたという事で一つ…
おそらく山羊座期間中には出せるのではないかと思います。
予定では新規絵1枚、新規漫画8頁、新規チマ漫画1〜2頁、ほか落書き再録となります。
漫画はシリアス。頁数の割に大コマ&人物少なめの超低コストで描いてます。
急遽こさえた感強いですが、何気にシュラデスの創世記…いや言い過ぎた…2人の「始まり」についてちょっと描いてみました。諸説ある一つとして読んでいただけたらと思います(笑)そういう感じの話です。繋がってるわけではないけどオメガバ話とも何となく連動しています。
たまたまですが、8年ぶりくらいにお酒でも飲もうかと買いました(゚∀゚)
この後原稿しながら飲みます(笑)シュラバだしね!
〆切気にしてないから修羅場とは思ってない(笑)ぐでぐで漫画描きながらシュラ誕の夜を過ごすのも乙なものではないかと。
漫画完成を優先して落書きすら用意しませんでしたが、皆さまも良きシュラバナイトをお過ごしくださいませ(・ゝ・)ノ
絵は1枚とうに完成しているのですが、その絵を描きながら短い話が湧いてきて勢いのまま漫画を描き始め、この様です(゚∀゚`)
今年も間に合ってません(・ゞ・)でも張り切って熱が入り過ぎたという事で一つ…
おそらく山羊座期間中には出せるのではないかと思います。
予定では新規絵1枚、新規漫画8頁、新規チマ漫画1〜2頁、ほか落書き再録となります。
漫画はシリアス。頁数の割に大コマ&人物少なめの超低コストで描いてます。
急遽こさえた感強いですが、何気にシュラデスの創世記…いや言い過ぎた…2人の「始まり」についてちょっと描いてみました。諸説ある一つとして読んでいただけたらと思います(笑)そういう感じの話です。繋がってるわけではないけどオメガバ話とも何となく連動しています。
たまたまですが、8年ぶりくらいにお酒でも飲もうかと買いました(゚∀゚)
この後原稿しながら飲みます(笑)シュラバだしね!
〆切気にしてないから修羅場とは思ってない(笑)ぐでぐで漫画描きながらシュラ誕の夜を過ごすのも乙なものではないかと。
漫画完成を優先して落書きすら用意しませんでしたが、皆さまも良きシュラバナイトをお過ごしくださいませ(・ゝ・)ノ
2025 |
01,05 |
3/9のパラ銀に直参できるかもと思っていましたが、ピンポイントで予定が入ってしまったため参加できず(゚∀゚`)残念。委託に出すかどうしようかというところです。
「深淵」もこの日合わせにするのは考えなくなったのでイラストとか漫画増やせるかも?とは言え3月は忙しそうなのでどうかな。
直参は4月以降にまた検討します。予定出てるのは初秋頃の大系だけかな。無理そうなら通販でお願いします(´・ゝ・)
「深淵」の加筆修正"前"版(要するにブログと同じ)をpixivに出しました(゚∀゚)
webイベントの度に公開と非公開を繰り返していましたが、せっかくブクマ頂いていたのでひっそり残しておこうかと。
修正後とどれくらい字数が変わるかとかもわかりますしね(笑)
ちょうど紅白も出て話題になったようですが、ちょっと前から急に聴きたくなって聴いているB'z。昔のベストアルバム持ってるだけで曲は全然詳しくないけども、山羊蟹に推したいのが「love me, I love you」
シュラデスのカップル曲と言うよりはお互い相手を愛するための問答…今の自分から変わらないと!っていう、両片想いの矢印が交わる直前みたいなイメージですかね(※独自の山羊蟹解釈です)
物語のクライマックスに流れるやつ(゚∀゚)どちらかと言えばデスマスク曲かな。B'zの知ってる曲ではこれが一番好きでもある。
物語のクライマックスに流れるやつ(゚∀゚)どちらかと言えばデスマスク曲かな。B'zの知ってる曲ではこれが一番好きでもある。
みんな大好き「LOVE PHANTOM」はストレートに重い(・ゝ・)重くてハッピー感はちょっと…。まぁ当てはめるならシュラ曲。
X-ファイルという超常現象系の米ドラマ、若い人はわからんよね…。何故かそれの主題歌。小学生の時に聴きすぎて年単位で聴いてなくても歌えてしまうくらいには好きでした。イントロ1秒で当てられる自信ある(笑)あのイントロからサビメロ生み出せるの意味不明で凄いとしか言えない。
B'zは普段聴く音楽とはまた違う勢いがあるので山羊蟹妄想も新鮮な気分になります(笑)
全然、作品には関係ないけどテンパランスの原稿描いてる時やけに玉置浩二さんの「田園」聴いてました。これも普段聴く音楽とは違うんですが安全地帯も含めてやっぱ歌が上手いしメロも良い。
そして先月は贔屓にしているユニットが3年ぶりくらいに新譜を出して、これまた山羊蟹に新しい風をもたらしてくれました(゚∀゚)bオメガバ話の最後を一気に仕上げれたのはその影響もあります。
歌詞が、というよりメロが良いだけで物語が開けていきますね。曲に合わせて2人が勝手に動き出してくれる。何もない状態から捻り出すのではなく、音楽聴きながら話が出来上がるというパターンはわりと多いです。サントラ系でも。
小室哲哉さんも音楽の才能は素晴らしいなぁとglobe聴く度に思う。女性視点だから山羊蟹には違和感あるけど、でもニュアンスはとても良いんですよ。
「pefume of love」とか年中と盟全員にハマる(※個人の感性です)
と、何の話をしているんだ状態ですが、たまには趣味とは違う(けど好き)なものを摂取するのは新鮮で良いなと思う新年であります。
★最後に以下、私信(∩゚∀゚)σー
拍手コメありがとうございます!「きみに焦がれて恋わすれ」を是非(・ゝ・)φ
2025 |
01,01 |
明けましておめでとうございます。
あれだけ温泉に行きたい話をしていたのに結局レゴランド(笑:デジャヴ)いや温泉も諦めてない!
というわけで、山羊蟹も温泉ではなくレゴランドデート。
2人でロープ引いて上に行くアトラクションあるんですけど、それ光速で即クリアしてほしい(笑)もしくは「俺の方が速い」とか言って交互で競っちゃうとか。はたまた2人でわざと力入れずにゆっくり上っていくとか。とても描く余裕は無いけど、脳内でレゴランド本1冊仕上がってます(笑)
2人でロープ引いて上に行くアトラクションあるんですけど、それ光速で即クリアしてほしい(笑)もしくは「俺の方が速い」とか言って交互で競っちゃうとか。はたまた2人でわざと力入れずにゆっくり上っていくとか。とても描く余裕は無いけど、脳内でレゴランド本1冊仕上がってます(笑)
久々に絵が描けて、もう描きたいものが山ほどあるのですが即行で睡眠不足が生活に支障出るレベルのためここらで我慢します(゚∀゚`)我慢してペース抑えつつも描きます…(意地)
Xに上げたUNO絵のその後の山羊蟹とかそんな感じのを腐SNS用に描きたいし、マイスペも11月号のままだから更新したい(笑)
Xに上げたUNO絵のその後の山羊蟹とかそんな感じのを腐SNS用に描きたいし、マイスペも11月号のままだから更新したい(笑)
コメントやメッセージ関係、拍手など励みになります。表立って活動していませんがこんな所まで来て見ていただきありがとうございます!
今年はベルばら映画があってアンドレ×オスカルやロザリーも好きだから少しは描きたいと思っているものの、変わらず山羊蟹メインでいきますので一緒に楽しんでいただけたらと思います。
描きたいものどれだけ描けるかな?
描きたいものどれだけ描けるかな?
2024 |
12,30 |
「っ…!あなたは…!」
ボロ布がはためいてシュラの姿が露わになる。振り下ろされた聖剣は磨羯宮の裏手を破壊した時に比べれば優しいものだ。同格の黄金相手ともなれば回避も容易いだろう。それでもシュラの内に渦巻く衝動をムウに解らせるには十分だった。
「刺客がデスマスクだけで済むはずないですよね…」
十二宮戦の時、デスマスクが敗れた後に感じた怒りでムウはシュラが番であったことを知った。二人のことは子どもの頃の姿しか知らない。仲が良さそうには見えなかったものの、そこまで意外とも思わなかった。既に問題行動のあったデスマスクに対しても毛嫌いする事なく、仲間として普通に接していた…そうすることがシュラはできていたのだから。
「シュラよ、ムウの事はこのカミュに任せよ。この場まで崩壊させられると戦いにくくなってしまうからな」
カミュの助けを得てシュラが危うくムウを"本当に"討伐してしまう事は避けられた。冷静であるつもりでも諦め切れない想いに気持ちが悪くなる。アテナに対しても、デスマスクに対しても。二人を共に選ぶことができなかった生き方にも。
聖域に拳を向けた三人から流れ出た血の涙の意味は各々違っただろう。ただ、理由は何であれ聖闘士として忠誠を果たせなかったこと…結局はそこに帰結する。
シオンの計らいによりムウとの闘いをすり抜けたシュラは巨蟹宮に映し出された黄泉比良坂に入っても何も感じなかった。ここにデスマスクはいない。かつては興味を抱いていた異界の地も、彼のものではなくなった途端に価値を感じなくなっていた。
「お前はミロに抱いていた気持ち、残っているか?」
黄泉比良坂を駆け抜ける中、ふとシュラがカミュに声を掛けた。意外な言葉を投げ掛けられたカミュは答えるのを躊躇っている。
「好意があったのだろう?違うというなら変な事を言って済まないが」
「…いや…周りに察せられているのは感じていた。明確に言葉にした事は無かったが、それで合っている」
気恥ずかしそうに、控えめな声でカミュは答えた。
「好意はあった。その記憶もあるが正直、お前たちのような激しい感情は抱いていなかったと思う。しかし…私は自らの遺体が埋葬されていた墓から出てきたわけだが、弟子の指導をしていた時の鍛錬服も共に埋められていたのだ。おそらく死者に持たせた遺品だろう。その時、ミロに関する物が見当たらなかったことに気付いて後悔を感じた。堂々と自身の物を埋葬できるような関係になれなかったことに。そう思えた事が、答えだと思う」
「後悔、か…。良かったな、お前もまたミロに縛られて。悔いの残らぬ人生が送れる奴などいるのだろうかな」
たった今、巨蟹宮を操っている乙女座のシャカはどうだろう?殺してしまえばシャカでさえ聖闘士として悔いが残るだろうか?それとも全てを受け入れ輪廻の輪から外れていくのだろうか。
「デスマスクへの気持ちが枯れてもアイツに気を引かれる衝動を知ってしまうと、怖れるものが無くなるな。気持ち悪さの奥に妙な安心感がある」
「ふっ…そこまで想えるのも病的で心配になるぞ」
「クク…ハーデスのおかげで初めて聖闘士としての本領が発揮できそうだ。これが、最初で最後だろうがな」
例え聖闘士としての功績を残せたとて自分が改心したわけではない。山羊座のシュラは裏切り者としてとうに死んでいる。何度引き戻されたとしてもそこに修正の必要はない。
巨蟹宮を突破し駆け抜けて行く十二宮の中でかつての同志と向き合い、禁忌を犯し、視力を失った。そうなっても、どうせ借り物の体なのだからと問題にならなかった。光を失った視界はいつまた雪を踏みしめ、森に立ち入り、そして彼に出逢わせてくれるだろうか?…そんな期待さえ抱くほどで。
聖域の頂き、生前果たせなかったアテナとの対面。シュラに成長した女神の姿は何も見えなかった。強大な神のコスモを感じるばかりで真っ暗な視界に光を感じることはない。自分は救いようのない程深い場所にいるのだと悟った。
何も見えなくとも四方八方から感じるコスモで誰が何処にいるのかはわかる。それでもシュラの視界はアテナの"討伐"が果たされてもずっと、真っ暗闇のまま。
「…シュラよ…」
アテナ討伐成功を告げるためハーデス城へ向かう最中、おそらくずっと声を掛けるタイミングを計っていただろうサガの気弱な声が漏れ聞こえた。シュラは前を向いたままその呼び掛けに答える。
「こんな時に悔いるなサガ。あなたが事件を起こしたことは事実だが、なぜそうなってしまったのか深く考える必要はあると思う」
「その必要はもうない。全て自身の弱さが招いたものだ…。そのせいでお前たち三人を巻き込んだ挙句、αとしても醜い事を繰り返してしまった。すまない…デスマスクやアフロディーテに詫びる余裕もなく…」
「俺があなたを許せる言い訳は、同じ人間であったこと。あなたも神に使われただけだと」
弱々しいサガに対し、シュラは強く真っ直ぐ返した。顔を上げたサガは言葉の意味を受け止めると焦りを見せる。
「シュラ、その考え方は良くない」
「そうだな、あなたは自身を責めればいい。アテナのために」
なぜ堂々とそんな事を言えるのか、アテナへの忠誠心が強い清らかなサガには理解できなかった。かつては共にアテナを想い世界の平和を願っていたはずなのに、その心全てをも自身が壊してしまったのではないかと――
「俺はもう責めない。全てを背負う覚悟ほど神が持つべきであり、また受け入れてこそ人の神であろうと思う。それくらいの強さ、我が女神であれば持っているはずだろう?そう信じることこそ、俺がアテナに捧げられる真実だ」
シュラの何も映さない真っ暗な瞳がサガへ向けられニヤリと笑った。
「アテナに課せられた試練はサガだけではない。あれで終わりではないのだ。俺の事もそうだろう。最たるは史上最悪なΩの黄金聖闘士、デスマスクを受け入れられてこそアテナは完成されるのではないだろうか。それを信じたいと思う」
―それを見届ける事は、できないだろうが…―
間もなく夜が明ける。仮初の体に終わりが来たと、誰かが笑った。それを聞いたところでシュラは絶望を感じるどころか思わず笑みが溢れてしまう。
(とうに死んだ俺に終わりなど…やっと、始まりに向かえるというのに)
「シュラ!」
思いがけず掛けられた声に顔を上げれば、駆け寄る紫龍だった。姿は目に映らなくとも忘れられないコスモの一つだ。
―純粋で単純な小僧だな…―
シュラを気遣う声にまた笑みが漏れる。きっと、最後に生かされた事や今回の復活の件で何か勘違いをしているのだろう。
(俺はデスマスクと同じ正真正銘の裏切り者だ、今でもお前は俺とデスマスクの仇でしかない…)
番の関係が失われようとも、繋ぐ記憶が残る中でシュラは最後までデスマスクに寄り添い、灰となって消えた。
ーーー
聖域の外れには聖闘士たちの墓場がある。爽やかに晴れた日の朝、度重なる戦いで荒れた墓をミロとアイオリアが修復していた。ミロはカミュの墓標のそばに落ちていた鍛錬着を手に取り、丁寧に埋め直す。冥闘士たちとの戦いで甦ったカミュの体は今度こそ灰となり失われてしまった。
「フ…私の墓はそのままか。お前たちも一度は死んだのだから墓標くらい立てたらどうだ?」
「ただでさえ聖域の修復に時間がかかるというのに、そんな無駄な事してられるかっ」
ミロの背後にカミュが立っている。亡者ではない。ときおり吹く風に二人の髪が揺れている。
カミュは自らの墓標のそばに並んで立つ三つの墓に目を向けた。荒れていたアフロディーテの墓標も整えられ、シュラとデスマスクの墓標は立てた当時の綺麗なまま。
「結局、この三人だけは戻って来なかったな…」
「…面倒くさい奴らには女神もお手上げだ」
聖戦は終わった。数え切れない程の命を散らせて。女神アテナは地上に留まり、自らが不在であった十三年間を取り戻すべく聖域の復興に尽力している。偽の教皇令に従い死んでいった白銀聖闘士をはじめ、聖域の犠牲となったほとんどの聖闘士や雑兵は女神の声に耳を傾け奇跡の復活を遂げていた。
ただ、黄金の中でもシュラ、デスマスク、アフロディーテだけは応えがなく復活を果たしていない。
「復活したところでまたΩというのも拒否したい理由なのかもな」
一通り墓の整備を終えたアイオリアも三人の墓標の前まで戻って来る。復活を受け入れた者たちの第二性に変化は無かった。
「それでも番となって愛し合っていたはずなのに、不思議なものだ」
「そういうところが自分勝手なんだよ、あいつらは」
カミュの疑問にミロはいつもの調子で返す。
復活どころか、シュラとデスマスクに至ってはあの嘆きの壁の最終局面に於いても姿を見せなかった。聖衣は来た。しかしあれは黄金聖衣の意思。過去の正しい英霊たちが力を貸してくれただけの話。あそこに二人はいなかった。黄金聖闘士の全員がそれに気付いている。ただ、聖衣が嘆きの壁へ向かうのを雑兵たちも見ているし、その方が「裏切り者も心を入れ替え最後はアテナのために」と綺麗な物語になるから表向きは「全員が向かった」という話になっている。
「死んでまでも女神に迷惑を掛け続けるとか、そこまで"最悪"の称号が欲しいのかってよ」
アテナは特にデスマスクの復活を強く望んでいたように思えた。何度も交渉を試みる姿に、ミロたちもアテナが思うところを察せずにはいられない。結局、理想的な聖域復興の夢は不義理な三人のおかげで早々に崩れ去ってしまった。
復活拒否を女神に受け入れさせたデスマスクは、こんな形であれ初めて神に勝ったと言えるだろう。アテナならば強制的に復活させることもできたはずだ。しかし、それはしなかった。これはアテナがデスマスクに与えられる唯一の愛であり、復活拒否を受け入れた結果こそシュラが女神に期待した真実である。
「最初から山羊座、蟹座、魚座はいなかった…そう思った方がいいかもな」
「思ってもないことを言うな。彼らの存在がどれほど聖域にとって重要だったか…考えなくともわかるだろう」
カミュの言葉にミロは瞼を閉じ、アイオリアは小さく頷いた。
犯した罪は重い。桁違いの殺人をしている。それでも三人がいなければ聖域は間違いを犯さなかっただなんて、決して言えない。アテナの成長を待ったが故の犠牲者とも言える。
「…性に縛られない世界…そんなものが冥界以外にあるのかは知らないが、さっさとそっちで復活してりゃあ良いんだよ…そうすればアイツらも殺人なんかしなくて済むだろ」
「そうだな。そうする必要のない、憎むべきものの無い世界ならもっと違う生き方ができるだろう」
アイオリアは近くにある雑草の小さな花を摘み、三人の墓標にそれぞれ捧げた。辺りには既に誰かが捧げて枯れた花が多く積まれている。決して口にはしないが、皆がまたこの三人に会えたら…という期待は持っていた。その想いにも別れを告げる時が来たようだ。
沈黙の後、カミュはそっとミロの背中に手を当てて墓標を後にする。その後ろ姿を見てアイオリアは軽く微笑んだ。
「生き方は何も決められていないからな。それぞれであればいい。自分勝手とは言われるが、そう生きるのも容易くはないのだ。強い意志を持ち、βとΩを乗り越えたお前たちが示してくれた説得力は凄まじいぞ」
Ωに抗い、βに抗い、αに抗い抜いた先。その先が例え真っ暗闇の中であろうとも、神の救いに耳を傾けず自らを貫き絶望を知る二人が畏れるものなんて、もはや無いだろう。
――さようなら――
ーーー
20世紀に降臨したアテナが地上を去ると、築き上げた平和は次第に乱れ人類の争いは繰り返された。数世紀おきにアテナは降臨し乱れた地上を治めては去って行くが、遂にオメガバースは絶滅する。
αの遺伝子を注入され一時的に力を得た聖闘士たちが造られる時代もあった。しかしそれは神の意に反し自然の摂理に背く行為。再誕したアテナは成長と共にその実態を知り、直ちに止めさせた。こうして聖域の聖闘士までもが全てβ…男女性のみの姿になったのである。
オメガバース終焉の要因は戦争のみならず、戦地から離れた国では人工知能との疑似恋愛に傾倒した人々の増加も影響した。支配国は脅威となりうる国に対し、武力を使わず娯楽と情報戦線により数十年余りで一気に衰退させる事に成功したのだ。βの人口が増すとαやΩに対する注意喚起が増長した。「αやΩを守るため」を口実に、一見優しい世界は次第に彼らを閉鎖的な空間へ追いやっていく。フェロモンが危険だから、事件を起こさないように…前時代以上に強くそう刷り込まれて。自身の存在が他人を脅かさないようにと考えるαやΩの子どもたちは家にこもり、番を持たずに命の無い理想のパートナー像と楽しく生涯を終えていった。賢いαの大人さえ絶えてしまえば、生まれてくるαの子どもなど覚醒前から刷り込んで意のままにできる。もちろん例外もいたし、彼らの種を保護保存しようとする勢力もあったが時間の問題だった。じわりじわりと長い年月をかけてオメガバースは終わりを迎えたのだ。
それにより人類が大幅に減少した未来。人工知能に惑わされず人が人を好き合って血を繋いでいくという愛と神秘は、一部の上流社会でのみその重要性が教育され、また推奨された。その時代は進化の過程で男女の性別すらあやふやになっていた。
ここは人の本能に従い、勝ち残れる者たちが繋ぐ世界。
《入学早々だけど今日は調子悪いから休むよ、講義の内容だけまた送信しといて》
幼馴染の連絡を受けた銀髪の若者は、一人で学舎へ入って行く。この時代、勉強や教育は全て自宅に居ながら通信で完結できるのだが、学校という教育現場が失われたわけではない。ただその数は世界的にみても少なく、貴重な社交場として人気が高かった学校は各国トップクラスの学力を持つ者か富裕層しか通うことができなかった。
(休みかぁ…一人…でも良いけど…。あ、あいつ…いるなぁ…)
教室の扉を開けた若者は黒髪の体格が良い若者を見つけて声を掛ける。
「隣、座ってもいいか?」
「どうぞ」
チラ、と銀髪の若者を見た黒髪の若者は短く答えると、鞄を寄せて席を空けた。
「なぁ…お前男っぽいけど、男?」
「九割くらいな」
「九割⁈今時すげぇ、あの伝説の聖闘士ってやつになれるんじゃねぇの」
「あれは女寄りでもなれるだろ。それにお前も俺とそう変わらないと思うが」
「でも俺コレでダブルだもん、中途半端じゃねぇ?」
「べつに」
大学へ進学してまだ数日。二人が言葉を交わすのは初めてだ。機能するかは別として両性具有が当たり前となった時代にこの黒髪の若者はいかにも男性らしい容姿で目立っていた。銀髪の若者も背はすらりと高く顔付きも男性寄りだったが、どんなに鍛えても肉付きが女性っぽい気がして不満がある。家族も全員女性寄りであったため、男性らしい人物に興味があった。
「それ何読んでんの?…あ、人類学の教材?」
黒髪の若者はいつも一人で休み時間も勉強をしている。興味を持って彼に話し掛ける者たちは他にもいたが、二、三回言葉を交わして去るのが精一杯な感じだった。さっきも会話を終了させられた気がするものの、銀髪の若者は食い付いていく。
「昔は普通だったっていうオメガバース、何で絶えたんだろうな。今でも残ってる生物はいるってのにさ。そりゃ人類にとって不都合があったんだろうけどよ、αとΩの運命とか何か凄いよなぁ」
「…お前はそういうのに憧れるのか?」
そうだな、で終わるかと思いきや意外にも聞き返されてしまった。ちょっと嬉しい。
「そりゃあ、どんなもんか見てみたくねぇ?」
「αがΩを好きになるわけでもなく、Ωがαを好きになるわけでもないんだぞ。βを好きになっても結ばれないとか悲惨だと思わないか」
「まぁ現実的にはそういうのが多くて滅んだんだろうしなぁ…でもなぁ」
「フ…案外ロマンチックなものが好きなんだな」
軽く笑いが漏れる。緩んだ表情を見るのは初めてだ。なぜか嬉しい。
「おい案外、って…今日初めて喋って俺のこと知らねぇくせに失礼だろ!」
「ハハ…すまん、俺にはそういう所があるんだ。だからあまり喋らないようにしているんだがな」
「あぁ…ちょっと残念な奴なんだな…了解…」
この若者の情報を一つ引き出すことに成功した。失礼な奴…もとい不器用な奴らしい。自分の成果に自信が増してやっぱり嬉しくなる。
「今日はあのヴェルサイユ貴族みたいな奴は一緒じゃないのか?」
さらに初めて話題を振られた!だが内容が自分ではなく幼馴染の連れの事で何故だか胸がジリつく。あいつの方が容姿は良いしこいつと同じく目立つから、やはり気になるのか。
「ヴェルサイユ?旧フランス王国の?すげぇ古臭い例え方だな…金髪ロン毛のあいつは今日休みなんだよ」
「それで俺のところに?」
「あぁ、お前よく一人でいるし気になってたから喋ってみたくて」
「俺を?」
顔をしかめてなぜか全身を眺められる。
「お、おうっ…な、なんだよ!警戒すんなよ!」
「いや、俺を気にするなんて意外だと思っただけだ」
「そうか?あんたと喋ってみたい奴は多いと思うぞ。顔も体格も良いし」
「見た目か」
呆れたように溜め息を吐かれてしまった。何か気に障ることを言ってしまったのか、よくわからず焦りが出てしまう。
「お前さ、見た目はやっぱ重要だって!さっき自分だって俺のこと見た目で判断ただろうが!俺もヴィジュアル悪く無ぇけど、いつもいる連れがあんなんだから良さが霞んじまうんだよなぁ。あ〜モテたい」
「ククッ…」
笑った。正解かわからないが嬉しい。何で自分は今、こんなに振り回されてるのだろうか。
「あ〜バカにした笑い。どうせお前みたいな奴ぁ"好きな人が俺を好きでいてくれればいい"とか言うタイプだろ」
「フフ、そうだな。俺はモテる必要を感じない。好きになった奴が俺だけを好きでいればいい」
――それに選ばれたい――
言葉を聞いた瞬間、そんな想いが胸を突き抜けてどこかへ飛んでいった。自分に動揺してしまう。
「……っ……くそ、嫉妬するわ。その自信。αってのが実在したらそんな感じなんだろうな」
乗り出していた体を引いて少し距離を取る。食い付こうとガツガツしていた姿に恥じらいを感じた。
「ただの個性だ。そういう枠にはめてくれるな」
黒髪の若者はそこまで話すと再び勉強を始めてしまった。講義開始までまだ時間はある。これ以上は邪魔になるだろうか…そう思ってももっと二人の時間を引き延ばしたい気持ちに負けてしまう。
(だって、まだ誰も手がつけられないこいつを早く自分のものにしてみたい…!)
理由はわからない。でも"そうしないといけない"なんて思う焦りが単刀直入に出てしまった。
「…なぁ、お前って今までに誰か好きになったことあるか?恋愛って意味で」
「意識したこと無いな。恋愛相談は俺向きじゃない、他を当たってくれ」
切られてしまった。もう限界か?でも何故か、自分なら許してもらえるような気がして。
「あ〜いや、俺も無いんだけどさ、どうすりゃあ人を好きになれるのかわかんなくてよ…だから誰かが俺を好きになってくれたら楽なのになって。昔あったらしい"お見合い"とかで他人がくっ付けてくれるのとか、どうして廃れたんだろうな。人類激減したのって自由恋愛が難し過ぎるからじゃねぇの」
自分でも何を言っているのかよくわからなかった。恋愛相談を断られたのに無視して相談してしまった。これはさすがに駄目かもしれない。
「お前は家族から結婚を期待されているのか」
会話を続けてもらえた言葉に心底嬉しくなる。何だろう、もうずっとこいつの言葉に浮ついてばかりだ。
「ん〜…まぁ、オレサマも良いとこの子だし。強要はされないが考えねぇ?お前だってここに来てるって事は後継ぎ欲しい家系だろ」
「まだ学生だから先のことは考えていない。だからそういう話は他を当たれ」
(考えてない…)
それはこの先考える時が来るだろうという事で。
(その時こいつの隣に俺がいたら…)
銀髪の若者は考えながら、黒髪の彼をじっと見つめていた。期待が向けられる瞳を黒髪の若者も見つめ返す。灰色の、星の瞬きのような瞳。
「…なぁ、そんなに俺が気になるのか?」
「…気になる…」
黒髪の若者の瞳は真っ暗だった。見つめ返されるとその深淵に吸い込まれてしまいそうで…。
「俺のこと、好きなのか?」
全身がゾワンと震える。あぁ、言ってしまう。初めて喋る相手だというのに、何かが自分の内から引き摺り出されてしまいそうで怖いのに、捧げたくなってしまう。
「…好き…に、なったらどうする?」
どうにか耐えて、自然を装いながら視線を外した。
「俺がお前を好きにならない限り興味は無いな」
当たり前の答え。こいつは自分に興味がないのに、俺は何でこんなにも惹かれてしまう?
「どうしたら好きになってくれんの?」
「おいおい…本気かお前。喋るのは今が初めてだし入学してからもまだ数日しか経ってないんだぞ?俺はやめとけ、もっとお前に合う奴いるだろう」
「みんなそう言うんだよ、俺マジで悩んでんだけどなぁ…」
「…あの連れはどうなんだ」
「あいつも俺に気は無いし、それこそ"お前に相応しいのは別にいる"とか言いやがるし…仲良いけどそれだけ」
普段からよく聞かれる幼馴染との関係。やはりこいつも気になるのかと少し機嫌が悪くなる。
「お前は今日いつもの連れがいないから俺に構ってるだけだろ?あいつが戻れば俺なんか関係なくなるし、本気でモテたいのなら誰かと連むのをやめてみたらどうだ。隣に誰かいると声が掛けられない奴もいるだろ」
「あ〜孤高ってやつも憧れるよなぁ」
そこまで話した時に教授が入ってきて、初めての会話は終了した。それから銀髪の若者は「孤高ってやつやってんの」と言って学校では幼馴染と過ごす時間を減らした。
(確かに一人でいる方が話し掛けられやすい気がする…)
でも誰にも興味はわかなかった。だって、もう自分が話し掛けて欲しいのはあの黒髪の奴だけで…。
(…お前見てる?俺マジでお前の適当なアドバイス実践しちゃってんだけど…)
そう心で思いながら黒髪の若者を見掛ければニッコリ笑ってみせる。時々彼も呆れた笑みを返してくれるようになった。黒髪の彼は相変わらずいつも一人でいる。
その現状に満足していたある日、幼馴染と黒髪の若者が二人でいるところを見た。きっとすぐに会話は終わるだろうと思ったが、なかなか離れない。
(…あいつら、仲良いのか?)
よく知る幼馴染が相手だというのに、胸がジリジリと焼け付いていく。
(…まさか、あの野郎…!連れの方を狙っててわざと俺を遠ざけた⁈)
考えていたことの全てが逆だったというのか。そう気付いた途端に胸が押し潰されそうで苦しくなる。自分なんか最初から相手にされておらず、返してくれる笑みも馬鹿にされていただけだったかもしれない。恥ずかし過ぎて血の気も引いていく。
「…どうした、調子でも悪いのか」
いつの間にか二人の会話は終わっていて、立ち尽くしていた若者に黒髪の彼が珍しく声を掛けた。
「なんでも、ねぇ…」
声を絞り出して後退る体が捕らえられる。体温を感じる。本当なら嬉しいはずなのに、こんな時に、なんで。
「自分でわかってないのか?医務室へ行った方がいい」
「大丈夫だっつってんだろ!」
突っぱねて暴れようとしても強い力で抱き止められてしまう。だから、なんで今…!
「俺に興味無ぇなら放っとけよクソ野郎!望み通りお前の事なんかスッパリ諦めてやるよ!」
突然爆発した不機嫌の原因を喚き散らしながら、銀髪の若者は二人に医務室へと連れ込まれて行った。
「言いたいことは言い切ったか?」
二人への文句を吐き出して言う事が無くなった銀髪の若者は、ベッドの上で横になり反対側を向いていた。起きていても返事は無い。その隣で幼馴染と黒髪の若者が話を始める。
「…まぁ、この通り勘違いが暴走するほどこいつは俺が気になって仕方がないらしい」
「この子で良ければ引き取ってよ。私は全然構わないから。正直、君だって上手いこと言って私を遠ざけようとしたんだろ?」
「いや、そう考えたわけではないが…」
黒髪の若者は眉をしかめた。しかしそれを無視して幼馴染は銀髪の彼について語る。
「彼は昔からずっと恋愛に憧れていたんだ。だけど誰彼構わず好きになるような事は無かった。誰かを好きになりたいけど、なれないって。人工知能に理想を叩き込んでみればいいのに、それも違うからと実行しなくて。そんな彼が入学式の帰りに君の話をしたんだよね。まさかこんなに肉食系で攻めるとは思わなかったけど、まぁ案外可愛いもんでしょ」
背を向けたままでいる銀髪の幼馴染に視線を向けた。黒髪の若者もつられて彼を見る。
「何かさ、彼が君の話をした時に感じたんだ。あぁ、お迎えが来たんだ、やっと送り出せる、って。良い意味でだぞ?親でもないのに変だよな。でもそう感じたし、君なら預けても大丈夫かなって」
「いや、まだ引き取るとかそういう事までは考えていない…」
「君も強情だな。話し掛けてくる奴は他にもたくさんいるくせに全く気にも止めず、一人でいる彼を見つけてニヤつくくらいには下品な下心、漏れ出てるぞ」
返す言葉も無い黒髪の若者を残して幼馴染は「講義の時間だから」と医務室を去って行った。二人きりになった部屋。しばらく続いた沈黙を破ったのは銀髪の彼の声。
「…お前も見てたんだ…俺のこと」
「まぁ…どんなもんかと思ってな」
あれだけ幼馴染に突かれてもまだ本心を隠してぶっきらぼうに答える。でも嬉しい、黒髪の彼が自分のことを見てる事実が。
銀髪の若者は寝返りをうって黒髪の若者を見上げた。気付いた瞳がぶつかって、見つめ合う。
あの真っ黒な瞳の奥で何を考えているのかわからない、でも見られれば見られるほど体の芯がザワついて嬉しくなる。いつか、捕えられて呑み込まれてしまいたい…何だろうこの気持ち。
(俺はあいつのこと好き?)
――…好き…大好き…隠し切れない――
(俺たち結婚もできるしダブルな俺の体は施術がなくても子ども産めるんだぜ。お前になら抱かれたいよ、それがいい。ああもうボロボロになってもいいから全てを捧げてしまいたい…)
「好きになるって、考えてわかるもんじゃねぇんだ…」
ぽつりと呟いた言葉を聞いて黒髪の彼は苦笑いした。
「…そのようだな…」
低い声が静かに響いて、伸びてくる彼の大きな手が銀髪に触れる。撫でる。嬉しくて笑うと彼も微笑んだ。
――αやΩに頼らなくても、運命ってあるのかも…――
始まりを意識した。平穏の崩壊、底知れぬ愛の解放。
なんでも許されて叶う世界で俺たちはどんな悲劇に見舞われるのだろう。そしてやはり神を憎んでしまうのか?また最期まで付き合ってくれる?
知らないのに知っている。二人の結末を。いつも二人で、奈落の底を歩いて行く。
ーおわりー
********
1年間お付き合いいただきありがとうございました(゚∀゚`)どうにか年内に完結させる事ができたのですが、色々と辻褄合わせや話の回収、言葉の追加やらが必要な部分も多々あるのでここからまた修正を重ねていきたいと思います!
字書きの基本がなってないとも思いますので、できる限り良い状態に仕上げられるよう努力します。
本編は全文pixiv投稿予定。
紙本には時間が許す限り挿絵や落書きにペン入れしたり、可能なら漫画追加したり、本編を書くにあたり組み上げた設定(前世とか未来とか)など色々ぶっ込みたいと考えています。無駄に頁数増えてまたもマニア向けな感じになりますが、よろしければ手にして頂けると嬉しいです(゚∀゚)
ーおわりー
********
1年間お付き合いいただきありがとうございました(゚∀゚`)どうにか年内に完結させる事ができたのですが、色々と辻褄合わせや話の回収、言葉の追加やらが必要な部分も多々あるのでここからまた修正を重ねていきたいと思います!
字書きの基本がなってないとも思いますので、できる限り良い状態に仕上げられるよう努力します。
本編は全文pixiv投稿予定。
紙本には時間が許す限り挿絵や落書きにペン入れしたり、可能なら漫画追加したり、本編を書くにあたり組み上げた設定(前世とか未来とか)など色々ぶっ込みたいと考えています。無駄に頁数増えてまたもマニア向けな感じになりますが、よろしければ手にして頂けると嬉しいです(゚∀゚)
2024 |
12,27 |
予定では先週くらいに完結できたはずのオメガバ文、やっとシュラの冥界パートまで終わって残るはエンディング(と言うには長いかも…)のみ!
〆のラブシーンはやめておきます(笑)なのであと1回で終われる予定。
オメガバ文を終わらせるか、年末年始用のイラストを描くかで結構揺れてます…でもイラスト諦めてオメガバ文終わらせる方向にしよかな。で、一気にシュラ誕漫画も仕上げる、と。
もう何も考えていなかったけど、エルシド様ハピバ…(・ゝ・)
いつぞやもそうでしたが意図せず誕生日突入しちゃうね…。今年はマニバに新規絵もSSも出したからそこでプラマイゼロという事でお願いします。
ただ、エルシドとマニゴルドの描きたい新規絵イメージはあるので…描けるか?落書きならいけるか?毎度同じく時間次第で。冬休みが終わらないと夜の僅かな時間しかフリータイム無いからやりたい事が停滞する(゚∀゚`)
因みに自分はちょっと前に商業漫画でエルシド攻めの理想像を発見し、読み返しては悦ってます(笑)
〆のラブシーンはやめておきます(笑)なのであと1回で終われる予定。
オメガバ文を終わらせるか、年末年始用のイラストを描くかで結構揺れてます…でもイラスト諦めてオメガバ文終わらせる方向にしよかな。で、一気にシュラ誕漫画も仕上げる、と。
もう何も考えていなかったけど、エルシド様ハピバ…(・ゝ・)
いつぞやもそうでしたが意図せず誕生日突入しちゃうね…。今年はマニバに新規絵もSSも出したからそこでプラマイゼロという事でお願いします。
ただ、エルシドとマニゴルドの描きたい新規絵イメージはあるので…描けるか?落書きならいけるか?毎度同じく時間次第で。冬休みが終わらないと夜の僅かな時間しかフリータイム無いからやりたい事が停滞する(゚∀゚`)
因みに自分はちょっと前に商業漫画でエルシド攻めの理想像を発見し、読み返しては悦ってます(笑)
真面目と言うか口数少なくお堅い攻め漫画自体が少なめの世の中ですけども、その中でも自分が理想とするエルシド様の攻め方?恋のし方?をする攻めを見つけるというのがそれはもう狭き門でして、滅多にお目にかかれない。いや、他の電子書籍サービスに行けばもっとあるかもしれないけど…そう色々掛け持ちするのも面倒…(・ゝ・)
シュラ攻めの理想像はまだ多い方。狭き門の中でも。エルシド様的な攻めがねぇ…いないよねぇ。なので自分で考えるしかないっていう(・ゝ・)φ
いわゆる、少女漫画ではヒロインと結ばれない男がエルシド様でありシュラであると感じておりまして。いや失礼な話というより現実問題的に。商業のニーズ的に(笑)そしてヒロインになれないのがデスマスクでありマニゴルドなのである。マニゴルドはともかく、厄介者なデスマスクを存分に愛せる変わり者がシュラ。
調べた方はご存知かと思いますが、山羊座と蟹座は占い的に「相性が良い」というのは語弊があって「相性が最高の場合もある」っていう、そりゃ誰だってそうでしょう!(゚Д゚)な話なわけです。実際のところ。
忘れてはいけないのが「180度の関係」なので「相性が最悪の場合もある」わけです。
で、自分が思うにエルシド様(山羊B)とマニゴルド(蟹O)は多分相性悪くない。言い方悪いけど雑×雑(笑)
でもシュラ(山羊B)とデスマスク(蟹A)は多分相性が良くないと言うかデスマスクが放ったらかしに耐えられるかどうかだと思う(笑)あとシュラの思い込みが先行して「これでいい、これがデスマスクの為にもなる」で毎回「ソウジャネーヨ!(゚Д゚)」の喧嘩勃発。雑×丁寧。
結構、デスマスクの置いてけぼり感は意識しているつもり。他のキャラに対しては自分優位で動いているのにシュラにだけは置いてかれるっていう。で、シュラと付き合っていくには自分が合わせるしかないと折れている状態。
それがシュラの(・ゝ・)「なぜデスマスクのことが好きなのかワカラナイ(けど好きすぎる、こいつがモテなくて心底嬉しい←闇)」に繋がっており、デスマスクも「普段はムカつくけど何かシュラがめっちゃ俺のこと好きらしくて、そんな奴こいつしかないし嬉しいから好き(軽くて重い)」みたいになっているパターン。
それって幸せなのか?という疑問もありますが、そういう愛の形もあるという事で。
「モテなくて嬉しい」にシュラの深い怖い独占愛の闇がありますね…(・ゝ・)
いかん…エルシド様の話題がすぐに乗っ取られてしまう(・ゝ・(・ゝ・)
それがシュラの(・ゝ・)「なぜデスマスクのことが好きなのかワカラナイ(けど好きすぎる、こいつがモテなくて心底嬉しい←闇)」に繋がっており、デスマスクも「普段はムカつくけど何かシュラがめっちゃ俺のこと好きらしくて、そんな奴こいつしかないし嬉しいから好き(軽くて重い)」みたいになっているパターン。
それって幸せなのか?という疑問もありますが、そういう愛の形もあるという事で。
「モテなくて嬉しい」にシュラの深い怖い独占愛の闇がありますね…(・ゝ・)
いかん…エルシド様の話題がすぐに乗っ取られてしまう(・ゝ・(・ゝ・)
2024 |
12,17 |
«専用窓口より»
蟹記事をお勧めしていただいたので読んできました(゚∀゚)b
検索したら一発でした(笑)ありがとうございます!
たまーに星矢記事が出るのを見かける事がありますけども、蟹とは!
やっぱデスマスクは「実は良い人だった」よりも「悪いものは悪い」からこそ魅力的だと勝手に思っているため自分の二次創作でもその傾向が強いです。
何となく「実は良い人」で濁すと逆にダサくなってしまう気がして、シュラに関しても初期貫いて「知ってて悪に加担した」で良いと思うけどなぁという理想が二次創作で発揮されてます…(・ゝ・)
でも好みですよね。一般的には良い人でいてほしいと願う人が多くて何十年かけて色々と救済エピソードが追加されていったのだろうし。
自分の場合はLCの山羊蟹が追加されて余計に「シュラとデスマスクは悪のままでいい」と吹っ切れた感があります。聖闘士の鑑みたいな山羊蟹を描きたい時はエルシドとマニゴルドで良いのだから(笑)
それでも描く割合が圧倒的にシュラデスマスクという事はやはり元々の好みが「悪」要素あってこそなのだろうなぁと。寧ろ「悪」こそが二人を繋いだと言うべきか。
デスマスクの卑劣な面を正したいのではなく、それ込みで抱きしめてやる!くらいの(笑)
もうダメな感じ…(・ゝ・)キリッ
だから聖戦終わってもダラダラ二人だけの世界に引きこもっちゃうんですよ(゚∀゚`)
うちの二人はそういう経緯ですね。
またスペイン語も教えていただきありがとうございます!(・ゝ・(゚∀゚)ノ
最後に全体を修正する時、もうちょい調べ直して手直ししようかなと思います(・ゝ・)b
自分、単位の都合で1年だけ仏語とラテン語取りましたが全く身になっておりません…所詮は1年…
ラテン語は「思った以上に読みやすい」だけ覚えている(笑)
自身が歴史学をやっていたので山羊蟹漫画にもその雰囲気が隠し切れていません(笑)
英語もできないのに当時どうやって英語の文献を読んだのか意味不明ですが、学生時代の勢いでどうにかなったんだろうなと思います…若さは素晴らしいのです…
ただ好きなのは古代ギリシャでもなく戦争史でもなくアステカ、インカ、オルメカといった中南米の古代文明ゆえ、二次創作でも活用する機会は無い(笑)でも中南米を侵略していったのはスペインですからね…そういう意味でも攻めですよね、スペイン。
三大征服者コルテス、ピサロ、シュラ(・ゝ・)誤
先週「年内完結目標☆」と言った翌日に家族が持ち込んだ風邪で一家全滅し、自分は咳だけで元気ですが看病のため即行で目標崩れてます(゚∀゚`)
まぁもう少しで終わりには変わりないのでぼちぼちいきます(゚∀゚)ノ
検索したら一発でした(笑)ありがとうございます!
たまーに星矢記事が出るのを見かける事がありますけども、蟹とは!
やっぱデスマスクは「実は良い人だった」よりも「悪いものは悪い」からこそ魅力的だと勝手に思っているため自分の二次創作でもその傾向が強いです。
何となく「実は良い人」で濁すと逆にダサくなってしまう気がして、シュラに関しても初期貫いて「知ってて悪に加担した」で良いと思うけどなぁという理想が二次創作で発揮されてます…(・ゝ・)
でも好みですよね。一般的には良い人でいてほしいと願う人が多くて何十年かけて色々と救済エピソードが追加されていったのだろうし。
自分の場合はLCの山羊蟹が追加されて余計に「シュラとデスマスクは悪のままでいい」と吹っ切れた感があります。聖闘士の鑑みたいな山羊蟹を描きたい時はエルシドとマニゴルドで良いのだから(笑)
それでも描く割合が圧倒的にシュラデスマスクという事はやはり元々の好みが「悪」要素あってこそなのだろうなぁと。寧ろ「悪」こそが二人を繋いだと言うべきか。
デスマスクの卑劣な面を正したいのではなく、それ込みで抱きしめてやる!くらいの(笑)
もうダメな感じ…(・ゝ・)キリッ
だから聖戦終わってもダラダラ二人だけの世界に引きこもっちゃうんですよ(゚∀゚`)
うちの二人はそういう経緯ですね。
またスペイン語も教えていただきありがとうございます!(・ゝ・(゚∀゚)ノ
最後に全体を修正する時、もうちょい調べ直して手直ししようかなと思います(・ゝ・)b
自分、単位の都合で1年だけ仏語とラテン語取りましたが全く身になっておりません…所詮は1年…
ラテン語は「思った以上に読みやすい」だけ覚えている(笑)
自身が歴史学をやっていたので山羊蟹漫画にもその雰囲気が隠し切れていません(笑)
英語もできないのに当時どうやって英語の文献を読んだのか意味不明ですが、学生時代の勢いでどうにかなったんだろうなと思います…若さは素晴らしいのです…
ただ好きなのは古代ギリシャでもなく戦争史でもなくアステカ、インカ、オルメカといった中南米の古代文明ゆえ、二次創作でも活用する機会は無い(笑)でも中南米を侵略していったのはスペインですからね…そういう意味でも攻めですよね、スペイン。
三大征服者コルテス、ピサロ、シュラ(・ゝ・)誤
先週「年内完結目標☆」と言った翌日に家族が持ち込んだ風邪で一家全滅し、自分は咳だけで元気ですが看病のため即行で目標崩れてます(゚∀゚`)
まぁもう少しで終わりには変わりないのでぼちぼちいきます(゚∀゚)ノ
2024 |
12,13 |
«宵の明星»
オメガバ話も残り1〜2回くらいで完結できる予定です!(゚∀゚)年内完結目標、果たせるか?
拍手コメントもありがとうございます♪気軽に読めないレベルのくどい長編ですが、お付き合いいただけて嬉しいです(∩゚∀゚)
残り冥界のシュラパート少しとエンディング(・ゝ・)
嘆きの壁の再会はありません。本文で説明しますが嘆きの壁の大一番に二人は参加しないので。黄金魂要素とかも無いから冥界が最後です(゚∀゚`)
嘆きの壁の再会はありません。本文で説明しますが嘆きの壁の大一番に二人は参加しないので。黄金魂要素とかも無いから冥界が最後です(゚∀゚`)
それにしても今生の別れを何度してるんだって状態ですよね(笑)実際公式でも何回黄金復活させられてんだという話なのでまぁ…そうなるのも致し方ないということで一つよろしくお願いします…
終盤ずっと甘々らぶらぶベッドシーンがご無沙汰のため、エンディングにぶっ込むかどうかで終わりの長さがかなり変わってくると思います。でもなんかラブエロ終わりだと締まらないよね(笑)綺麗に終わらせようと思うとどんどん長くなるっていう。
それか無理せずこのままエロなし終わりで、本にする時オマケの漫画を追加収録する…とか…。
元々、どこかの時期(番以降)のベッドシーンを数頁オマケ漫画で描こうかなと考えているので、紙本としてはベッドシーンが締めになるかな。どうだろう。時間次第。紙本にはラブラブ落書きを多数収めたい!挿絵は色々と!(・ゝ・)φ゛カリカリ
それか無理せずこのままエロなし終わりで、本にする時オマケの漫画を追加収録する…とか…。
元々、どこかの時期(番以降)のベッドシーンを数頁オマケ漫画で描こうかなと考えているので、紙本としてはベッドシーンが締めになるかな。どうだろう。時間次第。紙本にはラブラブ落書きを多数収めたい!挿絵は色々と!(・ゝ・)φ゛カリカリ
これもうα巻(〜番になるまで)とΩ巻(番〜ラスト)に分かれますかね。〆切延ばしてより長くなっているので(笑)でも書きたいことたくさん書けているので慌てて仕上げなくて良かったと思うております(゚∀゚)b
余裕があれば厚さ確認で1冊試作してみたいけどできるかな?
さて唐突なる(∩゚∀゚)ダーリン♡
以前チマ漫画で描いたネタ元の歌に「Humiliate me more, Darlin'」という変態視点の歌があるのですが、それを急に思い出したね…これ女性視点の歌ではなく男性視点の歌です。英語教育も熱心ではなかった世代の自分はその時初めて「ダーリンは男性も女性も使う」という事を知りました(笑)
マジか…ダーリンとハニーじゃないのか、と…(゚Д゚)
それは「ボンジュール、ハニー!」「ハァイ、ダーリン!」という多国籍な掛け合いをさせる某バンドマンの悪影響であったのだと(笑)ハニーも誰が使っても良いんだよね。
というのを踏まえて…(・ゝ・)
シュラがデスマスクに(・ゝ・)「ダーリン」と返すの萌えるんじゃないだろうか…と思いまして。
今回はデスマスクしか使ってませんけども。
そう…
(・ゝ・)ハニー (゚∀゚)ダーリン ではなく
(・ゝ・)ダーリン (゚∀゚)ダーリン であると。
(・ゝ・)Darlin (゚∀゚)Darlin であると(力み)
隙あらば何かの時に(・ゝ・)ダーリン(゚∀゚)ダーリンをぶっ込もう。
日本人としてはやはり女性イメージの強い(・ゝ・)ハニー(゚∀゚)ハニーより(・ゝ・)ダーリン(゚∀゚)ダーリンが萌えるね…
(個人の感性です)
因みにLCは時代的に英語がそこまで各国に浸透していないと勝手に思っているので、本気で考えるとエルシドとマニゴルドがハニーとかダーリン使う機会は無いかなと。下手したらそういう意味で使うという概念すらまだ無いかもね…。英語よりギリシャ語やラテン語勉強してるイメージ。
アモーレはイタリア語だけどラテン語も似たようなものというか語源なので、その辺感覚で通じるのかも?
と、どうでもいい事も案外真面目に考えております(・ゝ・)φ
余裕があれば厚さ確認で1冊試作してみたいけどできるかな?
さて唐突なる(∩゚∀゚)ダーリン♡
以前チマ漫画で描いたネタ元の歌に「Humiliate me more, Darlin'」という変態視点の歌があるのですが、それを急に思い出したね…これ女性視点の歌ではなく男性視点の歌です。英語教育も熱心ではなかった世代の自分はその時初めて「ダーリンは男性も女性も使う」という事を知りました(笑)
マジか…ダーリンとハニーじゃないのか、と…(゚Д゚)
それは「ボンジュール、ハニー!」「ハァイ、ダーリン!」という多国籍な掛け合いをさせる某バンドマンの悪影響であったのだと(笑)ハニーも誰が使っても良いんだよね。
というのを踏まえて…(・ゝ・)
シュラがデスマスクに(・ゝ・)「ダーリン」と返すの萌えるんじゃないだろうか…と思いまして。
今回はデスマスクしか使ってませんけども。
そう…
(・ゝ・)ハニー (゚∀゚)ダーリン ではなく
(・ゝ・)ダーリン (゚∀゚)ダーリン であると。
(・ゝ・)Darlin (゚∀゚)Darlin であると(力み)
隙あらば何かの時に(・ゝ・)ダーリン(゚∀゚)ダーリンをぶっ込もう。
日本人としてはやはり女性イメージの強い(・ゝ・)ハニー(゚∀゚)ハニーより(・ゝ・)ダーリン(゚∀゚)ダーリンが萌えるね…
(個人の感性です)
因みにLCは時代的に英語がそこまで各国に浸透していないと勝手に思っているので、本気で考えるとエルシドとマニゴルドがハニーとかダーリン使う機会は無いかなと。下手したらそういう意味で使うという概念すらまだ無いかもね…。英語よりギリシャ語やラテン語勉強してるイメージ。
アモーレはイタリア語だけどラテン語も似たようなものというか語源なので、その辺感覚で通じるのかも?
と、どうでもいい事も案外真面目に考えております(・ゝ・)φ
2024 |
12,13 |
「さっきさ、すんごく強い光の星が続けて二つ流れたの見たか?」
聖域、サガが青銅に敗れ邪悪は消え去ったという。アテナ神殿の前で女神復活に沸く人々の傍ら、ムウに仕える幼い能力者の貴鬼がそばで立ち尽くしていたミロに話し掛けた。
「…あぁ、魂が燃え尽きたようだったな」
「えぇ?そんな物騒なこと言うなよぉ!」
だが実際、青銅との闘いで多くの命が失われた。デスマスク、シュラ、アフロディーテ、サガはわかる。いくら自らの正義を持っていようともアテナに背いていたのだから当然だ。白銀聖闘士の多くが死ななければいけなかった理由は何だろう。
(そしてカミュよ…なぜお前まで…!)
師として、黄金聖闘士として弟子の前に立ちはだかり、そして散った。聖域にアテナを帰還させる一欠片として、聖戦に参加する事なく生涯を終えさせられた。この現実はアテナに背く気など全く無いとはいえ…残酷で辛い。自分たちは番でも何でもなかった。ただのαとαだった。気持ちも最後まで交わらなかったが、友情を超えた仲であったと思っている。だからこそ、尚更…あと少し、時間が与えられていたらと…!
(デスマスクはカミュの死さえも、αが一人減ったと喜ぶのだろうか…。あいつはもし、こうして一人残されたらどうしていた?)
「…くっそ、あんな奴死んで清々したというのに、それでも引っかかってくるなど…!」
神に翻弄されるだけの人生、宿命。人として、それに抗おうとした。神から力を与えられ、Ωという試練を与えられ、乗り越えてなお望めば呆気なく叩き潰される。死なない神々に儚い命の聖闘士は本当に必要なのだろうか…?
「サガのことか?根は悪い奴じゃなかったってムウ様言ってたぞ」
(あぁ、いっそのこと何から何まで間違いだらけのクソ野郎だったら…!)
ミロは歯を食いしばって空を見上げた。アテナ神殿は聖域の頂きにある。闘いも終わり、澄んだ広い空にはいつもより多くの星が瞬いているように見えた。古からの聖闘士たちが、聖域を見守るかのように。…きっと、彼らはそこから抜け出した。
「…生まれた時から根っからの悪など一人もいないだろう。全員、アテナの聖闘士なのだぞ」
「…そうだよな。何で仲間なのに闘わなきゃいけなかったんだろうな」
紐解いていけばきっとどうしようもない理由だろう。でも人々はぼんやり残る違和感に蓋をして、勝ち残った正義を讃える。
(そんな茶番に付き合ってる暇も無いってことか。お前たちはつくづく自分勝手だな…)
――それくらい、愛し愛されてみたかった。
(…いや、それは俺次第…)
「ミロ?戻るのか?」
カツ、と音を立て不意に向けられた背中に貴鬼は声を掛けた。
「先にカミュの所へ戻ると伝えてくれ。急いで遺体を安置してきただけだからな、綺麗な姿にしてやりたい」
ミロは歓喜に沸き立つ広場をひっそりと抜け、一人カミュの眠る宝瓶宮へと帰って行った。
アテナの帰還から数日後、十二宮の闘いで命を落とした聖闘士たちの埋葬が終わった。シュラとデスマスクの二人だけは遺体が残っていない。それを好都合として彼らの墓標を立てる事に反対する声が一部で上がった。Ωであったうえに虐殺を繰り返した黄金聖闘士の記録など聖域史の恥という声が。それを支えた番の存在も。設置に賛成する者でさえ、造反者の結末とアテナの正当性を永久に伝え残す必要があるという意味で議論した。
アテナは"全ての聖闘士を弔う"ために墓標の設置を譲らなかった。また黄金聖闘士の中でもアイオリアが墓標の設置を強く支持した。――二人を省くのは今生アテナの愛と正義に泥を塗る事へと繋がる…その結論もアテナの思う内とは異なるものではあるが、そう理由付けた聖域はシュラとデスマスクの墓標設置を決めた。そうして何も眠っていない空っぽの墓標が二基、アフロディーテの墓の隣に立てられたのだ。
巨蟹宮を埋め尽くしていた死面はデスマスクの死と同時に全て消え去った。それでもどこか薄暗い宮内をミロは私室に向かって歩いて行く。
亡くなった聖闘士たちを埋葬する前に遺品の整理が行われた。必要と思われたものは遺体と共に納めるためだ。カミュにはシベリアでの弟子育成時に着ていた服を一緒に持たせた。命を賭けて育て上げた弟子との思い出と共に眠ってほしいという願いを込めて。ミロは自身とカミュに関わる物を持たせる事はやめた。
アフロディーテには双魚宮の庭に育っていた薔薇の枝葉、デスマスク、シュラ、サガとの幼い頃の写真を。サガにはアイオロスとの写真、事件を起こす前に着ていた鍛錬服を持たせた。
(遺体が無いのであれば何かを持たせるという概念も生まれないだろうに…)
ミロはデスマスクが使っていた私室の扉を開けて真っ直ぐ居間の方へと向かう。十二宮に併設されている私室の間取りは基本的にどこもほとんど同じだ。いきなり寝室といったプライベートな部屋に入る気は無い。
(もっと散らかっているかと思ったがアッサリした部屋だな…)
デスマスクの騒々しい個性から私室も物で溢れているような状況を想像していたが、それは裏切られた。本が積まれていたり生活感は感じられるものの、家具や生活雑貨は支給品で収まっている。
(…案外ケチな奴なのかもな…)
これといって遺品と言えそうな物は無い。食器や本でも良いが、特別気に入っていたという情報など何も知らないので残すほどの物とは思えなかった。
ミロは一つため息をついてから次に寝室へ向かう。正直、デスマスクだからと言うよりもΩの寝室としてここを見るのは躊躇われた。しかも十二宮戦当日の朝にシュラが巨蟹宮を訪ねていたことを知っている。なぜ自分が最初にこの部屋の扉を開けなければならないのかと、役を振ったアイオリアとムウを思い出して顔をしかめた。
(アルデバランが一番適任と思ったのに、デスマスクにトラウマがあるとか逃げやがって…)
俯きながらギィ、っと扉を押して、思い切って顔を上げる。
「……っ⁈……」
一瞬…――そこにデスマスクが眠っているのかと錯覚した。しかし直ぐにそれは積み上げられた服の山だとわかった。
(…なんだってこんなにもベッドの上に服が出しっ放しなんだ。あんな時に洗濯でもしたのか?)
それにしても量が多い。こんなに必要ないだろうと思いながら二、三枚手に取ってみる。そして気付いた。枕元の棚に置かれた細い黒革の首輪。デスマスクがΩであった証。
(…まさか、これが…Ωの作る、巣…?)
以前、何の時だったかシュラの服を抱えたデスマスクとすれ違った事がある。これがΩだと言わんばかりにその匂いを嗅いで見せて。
(これは全てシュラの服か…⁈)
そう理解した途端、神聖な物に触ってしまった気がしてミロは慌てて手にしていた服を戻した。たかがデスマスクの作ったものであるというのになぜそう感じたのかはわからない。最初に錯覚したデスマスクの姿が妙にリアルに感じられたこと、この中で眠ることがΩにとっての至福であるのだろうということ、他人の番のものに触れた禁忌感が突然ミロを襲った。
(…くそ、俺がαだからか…たかがこんな物で…。しかし奴らはもういない。これも片付けないと…)
積み上げられた服の山を視線でぐるっと確認してから再びデスマスクの首輪に目を向けた。
(遺品…と言えばコレなのだろうが、死んでまでも墓の底にΩの証を埋められたいものだろうか…)
そっと指先を伸ばして首輪に触れてみる。嫌な感じはしない。そのまま手にして間近で眺めてみた。思えば番ができて首輪を着ける必要が無くなってからも時々この細い首輪を着けていたことを思い出す。首を守るというより服飾品なのだろう。
(気に入っていた物であるならば、これでもいいか…)
遺品として首輪を埋めてやろう――僅かばかりの嫌味も含めてそう決めたミロは首輪が置かれていた隣に積み上がっている手帳の山も何気なく手にして開いてみた。
――そしてこれも手にして後悔した。
何かがびっしりと書き込まれた手帳。字が下手なうえに何語かわからない。辛うじてわかるフランス語ではない。きっとイタリア語かスペイン語に違いない。何が書いてあるのかわからないのに、書き込んだ者の凄まじい執念はひしひしと伝わってくる。αの放つ圧を超えた怖さを感じる。
(何なのかわからないというのに、シュラの仕業だろうと思えてしまうな…)
パタンと閉じて首輪と一緒に手帳の山も全て掴んだ。正解などわからない。深く詮索するつもりはない。ただ燃やしてしまうのは何となく気分が悪い。
(まとめて墓に埋めてしまおう…)
勢いよく立ち上がったミロは部屋をそのままにして一旦退室した。Ωの巣の解体は自分一人では何だか荷が重い。アイオリアたちと分担してシュラの服は処分しようと考えた。
「そっちは何かあったか?」
教皇宮へデスマスクの遺品を運ぶ途中、ちょうど磨羯宮から出てきたアイオリアと遭遇した。二人は崩壊したままの広場で互いが持つ遺品を見せ合う。シュラの遺品整理を任されたアイオリアは「これが気になる」と細い黒革のアンクレットを差し出した。そしてミロが持つ首輪と何度か交互に見てからぽつりと呟いた。
「…何か、こっちが恥ずかしくなってしまうな…」
「…わかるぞ…いっそ全く知らない他人だったら何も思わないのにな。あの二人がって思うと色々キツいよな…」
一見、地味で寡黙そうなシュラがあのデスマスクを相手に甘いことを言ったり我が儘を聞いたりお揃いのアクセサリーを着けたりなんか、イメージ崩壊で見たくないし考えたくもない。しかし死してもなお、たかが遺品で見せつけられるとは。
「意外だが、心から好きだったんだろうな。デスマスクのこと」
「あぁ、俺もこの手帳を見て察した。デスマスクがシュラを誑かしたと思っていたが、シュラの方もヤバかったってのをな」
歩き出した二人は瓦礫の山を軽々と飛び越えながら教皇宮へと向かう。この崩壊した磨羯宮の裏手の惨状もシュラがデスマスクを想い過ぎた証だ。あの時聖域にいた全員が感じている。本来ならばアテナへ向けられるべき愛と忠誠はここに無い。
「…こんなこと大きくは言えないが、少し羨ましくも思える…」
「フッ、聖闘士としては好き勝手に振る舞って滅茶苦茶にした奴らだ。他では言わない方がいいな」
「あぁ…だから思うんだ。この遺品の埋葬も何か言われるかもしれない。アテナにはお伝えするが、二人の墓標が立ってから後でこっそり埋葬しないか?聖闘士として問題があったのは承知しているが、番として二人を共に眠らせてやれないだろうか」
アイオリアがそう思うのには理由があった。兄であるアイオロスの遺体も聖域の墓標の下にはない。アテナを託された城戸光政の手でどこかに埋葬されているとは思うが今となっては誰もわからない。
「聞いたことあるかもしれないが、兄の時も二人と同じように墓標に反対する者たちがいたんだ。黄金とは言え逆賊者の墓は要らないとな。その反対を押し切って墓を立ててくれたのがシュラ、デスマスク、アフロディーテだった。三人で偽教皇と大人たちを説得してさ。今思えば真実を知っていたからだとわかるが、当時は悪い事をしたっていう兄に対してそうしてくれる姿は本当に格好良かった…」
辿り着いた教皇宮の扉の前で立ち止まる。
「俺の自己満足でしかないが礼がしたい。本当に悪い事をしていようとも、あの時の姿に」
真っ直ぐそう語るアイオリアの瞳に、ミロは頷くしかなかった。
その願い通りシュラのアンクレットとデスマスクの首輪、シュラが書き残した手帳は墓標の設置からしばらく経ったある日の夜、アイオリアの手でひっそりと二人の墓の下に埋められた。これはアテナと残された黄金聖闘士たちしか知らない。
(全く何も残さなかった二人は魂も消えてしまったのだろうか…)
広い夜空に瞬くたくさんの星を見上げても、そこに二人がいる気はしなかった。今夜は月が隠れているため星の光が明るい。彼らが向かった先は光ではなく…。
真っ暗な新月の影のその奥に目を凝らしてから墓標に花を添えて、アイオリアは獅子宮へと戻って行った。
その墓の下には何も眠っていない…だから、ハーデスの傀儡が聖域に侵攻した夜も二人の墓だけは荒れることなく、遺品は静かに眠り続け守られた。
ーーーーー
ーーーーー
――死からどれくらいの時が地上では流れたのだろう。
共に逝けなかったシュラを追い掛け続けてそのまま流転するはずだった。高い天から真っ暗な地の底へと落ち続けていたのに突然強い力で引き上げられ、終わったはずの"デスマスク"に無理矢理縛り付けられる…そう感じた時――
「…デスマスク」
二度と呼ばれないはずの名前を聞いて瞼を持ち上げた。もう見れないはずのシュラの姿が目の前に在る。
「…死んだんじゃねぇの…どうなってんだ」
ゆっくり起き上がれば二人の姿は魂ではなく肉体を持っているのがわかった。傷も何もない綺麗な体だ。
「ハーデスから聞いてないのか?特別に再生されたんだ。俺たちは体が残らなかったから」
辺りを見渡すと聖域ではないどこかの宮殿の一室にいた。隣にいるシュラがデスマスクの顔を覗き込んで呟く。
「俺がわかる…よな?」
「…シュラ」
低い声で短く答える。せっかく想い人に会えたというのに、二人とも感動の再会とは程遠い雰囲気でどこかぎこちなかった。
「お前が目覚める前に冥闘士が来て雑な説明をされたが、今から聖域に戻るぞ。そこでシオン様が待っている」
「シオン様も?」
かつて慕っていた唯一の大人の名を聞いて、デスマスクのコスモが揺れた。
「ハーデスの手先として一部の聖闘士が復活させられたようだな。嘘ではない証明にシオン様からも直接声とコスモが届いた。あそこに戻らなければまた殺されると思うぞ」
そう言いながらシュラは立ち上がったが、デスマスクは座ったままで動かない。
「……それでも、いいけど」
その言葉に一瞬は望み通り置いていこうかと思った。その方がデスマスクにとって良いことなのかもしれない。聖域は彼を傷付け過ぎた。しかし…
「シオン様が待っている、行くんだ」
シュラはデスマスクの腕を強く掴んで立ち上がらせる。彼の望みよりも「連れて行くべき」という使命感を優先した。
デスマスクの最後の姿を覚えている。目を逸らしたくなる可哀想な姿。あれは紛れもなくデスマスクだった。今、目の前に立っているのは誰だろう?生前の綺麗な姿で、その首にシュラの噛み痕は、無い。
「仕事が雑だな。神であろうと完璧な再生は無理だったか…」
愚痴りながら"デスマスク"の腕を引いてシュラは聖域へと向かった。
二人とも記憶は残っていた。βとΩで愛し合って、αとΩで番い合って、何度も体を重ねてお互いを求め続け散ったこと。好きで好きで仕方がなかった記憶はあるのに、今二人が抱く感情はまるで出逢ったばかりの頃のような…愛が目覚める前に戻ってしまったようだった。
冥界に生き、身体が特殊な冥闘士にオメガバースは存在しない。それは地上に生きる者たちだけに与えられた枷。
「まさか理想が並行世界に存在するとはな…お前は知っていたのか?死者にオメガバースが存在しないこと」
「……まぁ普通に考えれば死にゃあ終わりだし。それでも未練たらしい元Ωはよく見かけたが」
「お前は、そうならずに済んだんだな」
その言葉にデスマスクは顔をしかめた。済んでない。自分だって本当に死んでからも最後までシュラを追いかけ続けていたのを覚えている。逃げて行ったこいつはそれを知らない。
「…お前のそういうとこ、嫌い」
「違うのか?それにしてもその言い草、何か懐かしいな」
不貞腐れて言われた一言にシュラは笑った。本当に、気持ちが通い合う前に戻ってしまったようで。潤んで切なく自分を見つめる瞳も、普段からは想像のつかない艶やかな声も記憶には残っているというのに。シュラ自身も今、デスマスクを抱き寄せて甘い言葉で酔わせたい、という感情は湧いてこなかった。
――本当に、死んだのだな――
シュラとデスマスクの二人が。それを実感させられた。肉体なんか問題ではなくて、今までの愛が刻まれた魂は不滅だからこそ出逢えば当然のように惹かれ合うのだと思っていた。運命とはそういうのもなのだと。まさか、ここまで二人の魂が鎮められてしまうなんて。そのまま生まれ変われば気付かされなかった。無駄に記憶だけを残されている今だから、こんな複雑な経験をさせられている。
(これも罰なのか。愛し合っていたから無条件で再び愛し合えるわけではないことを思い知らされるなんて…)
シュラは最後の時、前を行くデスマスクも後ろから来ていたデスマスクも掴めなかった。でもそれが正解だったんじゃないかと、何も無い闇の中でぼんやり考えた。
―共に逝けなかったから、きっとまた俺はデスマスクを探し求めて、あいつは追いかけて来る…―
それが輪廻なのだと。期待した結果はこの通り空っぽだ。
しかしそれは、二人に芽生えては引き裂かれてきた愛がただ運命に仕組まれ決められていたものではなかったという証明でもある。やり直す度にお互いを見つめ合い、そして選んできた。お前を愛したい、愛されたいと願って幾度となく努力をしてきた結果が運命と結び付くのだ。尽きた愛はいつかまた、必ず芽生える。
シオンからの伝言について以外はほとんど喋ることなく、二人は聖域外れにある墓場に到着した。シオン、サガ、アフロディーテ、カミュが生前の姿で立っている。彼らの体は"本物"だったが、亡者のような姿ではない。修正は施されているようだ。
「お前あんな戦いでなぜ死んだ?無駄死にじゃねぇ?」
カミュが亡くなっていた事に二人は驚いた。デスマスクの問い掛けにカミュは一言「氷河のため」とだけ答える。
「ふーん…ミロの奴は生き残ってんだな。お前らよく耐えられるなぁ。俺なら死ぬわ。」
そう言われてカミュは困ったように笑う。その話を隣で聞いていたシュラは何気ない言葉の中に自分への想いが生前のように残っているのを感じてデスマスクの顔を見た。彼はシュラの方を見る事はなく、アフロディーテの元へ行く。首筋を見せて、番ではなくなったことをサラッと告げる姿にアフロディーテも戸惑っている。
「それにしても君たちがここへ現れた事も意外だったぞ、目的は知っているよな?」
デスマスクは何の気持ちも無さそうでヘラっとしていた。アフロディーテは今から始まる事を理解しているのか心配になってしまう。
「シオン様に迷惑かけるなっつって連れて来られた。アイツに」
そう言ってシュラを指すデスマスクを見て、アフロディーテは頭を抱えた。
「シュラよ、まさか君まで理解せずにここまで来たわけではあるまいな?」
「アテナ討伐だろ」
その一言にデスマスクがヒヒっと笑う。三人は互いに目配せ合った。
「…君たちに、できるか?」
アフロディーテの問いにシュラが小声で返す。
「不思議な事にな、ハーデスの再生は完璧なものではなかったようでな…」
そこまで言って二人を交互に見た。そしてニヤ、と笑う。
「俺が投げ捨てた聖闘士の心まで、無駄に再生されているっ…!ククッ…」
思わず笑い声を漏らしながらシュラはそう告げた。
「ハーデスとしては罪悪感でも植え付けたかったのかもな。ガキの頃の純粋な気持ちを再び感じるとは。神のお遊びらしい事だ」
この状況で笑う話か?とシュラに少し引いてしまったアフロディーテは思い出したかのようにデスマスクの方を見た。デスマスクもポカンと不思議そうな顔をしている。
「君もそうなのか?善い心を吹き込まれてしまったのか?」
「お前さぁ…俺が悪者みたいに言うなよ。アテナに殺された男だぞ?」
「討伐できるのか「行かねぇ」
「「えっ?」」
デスマスクの返事に二人は声を上げる。
「あー、まぁ、十二宮には行ってやる。シオン様には悪いがムウと老師をぶっ殺しに。あと紫龍」
「君は…」
「それで十分だろう?俺は最後まで行かねぇ。それはサガとかシオン様の仕事だ」
まだ何か言いた気なアフロディーテをシュラは制した。
「…こいつもちゃんと理解しているようだぞ。それ以上具体的な事は言わせないでやれ」
デスマスクは助けに入ったシュラを一目見ると安心したかのように口を噤んだ。
―別に二人の関係が壊れたわけではないのだな…―
生前の、熱がこもった関係から遠く離れてしまったようにアフロディーテも感じていたが、自然な振る舞いの中に互いへの想いが見え隠れする。そう、壊れてしまったのではなく再び愛し合う舞台を築き上げていく感じ。
「心配すんな"討伐"の邪魔はしねぇよ。適当に動いてっから」
デスマスクも自身の中に、かつては抱いていたアテナへの忠誠心が植え付けられているのを感じていた。憎む気持ちと慕う気持ち。泥沼の愛みたいな感情をシュラ以外に抱くのは気持ちが悪い。
(Ωでなくなったのは気持ち良いが…こんな体さっさと終わらせてぇわ…)
サガとの話し合いが終わったシオンが声を上げ、今から始まる戦いの説明を始める。最初に立ちはだかるのは白羊宮のムウ。
「俺に任せろ」
デスマスクは笑いながらシオンの前に歩み出た。
六人に与えられた漆黒の冥衣は本来冥闘士には存在しない自星座のものだ。これもアテナの手駒を手中に収めたと見せびらかすためのものだろうか。
(神様のこういうガキっぽいところが幻滅させられるんだよなぁ。だから欠陥人間ばかり生むんだよ)
冥衣姿をボロ布で覆い隠し、六人の刺客は十二宮の入り口へと向かう。聖域の警備についている雑兵たちは騒がれる前に息の根を止めていった。なるべく苦しまないように、素早く静かに。どうせ生かしても監視している冥闘士に殺されるだけだ。
デスマスクの隣はシュラではなくアフロディーテが歩いていた。ムウの討伐を自ら申し出たデスマスクに対し、シュラがアフロディーテを同行させるよう願い出たのだ。
(…今の感じだとシュラは俺を選ばねぇよな…別にいいけど…)
心の奥でデスマスクに興味を持ちつつも、アフロディーテとの方が仲が良いという理由でΩが判明する前までシュラはずっと身を引いていた。デスマスクに距離を置かれていたせいもある。お前はβだからΩの世話をしろとか、最もな理由があってやっとシュラは頷くのだ。
(ほんと昔っから、それで俺を気遣ってたつもりかよ…)
シュラが何を思ってアフロディーテを推したのか、感情は抜きにして理解できるためそのまま受け入れた。一人で行かせない辺り、目に見えないシュラの燻りが伝わってくる。
「じゃァ、様子見兼ねて先に一発やらせてもらうぜ」
入り口が見えた辺りでデスマスクとアフロディーテは振り返った。ここからでもムウのコスモが僅かに感じられる。最後の戦いが始まる。
―ほんと、これで最後にしてくれよな…―
別れ際、シュラの顔を見てから背を向けようとした。でもジャリ、と踏み込む音が聞こえて反射的にもう一度シュラを見てしまう。
「何だよ」
そのまま無視して行くこともできたのに声を掛けてしまった。シュラも自分が踏み出した一歩に戸惑う顔をしていたが、掛けられた声に顔をあげて真っ直ぐデスマスクを見つめる。
「…俺を、愛してくれてありがとうな」
突然の一言だった。冷静に、低く響いた声がデスマスクの体を震わせながら染み込んでいく。
「…それ、俺のセリフだから…」
絞り出した声は、上手く伝わっただろうか。見つめ返すシュラは軽く微笑んで、静かに右手をあげた。それは、さよならのポーズで。
「ハハッ…!じゃあな、ダーリンッ!」
デスマスクは堪らずおどけて大きく手を振った。笑いながら張り上げたつもりの声は上擦って格好悪い別れになってしまった。でももう振り返らないし何も言わない!そう決めてボロ布をひるがえし、一気に駆け出す。
「フフッ…英語なんだ」
デスマスクに追いついたアフロディーテがいつもの調子で茶化した。放っておいたら彼はきっと泣いてしまう。
「…俺ら語学に長けてねぇから。アモーレ♡とか言ってもあいつわかんねぇだろ」
「シュラって地味なくせにちょっと変なとこあるけどさ、ちゃんと格好良いよな。あんなこと別れ際に言われたらまた好きになってしまうって。私でもドキッとしたよ」
「うるせぇっ」
―αのままであれば、あんなこと言わなかっただろう―
愛し愛されて当然といった思考で、また会おうとか必ず見つけてやるとかそういう強気な事しか言わなかったんじゃないだろうか。
(ありがとうなんて、Ωで自分勝手で人殺しでアテナも何もかも裏切ったのは自分のくせに他責思考で、フェロモン使わずに愛されるなんか有り得なかった俺が言う言葉だろうが!こんな俺を…あぁ…シュラ…!)
あんな一言でたった今、鎮まっていた気持ちが熱く沸き立つのを感じる。もう別れたのに、もう会えないのに手放したくない。また好きになってしまう。また好きになるのはシュラがいい。好きになりたい。生まれ変われたら絶対好きになる。あぁ…!愛おしい…俺を愛してくれる、俺を許してくれる、俺を守ってくれる唯一の…っ!
「さっさと片付けていくぜぇ!」
振り切るように掠れた声を張り上げた。
「フフ、シュラからの名誉あるご指名。地獄の果てまで…君たちの再会まで付き合うぞ!」
二人のコスモがムウとぶつかり合う。シュラは離れた場所から神経を研ぎ澄ましコスモの行方を探り続けた。
あの時を思い出す。デスマスクが散った、十二宮の戦い。
(デスマスクへの愛が鎮められ、アテナへの忠誠を復活させられたというのに…俺の腹の底は、どれだけ闇深い…)
やがて二人のコスモが弾け消えたのはデスマスクにとって煩わしい"討伐"成功の証。それでもシュラはサガの制止を振り切って、一度は投げ捨てた右手の聖剣をムウに向かって振り下ろした。
ーつづくー
ーつづくー
2024 |
12,06 |
(この男っ…磨羯宮の崩壊も厭わないというのか…!)
絶え間なく放たれる聖剣は磨羯宮の裏側一帯を次々と破壊していく。崖も石畳も磨羯宮の柱までも斬り込まれ、崩れる岩の粉塵が視界を遮っても勢いは衰えなかった。時折かすめる手刀の鋭い風が紫龍の体に細かい切り傷を増やしていく。僅かでも避けきれなければ一瞬にして手足は斬り離されてしまうだろう。
「シュ、シュラよ!お前も地上の平和のため黄金聖闘士になったのだろう⁈なぜ悪の教皇に加担する⁈本当に真実を知っていながら闘っているのか⁈」
―うるさい…交渉しようとする、そういうところが雑魚なのだ―
「真の聖闘士であるならば無駄口など叩かずさっさと俺を倒してみせろ!デスマスクにしたように敵意を剥き出せ!」
「ぅわっ!」
紫龍の影に向けて一際鋭い一撃を斬り付けた。どこかに叩き付けられる音を聞いてやっとシュラは動きを止める。煩わしくなったマントを引き抜き、辺りの粉塵が風に流されるのを待った。
「…さすが、アテナの加護といったところか」
うっすらと姿を確認した紫龍の体は繋がっていた。代わりに装着していた聖衣は斬り落とされて瓦礫と混ざっている。
「だがそれもここまで」
シュラは紫龍の目覚めを待たず、その首を目掛けて手刀を振り下ろした。が――
「……っ⁈」
「……ハハ…これが真剣白刃取り、だっ…!」
たかが青銅の小僧にシュラの右手はしっかりと受け止められていた。油断したシュラはそのまま腹部を蹴り上げられ、紫龍は離れた瓦礫の上に降り立った。
「デスマスクを倒した事は間違いと思わない!だから詫びぬ!そして俺は必ずお前も倒し、真の正義を取り戻してやる!」
「クク…自らの実力も知らずにでかい口を叩く奴だ」
―あいつのそんなハッタリも、もう聞けないというのか…―
「…俺はな…そういう奴が嫌いなのだ!」
シュラと紫龍のコスモの差は歴然だった。こんな青銅になぜデスマスクは倒されてしまったのか不思議な程に。ただ避けるのは得意なようで、たとえシュラのコスモに吹き飛ばされても紫龍は直ぐに立ち上がり挑んで来た。
「お前のように黄金の力を持ちながらも自分勝手に振る舞う奴らが世界の平和を乱す!必ずや倒しておかなくてはならない!春麗や、力を持たずとも懸命に生きる人々が穏やかに暮らせる世界にしなくてはならない…!」
そう――デスマスクを倒した後で魂が実体に戻った紫龍は、老師からのテレパシーで春麗が助けられたことを知った。もう、心優しい彼女を戦いに巻き込みたくない――平和な世界の実現のために自分たち聖闘士は在るのだ。
「ハハ!結局お前が目指すのはαの虐殺か?弱者に寄り添いたいのであればそれこそデスマスクが目指した世界の方が理想的だぞ?だがそれもお前が目指す世界には足りないだろうな。世界の平和を乱す者たちの正体が誰であるのか、この無駄な十二宮の闘いを仕組んだ者たちが誰であるのか、もっと頭で考えてからものを言え!綺麗事だけでは平和の実現など不可能なのだ!」
―それはデスマスクと俺の愛も同じ―
「それでも!俺が今やるべき事はこの命を懸けてでもお前を倒すこと!」
(…目的が見えないシュラは危険だ…春麗は望まないだろうが…今、俺は全てを懸けてでもこの男を倒しておく必要がある…!)
磨羯宮まで来ると空は広い。灯りの少ない聖域では澄んだ夜空に数え切れないほどの星が瞬いて見える。普段ならそうであるが、今夜は違った。空高くまで立ち上るコスモの強い光は今、星の輝きをかき消している。
(これが紫龍の力か…)
シュラとの死闘の末、紫龍の背中に浮かび上がったドラゴン。瀕死の状態に於いてようやく発揮される本領。
「青銅にしてここまでコスモを高めるとは…クク…戦慄させられるな」
―だがそれくらいの強さは持っていてもらわねばならん、デスマスクを倒したというのならば…!―
紫龍がシュラの元へ駆け出すと直ぐに互いのコスモが激突し、辺りに散乱する瓦礫が舞い上がった。紫龍はシュラの力に弾き飛ばされない。互角である。
「やるな…だがそれでは勝てんぞ!」
「ここからだ!覚悟っ!…老師よ!この技を使うこと、お許し下さい…!」
一度後ろへ引いた紫龍は繰り出された聖剣をギリギリで避け、腕を振り上げた。しかしそれは拳を放つことなく体当たりでシュラを背後から捕える。
「なにをっ…⁈」
「 廬 山 亢 龍 覇 ! 」
紫龍は実力以上に高めたコスモを炸裂させ、シュラを抱えたままその身を天に向かって舞い上げた。その姿はまるで天に昇るドラゴンのようで。コスモが命の限り激しく燃え上がり描く光の筋は、聖域のみならず遠く離れた五老峰からも目視できる程だった。それ程までに空高く昇って行く二人の命はただ、燃え尽きるのを待つのみ。異常な力に拘束されたシュラは紫龍を引き剥がすことができずにいた。
(誰か大切な者を失ったわけでもない、世界の平和ごっこに熱くなって聖域に侵攻してきた程度の青銅ごときが何故ここまでの力を発揮する事ができる⁈この程度の小僧に俺の激情が劣るというのか…!これすらもアテナの遊びだというのか…!)
このまま身を任せていれば紫龍は死ぬだろう。黄金聖衣を纏うシュラは僅かな差で生き残れる可能性が残っていた。それでも――
(違う!これでは駄目だ、勝手に死なれては仇になんぞならん!俺の手で殺してしまわないと、俺がオレに許せない!それにっ…)
―紫龍が先に死んでしまうと、冥界でデスマスクに会ってまた何か…―
燃え上がるシュラの体の奥底で闇深いものがグワンと蠢いた。
(死んでもなお、オレのデスマスクに手を掛ける事があっては…)
―だめだ、今直ぐ死にたい…俺が死にたい…!紫龍を先に殺してしまうと…―
(あぁ!殺したい!跡形もなく刻み尽くしたい…!)
星に届きそうなほど高く昇り続けるシュラの目に、ぼんやり青く輝く海が見えた。地上の海は、こんなに広いものだったのかと。自分が生きたギリシャやピレネーの山々はあんなにも小さなものだったのかと。この広い世界の中で、数え切れない人々の中で、デスマスクに出会い愛し合えたことがいかに奇跡であったのか。
『悲劇が二人を繋ぎ続けているのだ』
満たされた日々はたくさんあった。デスマスクと気持ちが交わり、キスをして、番にもできた。なのに今湧き上がるものは後悔ばかり。βの頃も、αになっても、番になってからも!8歳という早さで出逢えたというのに無駄に過ごした数年間も!プライドなんか捨てて巨蟹宮まで行けば良かった!そこで紫龍を倒しておけば!そう思ってしまう自分も許せなくて、あぁ早く燃え尽きてしまいたい!黄金聖衣が邪魔をする、あいつを抱き締める時もそうだった。早く、デスマスクの元へ…これだけ広い世界で出会えたのだから、冥界がたとえ際限のない場所であろうと俺たちはまた逢えるはずだろう?人である限り、どれだけ抗おうと神に弄ばれるだけの存在なのだ。俺たちは必ずまた何度でも引き合わされるはずだ。絶望へ突き落とされるために。
―…デスマスクっ…!―
燃え盛る暗い影は声も上げられず、愛した番の名を唇で描いてからその身は跡形もなく、燃え尽きた。
仇は討てなかった。煩わしくなった黄金聖衣は脱いで紫龍に与えた。そいつを少しでも長く生かすために。二人の再会に邪魔が入らないように。デスマスクはオレがアテナに寝返ったと勘違いするだろうか?だが聖剣も捨てた。紫龍を地上へ叩き付けるように振り絞った最後の力と共に。大事な時に使い物にならなかったのだ。所詮アテナの聖闘士として授かった借り物の秘技、自分が持つ資格はもうない。何もできず、アテナの力試しのため十三年間も放ったらかしにされたサガの存在と聖域に縛られ、挙句には決して死なない神に攻め込まれ、そんな事も知らずに熱を上げた青銅と闘って無様に死んだのだから。神の愛など、微塵も感じない。
気付いた時、シュラはただひたすら歩いていた。そこは夕暮れ時のような空の色をしているが、決して綺麗なものではなく薄気味の悪い場所。歩いているのも自分だけではない。大勢の無気力な人の列が小高い山に向かって続いている。もちろん足を止めて蹲っている者たちも多くいた。何かを喚き、泣き、転げ回っている者たちも。
―…黄泉比良坂…―
そう直感した。デスマスクがずっと管理していた裏の居城。見ることは生涯叶わぬ無常の地。ここで、デスマスクは死んだ。
(こんなにもたくさんの亡者に囲まれていたのか…)
まだデスマスクがここにいるかもしれない、と思ったが本能が小高い山へ向かって歩き続ける。紫龍も「穴に落ちた」と言っていた。やがて上りきった頂上に広がる深淵。躊躇いなくシュラはその中へ自ら飛び込んだ。きっとほとんどの者がこの先にあるのは地獄と想像しているだろう。だが実際に何があるのかは誰も知らない。そのまま誰かの胎内に収まり、再び生を受けるだけかもしれない。手段は何でもいい。
(もう一度、デスマスクを探し出す…それだけだ…)
きっと、満たされてしまえばそう思わなくなるのだろう。シャカが言っていたのはそういう事だ。愛したい執念も失われてしまえばお互いが自由へと解放される。それは二人の縁の終結。真の死。
(お前が良くても、オレはまだ良くないからな…)
例え誰かのものになっていたとしても奪い返すだけだ…そんな姿、絶対に見たくないが自分も引く気は無い。思い出させてみせる。
闇の中を延々と落ちていたはずだったが、いつしかシュラは再び歩いていた。本当に歩いているのかは辺りが真っ暗でしばらく感覚が掴めなかったが、やがて浮かび上がってきた白く輝く地を踏み込んだ時、それは雪だと感じた。歩き続けると次第にチラチラと粉雪が舞い始める。それまで無かった落葉した木々も周りに見え始めてきた。
―…これは…あの夢?…βの頃、よく見た…―
次の瞬間、死んでから初めてシュラは足を止めた。止めたはずなのに、どこからかザクザクと雪を踏みしめる音が聞こえてくる。正面に広がる闇を見つめ続けていると、やがて金色の…
「アフロディーテ!」
「フフ…こんな所で、君に会えるとは…もう二度と無いと思っていたよ…」
頭の一部が砕け酷く血を流した姿も、これほどの美貌を持つアフロディーテであれば耽美的と思えてしまう。
「お前…死んだ、のか…?」
「それ、君が言う?」
フフ、と笑ってどこか先へ急ごうとしている。
「どこへ向かっている」
「…サガの元へ戻るよ。彼は一人、前線で戦っているんだ…」
――記憶が、混沌する。たった今まで黄金聖衣を身につけていたアフロディーテはいつの間にか見慣れない軍服を着ている。…いや、夢では見たことがあるそれ。サガなんか放っておけばいいのに、お前はなぜ…?
「誰からも放っておかれ、殺してももらえず…ハハ、最後の良心さ。君たちはこのまま進むのだろう?少しは時間を稼いでやる。この森の奥深くにはな、不思議な逸話が残っているらしいぞ。逃げ込んで行った者たちの遺体が一切見つからないと言う。…森に迎え入れられた彼らは違う世界へ導かれて行くのだとさ。それが悲劇ではなく奇跡であることを祈ってやろう」
「待ってくれ!デスマスクはっ…!」
「そこに、いるじゃないか」
そう微笑んでアフロディーテがゆっくりと指を差した先、太い木の向こうに横たわる体が見えた。
「デスっ…⁈」
駆け出そうとしてもう一度アフロディーテに振り返れば、まだすぐ側にいたはずなのにその姿はどこにも見当たらなかった。
息を呑んだシュラはデスマスクも消えてしまわないかと太い木の元まで慌てて駆け寄る。死んでいるからかフェロモンとか番の絆とかそういったものは一切感じられなかった。何となく、僅かなコスモが"アレ"はデスマスクであると囁いてくれるだけ。
「デスマスクっ…!」
木の幹に手を付いて横たわっていた体を覗き込んだ。瞬間――ゾオン!と自身が掻き消されてしまいそうな強いブレが全身を駆け巡る。
「…………、……」
その体は僅かに動いた。視線もちゃんとこちらを向いて、何か言おうと唇が震えたが声になっていなかった。
そこにデスマスクはいた。彼の弱々しく残ったコスモがそうシュラに伝えてきた。でもその姿は、顔から全身が傷塗れで血塗れで、アンダーウェアもボロボロに裂け、白い肌は赤黒く腫れ上がり、目を逸らしたくなる無惨なもので…。
戸惑ったシュラを見たデスマスクは視線を外してギュっと口を噤む。
―…情けない…死してもなお、追い掛けてまで彼を傷付けてしまうとは…―
一呼吸してからシュラはゆっくりと跪き、逸らされたデスマスクの顔に手を添えて自分の方へと向けた。
「…デスマスク、お前の体はまだ生きているよな…?死んだ俺が視えるのか?」
――触れられる…――実感はもちろん無かったがデスマスクに触れることができている。彼も再び瞼を持ち上げてシュラを見た。その瞳はかつて輝いていた星空はすっかり消え、まるで先程見た黄泉比良坂の空のように澱んで赤黒くなっていた。
「…あの紫龍が…お前をこんな酷い姿にしてしまったのか…っ⁈」
コク、と小さく頷く。
『…届かなかった。お前をずっと呼んでいたのに。一言、声を聞くことだけでもできたら…ここまではならなかったかもしれない』
喋るのを諦めたデスマスクは弱いコスモで囁くように返事をした。
『紫龍の…お前じゃないαのコスモが全身に絡んで、気持ち悪くて苦しくて、痛い。死にたくても、お前じゃないコスモに巻き付かれたまま死ぬのだけは本当に嫌で、必死に剥がそうとしたけど無理だった…っ…!』
シュラはデスマスクの頬に手を添えたまま、ぐっと顔を寄せて口付けた。デスマスクのコスモがフワッと揺れる。
「俺の感触、わかるか?」
地に横たわるデスマスクの上体を抱き上げてシュラの胸に引き寄せた。その時、首筋に噛み痕が残っているのも確認した。今抱いているのは間違いなく番となったデスマスクだ。
『…わかる…オレ、普通じゃねぇから死んだお前も視えるし感触もわかる…だから、魂だけの紫龍もオレにここまでできたんだろうな…ハァ…』
「…お前が苦しんでいたのに応えられなくてすまない」
もう一度顔を寄せてキスをする。せめて顔の血や傷くらい舐めてやりたかったがそこまでは叶わないようだ。少しでも癒しをとデスマスクの体にコスモを送る。伝わったのか、ピクン!と体が跳ねて喘ぐ声が小さく聞こえた。
「大丈夫か?合わないか?俺にはもう感覚がよくわからない」
『い…いい、続けてくれっ…。暖かくて、体が驚いただけだ…』
しばらく荒い息を繰り返していたが次第に体の強張りも解け、やっと落ち着いた表情を見せてくれた。
『…気持ちいい…汚いものが全部剥がれていくようだ。お前じゃないと俺は駄目だな…これで死ねる…』
「デス…勘付いているかもしれないが、仇は討てなかった」
『…そうか…やっぱアテナ付きは反則だったな。何もかもありえねぇ』
「それもあるが、紫龍を殺すことはできたんだ。だが、俺はそれができなかった。奴を生かしてしまった」
『…意味わかんねぇ…』
「二度とあいつにお前を会わせたくなかったんだ!死ねば奴もここへ来るのだろう?それが許せなくなって、俺の聖衣ごと地上へ叩き戻してやったんだ」
『ククッ…その発想、馬鹿すぎん?』
「聖剣ももう使えない。聖衣ごと紫龍に叩き付けて捨ててきた。だからお前を楽に殺してやることもできない…ほんと、馬鹿だな俺は…」
『…いいよ、苦しくても。殺して?こんな酷ぇ姿をお前に晒し続けるの、俺だって辛いんだわ。気持ち悪いだろ?お前が来た時、逃げ出すかもと思ったけどな…そういう奴が昔いたんだとよ。でもお前は留まってくれた…』
デスマスクの腕が脇下からシュラの背中に回る。胸に顔を寄せて小さく震えていた。
『死にたい、やっと死ねる。しかも最後にお前が来るなんてさ、それだけで最高。首絞めでもその牙で噛み殺しでも何でも耐えてやるよ』
言葉ではそう言って幸せそうに見せても、殺される恐怖から震えているのだろう。それとも本当に幸せで歓喜に震えているのだろうか?
「…なぁ…最後にこんなこと聞くのも馬鹿だと思うが…後悔、とか恨みとかあるか」
『…あるに決まってるだろ。こんな死に方させられたんだぞ?山ほどだよ。お前絶対にアテナや紫龍に寝返って無いだろうな?』
恨めしそうにチラ、っと上目にシュラを見上げるその姿があまりに愛おしく、シュラはニヤっと笑いながら強くデスマスクを抱き締めた。忘れさせないようにコスモで包み込んで、包んで、包んで、ありったけの想いを燃やして、燃えて、その想いの熱さにデスマスクが身を捩る。離さないからちゃんとオレの腕の中で死んでくれ。お前の体は何一つここに残したくない。
足先からデスマスクの体がドロドロと溶けていく。きっと熱いはずだろうに地を覆う雪が溶ける気配は無い。溶けた体液はシュラの体を滑り落ち、全て雪の下へと吸い込まれて消えていった。跡形もなく。ここにたった今までデスマスクがいたことが幻のように。
蟹座のデスマスクは、二度目の死で遂にΩの生涯を終えることができた。
辺りはすっかり静けさが戻り、とめどなく雪が降り続いている。シュラは、もしかしたらこの腕の中に魂となったデスマスクが残るかもと期待していたがすっかり消え去ってしまった。コスモも何も辿れない。
(…ここに、戻って来るだろうか…)
後ろを振り返り、待ち続けようかと思った。しかしアフロディーテが言い残した言葉が思い出される。
―この森には不思議な逸話が残っているらしい―
奥には何があるのだろう。そもそも黄泉比良坂から落ちたここはもう地獄なのか?そんなもの存在するのか?夢の狭間なのか?シュラは再び歩き出した。いるかもしれない。待っているかもしれない。この闇の先に。
いつしか足元の雪は消えていた。まだチラチラと粉雪は降ってはいる。真っ暗で何の上を歩いているのかわからない。次第に木々の影も薄れていく。どこへ連れて行かれるのだろう。
ここでまた、シュラは足を止めた。正面からコスモを感じる。それはこちらへ向かって来るのではなく、遠ざかっていくようで――そのコスモにシュラは畏れを感じた。でもどうしても確かめたくて、止めた足を奮い立たせ駆け出した。
「待ってくれ!」
やがてぼんやり見えた背中に向かって叫んだ。同じくらいの背丈をした者がその叫びに歩を止め、ゆっくりと振り返る。
――あぁ…やはり…!――
その姿を見た瞬間、シュラはまた自身が消えてしまいそうなほどに強い魂の揺れを全身に感じた。口元を血で汚し、軍服を着た黒髪の男がデスマスクを抱いている。それは、彼のαではない――
「デスマスクを連れて行かないでくれ…!そいつは俺の番なんだ!」
男から感じるコスモはシュラ自身のものであった。
(姿は違うがこの男も俺…?)
「…お前のαではない!いや…かつてはαだったのかもしれないが、Ωになって俺の番になったんだ。たった今、殺したんだ。俺が連れて行く!」
慌てたシュラを見つめる男はニヤっと笑うと、デスマスクを抱き直して口を開いた。
『クク…馬鹿を言うな、次はオレが連れて行く。オマエはこいつのαではない。ただのβだ。大人しく腹の底で見てろ。せっかく力を貸したというのに番の仇も討てぬ軟弱者め』
――β…?――ゾワンゾワンと魂が揺れる、少しでも気を緩めたら消されてしまいそうだ。
『交代だと言っている。次はオレが連れて行くのだ。αとΩになって不自由なく過ごせるはずだったというのに…オマエが邪魔をしたんだ。本当の愛だの優しさだのを求め…それだけではどうにもならないという事を思い知っただろう!無駄な苦労ばかりをかけ、あげく何度もこいつを傷付けてな!』
―まさか…αは"俺"ではないと…?―
『後を追う事は拒まない。どうあがいてもオマエはオレだ。迷いが多く煩わしいが、それくらいは受け入れてやる。だが次にこいつを愛し、愛されるのはオマエではない。それは覚悟しておけ』
ゾワンと魂が揺れる。ここで負けてしまうとデスマスクにはもう会えない――直感でわかる。
『それとも…"サガ"のように二人でしてみるか?誰しも心の中には何人もの自分が在るものだ。愛おしいこいつの中にもな。ただオマエもわかるだろう?オレは分け合うのは好きではない。迷いなど与えたくない。逃げるのも嫌いだ。"オレ"は一人でいい。それを今回再認識した。わざわざ悲劇をお膳立てする必要など無いのだ。神のせいにするのは簡単だがな、悲劇はオレの中にある』
そこまで言うと、男はデスマスクを抱いたままシュラに背を向け歩き出した。諦め切れずに追い掛けて行くが、男はゆっくり歩いているように見えるのに全く追い付けない。
『ククク…追い掛けて来い、惨めたらしく、どこまでも。愛があるのならば苦にならんだろう…お前は決して追い付けない。追い付いては、いけない…オレの後を追い続けろ…』
「待ってくれ!デスマスク!起きろ!それは"俺"じゃないんだ…っ!」
追い掛けて、追い掛けて、一つの淡いコスモの光を見失わないように追い掛け続けるシュラは必死だった。だから気付けなかった。
「シュラァァァアアーー!」
シュラの後を追う、もう一つの弱い光に。
(あいつは何を追っているんだ…!やっと見つけたというのに全然届かない!早く掴まねぇと…もうここまで来てしまった…!)
消えていった雪景色も森も、足元を見下ろすと遥か遠くにぼんやり輝いている。その更に向こうには幾筋もの爆炎が上っていた。今、深い闇の宙を駆けている。再び視線を前に戻すと突然見慣れた聖域の火時計が真横に現れて、最後の灯火が消えようとしていた。
「シュラァァァアアッ!」
――逝けば名前も消える、呼べなくなる。シュラとデスマスクが終わる…――
地上はすっかり霞んで辺りには煌めく星が瞬いている。そんな高い天(そら)まで来てしまった。あとはもう、墜ちるのみ。
「待って、待ってくれ、お前やっぱ逃げるなんて許さねぇぞぉ!またやり直しじゃねぇかぁっ…!クソバカ鈍感β野郎ぉー!」
遠い先で光に包まれていくシュラに向かって精一杯腕を伸ばした。全然、届かない。自身も伸ばした腕の先が光に包まれて消えていくのを感じる。
―シュラァァァアアーー!―
最後は叫ぶ感覚も無かった。ただ、その瞬間に火時計の灯りは消え、地上からチラチラ揺れる一筋の光がまるで二人を逃さないかのように掠めていって、ほんの一瞬、シュラの影が振り向いたような…そんな気がして。
シュラとデスマスクが共に逝く事は、叶わなかった。
ーつづくー
ーつづくー
2024 |
11,28 |
※十二宮戦(巨蟹宮)のため当たり前のように紫龍(α)×春麗(Ω)描写があります※
ーーー
「うるせぇぇぇええええっ!」
ーーー
「うるせぇぇぇええええっ!」
紫龍を引き摺って来た黄泉比良坂の頂上、もうあとは穴に落とすだけというところでデスマスクは再び彼方から囁かれるΩの祈りに気を散らせた。
「煩わしい!なぜこんな…まだΩに目覚めてもいない、コスモも使えない小娘の念が俺の頭に響くのだ!くそっ…邪魔をするなら殺すまで!」
「待てっデスマスク!春麗は関係ない!」
「それが俺には関係無いのだ!惹かれ合うαとΩであれば番でなくとも一方を失う悲しみは大きいだろう。お前と共に死で結んでやる事を感謝するべきだな!」
「…ぐ…デスマスク!お前はΩで…番もいるのだろう…?もしやお前はその相手に無理矢理番にされたのか?だから他人を憎み、殺しに励むのか…?」
掴み上げられ穴の上に垂れる紫龍が絞り出した声にデスマスクはうっとり笑う。
「クク…俺はこの上なく愛されている。そして愛しているぞ。死など恐れぬ程にな」
「ならばなぜ…神の祝福を知りながらそれを裏切るのだ…わからない…聖闘士でありながら自分たちさえ良ければ他はどうなっても良いと言うのか!」
「あぁ、そうだな。俺たちは今この愛を繋ぐために生きている。世界を犠牲にするのではなく変えるのだ。神が与えし性差など…そんなものが生まれない世界へ。それを止めたければ俺たちよりも強くなり殺せば良いものを…誰もしない」
ため息を吐き、紫龍をひと睨みしてから掴む手に力がこもった。デスマスクの全身から特有のコスモが揺らぎ、立ち昇る。辺りの亡者たちは恐れ慄いて朽ちた体を転げ回しながら逃げていく。
「ハハッ!お前ももう遅いがな!俺とあいつが結ばれたのは神様のおかげと言うのか!フッ…そう思えるような生き方をさせて貰えなかったというのがわからんのか⁈神によってな!人は平等に生きることができないことをお前も知ってみろ!」
「っ⁈デスマスク、やめろぉおっ!」
遂にデスマスクの強大なコスモが五老峰から紫龍の無事を祈る娘、春麗に向けて放たれた。祈ることしかできない無力な乙女は圧倒的な力に抗えず大瀑布の底へと落ちていく。
その時、磨羯宮にいたシュラとアフロディーテはデスマスクのコスモを感じ取り顔を見合わせて安堵の表情を浮かべた。
「これで邪魔者も居なくなった…。恐れる事はない。すぐにあの娘もここへ来る。愛があるのであればお前が先に逝き導いてやれ!」
「…春麗…っ!春麗――っ!」
あとは失意の紫龍を穴の中へ落とすだけだった。ただ、それだけであったというのに…耳をつんざく紫龍の叫びにデスマスクの視界は突然暗転した。
ーーー
ーーー
暗い闇の中、ちらりちらりと白い雪が舞う。次第に辺りの木が見えてきて森の中にいるようだった。すぐ近くで叫び声が聞こえる。涙まじりの低いガラガラ声で、ずっと誰かの名前を呼んでいる。吸い寄せられるようにそちらへ向かうと、木の隙間から横たわる足が見えて、誰かがそれを抱き締めている。
『……っ!……――っ!』
駆け寄って声を掛けても振り向いてくれない。あぁ、夢か。自分はここに居ないのだと悟った。彼は誰を抱いて泣いている?上半身は裸で…何故か全身に引っ掻いたような傷だらけ。色の落ちた、銀の髪の…首筋に、綺麗な噛み痕がついた…
――違う…――
久しぶりだがこの夢は初めてではない。いつも抱かれているのは軍服を着た白金髪の男で、首筋は止まらない血で真っ赤に塗れて、顔も…顔も…
――俺ではなかった…!――
俺の名前など呼んでいなかった!その声はシュラではなかった!誰だ⁈誰なんだ!
――早く戻らなくては…!――
……どこへ?何をしていた?…いつもは直ぐに覚めていた…これは、ただの、夢だから…。いつもは、直ぐに…覚める…。
――あぁ…――
自分はもう、居ないのだと…
ーーー
ーーー
「……ッ……!」
シュラは巨蟹宮に戻ったコスモを探って心臓が強く跳ねた。感じるのは青銅聖闘士のコスモと…蟹座の黄金聖衣、だけ。
「…………」
隣に立つアフロディーテも言葉を失う。デスマスクはまだ戻って来ていないだけかもしれない。だが…隣にいるシュラが、デスマスクの番が、次第に牙を剥き出しにしてαに染まっていく。「すぐに戻ってくるだろう」なんて気軽に言える空気ではない。やがて青銅聖闘士のコスモが獅子宮を目指し始めた時、ガツンと響いた聖衣の濁った音。シュラは崩れ落ちて地に膝を付いた。
「シュラ…大丈夫か…」
胸に手を当て、額からは汗が吹き出し、苦しそうに息が荒い。アフロディーテは癒しのコスモを与えようとシュラの肩に触れたが、拒むように弾き返された。
(…私では手が付けられない…デスマスク…本当に逝ってしまったのか?これはあまりにも、呆気なくはないか?!)
「シュラよ…一度部屋へ戻った方が…」
噛み締めた唇に血が滲んでいる。シュラの目に涙は無かった。今、彼から感じられるのは戸惑いと、怒り。コスモではない、αの威圧感がビリビリと増していくのをアフロディーテも感じる。それはやがて十二宮を、聖域を飲み込んでいく。
『巨蟹宮が突破されただと?』
『馬鹿な、黄金が青銅に負けたのか?蟹座が青銅に寝返るとは考え難い』
『所詮はΩの蟹座だったって事だ、青銅であろうとαには敵わなかったんだろうよ』
『努力だけではどうにもならない事もある』
『番が同じ黄金でなければΩらしく守ってもらえただろうに』
『運命は残酷だな』
『しかし青銅の方も黄金を倒していい気になっていられるのも今のうち』
『今聖域にいる全聖闘士が感じているだろう』
『恐ろしい、とても強大な怒り』
『これだけ離れていても貫かれそうだ。聖域ごと破壊しかねない』
『磨羯宮の突破は絶望的だろう』
シュラの怒りにシャカはほくそ笑んだ。ミロは呆気ないデスマスクの死を笑った。
抑制剤の副作用ではなく、教皇からの洗脳を受けていたアイオリアは目を覚まし青銅聖闘士を先へ通す。自分の出る幕など無いと思っていたシュラが待つ磨羯宮まで、順調に上ってくる。なんて脆い…守り続けていたはずの聖域はとっくに崩壊していた。
悲しみは極限に達すると涙も出ないと聞く。怒りもまた、極限に達するとこうも無になれるのか。
「クク…良いザマだな、山羊座よ」
「教皇っ…!こんな時に!」
「のこのこ宮を抜け出ているのはお前もだろう、魚座」
静かな磨羯宮に突然響いた声。サラサラと法衣の擦れる音が近付き、崩れ落ちたままのシュラの前に真っ黒な髪のサガが姿を現した。
「愛おしくて仕方のない番を失った気分はどうだ?たかが青銅に殺された気分はどうだ?しかしまさかこんなにも呆気ないとは…番にしたのは早計だったか。Ωのフェロモンが使えれば青銅なんぞ何の問題にもならなかっただろうに」
シュラは俯いたまま何も答えない。そこにサガが来ている事にすら気付いていないかのようで。
「おそらく死んだのだろうが流石に私も積尸気へ行ったコスモまでは辿れないからな、期待を持ちたければ持てば良い。それでお前が戦えるのならば都合の良い夢を見ていれば良いのだ」
「っ?!待てっ…!」
サガの言葉を聞いていたアフロディーテはそこに含まれた思惑に気付き、薔薇を構えて2人の間に割り入った。サガは目を細め、ニヤリと笑う。
「山羊座がこのザマではお前にも負担が掛かるだろう?戦ってもらわねばならん。蟹座を復活させてやろうという話だぞ」
「そんな事をしなくてもシュラは戦える!洗脳を使うのは止めろ!幻覚などデスマスクの代わりになんかならない!」
「使ってみないと結果はわからないだろう?それともお前が受けてみるか?幻のΩでも愛されてみれば力が増すやもしれん」
そう言って拳を向けるサガの足元を目掛け、薔薇を数本打ち込んだ。
「そうまで言うのならお前が自分に使ってろ!私がデスマスクを想う愛とシュラが想う愛は違うものだ、それくらいわかるだろう⁈」
「あぁ、同じであればお前が早々に蟹座を番にしていただろうしな。お前たち三人はややこしい関係だ」
「…シュラは戦える…だが、もし青銅が磨羯宮を突破したとて双魚宮を抜ける事は無い」
「フッ…その自信。最低条件だな」
拳を下ろしたサガは数歩引いてアフロディーテの背後に隠れるシュラの姿を再び捉えた。
(…番が殺されたのだ、あれ程の怒りを蓄え…青銅に寝返ることはまぁ無いだろう…)
「青銅の侵入はお前たちで必ず食い止めよ。偽アテナの一派を全滅させた後、今回青銅に加担した聖闘士の粛清も行うぞ。デスマスクを偲んでやりたいならばαを狩れるだけ狩ってやれ」
それだけ告げるとサガは足音を消して磨羯宮から去って行った。
「全く…何なんだ…"サガ"はともかく、今さら焦りを見せたところでお前の味方など最初から居ないというのに…」
宣言通り青銅とは正面から戦おう。だがこれは勅命のためではない。ずっと守ってきた聖域のためでもない。
デスマスクのためでもないが、彼の理想…αとΩの終焉は実現できるのならば見てみたいと思った。それは自分たちの終わりでもある。シュラとデスマスクはアダムとイヴにならない。大虐殺のすえ人類の苦しみを一つ解き、誰にも知られず消えて行く…。
考えれば考えるほど、身勝手で愚かでロマンチックな話だと思った。正義とは綺麗なものではないのだ。これは殺戮を厭わない、その性とそれを行えるだけの力を持って生まれさせられたデスマスクにしか思い付かないことだろう。
考えれば考えるほど、身勝手で愚かでロマンチックな話だと思った。正義とは綺麗なものではないのだ。これは殺戮を厭わない、その性とそれを行えるだけの力を持って生まれさせられたデスマスクにしか思い付かないことだろう。
想いを巡らせてからアフロディーテは振り返り、サガが来る前と同じ状態のシュラを見下ろす。汗も動悸も落ち着いていたが何を考えているのか全然動かない。
(このままでは時間がないぞ…)
この「無」が再びシュラの底知れぬ力を目覚めさせる前触れであるのならそれでいいが、その力を青銅にぶつけなければ何の意味も無い。アテナでも聖域でもなくデスマスクを想って使われるべき力を。
「シュラ…」
反応は無いと思いつつも親しい仲の癖から無意識に声を掛けた。小さな声が辺りで響き、すぐに静けさが戻って一呼吸ついた時――
「…αを狩る、か…」
低い声が返り、カシャ、と聖衣が動く。
「シュラッ!」
よろめきながらゆっくりとシュラは立ち上がり、すぐ背後にあった柱にもたれ掛かった。
「シュラ、今に青銅が来るぞ!そのまま腑抜けて青銅を通すのか⁈お前はなぜ戦って来た?この歪んだ聖域でずっと!今やるべき事を考えろ!私は戻るからな!」
その訴えにシュラからの返事は無い。動く気配も無い。ただ一度、鋭い視線がアフロディーテを捉え、直ぐに伏せられた。それで十分だった。
シュラの返しを得て笑みを漏らしたアフロディーテが外へ出ると、磨羯宮の上に広がる空はいつしか夕闇に覆われていた。デスマスクのコスモが途絶えて5時間が経つ。戻らない。何も感じない。今、青銅聖闘士が遂に人馬宮を抜け磨羯宮を目指し始める。あんなにもヒシヒシと感じられた怒りはすっかり消え去っていた。そう、何も感じない…。
ーーー
ーーー
磨羯宮へ続く階段は青銅聖闘士が駆け抜ける音だけが響く。風もそよがず、星々は瞬きを潜めてしまった。恐ろしい程の静けさに青銅聖闘士たちは一瞬、躊躇った。
「なんだここは…無人なのか?」
「ならば一気に先へ進むまで!」
「ならば一気に先へ進むまで!」
今、青銅聖闘士たちは磨羯宮を駆け抜け、柱にもたれ掛かっているシュラの前を通り過ぎて行く。
――α、α、α…――
遠ざかっていく足音。
――オレの、Ωを殺した、α…――
一歩、踏み込んだ。
――俺の、デスマスクを殺した、アルファ…!――
突然、鋭い光の筋が磨羯宮の闇を裂いた。ちょうど外へ抜け出た青銅聖闘士たちを目掛けて、深く地を切り裂く拳が放たれる。
「「紫龍!」」
「ほぉ…これは運が良い…」
おそらく最大級の聖剣によって宝瓶宮への道は深く裂かれた。一人残された青銅聖闘士こそデスマスクと対峙した老師の弟子、紫龍だった。道は断たれたが先へ進めないわけではない。仲間を一刻も早く教皇宮へ向かわせるために紫龍は留まり、背後に迫るコスモを感じて振り向いた。
磨羯宮の闇から現れたシュラは無表情のまま笑っている。デスマスクでも見た事のない、人らしからぬ笑みを浮かべゆっくり紫龍へと近付いた。
「蟹座のデスマスクと戦ったのはお前だな?」
「……そうだ……。お前が磨羯宮の黄金聖闘士か?」
答えは知っていたが憎き仇が決定付けられ、シュラは笑ったまま目を細める。憎い、見たくもない、一刻も早く斬ってしまいたい苛立ちに耐え、どうしても聞いておきたい質問を絞り出した。
「俺が山羊座のシュラだ。殺してやる前に確認したい事がある。デスマスクはどうした?なぜ黄泉比良坂から戻って来ない?」
「…それくらいわかるだろう?黄泉比良坂の穴に肉体のまま落ちて確実に死んだのだ!亡者たちの恨みを買う非道な行い、聖衣にも見放され黄金聖闘士とは思えぬほど無様に死んでいったぞ!」
ーーー
あの時…春麗の名を叫び、自らの無力さに気を失いそうになった紫龍は暗転した瞼の内側で祈り続ける少女の姿を見た。滝つぼの奥深くへ沈み行くなかに於いても両手を合わせ、ただ紫龍の無事を祈る姿。その命を、彼女が持つ愛の全てを紫龍に捧げようとする姿。
――あぁ、こんなにも尊く清らかな彼女を自分のために失いたくない…沈ませない!今ならまだ掴める!届け、春麗に…!――
「ぎゃぁああっ!!」
願いを込めた夢の中、勢いよく腕を伸ばしたその手はデスマスクの脚を砕いていた。黄金聖衣が砕かれたのではない。そこには聖衣の外れた無防備な脚が曝け出されていた。
「ぅっわぁっ!」
デスマスクがバランスを崩し倒れ込んだ拍子に紫龍は運良く冥界の穴とは逆の方へ放り出された。すかさずデスマスクを確認すると砕かれた脚を抱えて蹲っている。すぐ近くには黄金のフットパーツが転がっていた。何が起きたのか理解できなかったが、この好機を逃すわけにはいかない。
「デ、デスマスクッ!春麗の仇!」
「ぐっ…ぅ、ぇぇっ…!」
紫龍の拳が今度はデスマスクの腕を砕いた。確かに黄金聖衣を身に着けていたはずなのにまた外れて地に転がっている。
「…なっ…なんだっ…黄金聖衣が外れていくなど…!」
荒い息を吐くデスマスクから急激に力が抜けていくのを感じた。実体のままそこに在る体からダラダラと汗が流れ始め酷く震えている。
「く、くそっ!こんな時に!…いいか、黄金αと番になった黄金Ωの力はな、神に匹敵するのだ!オレサマに選ばれなかったαどもは全員ゴミ同然!お前は勝てん!死ねぇ!」
力を振り絞ってデスマスクは立ち上がったが、それを黄金聖衣は許さなかった。骨が軋むほどデスマスクの体を強く締め付けたかと思えば一斉に聖衣が外れ、先に落ちていったパーツと共に蟹座が姿を表す。聖衣から与えられる衝撃に耐えられなかったデスマスクは地面に叩き付けられてから、薄く開けた瞼の先でその姿を確認した。
思いも寄らない展開に紫龍も驚きを隠せない。
「おぉ…黄金聖衣がデスマスクに制裁を与えている…やはり奴は黄金聖闘士に相応しくないのだ…」
――相応しくない…――
(…俺を選んだのは誰だ。蟹座の宿命に選んだのは誰だ。お前だろう?裏切るのか!あんな陰湿な巨蟹宮に俺を捕らえたお前さえも、都合が悪くなれば俺をあっさり見捨てるのか!そんなもののどこにアテナが謳う愛などある?!)
聖衣が外れ、晒された首筋に残る噛み痕がジンと熱くなるのを感じた。
(愛など…もう…。ただ一つのコレだけが、俺の救い…)
ゆっくりと腕を動かし、震える指で少し抉れた痕に触れる。シュラの鋭い牙を思い出す。
(偽善で無能な神に代わり、俺たちが世界を正さなくては…。聖衣も全て壊してしまうのだ。俺たちならできる…黄金αと黄金Ωの俺たちならば…神に匹敵する力で…)
まだ立ち上がろうとするデスマスクの姿に紫龍はコスモを高めた。しかし自分は魂でしかなかったが聖衣を着ていて、その能力は備わったままだ。残されたコスモの力のみで戦おうとするデスマスクを前に聖衣を着ている自分が許せなくなり、脱いでしまいたいと思った。
「クク…馬鹿か…現世の実体は着たままというのにそんな事もできるのだな」
「俺は正義のために聖衣と血を分け合い、助け合ってここまで来たのだ」
「…血か…貪欲な蟹座聖衣は舐める程度では満足しなかったようだ…」
強く願った紫龍は魂が纏っていた聖衣を脱ぐことに成功し、デスマスクの前に立つ。今まではアテナである沙織の力、蟹座の聖衣、そして命を懸けて祈り続けた春麗に助けられ死を免れた。次こそは自らの力でデスマスクを倒したい。春麗の死を無駄にはしない。決して、それだけは何が何でも…!
「まだ番でもない小娘の死でそこまでコスモを高めるか…まぁ彼氏としてそれくらいは当然の餞だろう。だが言ったはずだ!黄金αの力をも得たオレサマを超える事はできんのだ!今度こそ死ねぇぇえ!」
脚が砕けて立てずとも、腕が砕けて拳が振れずとも、コスモさえ極限まで高めれば青銅が限界値を超えてこようとも勝てるはずだった。今の自分であればムウをも凌ぐ最強のサイコキネシスで僅かな思念すら残さず魂を木っ端微塵にできるはずだった。それ程の力があったはずであるのに。
「…なぜっ…」
実体を持たぬ瀕死の魂が放ったコスモの龍は、春麗の死を糧に鋭く膨張し黄金の力をゆうに超えた。ぶつかり合ったコスモは次第にデスマスクを圧倒し、呑み込んで、大きな深淵へと引き摺り落ちて行く。
デスマスクは自らの能力で宙を歩く事も容易かった。落ちても浮かび上がればいい。落ちることなど有り得ない。浮かび上がれるはずなのに、薄気味の悪い黄泉比良坂の空がどんどん遠く離れて行く…。
体中に纏わりつく紫龍のコスモが気持ち悪くて、デスマスクは力のコントロールが効かなくなっていた。
―何だこれはっ…ゾッとする…!―
勝ち負けなんかよりも、こんな終わり方は絶対に嫌だと急に涙が溢れ出た。自分は所詮αに支配されるΩなのだと死の間際まで思い知らされる。
―嫌だっ…気持ち悪い!こんなαのコスモ嫌だ、離れろ!っ…シュラ、シュラ!助けろ!返事しろ!届け!っ…届け、よぉっ…!―
紫龍を想う小娘の念は冥界の壁をも超えてきたというのに、番の声が届かないこの差は何。こんなに想っているのに、愛しているのに…神が隠すのか?俺たちの愛を。
「シュラっ…嫌だ、お前じゃないのは全部いやだぁっ!気持ち悪いっ、殺してくれ!はやくお前が来て殺してくれよぉ!!」
シュラの香りを、コスモを、声を、その姿を必死に想い描きながら、デスマスクは紫龍のコスモを引き剥がそうと手当たり次第に体へ爪を立てて掻きむしり続けた。
「しゅら、しゅらぁっ…!しゅらぁぁぁぁああ!…」
白い頬も胸も背中も血が滲み出して壊れていく悲惨な姿は瞬く間に深淵へ呑み込まれ、呪文のようにシュラを呼び続ける叫び声も、闇の中に潰えた。
ーーー
「デスマスクは非道な行いの報いを全て受けて死んだ。あの男は黄金聖闘士に相応しくなかったのだ!お前にもわかるだろう?」
「……ハハ、聖衣にまで……そうか……。やはりあいつには俺しかいないのだな。誰にも守られず、サガにも老師にもアテナにも裏切られ、最後まで可哀想に……」
笑いながら憂いた声を上げる不気味なシュラを見て、紫龍は考えるより先に声が出た。
「…まさか、お前が…デスマスクの番、か…?」
「気安くアイツの名を呼ぶな」
シュラはスッと笑みを潜め低い声で呟くと紫龍の足元に向けて一撃を放つ。慌てて飛び避けた紫龍の長い髪が数本、辺りに散った。
「黄金聖闘士に相応しくないのならばそもそも蟹座になっていない。それともΩが黄金になる事を相応しくないと言ったのか?神が与えた宿命を無視して辞めさせれば良かったと?αならば納得いくのか?」
「そうではないっ!デスマスクがしてきた事、番ならば知っているだろう!」
「俺でもアイツの全ては知り得ない。だがな、お前よりは遥かに知っている。どうせ巨蟹宮を見ただけだろう?それでデスマスクを知った気になるとは…その程度の事で自らが正しいと正義を騙る愚かさよ!」
今度は真っ直ぐ紫龍に向け宙を斬った。自身を庇ったドラゴンの盾が呆気なく斬り落とされ、カランと音を立てて転がる。
「そんなっ…ドラゴンの盾がこんなにも容易く…!」
「今その身が繋がっているのは盾のおかげだな。だがそれももう無い。次で終わりだ」
何の躊躇いも疑いもなく拳を向け続けるシュラに紫龍は疑問が湧いた。番を殺されただけでアテナに対する忠誠も覆るものなのだろうか?
「シュラよ!お前も黄金聖闘士でありながら、デスマスクのみならず教皇の悪事も知ってアテナに刃向かうのか⁈」
「お前には到底理解できん事情がある。理解してもらう気もない。だがデスマスクの仇以外にも戦う理由が欲しければ一つ与えてやろう。十三年前、アイオロスを死に追い詰めたのが俺だ。それで十分だろう」
「アイオロスをっ…?アテナを守ろうとした仲間を手に掛けたのか⁈」
「アテナを連れ去ったのは事実だからな」
だからと言ってそんな事…などと呟いている紫龍を面倒に思ったシュラは左手を構えて容赦なく聖剣を撃ち込んだ。飛び避けたところに右手で更に撃ち込み崖へと追い詰めていく。このまま底の見えない崖下へと落ちればアイオロスの時と同じだな、とぼんやり思った。
―いや、コイツだけはこの手で殺さなくてはならない…―
少年とは言えシュラにとって最も許せない罪を犯したα。殺しても足りないほどだ。崖下へ落ちても追い掛けてその身を刻み尽くしてやらないと気が済まない。
シュラのマントがはためいた。止まっていた風がいつしか吹き始めて紫龍の髪も緩やかにそよぐ。この風ももう、この世にいないデスマスクとは共有できない。
一つ瞬きをして、右手を構えた。
ーつづくー
ーつづくー
2024 |
11,20 |
各SNSのプロフなどで今までブログへリンクしていたものを、SNSまとめサイトへのリンクに変更しました。
一般向けのまとめツールなのでどうかなぁという思いはありますが、今のところ一般らしきところからのアクセスは無さそうなのでしばらくこれで様子見します(゚∀゚)b
で、せっかくなので各SNS用の山羊蟹落書きを描き散らしました(笑)
これでやっとオメガバ小説に戻れる!!!(まだやってなかったんかいっていう)
久々にエロもどきも描けて満足です(∩゚∀゚)小説挿絵用に練習していかないといけないしねぇ。
だいたいはそのうちpixivに収納されるのではないでしょうか。
山羊蟹は関係無い話になりますが他ジャンル用にブルースカイどうだろう?と見てみました。
一般向けSNS…と思っていたけど想像以上にイラスト投稿ばかりで驚いたと言うか、これはpixivとかやってるからそういうポストを多く見せられたのか現状がそうなのかよくわからん。さすがに二次BL絵までも表示されると、これ一般人にも丸見えなのかと思ったら自分が描いたわけではないのに居た堪れない気持ちになってしまう(笑)正直pixivも検索にヒットしてしまうのが悩みどころ。
多分実際に登録すれば見たくないもの除外できると思うけど、どうなんでしょうね。ブルスカも結局赤字になって運営困難にならなければ良いけども。
EさんがTさんの支援についたから、ブルスカが反対勢力に推してもらえるとかあるのかな?その辺は今後のニュースを見ていけば自ずと見えてくる事でしょう。あからさまだもんね(笑)Tさん退任後の即行戦争開始とか(笑)ウVS露戦の報道の仕方とか。
それは置いといてTwitterも昔は画像投稿できなかった記憶でその頃から使ってはいたんですけど、途中止めた数年間で劇的に変わりましたね。画像投稿可能から画像表示がデカくなった時に「こんなデカいの邪魔だし嫌すぎる」と思って違和感凄かったけど、今では慣れてしまった(笑)
そういうもんですわ(゚∀゚`)
でもだからこそ短いコメントや注意書きすら読まず画像を見るだけ、な人が増えたんですかね。よくわからん。明らかにクリックしてないのにいいね押す感覚もわからん(笑)画像の真ん中しか見えてないやん、ていう。自分の感覚が古いだけなのか?
というわけで、ブルスカもどんどん変わっていく事でしょう。もう少し様子見て他ジャンルと星祭り用に検討したいと思います(・ゝ・)φ
一般向けのまとめツールなのでどうかなぁという思いはありますが、今のところ一般らしきところからのアクセスは無さそうなのでしばらくこれで様子見します(゚∀゚)b
で、せっかくなので各SNS用の山羊蟹落書きを描き散らしました(笑)
これでやっとオメガバ小説に戻れる!!!(まだやってなかったんかいっていう)
久々にエロもどきも描けて満足です(∩゚∀゚)小説挿絵用に練習していかないといけないしねぇ。
だいたいはそのうちpixivに収納されるのではないでしょうか。
山羊蟹は関係無い話になりますが他ジャンル用にブルースカイどうだろう?と見てみました。
一般向けSNS…と思っていたけど想像以上にイラスト投稿ばかりで驚いたと言うか、これはpixivとかやってるからそういうポストを多く見せられたのか現状がそうなのかよくわからん。さすがに二次BL絵までも表示されると、これ一般人にも丸見えなのかと思ったら自分が描いたわけではないのに居た堪れない気持ちになってしまう(笑)正直pixivも検索にヒットしてしまうのが悩みどころ。
多分実際に登録すれば見たくないもの除外できると思うけど、どうなんでしょうね。ブルスカも結局赤字になって運営困難にならなければ良いけども。
EさんがTさんの支援についたから、ブルスカが反対勢力に推してもらえるとかあるのかな?その辺は今後のニュースを見ていけば自ずと見えてくる事でしょう。あからさまだもんね(笑)Tさん退任後の即行戦争開始とか(笑)ウVS露戦の報道の仕方とか。
それは置いといてTwitterも昔は画像投稿できなかった記憶でその頃から使ってはいたんですけど、途中止めた数年間で劇的に変わりましたね。画像投稿可能から画像表示がデカくなった時に「こんなデカいの邪魔だし嫌すぎる」と思って違和感凄かったけど、今では慣れてしまった(笑)
そういうもんですわ(゚∀゚`)
でもだからこそ短いコメントや注意書きすら読まず画像を見るだけ、な人が増えたんですかね。よくわからん。明らかにクリックしてないのにいいね押す感覚もわからん(笑)画像の真ん中しか見えてないやん、ていう。自分の感覚が古いだけなのか?
というわけで、ブルスカもどんどん変わっていく事でしょう。もう少し様子見て他ジャンルと星祭り用に検討したいと思います(・ゝ・)φ
2024 |
11,11 |
«さつまいもカレー»
思った以上に現実が忙しく、オメガバ小説を読み返し始めて1週間経ってもまだα化まで辿り着けていない(ノ∀`)
修正しつつだから少し時間かかるとはいえ、前回は2日で読めたはずだけどなぁ…。しかし読み返すと、このシーンこんな初期だったのかとか思って既に感慨深い(笑)
今月完成は無理でも2回分くらいは更新したいですね。…できるか?
落書きしなければできると思う(笑)↓
けど、たまには絵も描きたいので…(゚∀゚`)
年に1回は描いてるような。これくらいの時期になると描きたくなると言うか…お風呂タイム(・ゝ・)
最初は普通に並んで入っていたけど、じりじりデスマスクがすり寄ってきてシュラの腕に収まるやつ(∩゚∀゚)
修正しつつだから少し時間かかるとはいえ、前回は2日で読めたはずだけどなぁ…。しかし読み返すと、このシーンこんな初期だったのかとか思って既に感慨深い(笑)
今月完成は無理でも2回分くらいは更新したいですね。…できるか?
落書きしなければできると思う(笑)↓
けど、たまには絵も描きたいので…(゚∀゚`)
年に1回は描いてるような。これくらいの時期になると描きたくなると言うか…お風呂タイム(・ゝ・)
最初は普通に並んで入っていたけど、じりじりデスマスクがすり寄ってきてシュラの腕に収まるやつ(∩゚∀゚)
伊にはお風呂あるとは言え西洋人だからあまり湯船に浸かる習慣は無いだろうけど、たまたま出先で湯船見つけて2人で入ってみたらお湯ザバーだけど何か良い感じ、という具合で。でもデスマスクがのぼせやすいから長くは入れないor超ぬるいお湯にする(笑)
ぬるくするのは温泉だと無理だけど。
シュラの髪は濡れるとどうなるのか、問題。誰おまになってしまった(・ゞ・)
あまりシュラの見た目が変わると知らないモブ×デスになってしまいそうでそれはいただけない(笑)枯れ果てて山羊蟹仙人になってしまうと攻め違い受け違いリバが見れなくなる(゚∀゚`)何かもうそういう境地だね…。若い時はまだ色々見れたんだけどなぁ。
肌寒くなる=温泉、というのもありますが単純に自分が今、温泉に行きたいです(笑)ので、今年度中に行く。
昔のペーパーで伊香保にいる山羊蟹絵とかもあるのですが、それ見て伊香保行きたいなぁ思いつつ(多分実際に行くのは別の場所)脳みその中に山羊蟹連れてどこかに行きたい。
わりと独身時代は全国各地の温泉行くくらいには好きでしたね。ただ何度も入るタイプではないけど(笑)行楽観光が好きなもんで。
できればまた温泉漫画を描きたいものの時間的にどう考えてもそれは無理なので(゚∀゚`)イラストくらいは…
とか言って、結局レゴランドとかになるかもしれない…(ノ∀`)ガッデム!
ぬるくするのは温泉だと無理だけど。
シュラの髪は濡れるとどうなるのか、問題。誰おまになってしまった(・ゞ・)
あまりシュラの見た目が変わると知らないモブ×デスになってしまいそうでそれはいただけない(笑)枯れ果てて山羊蟹仙人になってしまうと攻め違い受け違いリバが見れなくなる(゚∀゚`)何かもうそういう境地だね…。若い時はまだ色々見れたんだけどなぁ。
肌寒くなる=温泉、というのもありますが単純に自分が今、温泉に行きたいです(笑)ので、今年度中に行く。
昔のペーパーで伊香保にいる山羊蟹絵とかもあるのですが、それ見て伊香保行きたいなぁ思いつつ(多分実際に行くのは別の場所)脳みその中に山羊蟹連れてどこかに行きたい。
わりと独身時代は全国各地の温泉行くくらいには好きでしたね。ただ何度も入るタイプではないけど(笑)行楽観光が好きなもんで。
できればまた温泉漫画を描きたいものの時間的にどう考えてもそれは無理なので(゚∀゚`)イラストくらいは…
とか言って、結局レゴランドとかになるかもしれない…(ノ∀`)ガッデム!
2024 |
11,01 |
«teen»
シュラとデスマスクは自分の勝手な捏造で8歳頃に聖域で初対面を果たします。
フェルサーはいかにも優しい系だけど峰は気が強そうなので、マニゴルドにズケズケ言われても耐性はある(笑)し言い返すこともできる(が、しない)
後にフェルサーも峰も失ったエルシドにとっては山羊座就任後、聖域に戻った時にマニゴルドが蟹座になっているのを見て「昔数日だけ縁のあったあいつがいる」というのは空っぽになった候補生時代の宝箱の底に残っていた希望のようなものと無意識に感じるはず(山羊蟹脳)
その時マニゴルドに対して恋心を抱くわけではないけど、そう感じた心が後々マニゴルドに対する興味を引き立て愛へと繋がっていく、と(・ゝ・)
もうエルマニ本を作る時は最初で最後になるかもしれないので全部ぶっこみたいですよね…描きたいものを。収拾つかなくなって3年くらいかかりそうですが(笑)でも頑張って漫画で描く!
あー他ジャンルも描きたいけど山羊蟹も消化したいぃ(゚Д゚)
AIどうこうの話ですが、正直今さらAIよりも知能を持った人間が絵柄とかネタをパクっていく行為の方が現実味あって嫌ですね。昔からよくある事ですけども。影響を受けて自己流の創作に落とし込むのは普通のことですが、絵に限らず語りとか語尾までそっくり真似する人ってどのジャンルにも存在して問題になるわけで、どういう精神状態でやっているのかは気になる…。
昔、同人仲間が絵柄そのままトレースレベルで真似されて同じイベントでそっくりなラミカ頒布されていた事があり、本人も参加する場でできるのが逆に凄くて怖い(笑)し、知人も強い人だったから「スケブ頼みに行くわ!」と言ってスペースに突撃していったのも凄かった(笑)
まだアナログ時代だったから食い止めれたものの、今のようなSNS時代だとパク絵を拡散されたら劣化した自分絵と思われたり面倒でしかない…。量産型ではない個性的な絵柄だったから特に劣化されて描かれると腹立ちますよね(笑)絵だけでなく漫画ネタとかもそうですが。そのネタはそういう薄っぺらな意図じゃないぞ…ってなるよね。単なるネタ被りとネタパクはやっぱ違うから作品見るとわかる。
AI学習もトレパクも人の手で行われるもの。キャラ愛があるのなら他人の愛を横取りする行為などせず自分から湧き出るものを試行錯誤して表現していただきたいですね〜
後にフェルサーも峰も失ったエルシドにとっては山羊座就任後、聖域に戻った時にマニゴルドが蟹座になっているのを見て「昔数日だけ縁のあったあいつがいる」というのは空っぽになった候補生時代の宝箱の底に残っていた希望のようなものと無意識に感じるはず(山羊蟹脳)
その時マニゴルドに対して恋心を抱くわけではないけど、そう感じた心が後々マニゴルドに対する興味を引き立て愛へと繋がっていく、と(・ゝ・)
もうエルマニ本を作る時は最初で最後になるかもしれないので全部ぶっこみたいですよね…描きたいものを。収拾つかなくなって3年くらいかかりそうですが(笑)でも頑張って漫画で描く!
あー他ジャンルも描きたいけど山羊蟹も消化したいぃ(゚Д゚)
AIどうこうの話ですが、正直今さらAIよりも知能を持った人間が絵柄とかネタをパクっていく行為の方が現実味あって嫌ですね。昔からよくある事ですけども。影響を受けて自己流の創作に落とし込むのは普通のことですが、絵に限らず語りとか語尾までそっくり真似する人ってどのジャンルにも存在して問題になるわけで、どういう精神状態でやっているのかは気になる…。
昔、同人仲間が絵柄そのままトレースレベルで真似されて同じイベントでそっくりなラミカ頒布されていた事があり、本人も参加する場でできるのが逆に凄くて怖い(笑)し、知人も強い人だったから「スケブ頼みに行くわ!」と言ってスペースに突撃していったのも凄かった(笑)
まだアナログ時代だったから食い止めれたものの、今のようなSNS時代だとパク絵を拡散されたら劣化した自分絵と思われたり面倒でしかない…。量産型ではない個性的な絵柄だったから特に劣化されて描かれると腹立ちますよね(笑)絵だけでなく漫画ネタとかもそうですが。そのネタはそういう薄っぺらな意図じゃないぞ…ってなるよね。単なるネタ被りとネタパクはやっぱ違うから作品見るとわかる。
AI学習もトレパクも人の手で行われるもの。キャラ愛があるのなら他人の愛を横取りする行為などせず自分から湧き出るものを試行錯誤して表現していただきたいですね〜
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